OREHーKRAD 邪悪に支配された人々   作:楠崎 龍照

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ケミックさんが作り出した自家製の戦艦やAI兵器による増援は、ちゃぶ台返しの如く戦況をひっくり返した。
アークヘイロスもここまで来たら少しだけ可哀想に思えてくる。


17話 神様転生したチート主人公でもここまで酷くはない。

 

 

時は遡る。

 

朱雀や鈴亜たちが地底へと向かって数十分と経過したときだ。

 

「……」

 

サスクワッチたちはそれぞれ武器を持ちながら警戒を強めて、地底部隊の帰還を待っていた。

 

「そろそろ、部隊がマフィーナに接触しているころだろう……」

 

そうサスクワッチがビーフジャーキーのような携帯食料を噛りながら呟いていると、突如爆音と共に地響きが起こる。

待機していた部隊の人々は全員武器を構えた。

 

「なんだ!?」

「隊長! あれ!!!」

 

一人の男性が空を指差す。

それを見た人々は戦慄しただろう。

立ち上る砂煙と共に、アークヘイロス・マフィーナが巨大な羽を広げて宙に浮いているのだ。

それを見た全員が、険しい表情をする。

 

「無理だったか……」

 

サスクワッチはそう言って、すぐさま部隊全員に攻撃命令を下す。

全員が炎の魔法や弓、大砲など重火器の遠距離攻撃をマフィーナに浴びせる。

マフィーナはその弾幕を避けることなく全てを受けきった。

 

[魅せてあげる。マフィーナの力を!!]

 

若い少女のような声でそう言うマフィーナは、超特大の炎の塊を生み出して、それを討伐部隊目掛けてぶっぱなした。

 

「大結界展開!!!」

 

支援部隊の隊長が大声を上げて指示した。

魔法使いや神官たちが、一斉に持っている杖を掲げて全部隊を囲うほどの巨大な結界を何重にも展開した。

巨大な炎の塊が大結界と衝突をする。

マフィーナが放った炎は強大で、何重にも貼った結界を意図も容易く打ち破った。

 

「まずい!!!!!」

 

そう思ったときには遅く。

炎の塊は大爆発を起こして、炎が周辺に拡散する。

まず爆発の衝撃波により、人々が吹き飛ばされて、その吹き飛ばされて無抵抗の状態で拡散した炎が降り注ぎ、焼かれた。

 

「回復魔法をいそげえええええええ!!!!!」

 

支援部隊は急いで、重傷を負った兵士

たちを回復する。

それにより大火傷を負った人々は、元に戻り、瀕死だった人々も快復した。

しかし、それでも回復が遅れ、事切れた人々も多数いた。

 

[躍り狂いなさーい!!!!]

 

容赦なく、マフィーナは虫たちを召喚する。

その量は10000を超えており、想定していた数よりも圧倒的に多かった。

それにより、任された部隊では圧倒的に数か足りず、虫たちに蹂躙されていくばかりであった。

虫たちに斬り刻まれ、喰われ、卵を産み付けられ、戦士や魔法使いたちの絶叫、悲鳴、断末魔が木霊する。

凄惨な光景となった。

更に、虫たちは討伐部隊や支援部隊にも牙を剥く。

 

「何匹の敵がいるんだよおおおおお!!!!」

「くそっくそおおおおおお!!!!!」

「痛い誰か助けてえエエエエ!!!!!!」

 

 

最早絶望的な状況。

しかし、そのときだった。

二つの女性の機械音声が聴こえてくる。

 

『主砲装填完了』

『レールガンフルチャージ』

 

その直後、

大爆発と共に、虫たちが一気に炭素の塊と化した。

それにより、虫やマフィーナが一斉に、攻撃のあったほうを見る。

その隙をついた支援部隊は、怪我人に回復魔法の唱え始める。

 

 

-------------

 

 

私たちのまえに現れた援軍。

ガンダムUCにて登場する巨大戦艦、ゼネラル・レビル。

そしてその艦載機である人形の機動兵器、ジェガンA2型とリゼルC型。

更にはMETAL GEARという日本で人気のゲームに登場するAI兵器、クリサリスとコクーン。

それらが増援として姿を現した。

 

「雑魚たちはコイツらに任せればいいわ!!!」

 

よく見えなかったがケミックさんは、ゼネラル・レビルの艦橋の真上にいるらしい。

にしても、浪漫どころの騒ぎではないメンツだ。

この絶望的な状況の中で、私は少しだけ笑みを浮かべてしまう。

 

[そんなガラクタで何ができると言うのかしら??]

 

マフィーナは再び大量の虫を召喚し、コクーンに強襲させた。

 

『敵確認』

 

コクーンの声が聴こえたかと思うと、鈍重なエンジンを発てて、襲いくる虫たちに突撃をかます。

 

『ラーンランラーンランラーンランラーン♪♪♪』

 

巨大な無限軌道で地に足をついている虫どもはあっという間に、踏み潰されて地面と無限軌道を緑色に染め上げる。

 

『ラーンランラーンランラーンランラーン♪♪♪』

 

そして、空を飛ぶ羽虫たちは各所に取り付けられたガンポート37門、機銃14門、ガトリングガン8門による全周囲弾幕攻撃により撃ち落とし、無限軌道で諸とも引き殺した。

 

『範囲攻撃実行。ラーンラーン♪♪』

 

更に、コクーンの強大な強さに恐怖し敗走する虫たちには、ヘッジホッグと呼ばれる多弾散布兵器と、コクーンの特徴とも言える大口径の主砲により一網打尽に爆発四散させた。

 

『ララララララーーーン♪♪♪』

 

挙げ句の果てには、搭載されてあるクレーンを起動させて、その先端部に装備されたチェーンソーを使い、虫たちをズタズタに斬り裂いた。

 

『チェインガン掃射、チェインガン掃射、チェインガン掃射』

 

クリサリスは下部に取り付けられた機関銃で、必死に逃げ惑う虫たちを正確に撃ち倒していく。

 

『キッドナッパー射出』

 

更にクリサリスは後方からキッドナッパーと呼ばれる小型の円盤形ドローンのような兵器を射出する。

キッドナッパーはジグザグに動きながら、虫たちに接近。

 

『ワイヤー射出』

 

キッドナッパーからワイヤーが離れて、一匹の虫を捕えた。

その虫は宙へと吊り上げられて、バタバタと抵抗をしている。

そして、キッドナッパーは下部にあるチェインガンによる銃撃で確実に殺虫を行った。

オーバーキルどころの話ではない超火力。

2機のAI兵器は、その可憐な歌声を発しつつ、虫たちを千切っては投げ、千切っては投げの繰り返し。

 

[な、なんてヤツなの!?]

 

ガラクタと舐め腐っていたこともあり、あまりの強さに流石のマフィーナも驚きの声をあげる。

 

「いまのうちに攻撃をするんだ!!!」

 

サスクワッチの号令で人々が立ち上がり、攻撃を再び開始する。

私も落ちていたライフルのような武器を持って引き金を引く。

しかし、当たり前だが、マフィーナには傷1つつくことはなかった。

 

あふれでる虫たちは、コクーン、クリサリス、ジェガンA2型、リゼルC型、ゼネラル・レビルが対処しており、虫の攻撃を受けることは今のところない。

しかし、マフィーナの身体は異常なまでに硬く、かなりの攻撃をしているが、ダメージを負っている感じがしない。

 

「皆殺しにしてあげる!!! このマフィーナの手によってね!!!!」

 

そう言うと、彼女の周囲に100個は有ろうかという球体を出現させて、その球体からレーザーを放ちオールレンジ攻撃を行った。

その攻撃によって部隊は瞬く間に撃滅した。

 

「支援部隊!!!」

「はっ!! 全員回復魔法!!!!!」

 

サスクワッチ隊長の怒声の指示により、支援部隊が魔法を使って痛手を負った兵士たちを回復する。

 

「な、なんて強さだ……!!」

「これが……マフィーナ……」

 

私はそう呟く。

しかし、そんなことを思っているのも束の間、マフィーナが再び攻撃を加える。

胸の部分にある口が、グワッと開き、極太いレーザーを部隊の中心部分に放った。

 

「しぃいいいいねええええええええええ!!!!!!!」

 

その一撃により、地盤が砕け、爆発と爆風の衝撃波が部隊を襲った。

 

「ああああああああああああ!!!!」

「ギャああああああああああああ!!!!」

 

兵士や英雄の断末魔が私の耳を貫く。

あまりの衝撃に吹き飛ばされるのを堪えながら私は目の前の凄惨を見る。

私の目の前には、多数の死体、肉片。腕や足、体の部位が消えた兵士や英雄が悲鳴をあげている凄惨な光景が広がっていたのだ。

先ほどの比ではない……。

爆心地となった部隊の中心部分には大きなクレーターができ、大砲などは溶けてなくなっていた。そして、そこには人は誰一人としておず、「影」だけが残っていた。

 

「う、そゃろ……???」

 

私は唇を震わしながら、静かに言った。

支援部隊は瞬時に回復魔法を使って生き残った兵士や英雄を癒すが、焼け石に水であることは明らかだ。

 

「トドメえええええええええええ!!!!」

 

マフィーナは口元からレーザーを放つ。しかも、今度は拡散するレーザーだ。

私にはどうすることもできない。

重傷で済む程度を願って、私は耳を塞いで走り出そうとした。

しかし、それはとある爆発音と甲高い断末魔によって阻まれたのだ。

私は足を止め、マフィーナの方を見ると、鈴亜さんが物凄い跳躍力で攻撃を仕掛けていた。

鈴亜さんが杖を振るう度に炎の爆発が連鎖をしながらマフィーナに直撃する。

それはまさに炎の嵐と言うべきものだ。

私はその千手観音が攻撃をしているかのような鬼神の如き攻撃に目を奪われるばかりだ。

支援部隊はそれをみて、壊滅寸前だった部隊を重点的に回復を行った。

 

「邪魔をするなああああああああああ!!!!」

 

マフィーナが耳をつんざくような奇声を発し、周囲に異形と言える形をした羽虫を大量に召喚した。

それは、空を覆い隠すほどで、ここにいた誰もが夜となった空を見上げた。

 

「ガラクタ諸とも消えちゃええええええええ!!!」

 

大量の羽虫がこちらに攻めてくる。その光景、空が落ちると言っていいだろう。

 

「させないわよ!!!」

 

ケミックさんがそう叫ぶと、ゼネラル・レビルのカタパルトから、恐ろしい数のジェガンとリゼルが発艦する。

 

「ジェガン大隊、リゼル大隊行け!!!」

 

ケミックさんの指示に、ジェガンとリゼルの大隊は一斉にブースターを吹かして、持っているビームライフルや頭部バルカンで羽虫を迎撃する。

 

「連装砲、単装砲、対空砲、標準合わせ……撃てえええええええ!!!!!」

 

ゼネラル・レビルも、艦体各所に装備されている連装メガ粒子砲計12基。

船体上部に2門、船体下部が3門装備されている単装メガ粒子砲計5門。

船体各所に多数装備されている対空砲24門以上。

ケミックさんの声に呼応するようにそれらの一斉射撃が始まる。

ビームの大雨が空を覆う羽虫を焼き払った。

羽虫は遠距離攻撃を持ち合わせていないため、接近するしかなく、羽虫の殆どがビームの餌食となった。

しかし、向こうの方が数が圧倒的に多く、虫の進行を許してしまい、数機のジェガン、リゼルが機能停止に追いやられる。

だが、それでもマフィーナが召喚した大量の羽虫はゼネラル・レビル及びジェガン、リゼル大部隊によって壊滅する。

 

[ケミックウウウウウウウウ!!!!!!]

 

マフィーナは怒り狂ったような声でケミックさんの名を叫びながら、炎と電気が交ざり合った光線を腹部から放った。

 

「バリア展開!! 魔力撹乱膜展開!!!」

 

マフィーナの言葉に応じ、ゼネラル・レビルはバリア展開と共に、魔力を分散させる撹乱膜が内蔵されたミサイルを撃つ。

炎と雷のレーザー軌道上に魔力を分散させる霧がミサイルから放出されて、マフィーナから放たれた光線状の魔法を分散させる。

しかし、マフィーナの魔力は尋常ではなく、すべての魔力を分散させることはできずに、光線がゼネラル・レビルが展開したバリアにぶつかった。

 

「この艦はそう簡単に沈まないわ!!!」

[だまれえええええええ!!!!]

 

魔力を上げて、光線を放出する。

最早、撹乱膜では無力化することができない。

バリアにヒビが入り始める。

ケミックさんも、自身の魔法でマリアを強化するが、マフィーナは更に魔力をあげる。

 

「させない!!!」

 

鈴亜さんは、一気にマフィーナに跳躍して、風を後方に爆発させて、その勢いで魔法を纏った蹴りをマフィーナの腹部に食らわせた。

 

[ぐぶぁあああ!!!?]

 

マフィーナは奇怪な声を上げてくの字に折れ曲がった。

それにより、魔法の光線は別の方向へと向き、コクーンとクリサリスに襲われる。

クリサリスはワープと誤解する程のスピードで、その光線を回避する。

コクーンは回避の動作が遅れ直撃した。

しかし、コクーンの装甲は想像以上に強固のようで、驚きの声のようなものを発しはしたものの、その装甲は少し凹み焦げ付いた程度の軽微ですんだ。

ゼネラル・レビルの方は、バリアの消失だけで、船体には傷1つついていなかった。

 

マフィーナが怯んだ隙を逃すことなく、少女は再び、魔法を唱える。

 

「獄炎動聖魔術!!!」

 

杖の先端がメラメラと炎が燃え盛る。

そして、杖を横に持ちマフィーナに狙いを定めた。

ケミックさんや、一部の人々を除いた他の人々は少女の尋常ならざる力にただただ見つめるだけだった。

 

「ヘキサ・フォメラゼオン!!!!」

 

巨大な熱線が杖から放射され、マフィーナに直撃する寸前に熱線は爆発し、ヘキサグラムを描くように分裂。

その一本一本が小さなレーザーとなってマフィーナの8枚の羽に直撃、大爆発を起こした。

 

[アアアアッ!!!?? アアアアアァァァ!!!???]

 

マフィーナは、奇声をあげながら、空中で気絶したようにぐったりとする。

そのせいか、使役された虫たちの動きが遅くなった。

 

『レールガンチャージ』

『主砲装填完了』

 

その隙を狙ったコクーンとクリサリスは、大技をぶっぱなした。

爆発と爆風が虫たちを吹き飛ばす。

この攻撃によって地を這う虫は壊滅した。

 

「いまだ!! 殺せえええええ!!!!」

 

サスクワッチ隊長の命令で残存する部隊が一斉攻撃を加える。

私もハンドガンや刀で攻撃を行う。

鈴亜さんも滞空した状態で炎と氷を織り混ぜた攻撃を繰り出そうとした。

 

[ふざけないで……ふざけないでよおおおおおおお!!!!!]

 

しかし、覚醒したマフィーナは鼓膜が破けるぐらいの声を発した。

それは衝撃波を生みだし、私たちを吹き飛ばした。

残っている銃火器等は吹き飛ばされ使用不能なってしまう。

支援部隊も吹き飛ばされ、回復の陣営が崩れ始める。

そして、マフィーナは氷で生成した巨大な腕を振り上げて鈴亜さんを引き裂こうとする。

マジでヤバい。

私は頭の中でそう思うが、身体が動かない。

巨大な腕が少女に襲いかかろうとする。

 

「……くっ……!!!」

 

鈴亜さんは反撃を試みるが間に合わない。

その時だった。

一対の巨影と人ならざる雄叫び、それがグリムマギアに響き渡った。

 

「であああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

赤い龍がマフィーナにタックルを食らわせた。

その巨体による攻撃の威力は想像以上に強力で、振り上げた氷の腕は音を発てて砕け散った。

 

「ケミックさん!?」

 

その赤い龍の正体は、龍に変身したケミックさんだ。

マフィーナを組伏せて、地面に叩きつける。

 

「クリサリス!! コクーン!!!」

 

その声にクリサリスとコクーンは動き出す。

 

『主砲装填完了、ミサイルターゲット捕捉』

『電撃魔術纏レールガンフルチャージ』

 

コクーンの頂上部分に搭載されてあるミサイルハッチが全て開き、大口径の主砲が動き出す。

クリサリスは長砲身のレールガンが激しい電撃を纏い強烈な音を発した。

そして……。

 

『『ラーーアーーー!!!♪♪♪』』

 

数十発のミサイルと4発のロケット弾、レールガンから放たれた6発の電撃を纏った弾が無慈悲にマフィーナに直撃する。

ケミックさんは隙をついて離脱。

鼓膜が破けんばかりの轟音、町中のガラスが割れるほどの衝撃波が人々を襲った。

 

「やった!?」

「黒煙でよくみえねえ!!」

 

取り巻きがそう口にする中、黒煙から雷の光線がクリサリスを襲う。

クリサリスは何も発することなく、それを回避する。

 

[そんな攻撃効くわけないでしょおおお!!!!!]

 

マフィーナは激昂したように辺りに炎や水、雷といった魔法攻撃をコクーンやクリサリス、ゼネラル・レビル目掛けて放つ。

しかし、クリサリスはその弾幕を華麗に回避。

コクーンとゼネラル・レビルはジェガンとリゼルが盾となり、損傷は免れた。

しかし、数十のジェガンとリゼルが爆散する。

 

「っち……。大結界陣を敷け!!!」

 

サスクワッチさんの声に神官たちは一斉に魔法を使い、巨大な結界を発動する。

 

[怪物がぁ!!!]

「動くなぁあああ!!!!!」

 

コクーンをひっくり返そうと動こうとしたところを、ケミックさんは再びマフィーナに飛び付いて動きを封じる。

 

[邪魔しないでよ……]

 

そう言うと、マフィーナの目がギラリと光輝く。

そして、暴風を発生させて龍となったケミックさんを吹き飛ばした。

翼を使って、何とか空中で立て直したが、マフィーナはその巨体からは想像もつかないスピードでコクーンにタックルをお見舞いしようとした。

そうはさせないと、言わないばかりに、クリサリスやジェガン、リゼル数機が立ちはだかって動きを阻止しようと、ビーム攻撃やレールガン攻撃で迎撃をする。

 

[邪魔よ……!!! ガラクタども!!]

 

マフィーナは再び氷の巨大な腕を形成、それを大きく振るって数機のジェガンとリゼルを引き裂いた。

真っ二つに引き裂かれた機体は一瞬放電し、大爆発を起こした。

クリサリスは寸でのところでそれを回避したが、マフィーナの突撃に吹き飛ばされて火花を散らしながら地面を滑るように吹き飛ばされる。

 

『キャア!!?』

 

女性のような悲鳴をあげながら、クリサリスはグリムマギアの外壁に叩きつけられて制止した。

マフィーナは先端が鋭利に尖った岩の粒を生み出して、クリサリス目掛けて撃つ。

クリサリスの全体に無数の岩が突き刺さり、時間差でその岩が破裂をして装甲をさらに抉った。

それにより、クリサリスは複数の箇所から爆発を起こして、壊れたラジオのように何やらブツブツと呟き始めた。

 

『オラハシンジマッタダー。オラハシンジマッタダー。オラハシンジマッタダー。テンゴクニイッタダー』

 

守りがすべての打ち破られたコクーンも自身のガンポートや機銃で応戦するが、それで怯むはずもなくマフィーナはコクーンに思いっきりぶつかった。

思わず耳を塞いでしまうほどの鉄の軋む轟音が響く。

コクーンはその重量と姿勢制御のシステムを行使して何とか転倒を防ごうとするが、マフィーナは至近距離で熱線を放った。

コクーンの装甲が徐々に焼かれていき、熱線が機体を貫通した。

 

コクーンの機体が爆発を起こす。

そして、コクーンはその頭部分を地面につけるようにグッタリと動かなくなってしまった。

そして、クリサリス同様に何やらブツブツと呟き始める。

 

『オラハシンジマッタダー。オラハシンジマッタダー。オラハシンジマッタダー。テンゴクニイッタダー』

 

機能が停止し、バグったように声を発するコクーンをよそに、マフィーナは魔法攻撃の照準をゼネラル・レビルへと定める。

 

「させるかあああああ!!!」

「させない!!!」

 

ケミックさんと鈴亜さんが、マフィーナに攻撃を仕掛けた。

 

「どりゃああああ!!!」

「グラン・フォイフラン!!!」

 

ケミックさんの火炎ブレスと、鈴亜さんの炎魔術の爆撃がマフィーナを襲う。

 

[くぁ!!? おのれええええ!!!]

 

ゼネラル・レビルの照準を止めて、2人にターゲットを絞る。

 

「二人を援護するんだ!!!」

 

サスクワッチ隊長が全部隊に通達、ヤルソー将軍たちも携行火器を持って、援護態勢に入る。

私も二人の援護のためにハンドガンを構えたのだが、突然ケミックさんがこちらに向かってやってくる。

 

「たっちゃん貴方も手伝いなさい!」

「え?あ、はい。ちょ……!?」

 

ケミックさんは、その尻尾で私を捕まえて背中に乗せた。

そして、そのまま物凄いスピードで空へと飛び立つ。

 

「うおおおおおお!!?」

「いくよ!」

 

そう言うと、ケミックさんは私目掛けて炎を吹き掛けた。

私は咄嗟に炎を吸収し、炎王龍テオ・テスカトル(以降テオテスカトル)に変身してしまった。

いまの状況は、赤いドラゴンの背中にテオテスカトルが乗っているという、訳のわからない状況である。

 

「たっちゃんも炎の魔術を使いなさい! 固定砲台ぐらいならできるでしょ?」

「そう言ったって……わあああ、たけえええ!!?」

 

下を見ると物凄い地面が遠く、人々が米のように見えて、凄い鳥肌がたった。

 

「ドラゴンが高所恐怖症なんて聞いたことないわよ!」

「私だって聞いたことないよ。高所恐怖症の古龍なんて!!」

「あー! 良いから炎の魔法使って迎撃しなさい!!」

 

私の有無関係無しにケミックさんは、マフィーナに攻撃を仕掛ける。

私も違和感に包まれた身体に鞭を打って、炎の魔法を行使する。

不恰好な炎の塊がマフィーナ目掛けて放たれる。

しかし、それらをマフィーナは鬱陶しいと言わんばかりに振り払う。

確実に効いてないことが目に見えてわかって絶望する。

 

「待て待て効いてないぞ!?」

「構わず撃てばその内、突破口開けるかも知れないから、止めどなく撃って!!」

「それで大丈夫なのか?」

 

私はケミックさんに聴こえないように呟きながら、炎の塊をマフィーナにぶつけまくる。

 

[邪魔なハエどもがあああああ!!!]

 

黒い風を放って、我々を吹き飛ばそうとする。

ケミックさんは、翼を広げてマフィーナの風に乗っかり天高く舞い上がった。

 

「ハエはあんたでしょうが!!」

「デカイハエの貴女に言われる筋合いはない!!」

 

マフィーナの罵声に突っ込みをいれながら、火炎の魔法を放つケミックさんと鈴亜さん。

その威力はとんでもないもので、マフィーナを地底へと続く入り口まで吹き飛ばした。

つええ……。

マフィーナも恐ろしいぐらい強いけど、ケミックさんと鈴亜さんがそれを上回ってる。

 

二人のおかげで部隊の士気はぐんぐんと上がっていく。

 

[冗談じゃないわよおおおおおおおお!!!!!]

 

ぶちギレたマフィーナは腹部が二つに割れ、口のようなモノを見せたかに思えば、その口内の赤いコアのような部分から魔力の光線を解き放った。

 

ヤバい。

直感的にそう感じ、私はケミックさんの背中をベシベシとネコパンチして伝える。

逃げようにも、この身体では逃げることがままならないからだ。

私のネコパンチに察したケミックは、翼を大きく羽ばたかせて、上空に逃げる。

鈴亜さんは、その攻撃を必要最低限に回避しつつ、開いているコアに定点爆撃をお見舞いする。

 

[ぐああああああああああ!!!!!]

 

マフィーナは今まで聞いたことない断末魔を発して空中でぐったりと倒れる。

攻撃のチャンス。

 

「いまだあああああ!!!!」

 

サスクワッチ隊長やヤルソー将軍の声が木霊する。

 

「おおおおおおおお!!!」と、部隊の雄叫びが轟く。

全員遠距離武器を持ち、鬼気迫る表情でマフィーナに攻撃を仕掛ける。

当たり前だが、殺意に満ち溢れていた。

獲物を狩る虎の如く。

グリムマギア周辺区域にて雄叫びと共に、多種多様の重火器の轟音が天を引き裂く。

 

[ふざけるなああああああああ!!!!!]

 

邪悪の眷属たるアークヘイロスが、格下の人間どもにコケにされては怒り狂うのも当然だろう。

マフィーナは空間が歪むほどの憤怒の魔気を放出。

今までにないほどの虫の大群を召喚しやがった。

皆既日食でも起こったんじゃないかと疑うぐらい、空が真っ暗になる。

 

「待ってこれやばくね?」

 

私はそうケミックさんに言うと、ケミックさんはケロッとした表情で「別に?」と言った。

なんなんだこの人まじで……。

ケミックさんの言葉通り、突如虫の大群に大穴が開いたのだ。

 

『自己修復完了再起動』

『自己修復完了再起動』

 

無感情の声が耳にはいる。

そして、声がする方を振り向くと、そこには撃破されたはずの二機のAI兵器が復活していた。

ボロボロになっていた装甲もびっくりするほどに新品同様ピカピカと光煌めいていた。

 

「ね?」

 

大丈夫だったでしょ?と言わんばかりのケミックさん。

 

『主砲装填完了。ミサイルターゲット捕捉。機銃・ガンポートリロード完了マルチターゲットロック捕捉。』

『電撃魔力纏出力最大レールガンフルチャージ。ミサイルターゲット捕捉。チェインガンターゲットマルチロック。』

 

心なしか怒りの感情が籠った口調で二機のAI兵器は自分の持つ火器全てを虫たちに向ける。

 

『『ラアアアアアアアァァァァァーーー。アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!!!!』』

 

その声を掻き消す程の轟音と鉄と雷撃のような閃光が黒い空を消し飛ばした。

そして、後に降るのは虫の死骸のみ。

 

[ぐぅううう、化け物がああああああ!!!!]

 

太陽系全てを叩き斬らんほどの超弩級の特大ブーメラン発言をしながら、再び口から魔力の奔流を解き放とうとする。

 

「たっちゃん出番よ!!」

「は?」

 

突然の御呼ばれに私は超間抜けな声を出す。

するとケミックさんが恐ろしいことを言い出した。

 

「私がたっちゃんを放り投げて、貴方はそのままマフィーナの口にあるコア目掛けて突っ込んで!」

「はい???」

「それで、私が炎吐いてたっちゃんは、その炎を吸収するの! それで吸収量を超えたたっちゃんは、魔力が暴発するから、その爆発でマフィーナにダメージをね!」

「待て待て!!!」

「いくよ!!」

 

有無言わさずケミックさんに摘ままれた私(テオテスカトル)はそのままマフィーナ向けて放り投げられる。

そして、ケミックさんは炎のブレスを私に放つ。

 

「うおおおおおお!!?」

 

私は炎を吸収するが、次第に限界を迎えていく。

小便が臨界点を超える時のような感覚である。

しかし、私は何とか爆発を我慢しつつマフィーナに突っ込む。

全員が私のことを見守る中、私はマフィーナに接近する。

 

[まずは貴方から溶かしてあげる!!!]

 

マフィーナは魔力を解き放とうとした。

 

「うるあああああああああああ!!!!」

 

もうどうにでもなれ!!

そう思いながら、私はテオテスカトルの咆哮を発してマフィーナに……。

そのときだ。

マフィーナは私を見て何か驚いた声をあげた。

 

[嘘……。なぜ、貴方のような人間風情がが"ソレ"を持っている!!!???]

 

と。

一瞬、無防備となったマフィーナ。

その隙は、私がマフィーナに接近するのには、十分すぎた。

 

私は、我慢を解いた。

それはガチで漏れそうな時に下半身の力を抜くときと同じようなものだ。

体に溜め込んだ炎のエネルギーが一気に放出される。

私、テオテスカトルの全身が赤い光を放ち、大爆発を起こした。

テオテスカトルの必殺技、スーパーノヴァの比ではない。

この爆発がモンハンで実装された暁には、一瞬でテオテスカトルはクソモンスターの仲間入りを約束されるほどの爆発だ。

マフィーナを包み込み、周辺地帯の建物を崩落させるほどの衝撃波。

討伐隊はギリギリのところで危険を察知して結界を貼ることで難を逃れたが、それをしなければ確実に全身を強く打って終わっていたことだろう。

実際、その爆発に巻き込まれたジェガンやリゼルの大半は爆発四散となり、ゼネラル・レビルは右の2つのカタパルトを失い地面に不時着。

コクーンは異常な熱により熱暴走を起こして急速冷却モードに入った。

クリサリスは危険を察知してケミックさんと共に高高度の空まで退避したお陰で無事だった。

 

[ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!]

「うおおおおあああああああああああ!!!!!!!」

 

マフィーナと私の断末魔がハモる。

私は龍化が解けて人間の状態で天高く飛ばされ、世界が回った。

 

「やるじゃん!」

「うへー……」

 

私はケミックさんにキャッチされて、事なきを得た。

古龍+闇英雄になった恩恵の肉体は、あれだけの爆発を受けても死ぬことはなく激痛が走る程度で済んだ。

一方、マフィーナは全ての巨羽を破壊されて地面に叩きつけられた。

 

「今のうちに!!!!!」

 

ケミックさんはサスクワッチたちに大声を飛ばす。

次々と襲撃する虫たちは、コクーンとクリサリス、残存するジェガンとリゼルが進行を抑えつけている。

いける。

倒せるかもしれない。

誰もがそう思い、士気は有頂天へと昇った。

人々は発狂に近い奇声を上げて武器を持ち、マフィーナへと襲い掛かる。

 

反撃の時だと言わんばかりに。

 

 

 

 

 

 

続く

 




もう少し……。
もう少しでマフィーナを討伐できる。
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