魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第十六話

「失礼しま〜す!」

 

「意外と堂々と行くんだな」

 

「そりゃそうですよ!さっさと仕事を終わらせたいですし」

 

「真面目なのか不真面目なのか分かんねぇな」

 

全く・・・・・しかし、外からは分からなかったが、どうやらこの廃墟にはかなりの魔力が籠っているな。正確にはこの森が持つ魔力なのだろうが・・・・。

 

「うぇ!?」

 

「あ?どうし・・・・・」

 

サヤの驚きの声に正面を向くと、そこには一つにティーポッドが浮かんでいた。その様はあたかも俺たちを出迎えているかのようだ。誰かが魔法で動かしているのか?

 

ティーポッドはその向きを変えると、奥に向かって動き出す。

 

「これは・・ついてこいってことでしょうか?」

 

「さぁな・・・・・どちらにせよ、ずっとここにいても意味がない。行くぞ」

 

誘われるがまま、俺たちは奥へとどんどん進んでいく。いくつかの扉を横切った後、ティーポッドは一つの扉の前で止まった。

 

「入れ、ってことだろうな」

 

「それじゃあ開けますよ。・・・・・・わぁ!」

 

サヤが扉を開けることで、部屋の中の様子が分かる。先のティーポッドと同じように、椅子や鏡、ぬいぐるみ、様々な家具が自由に動き回っていた。そのどれもがヒビ入っていたりと壊れている。

 

これはまた予想外の光景だな・・・・誰かが魔法で動かしているとしても、一体何のために動かしてるんだ?・・・・ここにとどまるのは危険そうだな。

 

俺は一人、闇黒剣を使って闇の世界へと入りその場から離れる。部屋には窓がついていたからな、俺はその窓を通じて外から様子を見ることにした。・・・・あ、サヤが何か叫んでる。

 

それにしても、おかしな廃墟だな。家具はまるで意思を持つように動き回っているわ、動かしているであろう人の姿は見られないわ、そもそもこの廃墟に溜まっているこの魔力は・・・・・ん?

 

部屋の中を覗くと、サヤはいつの間にか来ていた一人の老人と一緒に壊れた家具の修復作業をしていた。・・・あいつ、何やってんだ?確か老人の捜索依頼を受けたって言ってたよな、だったらあの老人が探していた奴か?だとしたらさっさと連れ戻すはずだが・・・なんで家具の修復なんかしてんだ?

 

「ひとまずは様子見、かな・・・・」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

あるから数時間が経過。部屋の中ではあいも変わらず家具の修復が続いている。さすがに同じ絵ばっかで飽きてきたぞ。・・・・・・・やっぱり何かおかしいな。ちょっと未来を見てみるか。

 

そう考えた俺は闇黒剣に手を触れ、少し先の未来を見る。

 

ーーーー外壁の一部が崩れている廃墟、気を失っている老人を肩で担ぐサヤの姿。そして壊れた家具の集合体と相対するカリバー(自分自身)の姿ーーーーーーーーー

 

「・・・・なるほど、そういうことか」

 

道理で家具を操っている人の姿が見当たらないわけだ。そもそも存在しないものなど、見つけることはできないからな。

 

しかし、だとするとちょっとめんどくせぇな。下手に中に入ったらあの二人のように無心に家具の修復をすることになっちまう。そうなったら本末転倒だし、そもそもそんなことに時間を費やしたくない。じゃあ最善の手は・・・・・・・・よし。

 

「よいしょ・・・・っと」

 

「うわぁ!?」

 

闇黒剣で空間を引き裂き、闇の世界を通じて部屋の中にいたサヤを引っ張り出す。やはり廃墟の外に出た段階でこの廃墟に蔓延る魔力からは解放されるようだ。サヤは先ほどまで無心で家具を修復していた時とは違い、はっきりとした意識を持ってあたふたしている。

 

「あれ!?何で僕は急に外に!?」

 

「俺が連れ出したんだ」

 

「あ、ユウマさん!どこに行ってたんですかもう!」

 

「別にどこでもいいだろ。それで?中で家具を修復してた気分はどうだ?」

 

「・・・・それが、可笑しいんですよねぇ。何か気づいたら家具を修理しなきゃって思っちゃって・・・・」

 

「だろうな」

 

「だろうなって・・・気づいてたんですか?」

 

「お前とあの老人の様子を見てな。・・・・・・・おそらくこの廃墟、正確には家具にはこの森の魔力が宿っている。それも通常とは違って変異した魔力がな」

 

厄介なのはそれによって家具達の意思が宿ってしまったこと。それによりここに足を踏み入れた人間を魔力で魅了し、家具の修復を行わせているのだ。たとえそれが魔女であろうとも、逆らうことはできない。

 

「一度ここに捕らえられたら、今後一生家具の修復する物語になるだろう。それこそ死ぬまで」

 

「うぇぇ!?それじゃ、あのお爺さんを早く助け出さないと!あぁでもどうすれば・・・」

 

「そんなの簡単だろ。外に連れ出せばいい」

 

「外に連れ出すって・・・・そのためには中に入らないと駄目ですよね?中に入ったらまた魅了されて家具の修理ですよね?それじゃあどうしようもないじゃないですか!!」

 

「落ち着け・・・・外に連れ出すのが不可能に近いのなら、中に溜まっている魔力を外に放出すればいい」

 

「ふぇ?」

 

「お前は魔女だろ。この廃墟を破壊すればいい」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

廃墟を視界の中に収められる程度の場所まで下がった俺は、木にもたれかかって様子を伺う。サヤはすでに箒で空中に浮かび上がっていて、いつでも放てるように風の魔法を貯めている最中だ。あれだけの魔法ならば、廃墟の壁を吹き飛ばすぐらい簡単だろう。老人の居場所は判明しているし、風ならば少なくとも致命傷となるほどの怪我を老人が負うこともないはずだ。

 

・・・それにしても、あれほどの風を作り出せるとはな。あいつは風に何らかの適正がありそうだ。

 

その時、肩越しにこちらを見たサヤと目が合う。最終確認だろう、俺が頷くとサヤは貯めていた風の魔法を廃墟に向けて解き放った。

 

「うぉ」

 

一瞬で崩れる廃墟の外壁。その衝撃は俺のところまで届いてくる。まぁ崩れたとは言っても、廃墟の上階部分の一部だけ。まぁ中に溜まった魔力を外に放出するぐらいでは十分だろう。

 

「ふぅ」

 

「うん、これだったら中の魔力も放出できただろう」

 

「わぁ!?いつの間にここに来たんですか!?」

 

サヤが地上に降りてくる間に。

 

「ほら、早く老人を助けに行ったほうがいいじゃないか?」

 

「あぁそうでした!ちょっと行ってきます!」

 

サヤはそう言い、廃墟の中へと入っていく。全く・・・・慌ただしい奴だ。

 

だが、まだ終わってはいない。まだあの未来には到達していないのだから。

 

「ギャー!?」

 

「・・・何とも分かりやすい・・・・・・変身」

 

『ジャアクドラゴン!』

 

カリバーへと変身し、サヤの後を追うように廃墟の中へと足を踏み入れる。中には先ほど見た光景が広がっていた。気を失っている老人を肩で担ぐサヤ。そしてそのサヤへと迫っている壊れた家具が集合した怪物。一種の怨念だな、こりゃ。

 

『必殺リード!ジャアクヘッジホッグ!』

 

「ふっ!」

 

紫の染まった針状の光弾が、サヤに迫っていた怨念へと直撃する。

 

「うぇ!?け、剣士!?」

 

『ぐぅううう!なんだ貴様!!』

 

「驚いたな、意思を持つだけでなく会話も可能とは。ならば聞いておこう、人を捕まえる理由は何だ?お前達に何があった?」

 

『ふざけるなよ・・・お前達人間が!私たちを傷つけたのだろう!!』

 

怒りのままに、巨大な腕となった家具達が叩きつけようとしてくる。

 

『必殺リード!ジャアク西遊ジャー!』

 

筋斗雲を召喚、家具達を受け止める。なるほど・・・・・こいつらは全員に、人間によって傷つけられ、そして捨てられた物達・・・・・その恨みが森の魔力と結びつき、意思を持つようになった。

 

「・・・お前達の思いは分かった。だが、人を恨むだけではどうしようもないぞ。確かに人はお前達を傷つけ、捨てたのかもしれない・・・・だが、そんなお前達を直すことができるのもまた、人なんだ」

 

『そうしなかったじゃないか!!壊れても直さなかった!傷ついたら捨てた!まだ使える道具もゴミのように見捨ててきた!だから!!』

 

「だから人間へ復讐する・・・・か?」

 

力を込め、巨大な腕となった家具達を押し返す。

 

「だが、お前達はここしか知らないだろ?世界は広い・・・・・お前達が思っている以上に。そしてその世界には様々な人間がいる。お前達が出会った人間のように物を大事にしない奴以外にも、大事にする奴や、修理する奴もいる。それを生業に生きている奴もいる。・・・・中にはうるさすぎる奴もいるがな・・・・・」

 

闇黒剣を見ながら思い浮かべるのはかつての仲間。その一人に聖剣に関してとても口うるさい奴がいたことを思い出す。

 

「お前達を直し、大事に使ってくれる奴は必ず見つけてやる。だから安心しろーーーーーーお前達の物語は俺が決める」

 

『っ・・・・黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ!!』

 

家具達は逆上し、襲いかかってくる。そこで俺は慌てず、闇黒剣月闇を地面に突き刺してある魔法陣を展開した。以前王立セレステリアでフランさん達に使用したのと同一の魔法、闇黒剣月闇のエネルギーを吸収する力を利用して俺が造り上げた魔力吸収魔法。

 

展開された魔法陣は廃墟の中に残留している残りの魔力を吸収していく。家具達が意思を持ち、自由に動き回ることができる原因、その魔力がなくなっていくことで家具の動きがどんどん鈍くなり、やがて崩れ出していく。

 

「だから・・・・今は眠れ」

 

やがて、全ての家具が崩れ落ちる。先ほどまでの自由に動き回る姿が嘘のように、ただの一つも動くことがなかった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ふぅ〜・・・・色々ありましたけど、無事に依頼達成ですね!師匠の所に行って報酬もらって来ましょ〜っと!」

 

色々と想定外な事態は発生したが、無事に老人を助けて依頼を達成したサヤは教会への報告と報酬の回収へと向かっていた。元々お金を稼ぐために今回の依頼を受けた節もあるので、報酬をしっかりと受け取らなければ意味がない。

 

「それにしても・・・・・ユウマさんは一体どこに行ったのでしょう?あの剣士さんもすぐにいなくなっちゃいましたし」

 

カリバー・・・・ユウマはサヤが気づいた時にはすでに姿を消していた。本来ならば依頼の協力者にはそれなりの報酬を渡すことになるのだが、その話をする前にユウマは居なくなっていた。時間があればあの後に森の中を捜索しただろうサヤだが、あいにく老人を放置するわけにもいかず、捜索は断念することとなったのだ。

 

「う〜ん・・・まぁ考えても仕方のないことですね、ししょ〜!」

 

教会へと辿り着いたサヤは扉を開け、その中の一室へと向かう。部屋にいるのは魔法統括教会に所属する魔法使い数人と、夜闇の魔女・シーラの姿が。サヤは迷わずシーラのもとへと歩み寄る。

 

「ししょ〜、依頼を無事に達成しましたよ〜、起きてくださ〜い!」

 

「だぁ、うっせぇなぁ!聞こえてるからそんな大声で話しかけるな!・・・ったく」

 

「随分とお疲れですね、何かあったんですか?」

 

「あぁ・・・そういやお前にはまだ話してなかったっけ。ほら、前に人形の国で切り裂き魔を捕まえた話は知ってるだろ?」

 

「あぁ、僕を差し置いてイレイナさんと二人で解決したあの」

 

「目が怖ぇよ・・・・・その際に遭遇した闇の剣士の行方だよ。あの後色々と捜索してみたが、どういうわけか足取りがさっぱり掴めねぇんだ」

 

「はあ、それは大変ですねぇ・・・何か手がかりは無いんですか?」

 

「手がかり言われてもなぁ・・・・・・あぁ、そういやイレイナがあいつの名前を呼んでたな。なんか見知った関係っぽかったし」

 

「は?イレイナさんと?その話もうちょっと詳しく」

 

「落ち着け!・・・・ちょっと距離もあったし避難誘導してたからはっきりとはしてないが、確かユウマとか言ってたな」

 

「え?ユウマ・・・・・・・・あぁ!!」

 

「うぉびっくりした!急に何だよ」

 

「そうでしたユウマさんの名前どこかで聞いたことがあると思ったら・・・イレイナさんが言ってたんでした!!」

 

「は?おいどういうことだ?」

 

「実は今回の依頼で向かった森の廃墟で、そのユウマさんと会ったんですよ!・・・ということはあの剣士さんもユウマさんが?」

 

「おい剣士に会ったのか?そいつは何の剣士だ!?」

 

「えぇっと・・・・あまり剣士には詳しくはないんですけど、紫色でした」

 

「っ・・・・間違いねぇ、そいつは闇の剣士だ。それで?そいつはどこに行った?」

 

「それが・・・気づいたらいなくなっちゃってて」

 

「・・・つーことは」

 

「どこに行ったか分かりません!」

 

「使えねぇ・・・・」

 

先ほどの興奮から一転、見るからに落胆するシーラ。

 

「だってしょうがないじゃないですが!まさか師匠が探しているなんて思ってもいなかったんですから!」

 

「クソ・・・・まぁしょうがねぇ、また別口が探すさ・・・・・・それよりもサヤ、お前に次の依頼だ」

 

「次の依頼ですか?まぁいいですが・・・・内容は?」

 

そうサヤが聞くと、シーラが取り出したのは一つの赤い箱。そこまで大きなサイズではなく、片手で抱えられるほどの大きさしかない。

 

「何ですかこの箱?」

 

「さぁな、随分前にある事件で押収された品らしい。今回はその箱を・・・・・ふっ」

 

キセルから口を外し、壁にかけられている地図へと煙を吹きかけるシーラ。地図へと当たった煙は矢印に形を変え、ある国を指し示した。

 

「ここから海に出て西にずっと進んだ先に、自由の街クノーツってところがある。そこの魔法統括教会にそいつを届けて欲しい」

 

「はぁ」

 

「その箱を届けて金を貰ってくるって依頼だ。簡単だろ?」

 

「え、それだけですか?そんなちょろい依頼なのに師匠がやらないんですか?」

 

「あいにく私はこの後用事があってな・・・・とにかく、頼んだぜ」

 

「まぁ分かりました、それじゃあ行くとしますね」

 

「あぁ、蓋は開けるなって話だ。そこんとこ、忘れんなよ」

 

「あいあいさー!」

 

新たな依頼を受け、サヤは次の街へと向かい始める。自由の街クノーツーーーーーーーー物語が交わる場所へと。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「いやぁ!これはすごいな!宝の山だよここは!いいのかい、こんなすごい場所教えてもらって!」

 

「あぁ・・・・むしろ、買い手でつくかどうかの方が心配だ」

 

再び森の廃墟へと戻って来ていたユウマ。今度は一人ではなく、近くの街にいた古道具屋を連れて来ていた。

 

「そりゃ多少の修理は必要だけど・・・・どれも質の良いヴィンテージ品だ。すぐに全部買い手はつくと思うよ」

 

「それを聞いて安心した・・・・それじゃあ俺はもう行く。あとのことは任せた」

 

「あぁ、ありがとな!」

 

家具を古道具屋に託し、その場を離れるユウマ。もう森の廃墟すら見えない所まで歩いてから、闇黒剣を取り出す。

 

今回は多少の寄り道をしたが、本来の目的を忘れたわけではない。ユウマは闇黒剣へと手を触れることで、未来を確認する。

 

「っ!?」

 

 

ーーーーーーー自由の街クノーツ。天より降り立つ見たことのない剣士。その剣士と戦闘を繰り広げるカリバー(自分)の姿。背後にはイレイナ、サヤ、フラン、シーラの姿。やがて戦闘の末に倒れ伏す自分。そんな自分に駆け寄ってくるイレイナに向かって剣士が聖剣を振り下ろすーーーーーーーーー

 

 

 

「くぁ!?・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・今の、未来は・・・・・」

 

見たことのない剣士と聖剣だった。だが、これで向かう場所は決まった。ユウマはその地へ向かって歩き出す。自由の街・クノーツへと。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ーーーーーーそうですか、光の剣士が姿を現しましたか。

 

 

ーーーーーー報告ご苦労様です。下がって構いません。

 

 

ーーーーーーふふ、失われた光の剣士が姿を現したのなら、次の段階へと進めるとしましょうか。

 

 

ーーーーーーあの猟犬を、解き放つとしましょう。

 

 

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