魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第十三話

風によって吹き飛ばされたイレイナの帽子。それは空をフヨフヨと漂い、ある男がそれを掴んだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

時刻は真夜中、月明かりだけが辺りを照らしてる何もない平原をかなり遅いスピードで進んでいる一つの少女の姿が。そう、イレイナである。

 

時計郷ロストルフの一件のあと、イレイナは夜明けを待たずに街を出た。金がなかったから宿に泊まることが出来なかった、というのもあるが、一番はあの街にこれ以上居たくなかったのだ。あのままあの街にいたら、自分の無力さに苛まれ続けることになる。無意識でもそれを理解したイレイナは、一頻り泣いた後にすぐ街を後にした。

 

まるで酒を飲んだ後のようにフラフラと飛行しているが、幸いにも周りに人はいない。もし人がいたら、とても面倒臭い事態になっていただろう。いや・・・・もしかしたら人がいた方が良かったかもしれない。

 

「あなたが灰の魔女・イレイナですね?」

 

「・・・あなたは・・?」

 

「私はソードオブロゴスの剣士、サーマと言います。私と共にソードオブロゴスへと来てくれませんか?」

 

何もなかったはずの場所に突然現れたサーマという女性。理由も話さずに手を差し伸ばしてくる。

 

「・・・なぜですか・?」

 

「マスターロゴスが呼んでいるからです」

 

「マスターロゴス・・・・」

 

話された理由もイレイナからしても掴みどころの無い内容だった。一言にマスターロゴスと言われても、イレイナからしたらソードオブロゴスのトップに呼ばれる覚えはない。たった一つの可能性を除いて。

 

「・・・ユウマのこと、ですか・・?」

 

「・・・・・えぇ」

 

多少の間を置いてサーマは頷く。果たして素直についていくべきかどうか・・・・・・イレイナには判断がつかない。

 

差し出されている手を取るかどうか迷っていると、サーマは痺れを切らしたのか腰に滞納していた聖剣を手に取った。

 

「あまり手荒にしないよう言われていましたが・・・・・・まぁ、多少傷有りでも問題はないですよね?」

 

「っ!」

 

刃物を向けられる恐怖。先ほどの記憶がフラッシュバックする。イレイナは杖を取り出して反撃することも防御することも忘れ、後退しようとする。しかしーーーーーーーー

 

 

 

「逃げられると思っているの?」

 

「なっ!?」

 

 

突如発生した突風に、、イレイナはバランスを崩して箒から落ちてしまう。もとよりいつバランスを崩しておかしくない飛行をしていたが、サーマの持つ聖剣より生み出された風によってそれが早まった。

 

「いっ・・・つぅ・・」

 

「ほらほら、魔女なんでしょう?せっかくなんだし、もっと楽しませてくださいよ?ねぇ!」

 

地面に倒れているイレイナへと抜いた聖剣を突き立てようとするサーマ。まるで戦いを楽しんでいるかのようで、笑顔で向かってくる。

 

セレナの顔が被さる。体が硬直し、避けることも叶わない。イレイナは目を瞑る。来る衝撃を想像して、一筋の涙が流れる。

 

 

 

 

 

しかし、その衝撃が来ることはなかった。

 

 

 

「・・・・?」

 

 

恐る恐る目を開けるイレイナ。彼女の目前では、聖剣を振りかざそうとしているサーマの手を掴んでいる一人の男の姿があった。その顔はフードを目深に被っているためよく見えない。

 

「彼女を連れてかれるのは困るな。ここは引いてもらおう」

 

「ちっ・・・誰よあんた?邪魔してんじゃないわよ!」

 

掴んでいる手を振り払いそのまま斬りかかる。男はそれを軽々と避け、呆然としているイレイナを抱えて距離を離した。

 

「彼女の力はまだ発露したばかり、まだ連れてかれるわけには行かない」

 

「こっちの質問を無視してんじゃないわよ!人の楽しみを奪っておいて!」

 

「貴様の遊び相手ぐらい、俺が変わってやろう」

 

そう言って、男は一冊の本を取り出す。

 

『金の武器 銀の武器』

 

『Gold or Silver』

 

「なっ・・・それはまさか・・!」

 

『最光発光!』

 

「変身!」

 

『Who is the shining sword?』

 

腰に取り付けられていたバックルから聖剣を引き抜き、男はその中へと収束される。剣士であり、剣でもある存在。光の聖剣・最光だ。

 

『最光一章!金銀の力を得た輝く剣!最光!』

 

「・・・・そう、なるほどね・・・・あなたが失われた光の聖剣というわけ・・・」

 

はるか昔に失われた光の聖剣だが、どうやら組織の一部の人間はその存在を把握していたらしい。サーマはその光の聖剣が姿を表したことに驚きはしたが、すぐに自分の果たすべき役目を認識する。

 

「丁度いいわ。光の聖剣・・・・・あなたも回収するとしましょう」

 

『猿飛忍者伝』

 

『とある影に忍は疾風!あらゆる術でいざ候・・・』

 

取り出したライドブックを持っていた聖剣・・・風の聖剣”風双剣翠風”へと装填する。

 

『双刀分断!』

 

「変身!」

 

『壱の手、手裏剣!弐の手、二刀流!風双剣翠風!』

 

『翠風の巻!甲賀風遁の双剣が、神速の忍術で敵を討つ!』

 

対抗するように剣士としての姿、風の剣士”剣斬”へと姿を変えたサーマは、二つに分断された聖剣を持って最光へと挑み始める。

 

「失われた光の聖剣・・・・・どれほどのものか楽しませてもらうわ!」

 

風双剣の力で風を生み出す。それもただの風ではなく、触れたものを切り裂く鋭利さをも持っている。

 

「今、風を作った・・?それじゃあさっきのも・・」

 

「ふっ、その程度・・・・俺に通用しない!」

 

最光はまるで泳ぐように風に乗り、そのまま剣斬へと近づく。

 

「ふっ!はっ!」

 

「ちょっ、こいつ・・・・だぁもう!チョコマカしてんじゃないわよ!!」

 

最光がグルグルと回転しながら剣斬の周囲を飛び回ることによって、剣斬は冷静さを揺さぶる。言ってしまえば簡単な挑発だ。このような挑発は短気な人ぐらいにしか有効ではないが・・・・・先ほどのイレイナとのやりとりから問題無く有効だと判断した最光は実行へと移した。案の定、剣斬は自身の周囲を攻撃もせずに飛び回る最光に苛つき始めている。

 

「さて、君はこいつの相手でもしてみるといい」

 

『Who is this?』

 

最光が光り輝き、地面に出来た最光の影から人形の最光シャドーが召喚される。

 

「あら、人の形にもなれるのね?」

 

最光シャドーを認識するや否や、双剣の風双剣で斬りかかる剣斬。が、剣斬の繰り出す斬撃はその全てが最光シャドーを擦り抜ける。

 

「って、あら?」

 

少し不思議そうになりながらも、再度斬りかかる。しかし、最光シャドーには全く当たらない。

 

「ちょっと、何よこれ!?どうなってるのよ!!?」

 

剣斬が棒立ち状態の最光シャドーの相手(?)をしている間に、本体である最光はこっそりとイレイナの元へと行く。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい・・・一応・・・・・・あの、あなたは?」

 

「俺のことはひとまず後だ。ここから離れるぞ」

 

「離れるって・・・・でも、あの人から逃げられるんですか・・?」

 

「問題ない。少し目を瞑っていた方がいいかもな」

 

「わ、分かりました・・・」

 

最光の指示のまま、イレイナは目を瞑る。それを確認した最光は聖剣から強烈な光を発する。

 

「きゃっ!?ちょっと何よ!!・・・・・・・って、あれ?」

 

突然の光に顔を背ける剣斬。やがて光が止んで顔を上げると、周囲には誰もいなくなっていた。

 

「あら?あらら?・・・・・・どゆこと?」

 

まるで訳が分からないと、首を傾げる剣斬が虚しく佇んでいた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「おい、もう目を開けても問題ないぞ」

 

「・・・・あれ?ここは・・?」

 

声をかけられて目を開けたイレイナは、自分の周囲が先ほどまでと全く違う街中であることに驚く。近くに剣斬も含めて人の姿は一人しかなく、その一人は先ほど剣斬と戦っていた光の聖剣となったその人ぐらいだ。

 

「ここはさっきの場所から少し離れた場所にある街だ。風の剣士を撒く分にはこれで十分だろう」

 

「・・・・あの、それであなたは一体?」

 

「俺の名はユーリ。光の剣士であり、聖剣そのものになった者だ」

 

「聖剣そのもの・・・・そんなことが出来るんですか?」

 

「光の聖剣は特別だ。あれは最初に生まれた二本の聖剣の内の一本、悪意ある者の手に渡ったら困るからな。俺自身が聖剣と同化することにしたんだ」

 

「はぁ・・・・・そうですか・・・そんな人がどうして私を?」

 

「君は今組織に狙われている」

 

「組織に・・・?」

 

「君が今組織に捕まるのは色々と困るんだ。ユウマの行動も全て無に帰す可能性すらありうる」

 

「ユウマ・・・・?あなた、ユウマのことを知っているんですか!?」

 

ユーリの口からユウマの名前が出た瞬間、イレイナは時間が真夜中であることも忘れて大声を出しながらユーリの肩を掴む。

 

「あぁ、知っている。何せあいつとは一度剣を交えたからな」

 

「剣を交えたって・・・何があったんですか?もしかして聖剣の封印のために・・・・・」

 

「いや、あいつが聖剣の封印をする行動を始めたのは俺と剣を交えた後からだ」

 

「え?」

 

「あいつは俺との戦いで闇黒剣月闇の真価を引き出し、この世界の未来を見た。だから聖剣を封印し始めたんだろう」

 

淡々とユウマとの戦いの結末を語り出すユーリ。

 

「まぁあの戦い自体、あいつに闇黒剣の真価を引き出させるためにしたことだが」

 

「ちょ、ちょっと待ってください・・・・えぇっと、それっとつまり、ユウマが今のようになってしまったのってーーーーーー」

 

「ん?・・・・あぁ、ひとえに俺が原因とも言えるな」

 

あっけらかんと答えるユーリに、イレイナは頬を思わず引き攣らせてしまった。

 

 

 

 

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