OREHーKRAD 邪悪に支配された人々   作:楠崎 龍照

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さて、サントプトに出発だー!
そう意気込んで峡谷を歩いているのだが、そこである依頼をお願いされる。
その依頼がまぁ、めんどくさい依頼な訳よ……。
ただ、その依頼を受けたことで、私の能力が1つ上の段階へと行くことになる??


23話 神話に刃向かう不可視の神仙

 

 

 

 

 

結局、宴は朝まで続いたので、私たちは寝れなかった。

おかげで寝不足のまま、隠者の居所を出発することとなった。出発前に、隠者のお婆さんが結構色々な食べ物を貰い、隠者の居所を出発することになった。

 

「がんばれ!!!」

「おうえんしてるわ!!」

 

隠者たちに送られながら、隠者の居所を出発した。

正直、あの手の応援をされるとマジでやる気がでるから嬉しい。

 

「ふぁぁぁ……ねむ……」

「たしかになー……どんちゃん騒ぎやったもんな……」

「隠者が隠者してなかったよね……」

「ああ」

 

鈴亜は笑いの成分が混じった声で、そう言った。

そして、さっきから一言も喋らないユイさんはというと、寝ながら着いてきていた。

流石にこれは笑って誤魔化すしかない。

どんだけ器用なんだよ。

 

「便利やな」

「ねー」

 

そして、そこからは無言である。

やはりと言うか、深夜テンションの後の賢者モードというのは、なかなかに酷いものだ。

現状、私たちがいまいる場所は峡谷の壁と壁の隙間を歩いているところだ。私が住んでいた地球にあるアンテロープキャニオンのようである。割りと絶景なのだが、絶景を見る余裕なんてなかった。あまりにも眠くてな。

 

風が突き抜けるように吹き、太陽から日が射しているが、壁と壁の隙間を歩いているので、そんなに暑くはない。

 

「そういえば」

「なに?」

「鈴亜、魔力は大丈夫なの?」

 

ソナチル戦で魔力がなくなってる的なことが聴こえてきたので、私は心配して聞いた。

 

「大丈夫よ。いま魔力が回復してるから!」

「自然回復的な?」

「違うよ。地中を通ってる自然のエネルギーを吸収してるの。で、それを魔力に変換して使用してる感じ」

「ムフェトジーヴァみたいなこといってるよこの人……」

 

私は何いってんのこの人みたいな感じで言った。

鈴亜も笑いながら、「確かにムフェトジーヴァみたいだね」と言う。

 

「とりあえず、次のアークヘイロス戦までは大丈夫な感じか」

「そうね」

 

再び始まる沈黙。

そのまま歩くこと1時間。

私はふと昨日のソナチル戦で少し気がかりな点があったのを思い出した。

それは、ソナチルの口調が少し、ソナッチに似ていたのだ。

それに音を使う点も非常に酷似している。

ギルファー、マフィーナ、ソナチル……。

 

あれ?

 

「あれ?」

「ん? どうかした?」

「なぁ、アークヘイロスを従えてる奴って邪悪だよな?」

「そうだよ?」

「な、るほど……」

「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」

「?」

 

邪悪……。

ギルファー、マフィーナ、ソナチル……。

 

そんなことってある??

私は何やら結構核心に迫ったような気がした。

しかし、まだわからない。

でも……。

ただ、もしそれが本当なら、私が今から倒そうとしているやつって……。

あれ? ていうか、ファンギル達の名前って前にどこかで……。

 

「わ、龍輝!」

「え?」

 

鈴亜の声に我に帰る。

 

「あれ!」

 

彼女の指差す方を見ると、奥から誰かがやってくる気配を感じた。

私たちは少し警戒していると、その誰かが姿をあらわした。

 

「あら、英雄さん達かな?」

 

そう言って、私の方に近づいてくるのは、灰色の髪色をしてふんわりカールのロングヘアーで、薄黄色のゴスロリっぽさのある服装を身に纏った女の子だ。

結構かわいい。

 

「ええ」

「そうですね」

 

私たちがそう言うと、その女の子は目を光らせて話を始めた。

 

「よかったー、ちょっと手伝ってほしいことがあるのよ!」

「と、いうと?」

「隠者の峡谷の奥地にね、ちょっと厄介な魔物が巣食っているの。それを退治して貰おうかなって」

「どんな魔物ですか?」

 

私がその女の子に訊ねると、女の子は神妙な顔つきで「ヒドラよ」っと言った。

 

「ヒドラ?」

「ヒドラって魔物の中でも上位に位置するやつじゃない?」

 

キョトンとする私とは対照的に少し神妙な表情をする鈴亜。

ヒドラ……。

クリプトヒドラとか、某監獄元所長現副所長のあの人の技とか……。

対魔忍RPGでもヒドラってボスがいたような……。

私はそんなことを考えていた。

 

「お願いできるかしら? あ、私はクリスよ。大神官ユイ様の一番弟子よ! 神官クリスと呼んでね!」

 

そう言って、かなり実っている胸をドーンと張って誇らしげに語った。

 

「ユイさんの?」

「そうよ! 凄いでしょ!?」

「ええ、なかなか」

 

『眠いのぅ……』

 

目を擦りながらお目覚めのユイさん。

それに気づいたクリスは心底驚いた表情をしていた。

なんでこんなところにいるの?!って言っているようだ。

 

「ユイなんで、じゃない! ユイ様なんでここに!!?」

『おー、クリスか! 久しぶりじゃな!』

「お久しぶりですけど、どうしてここに居るのですか!?」

 

クリスの言葉にユイさんは、『あー……えーと……』とはぐらかしていた。

 

「ブレンダン大神官も、ユイ様はどこほっつき歩いてるのだー!!ってカンカンでしたよ」

『あー、えーと……それはー……』

「???」

 

珍しくオドオドするユイさん。

なかなか見物だったが、話が脱線しているので、ヒドラについての話に戻した。

 

「それで、そのヒドラの場所の案内をお願いできますか?」

「その前に、これを持っていてください」

 

そう言って、私と鈴亜にとある瓶を5個貰った。

瓶の中には青い液体が入っているのが確認できる。

ちょい不気味だ。

 

「ヒドラと戦うなら、これは必須ね」

 

鈴亜はそう言いながら、バッグの中に怪しげな瓶を入れた。

わたしには、この瓶の内容液がよく分からず「???」となっていた。

 

『龍輝よ。それは解毒剤じゃ』

 

私の得体のしれない物質を見る表情に気づいたユイさんはそう答える。

それを聞いた私は「あー!」と納得したような少しだけ甲高いを声をあげた。

なるほど、つまり毒をしようしてくると

……。

どんな毒をしようしてくるんだろうか……。

テトロドトキシンか?

うわー、嫌やなー。

ただ、ヒドラ狩らないと先に進めないぽいし……。

さっき頷いた以上やらないと、人として終わったような気がするので、結局の所依頼を受けるのだが……。

 

「じゃあ、ユイ様もこれ!」

 

クリスは、解毒剤を私たちと同じように渡そうとするが、それを拒む。

珍しく、慌てた様な表情を見せるユイさんに凄い新鮮味を感じた。

 

「ねえ、ユイ様もしかして」

『え“……あ、いや……その、あ、アハハハ!』

 

ユイさんの姿を見たクリスはハッとしたように「やっぱり!」と言った。

さ、流石だ。

ユイさんの状況を瞬時に読み取る。

流石大神官の一番弟子と言ったところだな。

 

「大神官だから解毒剤はいらないって訳ね!! 流石ユイ様ね!!」

 

「え?」

「え?」

『え?』

 

全員の目が点になる。

やっぱり大神官ユイさんの一番弟子だな。

まぁ、なんでか知らないけど、ユイさんのメンツは守れたっぽいな。

まぁ、そんな訳で我々はヒドラを討伐する為に峡谷の奥地へと足を踏み入れた。

徐々に暗くなっていく。

そして、突如クリスが制止する。

 

「ここから毒の瘴気が濃くなってくるから、みんな解毒剤を飲んでね!」

 

言われた通りに、私たちは瓶に詰められていたコルクをポンっと抜いて、一気に飲み干した。

味は無味である。

ゲロマズなイメージがあったが、少し安心した。

一応、この解毒剤を飲むことで、大体一時間は毒に犯されることはないらしい。

なるほど。

毒は私の魔法でも吸収出来そうにないので、これは有難い。

ただ、これを飲んでも毒の攻撃は当たりたくはないと感じたが……。

 

峡谷の奥地に進めば進むほど、何故か甘い香りが漂ってくる。

これが毒なのかは定かではないが……。

 

『ふむ……きな臭くなってきたのぅ』

「そうですね」

「この甘い香りって毒ですかね?」

「多分、そうみたいね」

 

その甘い香りは徐々にだが、濃くなってくる。

カラメルを頭から被ってるようだ。

香りだけで胸焼けを起こしそうになる。

しかし、不思議と気分が悪くなることはなかった。

そのまま、私たちは何も喋ることなく奥へ奥へと歩みを止めなかった。

沈黙の中、ただ三人の歩く音だけが薄暗い谷に響く。

甘い香り香りがする薄暗い谷底を歩く光景は、異様とも言えるだろう。

 

ふと、私は足を停めた。

それに気づいた三人も止めて私のほうを向く。

みんな警戒しきった表情をしていた。

 

「どうしたの?」

 

鈴亜が警戒と不安に包まれた表情を浮かべてそう私に訊ねる。

私は目を細め、眉を潜めて「奥から何か聴こえない?」と呟く。

その言葉に、場にいた3人が奥の暗闇を凝視。

確かに、奥から不可解な呻き声が聴こえてくる。

奥の暗い場所から得体の知れないモノの呻き声が木霊するのは、これ以上に無い恐怖だ。

しかし、ここまで来て引く訳にはいかない。

私たちは意を決して奥へと進む。

もちろん、全員が武器を構え(ユイさんは除く)、警戒心を最高まで高めて……だ。

 

「……」

「……」

「……」

『……』

 

四人が背中を合わせて、どこから来ても大丈夫なように布陣を作る。

四人の沈黙の中、得体の知れないモノの呻き声と共に、不可解な怪音まで聴こえ始めた。

バキッ……!!

カキッ……!!

何かが折れるような音だ。

それとは別に、肉を契るようなブチャッ!! グチャッ!! という音も聴こえてくる。

とりあえず、この音の主がヒドラであることは確かと思いたいのだが……。

如何せん、薄暗い中なので不明なのだ。

しかし、突如その足音は止み、ドスドスと歩く音に変わる。

こちらの存在に気づいたか?

私たちの神経は全て警戒に向く。

足音は、次第に大きくなってくる。

私たちは、前を向いて暗い奥をジッと見つめていた。

鈴亜が炎で灯りを照らすと、その姿が現れる。

巨大な胴体に長い首を持つドラゴンのような姿をした怪物が私たちの目の前にいた。

なかなか迫力のある見た目で、多頭で大蛇の姿を想像していたので、少し意外だった。

 

「こいつが……」

 

その迫力に私は、そう自然と口から言葉がこぼれ落ちた。

突如、ヒドラは天高く遠吠えを上げて、私たちに襲いかかってくる。

 

「うおお!!?」

 

私たちは少し怯む。

この場所で戦うのは不利だと判断した鈴亜は、全員に一旦戻ろうと伝えて、それに応じた私達も全力で撤退をする。

そのとき、ヒドラも追いかけてくるように、チマチマと後ろを振り返りながら魔法を当てた。

そのおかげか、ヒドラも全力で追いかけてくる。

時々、口から毒ブレスを吐くが、それを軽くいなしていく。

 

「ヤバいぞ、マジで毒吐いてくるやん!!」

 

私は大声で叫びながら毒を回避する。

一応、中学のころ、科学部でいながらも陸上部の補欠ぐらいのスピードを持っていた私は、鈴亜やクリスたちに遅れをとることは無かった。

 

先程いた峡谷に出た私たちは、全員攻撃体制に入る。

遅れてヒドラが峡谷の壁をかち割りながら、姿を見せた。

そのとき、鈴亜とクリスの氷属性の魔法攻撃が炸裂。

大きく怯むヒドラの隙を付いて、足を思いっきり切り裂く。

少しだけ切り口が開いたのを見た私は持っていたハンドガン(対魔物炸裂弾装填済み)を構えて何発も発砲する。

15発中、12発が外れて、2発がヒドラの足に、残り1発が奇跡的に切り口に命中し、それがけたたましい音を立てて破裂。

血が吹き出た。

やばいのが、この血にも毒が入っているということ。

直ぐにその場から離れる。

正直、毒に耐性を持ってる人が居ればどれだけ攻略難易度が下がることやら……。

マゼラン副所長とか柳六穂とかパープル・ヘイズとかとかとか。

そんなことを考えてるうちにクリスと鈴亜は、ヒドラに一定の距離を起きながら氷属性の魔法を放ち続ける。

 

「やっぱしぶとい!!!」

「ヒドラだもんね!!」

 

絶え間なく魔法を放つも、全く倒れないヒドラを前に愚痴を零す二人。

ヒドラも、広範囲の毒ブレスを吐くが、魔法の壁でいとも容易く防がれる。

私は再び、マガジンに別の弾(対魔物徹甲弾)を詰め込んでリロードする。

ハンドガンを構えてヒドラの頭部を狙う。

 

「いけるか……!?」

 

5発連続で発砲する。

しかし、私のエイム力はあまりにもゴミすぎて、5発全弾がカスリすらすることなく外れた。

 

「下手くそ!!!」

 

私は自分自身に罵倒して、何発もガムシャラに発砲した。

何発かはヒドラの身体にヒットしたが、それでも決定打にはならなかった。

いや、決定打どころか、効いてすらいない感じだった。

 

「マジかよクソッタレ……」

『龍輝、ヒドラは氷が弱点なんじゃ、だから氷の弾を』

「氷の弾な!!」

 

私はバッグから氷の弾を探すが、見つからなかった。

 

「馬鹿野郎……何やってんだ朱雀!!」

 

再び私は自分に悪態を付きながら、ハンドガンをしまって刀を構える。

いや、構えたが、ある作戦が脳裏を過ぎったため、再びハンドガンを持って炸裂弾が入ったマガジンを入れてリロード。

ヒドラの後方に回って、クリスたちにヘイトが向いている隙にその長い尻尾を切断しにかかった。

 

「……!!!」

 

雄叫びをあげることなく、静かに修羅のような表情で尻尾に斬り掛かる。

それに気づいた鈴亜とクリスは、自分たちにヘイトを向かせるために、より一層攻撃の苛烈を強めた。

注意は完全にクリスたちに向いている。

今だ!!

刀を思いっきり振り上げて、尻尾に振り下ろす。

刀が尻尾に食い込む。

 

「……かたい……!!!」

 

私は険しい表情を露にして、全力で尻尾を切断しにかかる。

ヒドラも切られまいと、尻尾をブンブン振って私を吹き飛ばそうとしてきた。

 

「ぐぅぅぅ……!!!」

 

歯を食いしばって、必死に刀にしがみつく。

テーマパークにある激しい乗り物のような気分だ。

 

「させない!!」

「龍輝堪えて!!!」

 

クリスと鈴亜は氷の魔法でヒドラの動きを止めようとするが、ヒドラの暴走は一向に止むことは無い。

そして、しがみつく体力がなくなった私は刀から手を離してしまい、宙に弾き飛ばされた。

 

「あああああああ!!!!!」

 

どうにもならない私はそのまま峡谷の岩壁に叩きつけられた。

背中に激痛が走る。

どれくらいの痛みかと言うと、足の小指を机の尖った角に思いっきりぶつけた時並の痛みだ。

その激痛が背中全てに伝わっているといえばいいだろう。

 

「はぁが……カァァァ……ンフーーーーー!!?」

 

私は声にならない悲鳴を上げて悶絶する。

激痛に歪ませた表情をしながら、鼻息を荒くして無理矢理身体を立たせる。

 

「ンフーーー、ンフーーー!!!」

 

鼻息を荒らげながら、歯を食い縛り痛みを堪える。

刀は奴の尻尾に食いこんだままだ。

あれをどうにかしないと、私の手持ち武器はハンドガンのみ。

土を取り込んでアンイシュワルダになるか?

と、考えたが、ダメだな。

この峡谷で、あんな巨大な龍になろうもんなら、ろくに動くことができずに、下手すれば瓦礫で鈴亜たちに被害が被る可能性がある。

かと言ってネロミェールとかの龍になれば、まともに動くことが出来ずに格好の的だ。

私は考えた結果、あの刺さった刀を意地でも引き抜く。

 

「とまれええええええ!!!!!」

 

鈴亜は大声をあげて魔法を解き放った。

氷の塊が一直線にヒドラへと向かい、頭部に直撃する。

ヒドラは悲鳴のような声を荒らげて怯む。

よく見るとヒドラの氷の紋章を刻まれているのが分かった。

怯んだ隙を狙って、私は刺さってる刀を抜くために、尻尾に向かって疾走する。

 

「次で決めてやる!!」

 

静かに呟いた彼女は、魔法を使おうとするが、ヒドラがそれをさせなかった。

体勢を立て直したヒドラは、鈴亜に向けて毒弾をブッ放つ。

その予兆に気づいた彼女は、ダイブをして回避し、それと同時に氷の魔法を撃つ。

しかし、ヒドラはそれを毒弾で相殺。

再び、毒弾攻撃を続ける。

 

「くっ!!!」

「このぉ!」

 

必死に回避する鈴亜に、ヘイトを向かせるため、クリスはヒドラに攻撃を続ける。

だが、クリスの魔法の威力は低く、ヒドラには全く効いていない様子だった。

 

「やべえ……!!」

 

流石に、ヤバイと感じた私は、刀を一時断念してハンドガンを構え、ヒドラの尻尾にゼロ距離で乱射する。

炸裂弾はヒドラの皮膚に抉りこみ、何度も破裂した。

その破裂する衝撃で刀が弾け飛んだ。

 

「うお!!?」

 

いきなりのことに驚いた私は一瞬固まりながらも、走って刀を拾いにいく。

さっきの攻撃でヒドラのヘイトがこちらに向いたのか、今度は私目掛けて毒弾を吐いてくる。

何が怖いって、毒弾が着弾した場所がジュ〜って音を立てながら煙を出してることだな。

あんなものに当たった暁には、川を渡ることになるだろう。

それだけは勘弁願いたい。

 

「でやあああああ!!!」

 

しかし、川を渡ることになるのは、杞憂で終わりそうだった。

鈴亜は猛獣の様な雄叫びをあげて、とてつもない氷の魔法を放出する。

巨大な氷の塊が一直線にヒドラの頭部を貫通させた。

さらにその氷の魔法の直撃をトリガーに、ヒドラに刻まれた氷の紋章も大爆発を起こした。

2段構えの攻撃に流石のヒドラも断末魔をあげて撃沈する。

 

やっぱつえーわ。

 

 

私とクリス、ユイは鈴亜の方に走って行く。

 

「やったね!!」

「やっぱ鈴亜つえーわ!」

『お主やるのぅ!』

 

3人の賞賛に、鈴亜は照れくさそうに「そんなことないよ」と言った。

いや、鈴亜は本当に凄い。

私は心の中でそう呟く。

彼女だけでも邪悪を討伐できるのではないかとさえ思えてくる。

 

「さて、ヒドラも討伐したことだし、私たちはサントプトに向かうね!」

 

鈴亜はそういってサントプトへと続く道を行こうとする。

私は「クリスさんは、これからどうします?」と喋る。

 

「私は、修復の応援でグリムマギアに向かうわ」

「そうですか」

「じゃあ、ここでお別れね」

「ありがとうございました!」

『グリムマギアの人々によろしく言っておいてくれ』

「ユイはこのままサントプトに向かうの?」

『うむ』

「どうして? グリムマギアの修復手伝わないの?」

「「((手伝いたくても手伝えないんだよなー……))」」

『あ、ああ。向こうはケミックがおるし、大丈夫じゃろ』

「なるほどね」

「まぁ、そういう訳で、私たちはこれで失礼します」

 

何となくユイさんのメンツがやばいと感じた私は、即座に切り上げようとする。

そして、私たちはお辞儀をしながらそれぞれグリムマギアとサントプトに向かおうとした。

その時だ。

 

背中にゾワリと悪寒が走る。

私は反射的に後ろを振り向いた。

 

[……]

 

ヒドラが目を開けて、こちらを見ていた。

ユイさんも、鈴亜もクリスも気づいていない。

私が鈴亜とクリス、ユイにその事を言おうとするが、それよりも早くヒドラが動く。

少しだけ顔を上げて鈴亜に毒弾を撃つ。

 

「え?」

「やばい!!!」

 

身体が動いていた。

私はキョトンとした鈴亜の前に立ち、ヒドラから放たれた毒弾をモロに受けてしまった。

 

「うっ……!!!?」

「え……?」

「ちょっ……!?」

『た、たつ……』

 

全員、呆気に取られている。

しかし、状況が飲み込めたとき、その場は阿鼻叫喚となった。

 

「た、たつき!!!?」

「ちょっと、早く回復を!!!」

『龍輝!!!?』

 

解毒薬を飲んだのに、全身が焼けるほどに熱くなる。

ジュ〜っとフライパンで肉を焼く時のような音が全身から煙をあげて聞こえてくる。

熱い骨が溶けるようだ……。

 

鈴亜達は必死に回復魔法を唱えているが、ヒドラがそれを許さない。

 

鈴亜たちに毒弾を乱れ打ち、回復を妨害する。

 

「このおおおああああああ!!!」

 

鈴亜は怒りに任せて氷の魔法を撃つ。

しかし、ヒドラは全身に毒を纏わせて、滑るように避ける。

 

「龍輝大丈夫!? しっかりして!!!」

「あつ、い……」

 

私は歯を食いしばって必死に堪えている。

しかし、意識が薄れてきた。

私の頭の中に「死」の文字が浮かびあがる。

私は、ここで死ぬのだろうか……。

心の中で呟く。

走馬灯のように今までの事が頭に浮かぶ、家族を失って、闇英雄になり、この世界に来た。

……。

私は……。

まだ、やらないといけないことが……。

私の夢が……!!!

酔狂な頭お花畑の夢を思えば思うほど、私の生きたいという執念が燃え上がる。

そして、その執念が、私の能力にも影響を出した。

全身にこびり付く、毒が身体に吸収されてゆく。

私の頭の中で無意識にとあるBGMが流れ始める。

そして、私の身体が徐々に変貌。

人間の肌だった全身は毒々しい紫色の外皮や鱗に覆われ、頭部には突き出たような一本角が生え、尻尾は団扇のように大きく広がった形状に伸びる。

その尻尾は先端部だけ細く、まるでゼンマイのようだ。

その姿を見た鈴亜は、私の変貌した姿を見て呟いた。

 

「霞龍オオナズチ」

 

と。

クリスは急に私がカメレオンに似た怪物に変身をして慌てふためいていた。

私はオオナズチに変身したはいいのだが、やはり妙な違和感に苛まれる。

しかし、こうなってしまった以上、どうにかするしかない。

考えても拉致があくわけではないので、取りあず私は全力で走り出してヒドラに突撃をかますことにした。

そのまま、私はヒドラの上に乗って、首元に噛み付く。

ヒドラは断末魔をあげて必死に振りほどこうとするが、首元を噛まれて、更にオオナズチの全身で組み伏されているため、思うように抵抗できない。

 

「鈴亜今や!」

 

ヒドラにマウントを掛けながら、鈴亜にそう叫ぶ。

彼女も一瞬呆気に取られるが、すぐさま氷の魔法を唱える。

氷の塊は、ヒドラにのみ命中し、氷の紋章を刻んだ。

ヒドラは苦痛に歪む声を荒らげて私の拘束を振りほどいた。

私は解かれた時に、一歩後ろに下がりながら、首を思いっきり横に振って、カメレオンのような長い舌を出して、鞭のようにヒドラにぶつける。

ゴッと鈍い音がなって、ヒドラはバランスを崩し倒れる。

その隙を逃すことはなかった。

ぎこちない動きでヒドラの元に近づいて、前足を上げ、首元目掛けて勢いよくボディプレスを食らわす。

また、ボキッと何かが折れたような鈍い音が響き、ヒドラは断末魔をあげる。

 

「龍輝避けて!!」

 

鈴亜の声に私はバックジャンプをしてヒドラから遠ざかる。

着地と同時に転げたのは内緒。

 

「潰れろぉぉぉ!!!」

 

鈴亜の咆哮と氷の音が峡谷を包み込み、ヒドラの全身が凍結。

対象は沈黙。

ヒドラの氷像の周りは辺り一面が銀世界となり、その場所だけ時間が止まっているかのような錯覚に襲われる。

 

鈴亜とクリスは一息をついてその氷像を見つめた。

 

「龍輝ごめん!!」

 

鈴亜の言葉に私は、「大丈夫や。おかげで、オオナズチにもなれた訳やし」と霞龍の状態で言った。

それでも鈴亜は頭を下げるのはやめなかった。

私は少しアワアワしながら、「気にするなって、問題ないよー」と必死に鈴亜を宥める。

クリスはというと、龍の姿になった私を見て凄い興味津々に身体を調べていた。

とりあえず、私たちは解毒剤を飲んで、安全な場所に移動して、少しの間だけ休憩することにした。

 

 

 

「さて、そろそろいくか」

 

1時間ぐらいゆっくりしていたと思う。

ある程度の休憩を終えた私たち、龍化も解けたし、私たちは各々の目的の場所へと向かうことにした。

 

「じゃあ、今度こそ!」

「うん、またねー! ユイもバイバーイ!」

『ケミックによろしく伝えておいてくれ!』

「あいよー!」

「ほいじゃー!」

 

そうして、私たちはサントプトへ、クリスはグリムマギアへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにもない虚無の空間。

黒や紫の瘴気が渦巻く空間。

そこに二人の男がいた。

 

「ギルファー、マフィーナ、ソナチルを討伐した男。朱雀龍輝」

 

黒いコートに身を包んだ男は、そう言って少し微笑んだ。

 

「どうやら、本当みたいだね」

 

男は黒いトレンチコートを着たもう1人の男に話しかける。

その男は静かな口調で「ええ」と呟いた。

 

「……まぁ、あまり臆することもないか……。所詮残りカスが形を成した存在から契約をしただけなんだから」

「そうですね」

「まー、少しだけ偵察をお願いできるかな?」

「分かりました」

 

 

 

続く

 

 




無事?サントプト地方へと到着した私たち、そこでサントプトの王に呼び出しをくらい、あるものを討伐してほしいと頼まれる。
そう我々の目の前に差し出された物。
とっくりである。
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