戻る方法は、邪悪を倒してアークストーンを手に入れなければならないようだ。
諦めた私は英雄となって邪悪を倒す冒険?に出掛けることになった。
はよ帰りたい……。
ある日突然、イクス大陸に強制転移された私は『英雄候補』としてイクス大陸四大都市の1つ「ソルジェス」と呼ばれる都市にやって来た。
ビックリするほどバカデカイ都市だ。
中世の時代にありがちな感じで石や木で作られた、見るからにファンタジーの街と言える。
てか、でかすぎてユイさんの導きがなければ、確実に迷大人になっているだろう。
まず、私はソルジェスの将軍であるヤルソー将軍に挨拶をしに行くことになった。
「おお、貴方が英雄候補の方ですか!」
「あぁはい。えー、邪悪を倒し、世界を救うために精進したいと、おー、考えております。はい。」
自分で言っておいて、どこぞのRPGの勇者だよ、と突っ込みたかった……。
てか、ヤルソー将軍がでかすぎる。4メートルは確実にある大男だ。
そして、私はヤルソー将軍から鎧と剣を貰った。
当たり前だが鉄で出来ており、かなり丈夫そうだ。
「この鎧は昔私が使ってた鎧でしてな! はっはっはっは! 冗談ですよ!!」
豪快に笑うヤルソー将軍。
ユーモア且つおおらかで優しい性格なのだが、いかんせん体格と角刈り、豪快な顎髭のせいで少し身構えてしまう。
私の腕なら小枝を折る感覚でポキッといきそうだ。
「さて、ヤルソー将軍さんから装備を貰ったけど、意外と重いな、この剣」
それを背中に背負っているがなかなか重い。
大きめのリュックサックに学校の教材、教科書とノートを6冊ずつ、筆記用具、弁当、水筒、メモ帳、学生手帳、スマホの充電器を詰めた重さ……といえば、なんとなく納得してくれるだろうか?
しなかったら一回やってみるとわかる、意外と重い。
さらにそれを振るのだから結構厳しい。
朱雀は愚痴を溢していると、ユイがやれやれといった表情でこちらをみる。
「ん? ユイさんどうかしまして?」
それに気づいた私はユイのほうを振り向く。
『いんにゃ?』といった感じで明後日のほうを向いた。
明らかに小馬鹿にしていると思ったが何も言わないことにした。
まぁ、とりあえず私はキャンプとかのやつを持っとかないとやばいと考え、色々と店を回る。
「取り敢えず、テントとか買わないと。てかお金持ってないやん……」
店を探している際に重大なことに気づき、私は呆然とする。
『そのまま行くしかないの。大丈夫じゃ、魔物を狩って、得た素材を売ればある程度のお金にはなる。練習がてらにソルジェスの外にいる魔物を退治してはどうじゃ?』
「モンハンみたいなこというなよ……」
しかし、金がない以上どうしようもない。
私はユイさんの言う通り、早速ソルジェスを出ることにした。
イクス大陸第一巨大都市「ソルジェス」→女神の休憩場
ソルジェスの外は広大な平原だった。
モンスターもいないいたって普通の平原。
ここの場所の名前を女神の休憩場と呼ばれている。
「……いきますか」
『そうじゃな』
私は全力で道から外れ、敵を探した。
すると、変わった植物がいた。
ハエトリソウとパックンフラワーを足して2で割ったような食虫植物……もうあからさまに怪しすぎる。
私は即座にユイさんに聞く。
「こいつやろ?」
『そうじゃ、そやつはイータープラント。口から種を飛ばす魔物じゃ』
「なるほどねー」
『侮っていると食われるぞ?』
「……oh」
私は地味に重い剣を構え、イータープラントに襲いかかった。
「どおおおおああああああああああ!!!!」
私は雄叫びを上げて重い剣を振り上げる。
じゃないと重くて振り上げれないからだ。
振り上げた剣をイータープラント目掛けて降り下ろした。
[俺にだってやれる!! 気持ちの問題だって!!]
「は?」
イータープラントは自身の根っこ縮め、バネの要領で横に飛んだ。
私の剣は空振りに終わり地面に刺さる。
てか、そんなことはどうでもいい。
イータープラントの野郎、いま喋ったぞ。
[絶対にできる!! 頑張れ!! もっとやれるって!!!]
イータープラントは口から種を弾丸みたいに、朱雀の方に飛ばす。
「っやべええ!!」
私は攻撃を回避しながら、刺さった剣を引き抜き、再び襲いかかる。
[もっと熱くなるんだよ!!!]
「おい!?」
イータープラントは迫り来る朱雀に必死で種を連射する。
私は剣を捨てて、種を避ける。
あの某熱血テニスみたいな台詞はなんなんだよ!?
[まだやれるよ!!]
「その台詞やめろ! 調子狂う!!」
捨てた剣を再度拾って、イータープラントに接近する。
十分接近した私は、今度は横切りでイータープラントを真っ二つにしようと試みる。
じゃないとこのまま続ければ、調子狂うからだ。
イータープラントもさっきと同じように逃げようとするので、私はコイツの根っこを踏みつけ、行動不能にする。そして、身体を真っ二つに切り裂いた。
[人はいつ死ぬと思う?誰かに忘れられたときさ……]
真っ二つになりながらもイータープラントはあの名言をいった。
お前一回あの世でヒル○クに謝ってこい!!
私は縦に切り裂いてしまおうかと考えたが、もうそれをする気力すらもなかった。
「ふぅ……もうなんなんやあれは!?」
『初戦にしてはなかなかのようだの!』
感心するユイであるが、私はもう色々と突っ込みたいことがたくさんあった。
強さとかの問題やない。
なんやねんあの出来損ないのパックンフラワーの台詞は!?
調子狂ってまうわ!!
「なかなか独特の植物だったわ。特にあいつの台詞が」
『そうか? この大陸では普通なんじゃが』
「あ……あんな台詞言うやつがたくさんいんのかいな!!」
洒落にならねえ……。
私はそう心のなかで思い、別の魔物を叩き潰すことにした。
とはいっても、辺りにはイータープラントばかりいた。
「こいつしかいねーな……」
仕方がない。
私は9体ほどイータープラントを潰したが、もう疲れた。
戦闘より、あいつらの訳の分からんネットミームで調子狂って疲れた。
「ふううううう……」
『初陣にしてはなかなかやるのお』
ユイさんは私の戦いぶりに誉めているようだが、なんも嬉しくない。
ちょっとだけでいいから、労ってほしいところやわ。
『龍輝、あちらの世界で何か、剣術でも嗜んでおったのか?』
「いや……まぁ、全然」
『全然? 龍輝なかなか素質あるのお』
「あー、ありがとうございます」
まぁ、誉めていることに変わりはない。
割りと嬉しかったので、私は感謝の意を述べる。
ユイさん曰く、イータープラントの根が売れるらしい。
『イータープラントの根っ子は薬になるんじゃ。故に薬屋さんでは、イータープラントの根っ子を買ってくれるぞ』
「なーるほどね。漢方薬的なやつか」
ユイはコクコクと頷く。
それなら、ソルジェスに戻って金にするかなぁ……。
私はソルジェスに戻ろうと歩き出そうとした。
そのとき、商人のような容姿の人が私の方に歩みよってきた。
「あの……もしかして、英雄様ですか?」
「え、あー、はい。そうですが?…………」
街中でよく見かけるごく一般的な青年だ。
特徴するところはあまりないが少なくとも私よりは良い面構えで、私よりイケメンな好青年であることに間違いはない。
私は頷くと商人の好青年はホッとしたように胸を撫で下ろす。
「……どうしました?」
不思議に思った私は、その青年に訊ねる。
「スミマセン、助けてほしいことがありまして」
「……???」
「次の街、デモーアルーまで行くところなのですが……」
「……はい」
「邪悪の影響からか、魔物が沢山いて、デモーアルーまで行くことが難しいんです。よろしければ、護衛をお願いできませんか?」
護衛の依頼のようだ。英雄候補である私がそんな護衛任務請け負っていいのだろうかと、考えていると。
『龍輝、その護衛を請け負うとよい。神聖なるお使いじゃ』
ユイが護衛をするのを進める。
神聖なるお使いというが、ただのパシリじゃね?
私はそう口に出そうと思ったが、「神聖なるお使いをパシリ等と、罰当たりめ!」と言われること間違いなしと思ったので口に出さないでいた。
私が悩んでいると思った商人は口を開く。
「……デモーアルーまで行けましたら、報酬として武器を差し上げますよ」
商人は貨車にある積み荷から、1つのハンドガンを取り出して私に見せてきた。
pc356と思わしきハンドガンだ。
「この前に、ある男性から壊れたこの銃を頂きましてね。何とか使えるまで修復をしたんですが、良ければこれを差し上げますよ」
「なーるほど……」
どうしようか……。
このくそ重い剣1つだけってのもあれやしな。
サブのウェポンとしてハンドガン一丁あると違うか。
「ええですよ。デモーアルーまで護衛しますよ。ですが、私は英雄候補でつい最近なったばかりでして、大丈夫ですかね?」
とりあえず、今の自分の身の程を説明し、保険をかけておく。
……事故ったらめっちゃ面倒故。
それを聞いた好青年は、嫌そうな顔をせず、「はい、大丈夫です。ありがとうございます」と言って頭を下げて感謝の言葉を口に出した。
「では、行きましょう!」
好青年は、積み荷を担いで進む。
私たちも好青年に続いて、次の街、デモーアルーに向かうこととなった。
女神の休憩場→聖殿の庭園
女神の休憩場を抜けた私たちは聖殿の庭園という場所を歩いている。
聖殿ということだけあって、なかなか神聖な場所だ。
花壇には見たことない花々が植えられている。
東京ドームと京セラドームを2つ繋げたぐらいの大きさの植物園と言えば分かるだろうか?
神聖で落ち着く。
更に、ここには一応魔物が居ないというおまけ付き。
「綺麗」
「そうですよね。私はここに来るの3、4回目なんですが、本当に心が安らぎますよ」
私と商人は、そのような他愛ない話をしながら、咲き乱れる花を眺めた。
「ふう……」
私たちは積み荷を担ぎ、聖殿の庭園をもうじき抜ける。
貨車がなかなか重い。
挙げ句に剣も担いでるから、死ぬほど重い。
かなり辛い。
「英雄さま。大丈夫ですか?」
好青年は流石に私の苦しそうな顔をしてるのを察したのか、心配そうな顔をする。
こんなのところで弱音を吐いては英雄として、闇英雄として情けないと思った私は「……大丈夫です。問題ありません」と言って否定する。
『龍輝大丈夫か?』
「ああ、大丈夫……」
ユイさんも心配した顔でこちらをみる。因みにユイさんは荷物は持っていない。単純に、私がか弱い美少女に荷物を持たせるのはどうかと考えたからだ。
『とてもそうには見えないが……』
「いや、大丈夫……」
「英雄さま。どうかしましたか?」
「……いえ、なんでもありませんよ」
「? もう少ししたら休憩しますか?」
「お願いします!!!!」
やっと休める。
まるで天にも昇る気分だった私は全力でお願いする。
青年が全て言い終わる前に大声で叫んだと思う。
流石にこれは、ユイさんと青年も苦笑いだった。
「で、ではあそこの木の影で休みましょう」
「……りょーかいです!!」
青年の指差すところには一本の巨大な木があった。
疲労感が一気に解き放たれてゆく感覚に襲われる。マラソン選手もゴール付近でこんな感覚に襲われるのだろうか?
『因みに、龍輝よ。聖殿の庭園を抜けて少しした先に、巨木の森と呼ばれてる場所がある。そこを抜ければデモーアルーじゃ』
「はーーーーーん……」
『すんごい興味なさげな返事じゃの』
「……。いま私に興味を示すものは……休憩できるあの巨木だけだ……」
早くあの巨木の下で休憩したい。いまの私にはその一心のみ。
私は呆れて言葉がでないユイさんを無視して、巨木の下に向かった。
それはまさに本能のまま動く獣の如し。青年も走って朱雀の後を追う。
「英雄さま、聖殿の庭園を抜けて巨木の森と呼ばれる場所を抜ければデオールにつきます!」
疲れで木の下で腰かけてる俺に商人は話しかけるが、ぶっちゃけクタクタな俺は、この商人の話なぞ聞いていなかった。
とりあえず休憩したい、この一心である。
「……少し、休憩させて……死ぬ……」
「ええ、いいですよ」
「……ありがとうございます」
私は商人に礼を言って、ゆっくりと目を瞑った。風が吹き、木がざわめく音が聴こえて非常に心地がよい。このまま夢へと行きそうな程だ。
ユイは呆れながら何か言っているが、私はそんなのを無視して休息を満喫している。
続く
デモーアルーに到着した私たちは、宿を探すことになる。
そして、見つけた宿がとんでもないものだった。