魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第二十八話

「ユウマーーー!!!」

 

振り下ろされた無銘剣は、一寸違わず倒れているユウマを捉えていた。ーーーーーーーーーしかし、その刃がユウマを貫くことはなかった。

 

「・・・え?」

 

「・・・・・・ユーリ・・・!」

 

代わりに無銘剣を受け止めたのは、何処からか飛来してきた最光だった。最光は無銘剣を受け止めながら戦っていた二人の無事を確認する。

 

「予定よりも大分遅くなってしまった・・・どうやら相当ギリギリだったようだな。とにかく、二人とも無事のようで何よりだ」

 

「ユーリ・・・」

 

「ユーリさん・・・!」

 

「ここからは俺が引き受ける!はぁ!!」

 

二人に変わりファルシオンとの戦いを開始する最光。一度無銘剣を弾き、そのまま最光シャドーを召喚してファルシオンを後ろに押し込んでいく。とにかくユウマから離れさせるために。

 

「ユウマ!!」

 

その隙にエスパーダがユウマの元に駆けつける。火炎剣を地面に突き刺してなんとか立ち上がるユウマだが、すでに疲労困憊でこれ以上の戦いは無茶と言える状態だ。

 

「動かないでください、完璧にとは言えませんが、治癒魔法で回復させますから」

 

杖を取り出し、ユウマに魔法をかけるイレイナ。体に溜まった疲れはともかく、目に見える傷はみるみる塞がっていく。

 

「はぁ・・・はぁ・・・すまない、イレイナ」

 

「礼には及びません、それより・・・・・」

 

彼女が言わんとしていることは分かる。確かに一度倒したはずのファルシオンは対照的に全く疲れている様子を見せず、最光が加わり3対1になったところで奴を倒す決定打には至らない。このまま戦い続けたところで、勝つどころかその可能性がどんどん減っていくばかり・・・・。

 

「ユウマ!イレイナ!闇黒剣を渡せ!!」

 

ファルシオンと戦いながら、最光は二人に叫ぶ。その言葉が表す意味は、間違いなく一つだろう。

 

「闇黒剣を・・・・・ですが、ユウマはこんな状態ですし、貴方一人では闇黒剣の力は!!」

 

「その術はちゃんと用意した!時間はかかってしまったがな!とにかく、早く闇黒剣を!バハトを再び封印する!!」

 

五百年前に一度バハトを封印した彼は知っているのだろう。不死身であるファルシオンを倒すことは不可能、止めるには封印するしかないと。しかし、その考えに非を唱える者がいた。

 

「いや・・・・封印じゃ駄目だ」

 

「ユウマ・・?」

 

「五百年前に封印されたあいつが今ここにいるのは、誰かが奴の封印を解いたからだ。そして、それはおそらく・・・・・」

 

「・・・・まさか、組織・・!?」

 

「多分だけどな。・・・・・どちらにせよ、ここで奴を封印したところでまた封印が解かれるだけだ。そうなったら無意味だ・・・!」

 

「でも・・・それじゃあどうすれば・・」

 

「方法はただ一つ・・・・・ここであいつを倒すしかない」

 

「それこそどうするんですか?先ほどのように、幾度となく復活しておしまいですよ!」

 

「・・・・・・・一つだけだが・・・・可能性はある」

 

その言葉と共に、ユウマは一冊のブックを取り出す。

 

「・・それは?」

 

「父さんからの・・・・・贈り物だ・・・・・ユーリ!!」

 

「っ!」

 

ファルシオンと組み合っていた最光シャドーを消し、ユウマの元へ駆けつける最光。

 

「倒す・・・・・本当に、そんなことが可能なのか・・?」

 

「多分・・・・・いや、倒す!」

 

倒す、ユウマのその想いに呼応するかのように、火炎剣はその刀身を熱く燃え上がらせる。

 

「火炎剣が・・!!」

 

「ユウマの想いに、聖剣が応えた・・・!ーーーーーー五百年前、俺はあいつを封印した。それしか方法がないと思っていたからだ。だが、それはある意味あいつをこの世に縛りつける事となった・・・・・・」

 

ユーリとて、親友を封印したことに何も思わなかった訳ではない。しかし、彼は剣士として、世界を守護するものとして、全てを無に帰そうとする彼を止めないわけにはいかなかった。不死身となったバハトを倒すことは叶わず、親友をこの世に縛り続ける封印しか、方法がなかった。それから五百年・・・・・・・あの頃果たせなかった想いを、成せる人物が現れた。

 

「ユウマ、本当にバハトを倒せるというのなら・・・・・・・頼む、あいつを救ってやってくれ!」

 

ならば、託すしかない。自分が果たせなかった、想いを。

 

「ーーーーーあぁ!!」

 

『エモーショナルドラゴン』

 

『勇気!愛!誇り!3つの力を持つ神獣が、今ここに・・・!』

 

「ふっ!」

 

『烈火抜刀!』

 

「ふぅぅぅ・・・・・・・・・変身!!」

 

『愛情のドラゴン!勇気のドラゴン!誇り高きドラゴン!エモーショナルドラゴン〜!』

 

『神獣合併!感情が溢れ出す!』

 

火炎剣が振るわれることで放たれた炎の斬撃が交わるとともに、三体の龍が出現する。勇気を宿す赤き龍”ブレイブドラゴン”、愛情を宿す白き龍”ルーンブライトドラゴン”、そして誇りを宿す黒き龍”ルーンディムドラゴン”。

 

三体の龍は斬撃と合わせてユウマの周りを飛び交い、その姿を変えていく。見慣れたセイバーの姿から、赤と白、そして黒、三体の龍の力を宿したセイバーの姿へと。

 

「あれは・・・・」

 

「なんだ・・・あの本は・・!?」

 

ユーリは自分が把握していない本を用いて変身したセイバーに驚愕する。そして、それはユーリだけではなかった。

 

「見ない姿だな・・・・・その姿はなんだ?」

 

無銘剣の切っ先を向けられながらも、ユウマは臆することなく答える。

 

「お前を不死身から解放する・・・・・希望の力だ」

 

応えると同時に火炎剣の切っ先を向ける。それが示すことは、ただ一つ。

 

「はぁ!」

 

「ふん!」

 

 

2本の聖剣が激突する。片や炎を溢れさせ、片やそれを飲み込もうと黒が混じった炎を溢れさせる。どちらも決して収まることはなく、その炎をより強く燃え上がらせていく。

 

「ふっ!」

 

やがてその状況を破ったのはセイバー。ぶつかり合っていた無銘剣を弾き、ファルシオンごと後ろに下がらせる。

 

「はぁああ!!」

 

そのまま流れるように炎を纏った火炎剣を振るう。ファルシオンはそれを寸前で避け、下から斬り裂くように無銘剣を振り上げる。それをセイバーは火炎剣で迎え撃つ。

 

火炎剣を突き出す。無銘剣で叩き伏せる。回転させてセイバー本体へと振り下ろす。左手に備わった黒い盾で弾き返す。続け様に下から火炎剣を振り上げ、ファルシオンを斬り飛ばす。

 

互いに引く様子も手加減する様子も全く見せず、己の出せる全力を持って相手を倒そうと聖剣を振るう。

 

セイバーは感じる。まだ足りないと。目の前の不死の剣士を倒すためには、もっとエモーショナルドラゴンの力を、聖剣の力を引き出さなければならないと。

 

ファルシオンは驚愕する。先ほどまでとは格段に違うセイバーの強さに。新たに見せたブックの力か、否、それ以外の何かがある。不死のはずの自分を凌駕するであろう何かが。

 

「バカな・・・・・なんだ、その力は・・・・!!」

 

「はぁあああ!!」

 

「ぬぉおお!?」

 

セイバーの勢いは止まらない。何度も何度も火炎剣を振るい、その度に威力を増していく。そしてそれは、一つの軌跡を引き起こす。

 

「はっ!!」

 

「ぬぅううううう!?ーーーーーあり得ん、五百年傷つかなかった、この体が・・!!」

 

ファルシオン・・・・バハトは感じ取った。剣士としての装甲による目には見えないが、今のセイバーの一撃により、自分の体に傷がついたと。

 

続け様にもう一撃、二撃と振るわれる火炎剣が、その度に体に傷をつけていく。五百年間、ただの一度も傷つけられなかったこの体に。

 

「何なんだ・・・・・何なんだその力は!!?」

 

「決まってるだろ・・・・・・聖剣でも本でも無い、人なら誰でも持っている力・・・・・・想いの力だ!!」

 

『必殺読破!』

 

火炎剣を納刀、本から溢れ出る赤、白、黒の三つのエネルギーがセイバーへと集まる。

 

『伝説の神獣!一冊撃!ファイヤー!』

 

「情龍神撃破!!」

 

飛び上がるセイバー、自身に集結したエネルギーを右足に集中させ、ファルシオンに向ける。

 

「っ・・・・無駄だぁ!!」

 

『必殺黙読!抜刀!不死鳥無双斬り!』

 

「はぁあああああ!!」

 

ファルシオンに集まる漆黒のエネルギーが、不死鳥の翼を形成し、セイバーを迎え撃つ。

 

一体の不死鳥と三体の龍、それぞれの力を模したエネルギーが衝突し合い、そして打ち消し合う。そこにファルシオンが横に一閃の剣戟を放つ。しかし、それはセイバーに当たると同時にそのエネルギーを失い、消滅してしまった。

 

「はぁああああ!!」

 

「ぬぅ・・・・!?」

 

そのまもの勢いで、ファルシオンに到達するセイバー。しかし、威力が足りないのか、ファルシオンはそれに抗うほどの力を見せる。

 

「やられるかぁ・・・・・・こんな所で・・・!俺は、全てを・・無に・・・・!!」

 

「っ!!」

 

圧されるどころか、むしろ徐々に圧していくファルシオン。だが、ここで引くわけには行かない。例え相打ちとなろうとも、ここで倒す。そんな意志を示すように、セイバーはさらに力を込める。

 

拮抗するところまで跳ね上がる二人の剣士の激突。その衝撃は魔女達が創り上げた結界の外に出ようとしているかのように、地面を抉りながら広がっていく。

 

このままではーーーーーーーそう思われた時、それは突然終わりを迎えた。

 

『バハト・・・・・もう終わりにしよう』

 

『最光発光!』

 

『必殺読破!黄雷抜刀!』

 

「はぁああ!!」

 

『アランジーナ!一冊斬り!サンダー!』

 

『Good luck!』

 

唐突に下から加えられた二撃。完全に予想の範囲外からのそれらは、拮抗を崩すには充分過ぎるものだった。

 

「はぁあああああああああ!!!!」

 

「ぬぉおあああああ!!!」

 

セイバーがファルシオンを貫く。それは確かに、無の剣士とのーーーーーー否、バハトとの決着を意味していた。

 

 

 

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