魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
あのお店を離れ、宿へと向かった私。受付で鍵を受け取ってその部屋へと向かいますが、その間にも人形が数体。部屋へと踏み入れると、部屋の中にあった机の上にも一体置いてありました。いくらこの国の特産物とはいえ、これほど人形だらけとなると多少の不気味さすら感じます。私は机の上の人形を魔法で持ち上げると、そのままタンスの中へと仕舞い入れます。
「これでよし、と・・・」
とりあえず時間もいいぐらいですし、お風呂に入ってゆっくり休むとしましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・
時刻は真夜中、すでにこの部屋に泊まったイレイナは眠っている時間帯に異変は起こった。人知れずゆっくりと開いたタンスから出てきた
朝、開いている窓から入ってくるそよ風によって目を覚ましたイレイナは、窓が開いていることに多少の疑問を覚えながらも深く気にすることはせずに洗面所へと向かう。歯を磨き、顔を洗い、備え付けてある鏡を見ることでようやく異変に気づいた。鏡に写っているのは昨日までの長髪のイレイナではなく、なぜか短髪になっているイレイナだったのだから。
「・・・・・・誰?」
突然のことに固まり、自分の髪の毛を触るイレイナ。彼女はそこで、昨日の切り裂き魔の話を思い出した。
『100人以上の女性の命を奪った』
「髪は・・・・女性の命・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
私の髪が切り裂き魔に取られたことに気づいた私は、すぐさまシーラさんへと連絡を入れました。案の定シーラさんはすぐさま駆けつけてくれて、部屋の中を調べてくれます。
「お前のお察しの通り、例の切り裂き魔の仕業に違いない」
「そうでしょうとも・・・!」
「ふっ、魔女ともあろう者が切り裂き魔の被害に遭うなんてなぁ」
「キッ!」
シーラさんの物言いに思いっきり睨みつけてやりましたが、当の本人は全く気にした様子もなく話を続けます。全く、私がどんな思いをしていると・・!
「ま、とりあえず現場は見させてもらうぞ」
「・・・私はどうすればいいですか?」
「そこで置物になってろよ」
そう言われては私には何もできません。言われた通りベットで横になり続けていると、部屋の中を粗方調べ終えたシーラさんが困ったように頭をかきながらお風呂場から出てきました。
「う〜ん、ないなぁ・・・・・よっ!」
「きゃ!?」
何の声もかけることなくいきなりベットをひっくり返され、上で横になっていた私はそのまま床に転がることとなってしまいます。ちょっと・・・いくらなんでも私の扱い雑すぎませんか・・・?
「ベットの下にも怪しいものは何もない、と・・」
「多分この部屋の中に置いて一番怪しいのはシーラさんだと思います・・!!!」
「怪しくねぇ、捜査だ捜査!残るは・・・・・あそこだけだな」
そういってシーラさんが指すのは扉が半端に開いているタンス。・・・・・あれ?なんでタンスが空いてるのでしょう?あそこは服をしまった後にしっかりと閉めたはずですが・・・・。
「・・・・ん?」
「あれ?」
シーラさんが扉を開けると、そこには私の服と髪の毛が落ちていました。ですが、確かに入れたはずの人形の姿はどこにもありません。ていうかあの髪の毛、確かあの人形のだったような・・・。
「人形の髪の毛・・・?」
「人形?」
「ベットサイドに置いてあった人形を、その中にしまったんです」
「やっぱりか・・・」
「やっぱり?」
「一連の事件の共通点があるんだ。被害者は寝込みを襲われ、部屋のあった人形が無くなっている。そして、人形の髪の毛が散らばっている」
「・・・なぜ?」
「被害者の髪の毛を人形の髪の毛にでもするんだろ」
「人形が?」
「おそらく犯人が人形を魔法で操ってな。・・・・んで、どうする?」
「どうするとは・・?」
「街に調査に出るが」
「もちろん行きます!」
私の髪の毛を奪った犯人は絶対に逃しません・・!必ず捕まえて取り戻してみせます!!髪の毛を!!
「卑怯な犯人を捕まえて、その首を跳ねて、地獄で後悔させましょう!!」
「飛躍しすぎだろ・・・・ん?」
「どうかしましたか?」
「え?あぁ・・・・いや、貧相だなぁと思って」
街へ繰り出すために早速着替えを始めた私ですが、シーラさんはそんな私を見てそんな失礼なことを言います。思わず頬を膨らませてしまうのも仕方ありません。・・・って、今はそれよりも早く犯人を特定しなくては。
「・・・お前、名前なんて言ったっけ?」
「名乗りましたよ?イレイナです、灰の魔女」
「あ!・・・あぁ」
「?」
「いや、なんでも。ほら行くぞ」
一体なんなんでしょう?そもそも呼び止めたのはあなたの方じゃありませんか?
そんなことは思いましたが、私はそれを飲み込んで黙ってついていきます。今現在の最優先事項は私の髪の毛を取り戻し、犯人を地獄で後悔させることです!一刻も早く!
というわけでロビーへと来た私たちですが、そこで私はあることに気づきます。この宿には至る所に人形が置かれていて、それはこのロビーも例外ではありません。カウンターに置かれている人形の髪の毛・・・・・とても作り物とは思えない、まるで人間の髪の毛のような質感をしていました。それをシーラさんにお伝えしたところ、彼女の同様のことを思ったらしいです。と、いうわけで・・・・・
「痛い思いをしたくなきゃこの人形をどこで手に入れたか吐け!」
「やっぱり、これ人間の髪の毛ですね」
「おら吐けよ!!」
「や、闇オークションです・・・!」
「闇オークション?」
「は、はい・・・そのあーちゃんのように、特別なお人形が出品されるオークションでして・・・」
「何が”あーちゃん”ですか・・・」
「その闇オークションはどこで開かれるんだぁ!?」
思ったよりもあっさりと重要な情報を入手出来た私たちは、早速その闇オークション会場へと乗り込むことに。シーラさんが用意してくれたドレスに着替え、仮面で素顔を隠し、夕刻ごろに会場に向かいます。・・・・この格好はただの雰囲気作りです、はい。
ともあれ無事に闇オークション会場へと潜入だけた私たち。周りには小さい会場ながらも一杯になるほどの人が集まっています。それほどこの闇オークションは認知度がある、ということでしょう。
「まるでオペラ座ですね・・」
「実際、昔はオペラ座として使われていたらしいからな」
「へぇ〜・・・」
周りにいる参加者はみんな人形を抱えていて、何かしら呟いています。例えば・・・・・
「今日こそ例の人形をマサくんの彼女にするんだ・・!」
「絶対落とす絶対落とす絶対落とす絶対落とす・・・!」
「俺は今日のために金をずっと貯め続けてきたんだ・・・落とすまで帰れねぇ!」
「私のかわいこちゃん・・ん〜!」
などなど。正直引きます。
「どいつもこいつも必死だな」
「人形ぐらいでどうしてそこまで熱くなれるんでしょうね」
「よく分からんが、表向きには売れないような非正規品が魅力的なんじゃないのか?」
「はぁ・・・・」
そんなことを話していると、会場の明かりが消えて壇上に焦点が当たります。闇オークションが始まったようです。司会の進行のもと勧められていくオークション、最初に壇上に出された人形は人間大サイズの大きさのものでした。非正規品ってそういう・・・・。
「50!」
「100!」
どうやらオークションは順調に進んでいるようですね。値段はどんどん膨れ上がっていき、最終的には300まで跳ね上がりました。よくもまぁ人形にそれだけのお金を使えますね・・。
「あぁいう人形ばかりなんでしょうか・・?」
「いや、それはないと思う」
次に出された人形はこれまた人間大サイズの大きさの人形、先ほどと違うのはバニーガールの格好をしているところでしょうか。
「同じじゃないですか」
「ははっ・・・・」
その後も同じような人形が続き、見ているだけで疲れてくる始末。隣にいるシーラさんは帰りたくなっていましたが、私の髪のためにももう少しだけ辛抱してください。
そうして進んでいく中、ようやく目的のものが壇上に出されました。目玉商品として出された六つの人形、その内の一つにとても見覚えがありました。
「あの灰色の髪の人形、私が泊まった部屋に置いてあったものによく似ています!・・・ていうか部屋にあった人形ですし、あれは私の髪の毛です!」
そうシーラさんに伝えている間にも、司会の人はオークションを進めます。どうやら人形に関する情報はある程度伝えられているらしく、人形の髪の毛が本物の髪の毛であることを公表します。それを聞いて高揚を示す周りの人たちに、思わず杖をこっそりと取り出してしまったのですが、ここで事を起こすわけにはいかないとシーラさんに止められてしまいました。
「落ち着け、客は髪の入手ルートを知らないんだ。罪は無い」
「ちなみにこちら、巷を騒がせている切り裂き魔からの出品です!どうです?すごいでしょう!!?」
「「「「うぉおおおおお!!」」」」
「ちくしょう、フォローしきれねぇ!!」
「それでは、オークションスタート!」
「っ!!」
目的の人形のオークションが始まった瞬間、私は壇上へと魔法を容赦無く放って客席から移動します。その際に人形が転がってしまいましたが、まぁいいでしょう。それよりもこの人たちに罪を教える方が先決ですから。
「あなた達は女性の敵です。その罪は万死に値します!・・・切り裂き魔さん、ここにいるのでしょう?どうぞ出てきてください」
とは言いましたが・・・・・・そうですよね、そう簡単に出てくるわけがないですよね。それでしたらこちらは、こうするだけです!
手始めに私の髪の毛の持っている人形の首をへし折り、胴体を投げ捨て、その髪の毛を思いっきり引っ張ります。わぁ、ミリミリ言い始めましたね。そしてその首を足元に捨て、思いっきり踏みつける!客の人達が悲鳴をあげたりしていますがそんなことは知りません!私は髪を取られた怒りや最近のストレス、その他諸々全て混みで何度も何度も!ていうかまだ足りません!!
「そこまでだよ」
「!!」
「僕の人形に酷いことしないでくれるかな?」
「・・・・あなたでしたか」
姿を表したのは昨日立ち寄った人形店の店主。彼女は何の悪びれた様子もなく壇上へと歩いてきました。
「うん、僕だよ!君がお店に来た時に思ったんだ、その髪素敵だなぁって!!」
「ふん!何がお金は要らないですか!結局こうやって、闇オークションで稼ごうとしているんでしょう」
「ううん、お金が要らないのは本当だよ!闇オークションで稼いだお金だって、いつも全部恵まれない人達に寄付しているしね!」
「「「おぉおおおお!!」」」
「キッ!!!」
会場中で起こる拍手、はっきり言って不愉快なので睨みつけたら簡単に沈まりました。全く・・・・!
「じゃあ、なんでこんなことをするんですか?女性の髪を切って、悲しませて・・・・喜んでくれる顔が見たいって言っていたのに!」
「それはね・・・・」
「それは・・・!」
「喜んでくれる顔が見たいっていうのは本当だよ!僕の特別な人形でここのお客さん達が喜んでくれるし、闇オークションのお金を寄付したら喜んでくれる・・!その顔最高だよね!!!」
「うぇ・・?」
「でも同じくらい最高なのは、誰かが悲しんでる顔や怒っている顔や笑っている顔や、色んな顔だよ!!喜怒哀楽の表情ってほんと素敵だよね!!あぁもう興奮しちゃうよぉ・・・!!!」
「・・・うわぁ」
「あなたのその怒っている顔もいいよねぇ・・!はぁ・・・はぁ・・・・」
「あ、はい、もういいです。じゃあ捕まってください」
まさか切り裂き魔の真実がこんな変態欲求だったとは・・・・・正直これ以上話したくなくなりましたし、さっさと捕まってもらいましょうそうしましょう。
「あらぁ?魔道士さん、僕実は魔女だよ?君が挑んで勝てる相手じゃないよ?」
「あ、私も魔女なんで」
「え?」
「残念ながら、あなたはここで終わりです・・・・・・・ふん!!」
シーラさんから預かっていた檻を使って切り裂き魔sなんを収容、その瞬間にシーラさんが切り裂き魔さんの両手を拘束し、無事に確保することが出来ました。
「いやぁ、協力感謝するぜ、イレイナ」
「どういたしまして」
「はぁ!?何をするの!?何をしているの!?あなた怒ってるんでしょ!?もっと怒りなさいよ!そしてその顔を私に見せて!!」
「はぁ・・・」
「いやぁあ顔を見せて!!!」
切り裂き魔さんがうるさいですが私はそれを無視し、一番大切な髪の回収を行います。魔法でちょちょいのちょい・・・っと!
「ふぅ・・・・やっぱり長い方が落ち着きますね」
「おぉ、なんかしっくりくるな」
「しっくりって・・・・シーラさんはこの状態の私とそこまで会っていませんよね?」
「え?あ、あぁ、そうだな」
どうにも歯切れが悪いような気がしますが、どうしたのでしょう?・・・・まぁとにかく、無事に髪の毛を取り戻すこともできましたし、こんなことをしている間に一夜明けてしまったようなので、一回宿に戻って着替えてから旅を再開・・・・・・
『激土乱読撃!ドゴーン!』
そんな音と共に壁を破壊して現れた巨大な大剣は会場を最も簡単に真っ二つに分けてしまいました。幸いにも負傷者はいないようですが、皆何が起こったのか理解ができずに混乱しています。かくいう私も状況は同じ・・・・・。
「シーラさんは会場の人達をお願いします、私は外を見てきます!」
「あ、おい!!」
先ほどの大剣によって破壊された壁から外へと飛び出し、念の為防御魔法を使いながら周囲を確認します。
原因はすぐに分かりました。外では二人の剣士が戦いあっていたようで、今もなおお互いを睨みつけているようです。その片方は・・・・・・この間も目撃した剣士・・・・・・
「相変わらず大振りな一撃だ。直撃で受ければ脅威だが・・・・避ければ何の問題もない」
「っ・・・・その声・・・・やっぱり・・・」
闇の剣士・カリバー・・・・・・そして・・・・変身者はおそらくーーーーーーーーいいえ、絶対という確信に変わりましたーーーーーーー私が探し続けてきた人物、ユウマでした。