魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第十話

時間は闇オークションが始まってしばらく経った頃に巻き戻される。時刻は真夜中、そんな時間にこの国へと辿り着いたユウマはランプドアランジーナブックの力で召喚した絨毯を使って城壁を飛び越え、たやすく中へと侵入していた。

 

彼はそのままの足で真っ直ぐ目的の人物がいる施設へと向かい、今度はこっそり侵入とかではなく堂々と入り口から中へと入っていった。

 

「な、なんだお前は!」

 

「おい、侵入者だ!」

 

「捕らえろ!!」

 

あまりにも堂々としているとはいえ不法侵入者、警備をしていた魔道士や中にいた剣士見習いが取り押さえようと向かってくるが、ユウマはそれを薙ぎ払っていく。

 

10・・・・50・・・・・100・・・・・どれだけの数薙ぎ払ったのか、もはや数えるのは諦めようとした時に目的の人物が姿を現した。

 

 

「おいおい、ずいぶんとまぁ派手に暴れてくれたなぁ」

 

「し、師匠・・・!」

 

「おうお前ら、あとは俺に任せな!」

 

 

姿を現した男はかなりの大柄で、背中にはユウマが持っている聖剣よりも一回りも二回りの大きい大剣を背負っている。ここは剣士の育成を目的としている施設であり、この男は指南役としてここに屯していたのだ。

 

 

「よぉユウマ、数年ぶりだな。元気だったか?」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・かぁ!冷たい奴だねぇ、久しぶりに会ったんだし、挨拶の一つくらいくれてもいいじゃねぇか」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・まいいや、それで?長年姿を眩ましてたお前が、一体何のようだ?」

 

その問いかけに、ユウマは言葉ではなく闇黒剣月闇とジャアクドラゴンのブックを取り出すことで示す。

 

「やっぱそれか・・・・・エスパーダの剣と本も持っているのか?あいつをどこへやった?」

 

「質問が多いですね。俺はここに話しをしにきたわけじゃない・・・・」

 

「・・・わーったわーった!相手をすりゃいいんだな」

 

男は背負っていた大剣ーーーー”土豪剣激土”を振り下ろし、一冊の本を取り出した。

 

『玄武神話』

 

『かつて、四聖獣の一角を担う強靭な鎧の神獣がいた・・・』

 

「ふん!」

 

『玄武神話!一刀両断!』

 

「変身!」

 

『ブッた斬れ!ドゴ!ドゴ!土豪剣激土!』

 

『激土重版!絶対装甲の大剣が、北方より大いなる一撃を叩き込む!』

 

「おら、来いよ!」

 

「・・・・」

 

『ジャアクドラゴン』

 

「・・・変身」

 

『闇黒剣月闇!ジャアクドラゴン!』

 

『月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!』

 

彼が土の剣士・バスターへと変身したのを見て、ユウマもカリバーへとその姿を変える。

 

唐突に始まった二人の剣士の睨み合い、周りで様子を伺っていた剣士見習いはそれを息を呑んで見守っていた。

 

「・・・・・・・おらっ!!」

 

なかなか動く気配が無いカリバーに痺れを切らし、バスターは土豪剣激土を正面に構えてカリバーに向けて振り下ろした。カリバーはこうなることが既に分かっていたため避けるが、バスターはその手を止めることなく二撃、三撃と土豪剣を振るい続ける。カリバーはそれを闇黒剣で往なすが、その際に壁を突き破ってそのまま外へと出てしまう。

 

『必殺リード!ジャアクヘッジホッグ!』

 

「ふっ!」

 

「うおっと!?」

 

月闇より放たれるは無数の針。全て漆黒に染まっていたそれに気づいたバスターは土豪剣激土を盾代わりにすることで防ぐ。

 

「そいつはエスパーダの本じゃねぇか、やっぱりお前が持ってるんだな。他の二冊もあるのか?」

 

「・・・・望みとあらば」

 

『必殺リード!ジャアクケルベロス!』

 

振われた闇黒剣から三つの頭を持つ獣の形をしたエネルギー体が出現してバスターを襲う。

 

「悪いが、そいつはもう見飽きているんだよ」

 

『玄武神話!ドゴーン!』

 

「大断断!!」

 

『激土乱読撃!ドゴーン!』

 

土豪剣の刀身を巨大化させ、ケルベロスのエネルギー体ごとカリバーを叩き潰そうと振り下ろす。

 

「っ!」

 

その目論見は半分だけ達成する。ケルベロスのエネルギー体は一瞬の内に消滅したが、肝心のカリバーは優々と避け切り、それによりカリバーの背後にあった建物へと直撃してしまう。

 

「相変わらず大振りな一撃だ。直撃で受ければ脅威だが・・・・避ければ何の問題もない」

 

「やっぱ避けられるよなぁ・・・・しょうがねぇ、お前相手に出し惜しみを出来ねぇな」

 

『ジャッ君と土豆の木』

 

『一刀両断!ブッた斬れ!ドゴ!ドゴ!土豪剣激土!』

 

バスターがブックを新たに変えると、その左腕が変化する。そこから土豆をあたかも弾丸のように射出してくる。

 

『必殺リード!ジャアクイーグル!』

 

カリバーは慌てず、ストームイーグルライドブックを使用して小規模の炎の竜巻を召喚、土豆を全て燃やし尽くした。

 

「ふっ!」

 

「おっと!?」

 

その炎の竜巻を突っ切ってバスターへと攻撃を仕掛けるカリバー。突然のことではあったがバスターはそれを何とか受け止めることに成功。離れる前に左手から伸びている一本の蔦をカリバーへと巻き付かせた。

 

「こいつは避けられねぇだろ!」

 

ジャッ君と土豆の木!ドゴーン!』

 

「大断断!!」

 

『激土乱読撃!ドゴーン!』

 

瞬間、蔦はその長さを急速に縮めていく。それにより通常よりも加速するバスターは、その勢いで拘束しているカリバーへと土豪剣を叩きつけようとする。

 

「・・・・・・」

 

『闇黒剣月闇!ジャオウドラゴン!誰も逃れられない・・・』

 

すぐさまその姿を変えたカリバー。その際に生じる衝撃により蔦の拘束を解除、バスターはそのまま押し返されてしまう。

 

「うぉっ!?・・・おいおい、まじかよ」

 

今の一撃を防がれるとは思っていなかったらしく、バスターは立ち上がって土豪剣を構える。そのまま次の一撃を探し始めた時だった。

 

 

 

「ユウマ!!」

 

 

 

まるでこの場には不釣り合いなドレス姿をした少女が声をあげた瞬間、カリバーの動きが止まった。それもそうだろう、その声の主は彼の行動理由なのだから。

 

振り返りその少女ーーーーーイレイナを見るカリバー。仮面によって顔が隠されているのが些か残念であり、彼がどんな顔をしているのかは全く分からない。

 

「ユウマ、何でしょう?」

 

まるで答え合わせかのように、カリバー・・・・・・否、ユウマは変身を解く。最後に会った時とは服装や顔つきなど、要所の差異はあるが、それでもその顔は間違いなくイレイナの知るユウマの顔だった。

 

「・・・やっぱり・・・・・やっぱりユウマだ・・・・」

 

探し続けていた人物の顔を見て、イレイナは思わず泣き出しそうになる。出来るのなら今すぐ抱きつきもしたい。何に、その足は動かない。いや、動かせない。ユウマが放つその雰囲気が、彼女の知るそれとは大きく異なるからだ。

 

「ユウマ・・・・何があったんですか・・?どうしてあなたがカリバーになっているんですか?今までどこで何をしていたんですか!?」

 

矢継ぎ早に様々な質問が紡がれる。当然だ。長い間探し求めてきた人物が今目の前にいるのだから。

 

どうしてカリバーに変身しているのか、おじさんはどうしたのか、なぜ味方のはずの剣士と戦っているのか。聞きたいこと、聞かなきゃいけないことは沢山ある。

 

「・・・・・・・・」

 

「黙ってないで何か言ってください!!」

 

「・・・・・・全ては世界を救うためだ」

 

「・・・どういうことです・・?」

 

「俺は、未来を見た」

 

ユウマは語り出す。それがイレイナが欲している内容では無いにしろ、紡がれた言葉は途切れない。

 

「世界は滅びへの未来へと進んでいる・・・・救うには全ての聖剣を封印する必要がある」

 

「ちょっと待ってください・・・・未来を見た?世界が滅びる?・・・一体何を言っているんですか?」

 

「聖剣を一本封印した程度じゃ未来は変わらない・・・・・俺がやるしかないんだ」

 

話されるのはあまりにも唐突な内容。とても簡単に理解できるようなものではなく、イレイナも全てを飲み込み切れていない。それでも何とか言葉を絞り出す。

 

「あなたの話が、真実だとしても・・・・・本当にそれしか手段はないんですか?あなたがどうやってそれを知ったのかは知りません。けど、手段は一つだけではないはずです。もしかしたら他にも・・・・」

 

 

 

 

 

 

「「剣士と争わずに世界を救う手段があるかもしれない/ません」!!・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

「他の剣士や魔女と一緒なら世界を救う手立てだって見つけられる・・・・・だろ?」

 

ユウマの口から紡がれたのはイレイナが紡ごうとした言葉。それを一語一句違わずにユウマは述べた。

 

「この未来も見た・・・・・いくつもの未来を見た!だけど・・・・一つも希望は無かった」

 

たとえ他の剣士と手を結んだとしても、魔女と協力したとしても、未来は変わらない。まるで運命付けられているかのように、世界は滅びていった。まさに絶望。決して抗うことが許されない闇の力。そんななかで見つけた、数少ない希望ーーーーーーー。

 

「イレイナ、お前は近いうちに自らの無力さに絶望する。だが安心しろ、お前の元には光が来る。その光が、お前を導くだろう。・・・・・・・これで話は終わりだ」

 

『ジャオウドラゴン!誰も逃れられない・・・』

 

再びカリバーへと変身するユウマ。まるで、自らの顔を隠すかのように。

 

「おい・・・・その話、もっと詳しく教えろ!!」

 

先ほどまでの話を聞いていたのはイレイナだけでは無かった。直前まで戦っていたバスターも割り込むことなく、ただ黙って話を聞いていた。・・・・聞かなきゃいけないと、思った。

 

「おらっ!」

 

「ふっ!」

 

「おいイレイナ!」

 

カリバーとバスターの戦いが再び始まる中、周辺住民の避難を終えさせたシーラが合流する。動きやすさを考慮してか、先ほどまでのドレス姿ではなく魔女の姿に戻っている。

 

「ったく、いくら魔女とはいえ勝手な行動はするな。何があるか分からないんだから・・・・・って、あれはまさか、闇の剣士か?」

 

「っ、シーラさんは、カリバー・・・・闇の剣士を知っているんですか?」

 

「・・・・・あぁ、少し前に王立セレステリアで大暴れしたからな。今じゃ悪い意味で噂立ってるぜ」

 

「王立・・・セレステリア・・・!?」

 

王立セレステリア。かつて旅の道中で立ち寄り、そして恩師と再開した街。この旅の中で、最も気に入った街。いつか、ユウマと一緒に見たいと思ったあの景色を見せてくれる街を、他でもないユウマ自身が、破壊した。

 

「どうして・・・・」

 

「ん?何か言ったか?・・・・・!?」

 

シーラは驚く。いつの間にかイレイナの周りには無数の光弾が浮かび上がっていた。しかし、その光弾は魔女が従来使う光弾とは全くの別物・・・・・魔女歴も長いシーラでさえも、全く知らない魔力を帯びていた。

 

 

 

「あああぁぁあぁあぁぁあぁぁあ!!!」

 

 

 

叫び声と共に放たれるその光弾は、剣を交えている二人の剣士に向かって飛来。急なことに、二人の剣士は反応ができなかった。

 

「うぉお!?」

 

「何・・!?」

 

驚き、イレイナを見るカリバー。だが、彼女はまるで疲れ尽きたかのように地面へと倒れ伏していった。

 

「っ!」

 

思わず手を伸ばしかける。だけど・・・・・彼にはやらなきゃいけないことがある。他ならぬ、イレイナのために。

 

『必殺リード!ジャオウドラゴン!』

 

一瞬の迷いの末に出した答え。カリバーはジャオウドラゴンのライドブックの闇黒剣に読み込ませ、バスターへと止めを刺しにいった。

 

「おいおい・・・何だったんだ今のは・・・って、何!?」

 

先ほどの光弾によって意識がイレイナの方に向いていたため、気づくのが遅れてしまった。バスターは五体の竜に飲み込まれ、変身が解除される。

 

「二本目・・・」

 

『ジャオウ必殺撃!』

 

闇黒剣の切先は地面に転がっていた土豪剣激土のエンブレムへと叩きつけられ、土豪剣激土はその力を失ってしまった。そして、今度は切先をバスターの変身者である男へと向ける。

 

「お、おい、何の真似だ?」

 

「詳しい話を知りたいのでしょう?だったら、あなた自身も味わってくるといい」

 

「おい待て・・・待て!!」

 

必死の叫びも届かず、振り上げられた闇黒剣は真っ直ぐ男を切り裂いた。切られた場所からは瞬く間に闇が漏れ始め、男は苦しみながらその体は消滅した。

 

「・・・・・・」

 

これでこの街での目的は無事終了。やることを終えたカリバーは地面に転がっている土豪剣激土、並びにバスターが使用した二冊の本を回収し、月闇で空間を切り裂いた。

 

「おい待て!」

 

そのまま闇の世界へと入ろうとした所で、シーラが声をかけてくる。それに反応し、少しだけ振り返るカリバー。その目線の先には、倒れ伏しているイレイナの姿が。

 

「・・・・・・」

 

結局、何も言葉を発しないままカリバーは闇の世界へと消えていき、裂け目は閉ざされた。シーラは何もできなかったことに無力感を感じながらも、隣で倒れ伏している少女を運ぶのだったーーーーーーー。

 

 

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