東方想転叶   作:楽園の主

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第4話 ─激闘、一刀にて証を示す─

(力の差は歴然、周囲状況を見るに相手は力で押す型だ。私程度の力押しは通用しない。なら──)

 

バチッ、と右手に電気を纏い、彼女は神奈子の元へと駆ける。

 

(速度に、技術……!)

 

右手を前にかざすとそこからさらに強い雷が発生、中心に集まって球形を成した。

それを投擲すると高速で発射され、神奈子を襲う。

1番初めに神奈子へと放った技と同じ技。

彼女は片足を引き、身を半身翻すことでそれを回避した。

 

(どの国でも見た事がないな……独自の技か。)

 

梓はさらに両手に発生させ、2本の雷の球を投擲する。

弾速がとてつもなく速い技だった。

 

「小賢しい!」

─ガキンッ─

 

神奈子は1つ目を避け、次にくるそれを神力を纏わせた拳で弾き飛ばした。

その後、神力で作り上げた輪をいくつも梓へと飛ばす。

梓はそれを無視して神奈子との距離を詰めるために走り出した。

途中で当たりそうになった神奈子の攻撃は、全てギリギリを避けていた。

 

「危険だ。余裕を持って避けた方が身のためだぞ?」

 

ギリギリを避けた梓はいくつかは攻撃が身を掠め、足や肩などから少しだけ血が出ていた。

相手との距離を強引に詰めるために少々の被弾は許容したのだ。

神奈子は近づく彼女に対し、再び神力の輪を作り出す。

今度は前に放つのではなく、梓が近づいてくるだろう場所へ斜めに、断頭するかのように叩きつける。

 

「ほう。」

 

梓は上へ跳ぶことでそれを回避した。

感心しつつ、神奈子はそこを迎撃しようと光線を放った。

しかし。

 

「ッ!やるね!」

 

空中で梓は回転し、それを回避。さらに手に先程よりも太く大きな、いわば雷の杭のようなものを手に発生させ、回避した時の回転の勢いを利用してそれを振るいながら急降下、地に叩きつけつつ着地。

叩きつけと同時に轟く轟音、しかし神奈子はその本体を半身を翻すことで回避し、余波は神力による障壁で防いだ。

そして着地隙を狙おうと、体勢が低い梓に向かって拳を振り下ろす。

 

「はっ!」

 

しかしそれをギリギリを避け、いつの間にか持っていた刀の斬り上げで反撃。

神奈子はそれも回転して避けながら梓に裏拳による攻撃を加える。

 

「読めています!」

─ガンッ─

「!なるほど上手いな。」

 

自身と神奈子の拳の間に、手甲を装備した腕を割り込ませ、それを弾いて攻撃を逸らし、なんとか回避。そのまま刀を横薙ぎに振り、反撃を試みる。

しかし、神奈子はそれに拳で応じる。

神力で覆われた拳は刀にぶつかり、文字通り金属を叩くような音を奏で、梓の攻撃を止めた。

 

「おらッ!!」

─パリィン─

「ぐっ!」

 

攻撃を防いだ手と逆の手で梓を攻撃、梓はそれに対して手甲の上に何らかの力で盾を発生させるもそれを割られ、攻撃を食らう。

どうやら一定以上の強さの攻撃は防ぎきれず、割れてしまうようだ。

強烈な攻撃を食らった梓はそのまま吹き飛ばされる。

 

(軽減はできたけど、それでこの威力か!)

 

吹き飛ばされている途中、地を手で弾き、体を回転─現代で言うなら後方倒立回転飛びのようなもの─させて足を地に擦らせ、ズザザ、と砂埃を立てながら勢いを消した。

 

「!」

「逃がしはしない。」

 

既に目の前には神奈子がいた。それも、拳を振り上げていたのだ。

しかし梓は声を聞いた段階で既に反撃を開始していた。

両足で地を滑るように勢いを消した都合上彼女の体勢は低かった。

なので最速の攻撃手段は足を斬ること。

神奈子が近づいて追い討ちしてくることを読んで攻撃を開始していたのだ。

 

(!反応が早いな!!)

 

神奈子はそれを少しだけ足を曲げ、一時的に空に浮くことで回避、直後に足を着け、追撃を再開しようとした。

しかしその時には梓の攻撃が迫っていた。

体勢を戻しながらの斬り上げ。神奈子は後ろに下がることでそれを回避。

すかさず踏み込みながらの斬り下ろし。神奈子は体を横に翻して再び回避。

神奈子がここで反撃しようとするも、梓はさらに横に避けた神奈子を追うように斜めに斬り上げ。神奈子は神力を纏った左腕で掠めるように防ぐ。

神奈子は今度は攻撃をさせまいと、梓の脇腹を攻撃しようと拳を振りぬこうとした。

梓はそれに合わせ、刀を用いて攻撃をいなし、神奈子の体勢を崩させる。

その後、神奈子の正面から縦に斬り下ろす。

神奈子はそれを横に少しだけ移動して避けつつ、梓の頭へと拳を振り抜いた。

 

「うぐッ!!」

 

回避しようにも間に合わず、直撃は避けたが梓はそれを食らい、吹き飛ばされた。

 

(直撃は免れ、さらに防がれたか……?いや、感触的に軽減か。なんにせよ攻撃は通ったか。)

 

今度は追撃せず、神奈子は落ち着いてそう考えた。

梓は再び空中で体を捻って体勢を戻し、再び立つ。

 

(あの分だと軽減は間に合った……見る限り致命傷じゃない。だけどこのままじゃいけない……!)

 

見ている諏訪子でもわかるほどに、衝撃は抑えていた。

梓は攻撃によってできた傷から流れた血を拭いつつ、再び神奈子と向かい合った。

 

「雷の力を使えるだけある、迅いな。正直予想以上だよ。ここまでやるとは。」

 

神奈子は素直に賞賛していた。

口だけで直ぐに潰せると思っていたが、ここまで自分の攻撃を防ぎ、連撃を繰り返す。

神に対してここまで抵抗して見せただけでも十分に強い。

だが、神奈子を納得させるにはまだ足りなかった。

 

「さて、次はどうするつもりだ?」

 

ここで神奈子は余裕を見せつつ、出方を伺った。

これまで梓の攻撃はほとんどが反撃。

神奈子の攻撃を避けるか、弾くか。どちらかをしたあと連撃を組み込んできた。

そして反撃の割り込み方やその攻撃は限りなく正確。

安易な攻めは危険と考えたのだ。

 

(どうすんの梓。確かに梓の回避や防御、攻撃はすごい精度だよ。それに私と戦った時よりもずっと強くなってる。でも、それだけではあいつには……。)

 

諏訪子は梓が行う鍛練の全てを見ていた訳では無い。

どころか、ほぼ見ていない。だから、梓の力の底はわからない。

何をするか、何をできるかわからない。だからこそ、絶望も出来なければ安心もできない。

複雑な気持ちで見守ることしかできなかった。

 

(……防御は割られる、回避は完全じゃない。)

 

ふぅ、と目を閉じながらひとつ息をついた。

相手が相手だけに、攻撃を受けないことを前提とするため、防御と回避に重点を置き、攻撃はほぼ反撃のみ、という戦い方をしていた。

しかし、それでは攻めきれず、攻撃を受けるばかり。

防御は割られる、回避だって1歩間違えれば即死。

ならば短期決戦で終わらせるしかないと、梓は結論を出した。

すこしの間の後、彼女は剣を鞘に収めた。

 

「……決着をつけましょう。」

 

そう言いながら目を開く。それと同時に、体に纏う力が衝撃を発した。

 

(!梓の空気が変わった……。)

 

先程までの探るような、一手ずつ詰めていくような雰囲気とは違い、鋭く、研ぎ澄まされたような。

覚悟を決めた者の雰囲気を、神奈子と、遠くで見ている諏訪子は感じた。

 

「来い、迅雷の者よ。」

 

そう言いながら、神奈子は"構えた"。

今まで無手で梓の相手をしていた彼女が、初めて戦闘する体勢をとり、迎撃する意志を強く見せたのだ。

「ふッ!」

─ドッ─

(さらに迅いな。)

 

少し地に亀裂を入れるほどの踏み込み、高速で神奈子との距離を詰めた。

その速度は初めにみせたそれと比べ物にはならないほどだ。

 

(なぜ剣を収めた……?剣士ではなく、本分は格闘か?)

 

考えても答えは出ない。神奈子はそのまま迎撃体勢に入った。

 

「おらッ!」

 

向かってくる梓に対して、頭を殴打しようと拳を振るう。

すると、彼女は突如として体勢を下げ、地に体を滑らせて蹴撃によって神奈子の足を攻撃、体勢を崩させた。

体勢を崩した神奈子に対し、後ろから彼女は光線を放った。

神奈子はそれを背に受ける、が、神力によって覆われていたため、手傷を与えることは出来なかった。

神奈子は足を踏みしめ、体勢を元に戻す。

距離は限りなく近い。この距離ならば梓が攻撃するよりも神奈子の素手の攻撃の方が圧倒的に早く届く。

そこは能力の差。簡単に埋められる差ではない。

動きを最小限に、梓へ向けて拳を振り抜く。

 

─ガキィン─

(!上手い。)

 

梓は素早く抜刀し、神奈子の拳に刀身の中央を合わせ、攻撃を防ぎ、さらに少し後ろへ跳ぶことで勢いを分散させて自身にかかる衝撃を限りなく無に近づけた。

与えた衝撃によって梓との距離は離れる。

このまま自由にはさせまいと神奈子はいくつかの神力の輪によって瞬時に追撃。

真っ直ぐ、左右、上からの攻撃は直撃、衝撃によって砂煙を巻き起こした。

 

「梓!!」

 

神奈子ほどの神が作った神力の輪をまともに受けては一溜りもない。

黙っているつもりだったが、諏訪子は彼女の名を叫んだ。

さらに追撃せんと神力による光線を準備したその時だった。

 

「どこを見ている!!」

 

後ろから梓の声が聞こえた。反射的に神奈子は勢いよく振り返る。

神力の輪による攻撃は"梓に直撃は"しておらず、砂煙に乗じて瞬時に移動、神奈子の後ろをとったのだ。

その様子に、諏訪子は安堵のため息を漏らす。

直撃はしていない、という通りに右足と肩に切り傷を受けていた。

両手で持った剣をそのまま振り下ろして斬り下げ、神奈子に、今度はまともに当てた。

 

「面白い!」

 

肩から下へと斬られたが、神力による鎧のような防御が堅固なのか、肩部分に少し傷がついただけだった。

それでも一撃。初めて手傷を負わせた。

神奈子は反撃に、拳で彼女を地に叩きつけようと拳を振りかぶり、勢いよく振り下ろす。

 

「おらァ!」

─パキィンッ!─

「おぉッ!?」

 

神奈子の拳の前で小さな氷結し、氷塊が発生。その衝撃により攻撃の軌道を変えさせられた。

拳は梓に当たることなく、空を切る。

その勢いは、地に大きく砕いたほどだった。

 

「もらったッ!」

 

梓は神奈子が体勢を戻す前に、すかさず攻撃を加える。

右の拳で斜め上へと打ち上げるように振るう。

神奈子は腕で防御をし、直撃を回避。しかし体勢の整わない防御は打ち上げられた。

梓はその勢いのまま左の拳を振りかぶる。

瞬間、その拳は炎を纏った。

 

(雷を扱う者ではなかったのか!?)

 

防御を崩された神奈子へ、再度防御をさせる暇も与えず拳を振るう。

炎を纏う拳は顔面へとまともに入った。

瞬間、炎は炸裂し、爆発を起こしながら光線を放つ。

その勢いのままに彼女は拳を振り抜いた。

 

「ぐっ……はははッ!やるじゃあないか!!」

 

衝撃を受けたが踏ん張り、ザザザ、と地を擦る音ともに神奈子は後ずさった。

攻撃を受けた箇所を拭いながら笑い、そう告げた。

 

(完璧に入った!でも───)

 

しかし、傷はかすり傷程度。口の中が切れたのかつぅ、と口の端から血が流れていた。あとは頬に煤が少しだけ着いたくらいだ。

 

「はッ!」

 

梓は神奈子に攻撃がほぼ通らないことは予測していたのか、既に攻撃を開始していた。

右手を前に左手を添えており、手の前に球体を発生させ、それを放つ。

さらにその後、左手をぐっと深くかまえ、顎を殴りあげるように下から上へと振るった。

すると縦に走る剣閃のような衝撃波が発生、地を削りながら神奈子へと向かう。

神奈子は身構える。が。

 

(なんだ、遅い……?)

 

彼女が今まで放ってきた技に比べれば、どちらも遅かった。

常人ならある程度距離があれば見てから避けられる程度だ。

強いて言うなら球体が先行しているか、と言うくらい。

その間にも梓は別の攻撃を準備していた。

右手を何かを投げるように振るうと魔法陣のようなものが放物線を描いて飛ばされる。

軌道は神奈子を少し越えて後ろへと飛ぶような軌道だ。

と、神奈子がそれに注視していると。

 

─バシュッ─

「なッ!?」

 

球体よりも遅かった、縦に走る剣閃のような衝撃波は音を立てて急加速し、神奈子へと迫る。

彼女はそれを拳で殴り砕いた。その頃には球体も迫っており、それを避けようとしようとしたその時、後頭部に衝撃が走る。

 

「ッそういうことか!」

 

投げられた魔法陣のようなものは神奈子の背後に浮いており、中心から光の弾が放っていた。

 

(魔法陣に注視させて衝撃波を当て、球体に意識を向けて魔法陣の攻撃を当てる。怯んだところに球体の攻撃、という算段か。考えたな!)

 

しかし怯んだ時間は僅かであり、神奈子は飛んできた球体を避けた。

球体は神奈子の横を通り、地に落ちる。

残された魔法陣からは連続して弾が放たれていた。さらに魔法陣はゆっくりと神奈子を追うように動く。

 

(煩わしいな。)

 

神奈子は放たれた弾を拳で弾き、魔法陣の方へ神力の輪を飛ばし、破壊。

次は策を立てさせまいと、グッと足に力を込めたその時だ。

 

─グラッ─

「ッ!?」

 

神奈子は斜め後ろへの強力な風により体勢を崩された。

ちら、もそちらへ目線を向ければ、地に落ちた球体は未だ残っており、それは強力な吸引を行っていた。

球体は当てることが目的ではなく。これが目的だったのだ。

 

─バァンッ!─

「ッとと!!」

 

今度はその球体は爆発し、吸引とは逆方向へと強い衝撃を放った。

手傷を与えるには至らないものの体勢はさらに崩される。

崩された体勢を戻すため、足を踏み締め直した。

すると突然、神奈子の周囲に球体が大量に発生、彼女を取り囲む。

 

(あの時か!)

 

神奈子の攻撃を避けながら、地を滑り、足を蹴撃して体勢を崩した時。

彼女はその時に先程の罠を仕掛けておいたのだ。

神奈子は防御態勢を取る。

それらは全て炸裂、しかし神奈子の防御を貫くことは出来なかった。

さて次は何をしてくるか、と梓の方を向いた。

 

「……"行きます"。」

 

技を放つだけ放ち、神奈子が避けている間に力をためていたようだった。

両手を合わせており、それを開いていくと、強烈な雷が轟く。それが集まり、槍のような外形を成していく。

それを左手で掴み、振りかぶる。

 

「届かせてみせる──」

 

全身に力を込め、その雷の槍を投擲した。

 

「貫けッ!!!」

 

手から離れた瞬間、一際大きな轟音が響いた。

雷の槍は高速で放たれ、神奈子へと向かっていく。

 

「ふふっ──受けて立とう!!」

 

少し笑ったあと、神奈子はそう叫ぶ。

飛来する雷の槍を。穂先を。片手で掴んで止めた。

轟雷と共に、その手は少しだけ押されていく。

 

「だらぁッ!!」

 

神奈子はその状態で、逆の手で槍を殴った。

すると、雷の槍は砕け、込められた力が行き場が失ったのか爆発を起こした。

それと共に砂煙を引き起こす。

 

「───今のが全力か。」

 

神奈子はそう、呟く。

彼女は力の探知に優れる神ではないが、ある程度なら出来る。

故に、梓の力がだんだん弱まっており、今の一撃でさらに低減したことを感じていた。

 

「予測に反撃。時に強く、時に細やかに。見事であった。」

 

神奈子の神力による防御は"膜"ではなく、言うなれば"奔流"だ。

見えはしないが、神力の奔流で敵の攻撃の衝撃を流して弾く、そういった方法の防御だ。

並大抵の攻撃なら普通に通さないし威力のある攻撃でも流して弾く、強力な防御だ。

しかし、梓は背後に移動した攻撃の時。その流れに沿うように隙間を通して、威力はかなり減衰はしたものの攻撃を無理矢理通したのだ。

神奈子も気付かなかった弱点とも言えるそれを見抜き、鮮烈なまでの精度で攻撃を放った。

神奈子が出会ってきたどの人間でも出来ないであろう技術だった。

そしてその後の炎を伴う2撃。防御を崩し、無防備な所へ一撃。諏訪子との戦いで消費していたとはいえ、堅固な神力の鎧。その上からたった少しでも攻撃を通した威力。

 

「で、だ───」

 

神奈子の思うより上だった。しかし、望むより上ではなかった。

威力は上々、大抵の者ならばここでくたばるだろう。

それが有象無象の人外であったとするならば。

しかし、自分を納得させるには足りない。

ここまでの反撃や攻撃の精度、素早い反応、恐ろしいまでの予測。

だが、最後の最後で力技による真っ向勝負。

神奈子としては、それが残念だった。

 

「それで終いか?」

 

腕で砂煙を払いながらそう言った。

ここまで戦ってきて、その考える能力で、この技が通じないと思い当たらなかったのか。

これが梓の限界か、とそう思った。

だが、少し期待はしていた。この先も、まだ何かあるのでは、と。

だからこそ、終わりかどうかを問うたのだ。

 

「……ええ。私には今までのように戦い続ける力はもう残されていません。」

 

梓は神奈子の問いに、是、と返す。

彼女からは先程までの力も、雷も。神奈子が感じ取れはしなかった。

なんだ、ここまでか。と、思った。

 

(梓……よくやったって。大和の神によく食らいついたよ。)

 

このまま終わってしまう。だが梓を失うのは惜しい。

諏訪子は立ち上がり、神奈子の元へ歩きだそうとした。

負けを認めて、2人で帰ろうとしたのだ。

しかし。

 

「なので──"これ"で終わりです」

「ッッ!?!?」

(梓……!?)

 

砂煙が晴れ、梓の姿が神奈子に映ろうとした時。声がそこから発せられていた。

が、突然、真後ろに声が移動した。

移動の瞬間は全く見えなかった。間もほとんどなかった。

それだけに神奈子は酷く驚いた。

勢いよく神奈子は振り返る。

そこには神奈子よりも圧倒的に傷を多く受け、血に濡れた梓がいた。

大きな力は感じない。しかし、目は死んでいなかった。

彼女は、刀を構えていた。

 

「!」

「輝け───」

 

その瞬間、今までに見た事がないほどに、彼女から力を感じた。

凪を感じさせる静寂に、突如としてなんの前触れもなく雷が落とされたかのようだった。

言葉と共に、彼女が持つ刀は光の剣を纏っているかのように光り輝く。

 

「閃光の一撃よッ!!!」

 

梓は回転しながら刀を横へ一閃。

神奈子も反射的に行動を開始していた。彼女を討たんとし、拳を横薙ぎに振るう。

神奈子の拳と梓の刀が交差する。

その刀は、想いは。届くか否か。






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