「アイツらの調子はどう?」
私はフィーナとソナッチに5人の調子を訊ねてみる。
「大丈夫よ。5人ともぐっすりと寝ているわ」
「凄まじいスピードで傷が癒えてるよ。僕たちの治癒能力があったとしても、あれは異常だけどね」
「そんなに治癒力が高いのか?」
「ああ、どうやらあの姉妹は遺伝子等を操作や組み換え等で、意図的に戦闘特化に生み出された女の子たちみたいだね」
「(つまり強化人間か)」
「だから、身体能力や治癒力も闇英雄になっていないのに、僕たちに比肩するレベルだね」
「恐ろしい……」
「可愛そうだよね……。戦うために生まれたなんて……」
フィーナはぐっすりと眠っている5姉妹のほうを見て、そう呟いた。
「まぁ、なんにせよ……。五人とも大丈夫そうでよかった」
私は安堵して椅子にヘタリと座り込む。
あのサイコガンダムとの決戦の後、フルたちは即座に、空き部屋に治療するために運ばれた。
治癒能力を持っているフィーナとソナッチが5人を治療して、いま出てきたところだ。
「そういうわけで、みんな明日には全快してるっしょ」
「そうねー」
フィーナとソナッチはそう言って、自分達の部屋へと戻っていった。
「……」
私はその場で、あることが脳裏を過る。
確か、あのサイコガンダムは二機製造されていたはず、サイコガンダムシステム001号機と002号機。
元いた世界で、両機は異次元の扉を開いて何処かへと消えていった。
その内の一機が、フルたちのいる世界へとたどり着いた。
では、もう一機は何処に行ったのだろう……。
なんなら、我々と交戦した方も、何処の世界に行ったのだろうか……。
それに、最後に見せた赤いオーラに、あの音……。
まさかと思うけど……あれって……。
「龍輝飯だよー!」
「あえ?」
ソナッチの声に我に戻る。
私は返事を返し、先程の考えはまた今度しようと思い、私は早歩きで大広間へと向かった。
献立は鮭にご飯、味噌汁、ほうれん草のお浸しと意外に日本の料理だ。
しかし、一つ違和感というか、それがあるとすれば、焼き鮭にある。
私の大好きな部分の血合のところがないのだ。
チラッと他の人の鮭も見ると、血合の部分が切り取られていた。
そして、ソナッチの方を見ると、鮭の血合の部分が大量にあった。
どうやら、我々の鮭の血合はソナッチが全部食べるようだ。
「おめーホントに血合好きだよな」
ご飯と味噌汁を交互に食べながら、ファンギルが呆れた様子でソナッチに言う。
「僕は血合が大好きだからね!」
アッハッハッハ!と高笑いして、血合をご飯に乗せて醤油をタラーっとかけて、モグモグと平らげた。
まぁ、気持ちはわかる。私も魚の血合は大好きで、ご飯何杯でも食べられる。
てか、その食べ方すごいうまそう。
「おー、これなかなか美味いなー」
「アッハッハッハ!! そんなに美味しく食べて貰えると、僕も作る甲斐があるよ!」
上機嫌に高笑いをするソナッチ。
全員が夜ご飯を食べ終わり、各自自室に戻った。
私は一足先にシャワーを浴びて、結構早いが寝ることにした。
サイコガンダムシステム001との戦闘でかなり疲れている。
「眠い……」
私はパジャマに着替えて布団に潜ると、驚異的なスピードで眠りについた。
「……」
目を開けると、そこは前に見た夢と同じ景色があった。
「……夢の続き、なのかな?」
そこにいたのは、黒い得体の知れない巨人だった。
そして私を守るように、あの古龍達が黒い巨人を睨み付けていた。
お互い交戦したのだろう。
私を除いた全員がボロボロになっていた。
『我……悪…方……悪……』
「え?」
あの巨人が何かを言っている。
しかし、何を言っているのか聞き取れない……。
すると、古龍達は大きな咆哮を上げて、あの巨人に襲いかかった。
『善……る…の……達……る……』
そう言うと、巨人も古龍達に襲いかかる。
なんなんだこの夢は……!?
『輪……邪……雀……お……邪…す……死…』
巨人は迫る古龍を薙ぎ倒しながら、何かを叫んでいる。
古龍達も薙ぎ倒されても雄叫びを上げて、起き上がって巨人に攻撃を加えていた。
私は……ポツリと傍観し続ける他なかった。
「龍輝、ねえ龍輝!?」
後ろから私の呼ぶ声がしたので、振り返った。
するとそこには金髪の青い神官らしき服を着た……
「龍輝ー!!」
「んお!?」
私はハッとしたように起き上がった。時計を見ると、9時59分になっていた。
「やっと、目が覚めた」
フィーナはやれやれといった感じで、立ち上がる。
「昨日の戦闘の疲れのせいか、随分とぐっすり寝てたわね。もうみんな朝ごはん食べ終わってるわよ?」
「昨日はホンマに疲れたからなー」
「またなんか変な夢でもみたの?」
「え?」
「今度は眉を潜めて寝ながら悩んでいたから」
フィーナの一言に眉を歪める。
……あれ?
私、何の夢みてたっけ?
「……………忘れた」
「随分と奥深くまで眠ってたみたいね」
そういうと、フィーナさんは「朝ごはんできてるよ」っと言って私の部屋から出た。
「そうやな」
私は私服に着替えて大広間へと走っていった。
私が大広間に入っときには、大体の仲間たちは食べ終えていて、ファンギルとフルたちが、ビークスの飯を嬉しそうに食べていた。
「やっぱビークスの飯は最高だな!!! どこぞのクソナッチが作るデスソース入りの飯より何億倍も美味いぜ」
そういってファンギルはソナッチに嫌味をぶちまける。
それに対しソナッチは、眉を曲げてまぁまぁ腹立つ変顔で「食事中は静かにねフンギル君? マンマに教わらなかったのかい?」と煽る煽る。
当然それにカチンときたファンギルはソナッチに突っかかる。
「んだとコラァ!?」
いつもの光景である。
二人がそんなくだらないことをしていた。
「まーた喧嘩しとる。仲ええな」
「お、龍輝おはよう!」
「おはよーさん!」
私は自分の定位置に座って、飯を食べることにした。
「あ、龍輝ー! おはよう!」
私の存在に気づいたフルが嬉しそうにそういった。
「おはよう。みんなもう体調は大丈夫なんか?」
「おう! お陰さまでな!」
「昨日はありがとうね!!」
「助かったよ……。感謝するね」
「危うく天国にいくところだったよ」
四人は口々にそう言いながら、ビークスの朝飯を美味しそうに頬張っていた。
私やファンギル、ソナッチ、五姉妹たちが食べ終わると、見知らぬ邪悪五匹がルナたちに話しかけていた。
闇英雄になる契約をするためだろう。
『もう一度聞くけど、いいのか?』
「私たちは別にいいわよ」
『本当!?』
「ああ、帰る意味もないし、それに」
チラッとフルの方を見る。もう帰る気などさらさらない様子だ。
「私はここに居たい!」
必死な眼差しで訴えるフルに、ルナたちに拒否権など無いも同然。
『ありがとうございます!!』
びええええと泣きながら感謝されて、アセアセと困惑する五人。
そして、ルナたちに新しい名前を決めることとなった。
何故か、私が立ち寄って一緒にルナたちの名前を決めることなってしまった。
ルナたちは名前を決めるとなっても、どんな名前にしたらいいのか分からず長考していたところ、私に着けて貰おうということになったのだ。
私としては、非常に責任重大でプレッシャー極まることこの上ないのだが、結局嫌とは言えずに受けることとなった。
そもそも、私はネーミングセンスは皆無に等しく、人の名前をつける事など人生で絶対にあり得ないと思っていただけあって、かなりの緊張を伴うものであった。
「せやなー」
私はルナたちの容姿や身に付けていた装備の配色等から考え抜いた結果。
ルナ・エリュス・シナ
レラ・ストリー・ユニ
マリ・ディーダ・バンシ
フェネ・ベルナ・ルリタ
フル・スタイン・アカネ
となった。
皆喜んでくれたのだが、わたしからすれば、これで喜んでくれるのか?と疑問に感じた。
まぁ、喜んでいるのなら、いいかなと心に言いつける。
……五人の容姿から、某機動戦士のMSからとっただけなんだがな……。
そして、能力云々の話になったが、まさかの五人は特に欲しいものはないと言って結局何も能力は得ることなく、ルナ姉妹は晴れて闇英雄となった。
秩序の闇英雄 ルナ・エリュス・シナ
清純の闇英雄 レラ・ストリー・ユニ
勇往の闇英雄 マリ・ディーダ・バンシ
未来の闇英雄 フェネ・ベルナ・ルリタ
成功の闇英雄 フル・スタイン・アカネ
の誕生である。
時計を見ると昼飯の時間になっていた。
名前を考えるのにかなり頭を使ったので、かなりお腹が空いた。
それを表すように、私のお腹に住んでいる虫が鳴り出したのだ。
『朱雀ありがとおおおおおおおお!!!』
『僕たちは消滅を免れたよおおおおおお!!!!』
あああああああん!!!と泣きついてくる邪悪たち、どっちが支配主なんだ?と眉をひそめるが、感謝されて悪い気分にはならない。
ていうか、いい気分にしかならない。
「お、おう」と言って、とりあえず私たちは大広間へ足を運ぶことにした。
「おーうまそう!」
思わず、声が漏れてしまうほどに、テーブルには豪勢な食事が並べられていた。
東京の銀座にありそうなめっちゃ「和」を主体とした高級なお昼ご飯である。
いや、高級かどうかは分からないが、皿や盛り付け等から凄い高級感が出ている。
ご飯、様々な野菜の漬物、花のように盛り付けされた少量の蕎麦、フグの刺身、味噌汁。
流石にびびる。
ルナたちは、目をキラキラ輝かせて子供が新種の食べ物を見るような眼差しで、感激していた。
どうやら、ビークスは朝飯の時にルナたちに褒められたのがよほど嬉しかったらしく、必死になって作ったそうだ。
高級かどうかは分からないが、皿を厳選して料理にあったデザインを選んだそうだ。
「いただきまーす!!」
闇英雄たちの大声が大広間に木霊する。
我々はテーブルに並べられた豪勢な料理を口一杯に頬張った。
私はフグの刺身とご飯を一緒に食べながら、ルナたちの方を見たが、あまりの美味しさに涙を浮かべていた。
幸せに満ち々々た表情をしていて、不意をつかれた私は吹きかけてしまった。
「ごちそうさまでしたああああああ!!!!」
食べ終わったルナたちはビークスに感謝の意を伝えて、邪悪に自室へと案内されていった。
「ヒョヒョヒョ、元気で礼儀正しい幼子たちですなぁ」
「ヴァッホ! そうですな! 我々まで元気になりますな!」
「褒めてもらえて作った甲斐があったもんだ!」
カラパシやバズズー、ビークスは彼女たちの元気さに感心しながら、ゆっくりと和風料理を食べていた。
和装の貫禄のある翁が和料理を食べる……非常に絵になるなと心の中で思い、食べ終わった皿を台所へと持っていき、昨日出来なかった家具を買いに再び出かけようと考えた。
私は一旦自室へと戻り、ボロボロになったリュックサックを見て、家具を買うついでにリュックサックも買おうと思った。
財布をポケットに入れて、自室を出たところでルナたちに出会う。
「龍輝さーん!」
「はいはい」
「いまから家具買いに行く感じかい?」
「せやな」
ルナとレラが聞いてきた。
私は「おう」と答える。
「私たちも家具を買いに出掛けようと思うんだけど、一緒にいかない?」
「ああ、構わんよ」
「ありがとー!」
「助かるよ」
とは、言ったものの、私は一つある注意事項をルナたちに話した。
「一応言うけど、私は女性と出掛けたことは一度としてなくてな。そのー、えーと、あー、エスコートをすることが出来ないかも知れんが、ええか?」
と言う。
すると、ルナとレラは首を傾げて「??」と言いたげであった。
「あぁ、まぁ行くか」
私たちは昨日の場所へと向かった。
既にマリ、フェネ、フルが待っていた。
どうやら、服装はフィーナから借りたようで皆、普通の年相応の女の子の服装をしていて、非常におしゃれでキュートで可愛かった。
半袖にショートパンツというラフな格好である。
てか、戦闘衣とのギャップが素晴らしく理性崩壊待ったなしである。
「龍輝どう? 似合う?」
フルが服を見せるようにして言った。
因みに、女性のその質問で「似合わない」とハッキリいう男性は、果たして全ての次元の男性に何人いるのか、興味深いところである。
まぁ、限りなくオブラートに包んだ言い方ならあるかも知れないが、「似合わない」という輩がいるのであれば一度とお目にかかりたいものである。
まぁ、似合う似合わない以前に、フルは何着ても似合うので、その質問の解答は法律のように定められているようなものだ。
私の解答はこうだ。
「ああ、めっちゃ似合う。凄い可愛いで」
嘘偽りのない当たり前の解答だ。
マジで可愛い。
てか、みんな可愛い。
そういうと、フルは少し微笑みながら嬉しそうにしていた。
もちろん、みんなの服装も褒める。
みんな嬉しそうにしていて、なんだか私も幸せな気分になってくる。
『お出掛けかー?』
輪廻の邪悪がヒョコっと顔を出す。
「あぁ、昨日は家具を買えなかったからな」
『まぁ、でもそのお陰で、ルナたちも助けることができて、秩序の邪悪たちも守れたやん』
「まぁ、せやけどな……。せやけどな。今度は大丈夫やろな?」
『たぶん……』
自信なさげに答える邪悪に、私は一途の不安を抱きながらも、扉を開けた。
『まお、そんじゃ、俺は戻るわ』
そういって颯爽と何処かへ行ってしまった。
輪廻の邪悪を見送った我々は開きっぱなしのドアの向こう側へと足を踏み入れた。
今度こそ、家具がある平和な……。私がいたような争いの少ない世界へ行けると願いながら。
ついた世界は非常に近代的だった。
そして、ビルの看板には東京銀座と書かれていて、あっ……。と思った。
ここ、私が元いた地球じゃないかと……。
まさかの場所の到着に笑いが出てしまう。
まぁ、私がいた場所は別のところなので、全然場所としては違うのだが……。
「わっ、凄い人がいる……」
「レインス・ヘイムスより多いんじゃねえか?」
「どうだろうか。私は同じぐらいに見える」
「でも、凄い活気に溢れてるね」
「龍輝ここからどうするの?」
「とりあえず、インテリア店探すかー」
私はとりあえず、インテリアを扱う店を探すことにした。
しかし、東京は人生で一回しか来たことがないので、場所に不安がある。
まぁ、今やスマホのGPSを使えばインテリア店などお茶の子サイサイなので、大した問題ではない。
「こっちやな」
「「「「「はーい!」」」」」
私たちは目的地へと向かう。
20分ぐらい歩くと目的地であるインテリア店についた。
「さて、各自目当ての物を探すとしますか」
「色々と家具が置いてあるわね」
「実に見応えがある」
「まぁ、大体の目星はついてるぜ」
「でも、これだけあるとちょっと迷うかな?」
「何買おう」
私は時計を確認する。時間は2時30分となっていた。
「じゃあ、3時にここ集合で。それまではみんな好きに見て回ってええで!」
そういって、私は一旦ルナたちと別れて、必要な家具を探すことにした。
とりあえず、買って帰ろうかなと考える。
Jazzが流れている店内を散策していると、なかなか良いタンスを見つけて、色々と見ていると……。
「おー、ルナとレラやん」
「やほー」
「何かいいものは見つけたかい?」
「いんにゃ、まだや。そちらはどうや?」
「そうだね。私は一応、目星はついてるよ」
「私はまだかな。いいものがね」
「まぁ、ゆっくり探せばええさね」
「あ、そういえば、フルが龍輝が探してたわよ」
「あら。マジか」
「ええ、さっき一緒にいたけど、龍輝にあってくるって言って何処かへいっちゃった」
「まぁ、その内出会うやろ」
「そうね」
「じゃあ、私とレラと目当ての家具探してくるわね!」
「おう」
「じゃあ、またあとでね」
どうやら、レラは目星はついているようだ。
早いな……。
私は候補ぐらいは決めなければと思い、タンスやベッド等を色々探した。
探しに探して、私の好みにあった家具を探し当てた。
それに触れようとした。
そのときだ。
「え、タツキ??」
私を呼ぶ声がしたので振り返ると、呆気に取られた。
「え?? 有さん!?」
「タツキやん。こんなところでどうした?」
続く