魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
二人の剣士の衝突、その度に火花が飛び散る。
「なるほど、以前よりも格段に強くなっている。様々な剣士と戦ってきた成果か?」
「それもあるだろうけど・・・・俺は自分の本当の思いに気づいたんだ、ここで父さんに負けてられないんだよ!!」
火炎剣を振るう。闇黒剣に受け止められる。その体勢のまま父さんの顔面に蹴りを入れる。それは左手で受け止められたが、そのまま回転して火炎剣で斬撃を入れることに成功する。
「うぉっと!?・・・っつつ・・・・・やるねぇ」
「そう言う割のは、対してダメージも入ってないようだけど」
「そりゃそうだ。そう簡単に、父親を超えられると思うなよ」
そう言った瞬間、父さんの姿が溶けるように消えた。そう認識した時には俺の背後から気配を感じ、慌てて火炎剣を振るう。しかし、火炎剣は空を斬り、気づいた時には俺の体は宙に浮いていた。
「ぐぉ!?」
思いっきり、背中を叩きつける。おかげで多少の痛みが体を走るが、気絶する暇など当然ない。すぐに立ち上がり、父さんに火炎剣を向ける。
「今のは・・闇の世界を使った瞬間移動か・・」
「わざわざ空間を切り裂かなくとも、自身を闇と同一化させることで移動することが可能だ。お前はやってなかったようだがな」
さすがは本当の意味で闇黒剣に選ばれた人だ・・・・俺よりもずっと、闇黒剣を使いこなしている。それなら俺も・・・!
「はぁぁぁああ!!」
俺の気持ちに応えるように、火炎剣の刀身が赤く光りだし、徐々に燃え上がらせていく。
「ほう・・・火炎剣を使うのは久し振りの筈だが、やはり選ばれただけはある」
「行くぞ、父さん!!」
「来い!ユウマ!」
再び聖剣がぶつかり合う。しかし、威力が上がってるのかその衝撃は、周りへと飛散していく。
それと同時に俺と父さん、二人のブックが共鳴し出し、赤と紫の竜が飛び出してくる。二体の竜はまるで俺と父さんのように、ぶつかり合う。
「ブレイブドラゴンとジャアクドラゴンが共鳴したか・・・」
「何も不思議なことじゃないだろ、前にもあったことだ」
「それもそうだ・・・・ふん!」
父さんは突然剣を逸らすと、俺との距離を取る。そしてもう一冊のブックを取り出した。
「そろそろ第二ラウンドといこうか」
『ジャオウドラゴン』
『邪道を極めた暗闇を纏い、数多の竜が秘めた力を解放する・・・』
『ジャオウリード!』
「ふん!」
『闇黒剣月闇!』
『Jump out the book!Open it and burst!The fear of the darkness!You make right a just, no matter dark joke. Fury in the dark. ジャオウドラゴン!』
『誰も逃れられない・・・』
「ジャオウドラゴン・・・!」
俺も何度も使用したジャオウドラゴンのブック。だからこそ、あの本の力は嫌でも痛感出来る。そして、ブレイブドラゴンでは太刀打ち出来ないという事も。
例えワンダーコンボを使用しても、増冊しても結果は同じだろう。だとすれば、残りは二冊。そして安全に使用出来るのは・・・・!
「やるしかない!!」
『ドラゴニックナイト』
『ドでかい竜をド派手に乗りこなす、ド級の騎士のドラマチックバトル・・・!』
通常のブックとは違い、ジャオウドラゴンのように・・・・それでも形状は少し違う、大きめのブック。ブレイブドラゴンをドライバーから抜き取り、代わりにそれを装填する。
「・・・・はっ!!」
『烈火抜刀!Don’t miss it!』
『(The knight appears. When you side.)ドメタリックアーマー!(you have no grief and the flame is bright.)ドハデニックブースター!(Ride on the dragon, fight.)ドハクリョックライダー!(Dragonic knight.)ドラゴニックナイト!!』
『すなわち、ド強い!!』
先程までのセイバーの姿とは大きく違う、全身に纏う白銀の装甲。左手にはドラゴンの頭を模した専用装備"ドラゴニックブースター"が備わっており、展開されたブックはドライバーの三冊分全てを補っている。
「あぁ・・・・久しぶりだ、この感覚・・・・!」
「懐かしんでる暇はないぞ!」
『必殺リード!ジャアクドラゴン!』
「はっ!」
闇黒剣から放たれる闇の斬撃。俺はそれを火炎剣で受け止めると、それを炎の斬撃として打ち返した。
「うぉ!?・・・・おいおい、そんなのアリかよ・・」
父さんはそう呟くが、普通のセイバーだったら不可能な芸当だ。あくまでもドラゴニックナイトを使ってるからこそ、可能な方法。
俺たちは互いに接近し合う。父さんは闇黒剣を振るうが、残念ながら今の俺の装甲には傷一つつくことはない。何も気にすることなく、接近できる。ある程度近づいたところで闇黒剣を左手で受け止め弾き、地面に手を向けるとそこから炎が湧き出る。
「決めたよ・・・・・・俺はこれからも戦い続ける。組織と・・・・世界の闇と・・・」
「・・・・それはなんでだ?お前は、なんのために戦うんだ!?」
「決まってる・・・・・・イレイナを守るため、イレイナがこれからも平穏な旅を続けられるようにするためだ!それが・・・・・俺が剣士を志した、最初の理由だから!!」
『ブレイブドラゴン!ワン・リーディング!』
ブレイブドラゴンのライドブックをドラゴニックブースターに読み込ませる。それにより、ドラゴニックブースターに炎が溜まり始める。
『フレイムスパイシー!』
「はぁあああ!!」
「ぬぉお!!?あちあっち!!」
強力な火炎放射によって吹き飛ばされる父さん。闇黒剣を支えに、立ち上がる。
「その信念・・・・お前は貫き通せるか?何があろうと、もう見失わないと?」
「見失わないさ・・・俺にとって何が大事なのか、はっきりとわかったから・・・!」
「・・・ならば、その思い・・・・・・俺にぶつけてみろ!!」
父さんはその身に闇の纏うことで、飛行の可能とする。空中戦か・・・・なら!
俺は展開されたブックの表紙ページを三回、押し込む。すると、俺の元に神獣ブレイブドラゴンが出現する。先程現れた際は完璧な意思疎通は不可能だったが、ドラゴニックナイトを使用しての召喚なら話しは別だ。
「ブレイブドラゴン、頼む」
ーーーギャアアアアア!!
ブレイブドラゴンが一声あげると、俺のその背中へと乗せ、空を駆け始める。向かう先はただ一点、父さんの元だ。
「はぁぁあああ!!」
「むん!!」
特攻し、いなされ、旋回して、再び突撃する。地面での戦いとは違う、360度全ての使える空中というフィールドで、俺たちは何度も、何度もぶつかり合う。
「お前は・・・・・・お前も、滅びの未来を見た!その未来に進むと分かっていても、お前は彼女が笑顔でいられると思うのか!?」
「俺はもう知っている・・・未来は、変えることが出来るんだ!他でもない、今を生きる俺たち自身の手で!!」
「それならば分かっているはずだ!!決められた未来を覆すのが、どれだけ苦難の道なのか!!最悪、その身を犠牲にすることになるぞ!!」
「・・・・最初はそのつもりだった。闇黒剣の力を使えば、俺という存在を代償に世界を、イレイナを救える。だったら俺は、この身を犠牲にしてもいいって!!・・・・・だけど、それじゃあ駄目だったんだ・・・・それじゃあ、本当の意味でイレイナを救えない!!」
「・・・・果てしないぞ、その道は・・・・」
「分かってるさ、それでも俺は、俺たちはその道を行く!俺たち二人が一緒なら、どんな未来だろうと大丈夫だ・・・・・そう思っていた、あの頃のように!!俺もイレイナも両方救える未来を創ってみせる!!」
『ドラゴニック必殺読破!』
「はぁぁぁ・・・・・・はぁっ!」
「っ!」
『ジャオウ必殺読破!』
「はぁ!!」
『ジャオウ必殺撃!!』
『ドラゴニック必殺撃!!』
二人の剣士が放つ、相手を屠る必殺技。放たれたキックは、空中のある一点で、ぶつかり合う。その衝撃はかつてなく、風を跳ね返し、地を抉り、それでもなお、止まる気配がない。
「はぁぁぁぁ・・・」
「はぁぁぁぁ・・・」
「「はぁぁあああ!!!」」
そろそろ限界が近い。揃ってそれを感じ取った二人は、さらに威力を上げる。相手の技を受けたら負ける。互いに限界まで威力を上げて、上げて、上げて!!
「はぁあああああ!!!!」
「っ!!」
セイバーが、一歩上回った。
カリバーは見事に打ち負け地面に落下、変身が解除された。
「っ!・・はぁ・・・はぁ・・・・」
「いっつつつ・・・・なるほど、それがお前の覚悟か・・・・」
「父さん・・・・」
「今のお前なら、こいつも使える筈だ」
そう言って父さんが投げ渡したのは、一冊のブックだった。形状はジャオウドラゴンと同じだが、それはブレイブドラゴンよりも赤い・・・・真紅で彩られている。
「これは・・・・」
「前にある一件で入手してな、解析の結果、そいつは人の持つ想いの強さが大切になってくる」
「でも、なんで・・・・」
「無の剣士ファルシオン」
「!」
「奴の全てを無にする力は確かに強大だが、それでも無に出来ないものはある。それが人の想い・・・・想いの強さが、奴を倒すための大きな力となる」
「なんで、父さんがそんなことを知っているんだ・・・?」
「ある人に教えてもらってな・・・・歴代の無の剣士は、いずれも人の持つ想いの強さによって消滅している。そのブックは、言うなれば対無の剣士特化のブックだ」
「対、無の剣士特化・・・・」
「いいか、しっかりと心に刻んでおけ!これから歩む苦難の道にも立ち向かう"勇気"を!彼女を・・・・イレイナを想う"愛"を!それらの想いを貫き通すという"誇り"を!・・・・・忘れるな、覚悟を超えた先に、希望はある!!」
「父さん・・・・」
「・・・そろそろ時間だ。お前のやるべきこと、もうハッキリとしてるだろ?」
「ーーーーあぁ・・・最後に一つ、聞いてもいい?」
「なんだ?」
「父さんにとって、ヴィクトリカさんとの旅は・・楽しかった?」
「ーーーーあぁ、もちろんだ!」
そう言うと、父さんは光となって消えてしまった。それと同時にこの空間を消滅を始める。この世界を存在させていたのが父さんだったからか、それとももうこの世界の存在自体が不必要となったのか、どちらにせよ、俺の意識はもうまもなく現実へと戻ることだろう。
完全に消えてしまったのか、それともまだどこかで父さんの魂は存在しているのか、それは俺には分からない・・・けど、何となく予感はしている。父さんとはまたいつか、会える。
「ありがとう・・・・・父さん」