東方想転叶   作:楽園の主

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梓と結衣と聖士の絵を描いてたら遅くなりました
思いついた小話を適当に置いておきます


第15.5話 ─小話集─

 

 

◾︎日本語から日本語へ◾︎

 

ある日。魔力の使い方に関して龍輝は結衣に質問していた。

 

「ほら、ぎゅっ、てしてざーって感じ。」

「水を出しているホースの口を強く握って水圧を強めるような感覚だと伝いたいらしい。」

「でもそれってあれやん?だからわからんくてさ。」

「知っているから分かることでは?そもそも放出口が分からなければどうしようも無いと聞いている。」

「あー、なるほど。ふふ、どうしよ。」

「感覚でできたからこれ以上言えることが少ないと言っている。」

「なんで日本語から日本語に訳してんだよ。」

「2人は言葉が足りんから伝達齟齬が起きる可能性があるからだ。」

「梓はなんで全部わかってるの……?」

「話の流れから何となくわかるだけだ。」

 

しばしばこういうことがあるらしい。

 

 

 

◾︎年齢◾︎

 

「そういえば何歳?」

 

龍輝の問い。

 

「あー……何歳……数えてないな。」

「まぁ20超えてから数えんか……梓と同い年?俺はそうなんやけど。」

「いや、梓の方が余程長く生きて──あ、向こうでの年齢の話か。とするなら2つ下かな。」

 

ここへ来た年代ってのは梓とは違うから、と話した。

 

「あーそうなんや。こっちに来てからは?」

「詳しく数えてないけどこっちに来た頃が確か……5世紀……?くらいだったか。」

 

少し前にあった輝夜との出会いが7世紀であることを考えれば、200年ほどは生きている、ということになる。

結衣も同じくほとんど変わらない時期にこっちに来ているため、同じくだ。

 

「じゃあ俺は300歳やわ。」

「じゃあってなんだじゃあって。つまり違うじゃないか。」

 

龍輝は謎の負けず嫌いを発揮して嘘をついた。が、もちろん貫き通せるわけはない。

 

「それは置いといて……そういえば梓って何年くらい生きてるんだろうか。」

 

聖士はぽろ、と気になったことを口にした。

聞きに行けばいいやろ、という龍輝に、確かにと頷いて2人は梓の元へ。

聞くと、ふむ、と少し考えたあと。

 

「……既に3500年は過ぎているな。結衣と出会った時で3100年前後といったところだったからな。」

「文字通り桁が違うな……。てかよく数えてたな?」

「いや、最初の頃にあった出来事いくつかが紀元前何年くらいにあった話か、ということから逆算しただけだ。正確ではない。」

 

なんの気なく、彼女は答えた。

 

「お前、よくそんな長い間独りで生きてこれたな。」

 

それは、身の危険、という意味でも。この広い世界で、たった独りだったという意味でも。

寂しくなかったのだろうか、という意味を込めて。

 

「気にしている暇がなかったからな。」

 

常に生きることにしか頭に無く、寂しいと思う間もなかった。

気にできる頃には既に独りに慣れてしまっていたのだという。

もしかしたら人間ではなくなってしまったから、というのもあるのかもしれないな、と。

聖士は複雑そうな表情を浮かべた。

 

「あー……。」

「何を考えたかなんとなくわかるがまぁ、龍輝。言ってみろ。」

「いやすげぇババアやなって。」

「おい梓は友達だろ。そもそも失礼だぞ。」

「いや、実際その通りだろう。老婆だ私は。敬え。」

「老害やんけ。」

「現代の人間として換算するなら年金を約3400年分程貰ってることになるな。」

「税金泥棒も甚だしいな。」

 

 

◾︎その場のノリで◾︎

 

「そーとく、どうした。」

「梓か。いや、最近武器が壊れてさ。」

 

素材回収のための伐採や岩を砕いたりするのも剣で行っていた為か砕けてしまったらしい。

新たに調達しないとな、と思っていたところ。

 

「調達なら道繋げるわよ?」

「いや、紫の手を煩わすこともない。作ろうか?」

「あ、いいのか?ありがたい。」

 

梓が作ってくれるらしい。

 

「どうせなら魔力のこもった剣とか頼める?」

「構わない。」

「あ、魔剣作っちゃおうぜ魔剣。手伝うわ。」

「ふ、ふはは!面白い、そうしよう。」

 

〜しばらくして〜

 

「ほぉら聖剣だ。」

「すげぇな光ってる光ってる。あ、剣閃飛ばしやすっ。」

 

聖士と梓は笑っている。完全に飲み会や友達同士のノリである。友達同士だが。

 

「……聖剣ってそんな流れで創るものじゃないと思うのだけれど……。」

「今更普通の尺度で梓達を測る方が無茶じゃない?」

 

変な人たちだと再度認識した紫と、ほぼ諦めたようにくすくす笑う幽香がそこに居た。

 

 

 

◾︎森の梓さん◾︎

 

ある日、とある妖怪は森を歩いていた。

 

「へっへっへ、今日はどんだけ人間を食ってやろうかなァ……ん?」

 

ある〜日♪森の中♪

梓さんに♪出会った♪

 

否ッ!出会ってしまったッ!!

一目見る、それだけで理解した!

逆らってはいけないと!この存在には敵わない!!逃げなければならないとッ!!

 

スタコラサッサ〜のサ〜♪スタコラサッサ〜のサ〜♪

 

「おや。逃げれるとでも?」

「ひぇっ──」

 

逃げられなかったそうです。

その妖怪はその後どうなったかと言うと……あえては言わないでおきましょう。

なお、彼女が追いかけた理由は、逃げるから何となく追いかけただけだそうだ。

とばっちりだね。

 

 

 

◾︎持て余すそれ◾︎

 

「梓、先日の件なのだけど……。」

「西の妖怪のことか?聞こう。」

 

話し合う梓と八雲紫。そこに目を向ける聖士。

また、別の方へと視線を向けると。

 

「薔薇の香り付けしてみたのよ。いつも同じ紅茶よりは気分も変わるでしょ?」

「あ、好きかも。これ。」

 

紅茶を楽しむ風見幽香と結衣。

 

「……。」

 

このグループ数少ないの男性メンバーの大社龍輝は人里にいる。

そして極め付けに──

 

「お客様ですよー。」

「梓様、春の供え物です。」

 

一人の女性を連れてきたセキライ。

その者はセナ・ルーランディア。白睡蓮という女性のみで構成された猟兵団の団長の女性。

季節ごとに人里から数名で現れ、作物を納めに来る。

梓を神かなにかだと思っているのだろうか。ここは神社では無い。

 

「いらんと言っているのだがな。」

「そういう訳には行きません。里の者はみな救われて感謝しています。その存在で引き続き里を守って頂いていますから。」

 

膝を着いた状態で敬意、というかむしろ信仰か?を崩さない。

 

「それも他ならんセナが言い広めてるだけだろうに。」

「いいじゃん。もらっとこ。」

 

便乗して結衣は楽しそうにしている。

 

「まるで神様ね。」

「じゃあ私は神様に喧嘩売ったってこと?」

 

なんて八雲紫と風見幽香は笑っている。

ただ、そんな内容は聖士にとってはどうでもいい。

そう、女性しかいないのだ。圧倒的ないたたまれなさ。

だが、梓は友達だ。姿を変えてしまったが。

 

(しかも1番デッッッッ!!だしな……。)

 

もちろん、聖士はどこをとは言わないが。

 

「どこかへ行くのか?」

「ああ、ちょっと。」

 

聖士はその場から離脱し、湖の前へ。

 

「……。」

 

湖畔。木々の隙間から光がさす。綺麗な風景だ。

 

「性欲を……持て余す……。」

 

綺麗な笑顔で、ボソッ、と呟く。

長年生きているからか、落ち着いてきていたそれだが、もちろん失ったわけでも、枯れた訳でもない。

彼は聖剣を振り、体を動かして雑念を吹き飛ばすことにした。

梓と共通の友人が数名いたが、そのうちの誰でもいいからこちらに来ないだろうか。

もちろん、以前と同じ男性のままで。

そんなことを漠然と思った。

 

 

 

◾︎服装◾︎

 

「梓。臍を出した服装、それ辞めないかしら?」

「?何故だ。」

「目のやりどころに困ってるわよ、男性二人が。」

 

紫がそう言いながら2人を見ると聖士は苦笑いをし、龍輝は"?"と言う表情で話を聞いていなかったようだ。

 

「胸に目線がよく行くのは気がついているが、そうか。困るか。では変えよう。」

 

数日後。腹部に帯、もしくはベルトをを着用する梓が。

 

「あのさ……それ辞めない?」

「まだ困るのか貴様らは。」

 

紫に言われたへそ出しの服装と同じく目に毒だ、と聖士は苦言を呈す。

 

「着太りするからだ。」

 

Tシャツに着替えると、胸部分で裾が浮いて着太りする梓。

胸が大きい女性は、身体のラインが出る服以外だと胸の部分でTシャツが引っかかり、裾が真っ直ぐ降りるため裾が浮いてしまい、シルエットだけだと太って見えてしまうことが多い。

それを着太りする、という。

そのため、それを避けるならば腹部でベルトをしたり、へそ出しするとような服を着用をしたりする必要が出てくる。もちろん、それ以外にも解決法はあるが。

しかしそうすると身体のライン、とりわけ胸が強調されてしまい、セクシーに見える、と。

 

「他人がどうこう思う、というより私が嫌でな。」

「……そうか。なら仕方ないか……。」

 

自分には無い悩みに、肯定するしか思い当たらなかった聖士。

結局、どちらでも困るなら気にすることをやめてへそ出しに戻ってしまった。

彼の苦悩は続きそうである。

 

 

 

◾︎鬼の酒◾︎

 

鬼の元へ行く、と言った梓へと同行した聖士。

 

「酒呑の首、取り返してくれたのか。」

「焼いたあと、墓の元へ。最後に酒をかけて帰った。」

「……きっと、あいつも喜ぶ。」

 

しんみりと、3人は酒を飲んでいる。

鬼とは豪放磊落だと聖士は認識しているが、事の経緯は梓から聞いているし、話の内容故、仕方のないことだ。

そう理解した。

 

「そこの男も飲もう、勿体ないぞ。」

「アッハイ。」

 

角が生えてるなぁとぼーっとしてたら突然話しかけられ、驚く聖士。

梓から小さな盃を受け取って、酒を注がれる。

 

(というかまた女性か……。)

 

そんなことを考えながら酒を口に含む。

途端、刺すようなアルコール臭が鼻を抜けた。

 

「かあッ……きっつ!」

 

飲めなくは無いし、味は美味しいがその強烈さに声が出た。

聖士は特別下戸、という訳では無いが酒に強い訳でもない。

鬼が飲む酒はキツすぎたようだ。

 

「はっはっは!なんだお前、下戸かぁ?」

「いやそうでも無いですけど……よく普通に飲めるな梓?」

「まぁ元々弱い訳ではなかったからな。」

 

これが普通に飲めるなら強いだろ、という言葉は飲み込んでおいた。

 

「よーしいい具合に酒も効いてきた!よし喧嘩しようそこの男!」

「あ、謹んでお断り致します。」

「なんだよぉいいじゃねぇかよぉ。」

 

勇儀は聖士にだる絡みしている。顔には出さないが、面倒そうだった。

 

 

 

◾︎近っ◾︎

 

「……。」

「……。」

 

作業の手を止めて、セキライと聖士は目線を向ける。

 

「梓ー、これ。」

「ん?」

 

1つの書物を2人で見ている形だ。話の内容までは聞こえてこない。

 

「……あの二人っていつもあの距離なんですか?」

「え?まぁ……そうだな。」

「近くないです?」

 

肩はもちろん触れてるし顔なんてほぼ数センチほどしか距離がない。

女性同士……としても特別距離が近い。

 

「梓はまぁ、距離感バグだからな……。」

 

元より梓は性別問わず、距離が近い傾向がある人間だった。物理的にも、付き合い的にも。

近すぎて彼女を避ける者いた、というくらいだ。

 

「もしかして神成さんにもそうです?」

「……まぁ、あそこまでじゃないにしろ近いなとは……。」

 

流れた長い長い時がそうさせたか、女性になったからそうなったのか。

物理的な距離がかなり近い。元より、もっと。

少し考えて、セキライは言う。

 

「……聖士さんって苦労してるんですね。」

「……ははっ。」

 

乾いた笑いが出た。

 

 

 

◾︎確かめたいこと◾︎

 

「なぁ梓。」

「ん?」

「"帰ろう"とは、思わないのか?」

 

聖士の純粋な疑問。もう、"こちら"で長く生きているがそれでも帰ることができるなら帰る、と考えている彼。

元の時間軸に、元の世界に。

でも、梓はどうなのだろう、と彼は思った。

 

「思わないな。」

 

きっぱりと、悩むことも無く答えた。

そもそも、帰ったところでどうするのか、というのが彼女の考え。

姿は大きく変わってるし、性別も変わっている。考えも違えば思想も違う。

元のコミュニティに入ることは叶わないだろう。

他にも、身分はどうするのか。住む場所はどうするのか。そこまで全てを失って、なにをしたいのか。

現実的な線を考えれば、帰っても仕方ない。

それならば、ここで、出来ることをする。

 

「そうか。」

「興味が無いわけではないがな。」

 

元の時間軸はどうなっているのか、という点だ。

こっちに来た人間は向こうでは消えてしまい、行方不明となっているのか。

それとももしかしたら、代わりとなる者が差し込まれている可能性も否定できない。

はたまた人類はその瞬間に滅亡していて、転生や生まれ変わりとしてこちらに来たのかもしれない。

それも、向こうを見なければ分からないこと。

 

「未来を見る、とかは?」

「ここが同じ世界線の過去とは限らん以上、意味があるとは思えん。そもそも、私たちが関わってしまったからな。」

 

世界はそのままで過去に戻った、と仮定したとしても既に彼女らは過去に干渉している。

全く同じ未来にはならない、とするならばそもそも自分が元いた環境もあるかどうかすら不明だ。

 

「別の次元、いわゆるパラレルワールドの類であれば可能性はあるが、それを見たところで、だろう。」

「まぁ、そうか……。」

 

帰ってどうするのか、ということを詳しくを考えたことがなかった彼。

さっぱりとした考えを持つ梓を、少しだけ羨ましく感じた。

 

 

◾︎聖士の日常◾︎

 

湖で釣りをする聖士。静かに、時間が過ぎていく。

釣果がいい、という訳では無いが、釣りとは、この静かな時間を楽しむものかもしれない、と彼は感じている。

 

「まてまてー。」

「キャー!ウフフ!」

「……。」

 

その背後では、妖精と追いかけっこをしている結衣がいる。

日常なのだ、彼は反応もしない。なんだか妖怪が現れ、妖精とともに結衣が魔力弾を放っている気がするが、それも彼は気にしない。

ぴちょん、と浮きが沈む。釣り上げると、数センチの小さな魚が釣れた。

湖の水を組んだバケツの中に、それを入れた。

再び、釣竿を振るう。

 

「すみません聖士様、梓様はどちらへ?」

 

人里からきたセナだ。家の中のセキライが出かけた、と伝えたようで、行き先を知るかもしれない聖士に話しかけたようだ。

各地の妖怪の元へと足を運んでいる、と伝えると分かりやすく、しゅん、とセナは一瞬だけ落ち込んだ。

 

「また伝えておくよ。」

「ありがとうございます。」

 

一言二言、世間話をするとセナ達は人里へと帰っていった。

セナによると、龍輝も元気にしているらしい。

湖に浮かんだ浮きは、動いていなかった。また時が、緩やかに流れていく。

何匹から釣り上げたくらいで、空間を裂き、紫と藍が現れる。

 

「あら、制作活動は休憩かしら?」

「はい。外に出て気分転換をと。藍さんもお元気なようで。」

 

再び、彼女らと世間話をする。

 

「紫様、そろそろ……。」

「もう時間なのね。ではまた、聖士さん。」

「あ、はい。」

 

切り裂いた空間の中へと消えていく2人。

再び、静かな空間へと戻った。釣りへと戻る聖士。

釣った魚はどう調理しようか、と思った時、一際強く浮きが沈んだ。

手応えがかなりある。大物かもしれない。

そう思って、釣り上げると。

 

「いたたたた……あっ……えへへ、ど、どうも……。」

「……え?」

 

人魚が釣れた。謝ってから釣り針を外し、手当をした。この辺りに住んでいるらしい。

魔力や妖力が濃くて過ごしやすく、梓の名もあって平和だ、とのこと。

梓はこういった所にも影響及ぼしてるなぁ、と、聖士は思った。

いくつか会話をして、人魚はまた水の中へと戻って行った。

ここにはいつも誰かいる。いなくても、誰かが訪れる。

 

「退屈しないな……。」

 

今日はもういい時間だ、と、家へと戻った。

明日は釣りではなく、遠出して狩りでもするかな、と。

聖士はなんとなくの予定を決めたのだった。

 

 

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