魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第十四話

「お〜い、どうしたんだ?」

 

「ついて来ないで下さい!」

 

日も登り始め街中に人の姿がぼちぼちと見え始めた頃、イレイナはその中を一人で歩いていた。その後ろからユーリが声をかけるが、イレイナはそもそもの同行を拒否している。

 

理由としては、昨夜の会話が原因だ。話から今のユウマの行動の原因がユーリにあったと発覚、イレイナはかなり怒っているらしい。

 

「そもそも貴方がついてくる必要なんて全く有りません!私は魔女です、組織が狙ってるが分かった以上対処ぐらいはーーーーーーーってあれ?」

 

ふと後ろを見ると、先ほどまでいたはずのユーリの姿は無かった。確かについてくるなとは言ったが、そう簡単にいなくなるような人ではないことはすでにイレイナは理解していた。思わず来た道を戻って捜索し始めてしまう。

 

「全く・・・・一体どこにーーーーーー」

 

幸いにも、目的のユーリはすぐに見つかった。どうやら何か気になることがあったのか、ユーリは道端に出ているパン屋のショーケースを食い入るように見ていた。その様はまるで子供のようだ。

 

「・・何をしているんですか?」

 

「なぁ、これは一体なんだ?」

 

「何って・・・パンではないですか。そんなことも知らないんですか?」

 

「このようなパンは500年前には無かった」

 

「あぁ、なるほど・・・・」

 

「よし、これを一つくれ」

 

「え、お金はあるんですか?」

 

「金か?それなら・・・・」

 

「・・・・・あの、これってまさか500年前のお金とか言いませんよね?」

 

「そうだが?」

 

「使えるわけないじゃないですか!!」

 

まるでコントのようなやり取りを繰り広げる二人だが、場所が悪すぎる。パン屋の店主もそろそろ顔の圧が強くなり始めている。

 

「うぅ・・・・そういえば私もお金が無かったんでした・・・・」

 

「こいつは使えないのか?」

 

「ちょっとこっちに来てください!」

 

急いでユーリを連れてそこから離れるイレイナ。流石にこの男には常識を与える必要性がある。あとお金を稼がなくては。

 

「いいですか?今の世は云々かんぬんーーーーーーーーー」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

さて、数時間が経過した頃、街中に一つの怪しい人影が現れた。顔はフードを目深までかぶっているため確認できないが、灰色の髪の毛が覗き出ている。そう・・・・イレイナだ。

 

「もし、そこの方・・・」

 

イレイナは怪しげな格好のまま丁度良く近くを通りがかった青年を呼び止める。

 

「私は旅の占い師でございます・・・・あなた、何か悩みを抱えていますね?」

 

「え?いや、別に悩んでなんかないけど・・・」

 

「いや、私には分かります。例えば容姿・・・・あるいは仕事・・・・・もしくは恋とか」

 

「・・!」

 

「ズバリ!あなたは恋人が出来ないことに不安を感じてますね?」

 

などと話してはいるが、当然全部出鱈目、嘘である。ただ相談事なりそうな単語をを言っていき、相手が反応した単語のことを掘り下げているだけだ。つまり、詐欺である。

 

「・・・お前は何をしているんだ?」

 

「何って・・・見たらわかるでしょう?占い師ですよ」

 

先ほどの青年との話も終わり、しっかりと金を受け取ったところで事の顛末を見ていたユーリが声をかけてくる。

 

「お前は魔女であって占い師ではないだろう。なぜ占い師の真似事なんてしている」

 

「そりゃお金稼ぎのためですよ。私は今無一文ですし、よくよく考えたら昨日のクッキーから何も食べていませんし、なるべく労働力も必要なく稼げる手段を選んでいるんです」

 

「なるほど・・・・一理あるな」

 

あぁ、どうしてツッコミ役がいないのだろう。ユウマがいたら止めてくれたのだろうか。残念ながらその願いは届かず、ユーリが止めることもなくイレイナが荒稼ぎをするのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「結構稼げましたね」

 

「おぉ〜」

 

イレイナは悪い笑顔を浮かべながら財布の詰まった金貨を眺める。少し前までは一枚も入ってなかった財布はもはやこれ以上入れることが出来ないほどパンパンに硬貨が詰まっている。

 

もっとも不思議なのは占い師としては嘘しか言ってないのにも関わらず当たることが多いことだ。多少の情報操作はしたものの、ここまで当たると少し怖いと思うレベルで当たる。

 

とにかく、今日一日たっぷりと使って稼いだお金を使って、宿とほぼ1日ぶりの食事へとありつける。というわけで、イレイナとユーリの二人は宿で二部屋取り、食事をして腹を満たし、それぞれの部屋で夢の世界へーーーーーーー

 

「ってちょっと待ってください!!なんですかこの流れは!?」

 

と、大声を上げながら体を起こすイレイナ。あまりにも自然な流れでユーリと行動を共にしているが、よくよく考えればイレイナはユーリを拒絶していたはずだ。

 

「なんでこうなったんでしたっけ?え〜と確か・・・・・」

 

今日一日の流れを振り返ってみよう。まずユーリがパンに興味を示す、二人揃って金がないことに気づく、占い師としてお金を稼ぐ、現在に至る。・・・・・・本当、どうしてこうなったのだろうか。

 

「そうです、どうして私が彼の分の食費と宿代を払わなければならないのでしょう?確かに彼には助けられましたがーーーーーーーー」

 

急に沈黙が訪れる。先程までの勢いはどこへ行ったのか、手は力無く置かれている。

 

「あぁ・・・・・また私、何も出来なかった・・・・・」

 

人形の国でユウマと対峙した際も、時計郷ロストルフでエステルがセレナを殺した時も、剣斬に襲われた時も、イレイナは何も出来なかった。いつも見ていることだけしか出来なかった。

 

昼間は気丈に振る舞っているイレイナだが、その心の中にある陰りは全く消えていない。

 

「どうした?」

 

「え?・・・・・・・・って!?」

 

声をかけられ横に顔を向けるとそこには何故かユーリの姿が。思わず手近にあった枕をユーリの顔面に向けて投げつけてしまう。

 

「おい、いきなりなんだ?」

 

「なんだじゃないですよ!!なんでここにいるんですか!?」

 

「お前には話しておこうと思ってな。お前がどういう存在なのかを」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

今から1000年前、こことは違うもう一つの世界・・・・ワンダーワールドに、『二つの世界を繋ぐ女性』と5人の人間が降り立った。後に1人はソードオブロゴスを造り、1人は残ってワンダーワールドを守ることになった。残りの3人は力に魅入られ、『全知全能の書』と呼ばれる本の一部を取り込み、メギドへと変貌した。

 

「全知全能の書・・・・?」

 

全知全能の書ーーーーーーはるか昔にこの世界を創造し、この世のあらゆる知識が収められている本だ。だが、その本はすでに失われている。

 

1000年前、ワンダーワールドに降り立った内の3人がメギドになって、ソードオブロゴスと戦った。その戦いの際に全知全能の書は破け散り、その一ページ一ページが”ワンダーライドブック”へと変わった。

 

「ワンダーライドブック・・・・・剣士が変身するために使っている、あの本ですね?」

 

そうだ。そしてその戦いの最中に光と闇の聖剣が誕生した。光の聖剣”光剛剣最光”には様々な奇跡の力が、闇の聖剣”闇黒剣月闇”には光の聖剣が悪用された時用に聖剣を封印する抑止力としての力が込められている。だから闇黒剣月闇は他の聖剣を封印することが出来るんだ。・・・だが、闇黒剣の力はそれだけではない。

 

「・・・未来の見る力、ですね」

 

あぁ、闇黒剣を振るうものは必ず未来を見ることになる。だが、それはあまり使い勝手のいいものじゃなくてな、より正確に言えば「未来の災いの啓示」と言った方が正しい。未来の知ることが出来るのは、その副次的な効果だ。

 

「ユウマはそれで世界が滅び未来を知って、聖剣を封印し始めた・・・・・と」

 

 

世界が滅びという未来を変えるために全ての聖剣を封印するーーーーーーーー確かに可笑しい行動ではないが、それが全てじゃないはずだ。何故なら奴の行動理念には、必ずある人物が関わっているのだから。

 

「え・・・?どういう、意味ですか・・?」

 

そもそもあいつが組織を離れたのは未来を見る前だ。つまり、未来を見なくても組織を離れるだけの理由があいつにはあったということだ。・・・・・そこで最初の話に戻ろう。1000年前、二つの世界を繋ぐ女性が現れた。その女性・・・・正確にはその女性の力、世界を繋ぐ力は世界の結び目が解かれる時に現れるはずだった。今はまだ世界の結び目が解ける時ではない・・・・にも関わらず、すでにその力を持つ者がこの世界に現れている。そして組織が欲しているのはその力を持つ者。

 

「ちょ・・・ちょっと待ってください!二つの世界をつなぐ存在はすでにこの世界のどこかにいて、それでその人を組織が欲しているって・・・・」

 

おそらく、ユウマはなんらかの理由で組織がその者を狙っている事実を知った。だから組織を離れて一人で行動することにしたんだ。そして未来を知った。世界が滅ぶ要因の中にその少女が含まれていることを知ったんだ。それこそが、ユウマが聖剣を封印する、滅びの未来を変える本当の理由。

 

「それって・・・・・・・・でも、そんな・・・・まさか・・・・」

 

灰の魔女・イレイナーーーーーーーお前こそが、二つの世界を繋ぐ存在。組織が欲し、ユウマが本当に救おうとしている、唯一の存在なんだ。

 

 

 

 

 

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