魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第二十四話

さらに数十日という時間が経過した。俺は毎日毎日修行を繰り返し、時には父さんに手合わせを頼んでいた。おかげで俺の剣の腕はメキメキと成長・・・・・・していればいいのだが、残念ながら相手が父さんだけだし、未だに一度も勝つどころか一太刀も入れられずにいる。あまり成長しているような実感は湧かない。

 

「どうしたもんかなぁ・・・・・・そういえば、もう一ヶ月近くイレイナと会ってないな。まぁ、あいつも魔女になるための修行で忙しいだろうけど・・・・・」

 

しかし、こうして一度イレイナのことを考えると、どうにも会いたくなってくる。というかちょっと寂しい。今まで一緒にいることの方が圧倒的に多かったし、こんなに長い時間会っていないのは今回が初めてだ。

 

「・・・・確か、森の奥って言ってたよな・・・・・」

 

俺は読んでいた本を閉じて机に置くと、そのまま家を飛び出す。ちょっとだけ・・・・ほんのちょっと見るだけなら大丈夫だよな・・・・・?

 

そう思いながらやって来ました家の裏手側にある森の奥・・・・そこに昔からある廃小屋に。前にヴィクトリカさんに聞いた話じゃここで住み込むの修行をしているってことだけど・・・・・。

 

幸いにもイレイナはすぐに見つけた。魔法の練習をしていたのだろう、彼女の前には切り倒された木が列になって横に並んでいる。イレイナの横には一人の魔女が。星屑の魔女だろう。

 

「さて、イレイナ。今から試験を行います」

 

星屑の魔女を確かにそう言った。まだ一ヶ月しか経ってないのに、もう試験か!さすがはイレイナ・・・・魔女になるのも時間の問題って言っていたのも、虚言じゃないってことだ。

 

しかし、一体どうしたのか・・・・・とうのイレイナは驚愕し、まるで信じられない者を見ているかのような目で星屑の魔女を見ている。まぁ、そりゃそうか・・・・確か最初の一ヶ月は、何も教わっていないはずだからな。・・・・・・・・・・ん?

 

何言ってんだ、俺は・・・・この一ヶ月がイレイナが何をしていたのかなんて、俺は一切知らない・・・・。なんで何も教わってないなんて言えるんだ?

 

目の前では普段の俺の修行では全く見ない、魔法の戦いが・・・・・・否、一方的な蹂躙に近い何かが繰り広げられていた。魔力の塊、熱の線、風の刃、岩石の雨、雷の槍・・・・・・ありとあらゆる魔法がイレイナを襲っている。当然イレイナは太刀打ちなんてできない、魔法を発動なんてしなくとも、目の前の魔女との格の差を思い知っている。しかし、割り込んではいけない。あくまでのこれは試験・・・・あの星屑の魔女・・・・・フランさんがイレイナを殺すことは絶対にないし、なおかつこれは今のイレイナに繋がる重要な出来事だ。割り込んで台無しにするわけには・・・・・・

 

「っ・・・・・また・・・俺の知らない記憶が・・・・?」

 

さっきから何かがおかしい。どういうわけか俺の知らない記憶が頭の中に流れ込んで・・・・・本当に知らない記憶か・・?俺は本当は知っていた?

 

『ははははは!!』

 

『待って!返してよぉ!!』

 

「!?」

 

突然、俺の周りの景色が大きく変わる。さっきまでの木々が生い茂った森の中とは違い、辺り一面人工物の街の中・・・・・これは、少しだけ昔のロベッタだ。そこでは、複数人の子供が何かを持って走り回り、それを一人の少女が必死になって追いかけている。余程大事なものなのか、追いかけている少女の目元には涙が浮かんでいる。

 

「この・・・・光景・・・・っ!」

 

見間違うはずがない、あの少女はイレイナだ。まだ子供だった頃、同年代の子達が走り回ったりしているなかでずっと絵本を持っていたイレイナは、ある意味浮いている存在だった。そのためか、何度かこのような光景を目の当たりにしてきたものだ。

 

「とにかく・・・あの絵本を・・・・」

 

そう思って踏み出そうとした瞬間、再び場所がーーーーーーーーー否、場面が変わる。すでに日が傾き始めている時間帯、イレイナの家に繋がる道の端っこに彼女は蹲っていた。時々聞こえる啜り泣き声から、おそらく取り返せなかったのだろう。彼女の周りにも、本のような影は一切見当たらない。

 

『・・・・はいこれ!取り戻してきたよ、ワンダーストーリー!』

 

『ふぇ?』

 

そんな時、彼女の元に一人の少年がやってきた。少年の手の中にあるのは、確かに先ほど彼女が追いかけていた子供たちが持っていた物と同じ本だった。本が無事に戻ってきたこと、その少年が少女にとっては大切な存在だったこと、それらが作用したのだろう、少年はそれをイレイナへと渡そうとしたところで、イレイナはその少年に抱きつき、思いっきり泣き出す。

 

『うわぁあああん!!ユウマ〜!!』

 

『あぁ〜もう、ほらイレイナ、本は大丈夫だよ。だから泣き止んで』

 

『わぁぁああ!』

 

『も〜、仕方ないなぁ・・・』

 

ユウマ。確かに彼女がそう呼んだ少年はポケットからハンカチを取り出し、それを彼女の顔へと充てがう。あぁ・・・・この、光景は・・・・・。

 

『よいしょっと・・・・・うん、やっぱりイレイナは笑顔の方がいいよ!』

 

『笑顔・・・?』

 

『うん!今度から、街に行く時は僕も一緒に行くよ!そっちの方が、安心でしょ?』

 

『・・・うん!!』

 

笑顔でそういう少年(ユウマ)少女(イレイナ)もまた、笑顔で返す。ごく当たり前の、子供の日常が、今の俺たちには遠い日常が、そこにはあった。

 

再び場面が変わる。先ほどよりも時間が経過しているのだろう、少女を待つ少年の元に駆けつけた彼女が持っていたものは、件の絵本ではなかった。

 

『ユウマ、これ見て!!』

 

『ん?何それ?・・・・・”ニケの冒険譚”?』

 

俺たちの運命を決定づけたといっても過言ではないそれを、イレイナは少年に渡す。父親の影響だろうか、年齢にそぐわない速さで読破した彼は、先ほど呼んだ内容に心震わせていた。

 

「だめだ・・・・・」

 

『私ね、いつか旅をしてみたいの!この本に出てくるニケのように!!』

 

「その旅は・・・・君たちが思ってるような生やさしいものじゃない・・・」

 

『気持ちは分かるけど・・・・・でも、大丈夫なの?ただ安全な旅ってわけじゃ、なさそうだったよ?』

 

「君たちの人生を・・・大きく歪めてしまう・・・」

 

『む〜・・・それでも私は、旅をしてみたいの!!お母さんは、”ニケのように魔女になったら旅をしていい”って!!だから私は、魔女になるの!!』

 

「だから・・・・!!」

 

『・・・決めた!!イレイナが魔女になるんだったら、僕は剣士になるよ!!それで、イレイナが安心して旅を出来るように、守るんだ!!そしたらほら、イレイナも笑顔でいられるでしょ!』

 

瞬間、頭に大きな衝撃が走った。イレイナが安心して旅を出来るように、イレイナが笑顔でいられるように・・・・・・・・・。そうだ思い出した、それは、俺が剣士を志すようになった、本当の理由・・!!

 

『剣士?』

 

『うん!ほら、この本に出てくるニケにだって、一人の剣士がついてたじゃない?だから僕は、その剣士になる!!』

 

『でもそれじゃあ、ユウマだけ大変じゃない?私、ユウマにも笑顔でいて欲しいな』

 

『う〜ん・・・・それじゃあさ!いつか僕も、イレイナの旅に連れて行ってよ!イレイナと一緒にいられたら、僕も嬉しいし!!』

 

『私の旅に?・・・・うん、いいよ!!』

 

『それじゃあ約束だね!』

 

『うん、約束!!』

 

『『僕(私)達は、これからも一緒に!!』』

 

小さな子供たちが結んだ、なんてことはないどこにでもありそうな約束、しかし、この時は確かに、彼らの中に存在していた。

 

「・・・・・そうだよ、なんで忘れてたんだ・・・・・俺は、あいつの笑顔がどうしようもなく好きだったんだ・・・・だから彼女が笑顔でいられるように、剣士になろうとしたんだ・・。彼女が旅を出来るように・・・笑顔でいられるように・・・・何より、約束を守るために・・・・・俺は・・・・剣士になると誓ったんだ!!」

 

刹那、俺の周囲に炎が立ち込める。やがて収束していく炎は俺の目の前で、一本の剣を形作り始めた。それは他ならぬ、俺自身の剣。

 

「火炎剣烈火・・・」

 

気がつけば周りの景色は変わっていた。さっきまでの木々が生い茂った森の中ではなく、大きく開けた草原・・・・周囲に建物の影も人の姿も一切に無い。・・・・・いや、一人だけ、少し離れた場所で座っている。

 

「どうやら、無事に思い出したらしいな」

 

「・・・・・あぁ、思い出せたよ。ーーーーーーーーーー父さん」

 

その人物・・・・父さんはそれを聞くと満足そうに微笑み、立ち上がる。その手の中には、もはや親しみすら感じる闇黒剣月闇が握られていた。

 

考えてみれば、この空間に置いて父さんは明らかにおかしかった。本来であれば剣士である父さんは一ヶ月もの長い期間家に居続けられるわけがない。

実際、俺の記憶ではこの期間において父さんは家にいなかった。

 

「俺をここに呼んだのは・・・父さんなんだろう?」

 

「・・・さ、どうだかな。いくら俺でも、こんな芸当が出来るとは思えないだろう?」

 

「それこそどうだか。そもそも、父さんはもう死んだはずだ。なのにこうして、話している。俺の目の前にいる」

 

「・・・・ある人に助けられてな。こうしてお前と話せるのも、その人のおかげだ。・・・・・・・さぁ、ユウマ。最後の手合わせをしようか」

 

そういうと父さんは、ブックを取り出した。

 

『ジャアクドラゴン』

 

『かつて、世界を包み込んだ暗闇を生んだのは、たった一体の神獣だった・・・』

 

『ジャアクリード!』

 

『闇黒剣月闇!』

 

「・・・変身!」

 

『Get go under conquer than get keen. ジャアクドラゴン!』

 

『月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無常に暗黒竜を支配する!』

 

見慣れてはいるが、こうして対面するのは酷く久しい、闇の剣士カリバーへと父さんは変身した。俺はそれに応え、目の前に刺さっている火炎剣烈火を引き抜き、納刀されている状態となったそれを腰に充てがう。

 

『聖剣ソードライバー』

 

ドライバー自体はエスパーダが使用していたものと同様。違うのは、納刀されている聖剣ぐらいだ。俺は久しく使用していなかったブックを取り出す。

 

『ブレイブドラゴン』

 

『かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた・・・』

 

ドライバーの一番右のスロットに装填。火炎剣烈火を一気に引き抜くと、ブックが開かれる。

 

『烈火抜刀!』

 

「ーーーーーーーーー変身!!」

 

『ブレイブドラゴン!』

 

『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』

 

身に纏われるは紫の竜ではなく、赤い竜。かつての相棒は嬉しそうに一声を上げ、俺の装甲を創り上げていく。

 

「・・・ようやくの復活だな、炎の剣士・セイバー!」

 

「あぁ・・・・・火炎剣烈火・・・・ブレイブドラゴン・・・・また、よろしく頼む」

 

その言葉と同時に、火炎剣烈火の刀身が赤く光る。どうやら俺の声に、応えてくれているらしい。さて・・・・・・・

 

「いくぞ・・・父さん!」

 

「あぁ・・・来い、ユウマ!」

 

 

 

火と闇、2本の聖剣が、衝突する。

 

 

 

 

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