魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第二話

「ふぁあ〜・・・・よく寝た。もう朝か」

 

俺は今、花の国と呼ばれる場所を訪れていた。まぁ特に目的があるとかそういうわけじゃなくて、ただ単に宿目的で訪れてるだけなんだけど。

 

閉めていたカーテンを開けると、眩しい朝日が舞い込んできて、思わず目を瞑る。天気が良いのはありがたい、旅をするにも天気が悪いと気が滅入る。

 

にしても、この街はずいぶんと静かだな。人がいないわけじゃないが・・・・やっぱ例の花の影響はでかいってことだな。この国のすぐ近くに広がっている綺麗な花畑。一時期はこの国もその花の影響で賑わっていたらしいが、今現在じゃ花の毒が判明し、観光客は全く来なくなったってわけだ。

 

まぁその毒も魔法が使える人間には効かないらしいし、せっかくだからこの国を出たら見に行ってみるか。

 

そう思い、早速荷物を畳み始める。・・・・まぁそんな荷物ないけど。

 

「さてと・・・・国出る前に朝飯でも食べてくか。何にしよ」

 

昨日は着いて速攻で宿に向かったからな、大して国の中を見てまわれていないんだ。こうやって見てみると、色々と店がある。喫茶店やパスタ屋、シチューなんかもあるな。・・・・あれ、さっきから食べ物しか見てなくね?俺。まいっか。

 

「・・・・お、パン屋あるじゃん」

 

パンってなると、あいつのーーーーーイレイナのことが頭に浮かぶ。パンが大好物だったからな。

 

「おっちゃん、クロワッサン一個くれ!」

 

早速たくさん並べられているパンの中からクロワッサンをチョイス。サクサクしていてなかなか美味そうだ。

 

それじゃあ一口・・・・・うん、やっぱり美味い!

 

「久しぶりにパン食ったけど、やっぱ美味いな。イレイナがハマる気持ちも分かるわ」

 

こりゃもう一個買ってこようかな?なんて考えていると、どうも門付近が騒がしいことに気づいた。さっさとクロワッサンを口の中に突っ込み、こそこそと門兵の話を盗み聞きする。それによると、どうも怪しい人影がこの国に向かって来ているとのことだ。

 

ずいぶんアバウトな情報しか得られなかったが・・・・怪しい人影ねぇ。人型の魔物だったら詳細もわかってるだろうからそれはない。だとしたら可能性としてはあとは・・・・・・・・まぁいいや。せっかくだし、ちょっと見に行ってみるか。

 

とはいえ、普通に出て行こうとしたら止められるだろう。ここは・・・・・これを使うか。

 

俺は周りに人が居ないことを確認し、闇黒剣月闇を取り出した。この聖剣には空間を切り裂き、闇の世界に入れる力がある。この力を応用すれば、世界のどこにでも自由に行くことができる。・・・・まぁ下手に多用して組織に見つかるわけにもいかないから、普段は大して使ってないけど。

 

「ほっと」

 

え?ノリが軽いって?細いことは気にすんな。

 

とにかくこれで外に出た俺は、すぐに門から離れる。門兵に見つかったらそれはそれで面倒だ。んで、例の怪しい人影ってのは・・・・・ここからじゃ見えねぇな。もうちょっと行った先か?確かこの先は花畑があるぐらいのはずだが・・・・・。

 

そう思って歩いていると、視界の端の人らしく影が映った。んだが、すぐにそっちを確認した時にはそこには誰も居なかった。

 

「気のせい・・・・か?ーーーーーーーーーいや、誰かいる!」

 

そこで俺は気づいた。今俺がいるこの森の中を、体をまるで保護色のようにしている人型の魔物が闊歩していることに。それも一体や二体じゃない、数えるのも面倒なぐらいいる。そもそもこいつらを魔物と呼称して良いのかも分からない。見た感じ魔物っていうよりかは・・・・・そう、植物、そっちの方が近い。どうやら知性とかがあるわけでもないみたいだし。

 

「つってもこいつらを放置するわけにはいかないしな・・・・しょうがねぇ、駆除しておくか」

 

『ジャアクドラゴン!』

 

『ジャアクリード!』

 

「変身」

 

『闇黒剣月闇!Get go under conquer than get keen. ジャアクドラゴン〜!』

 

「ふっ!」

 

奴らの詳細は不明だが、やることは変わらない。まずは剣士らしく斬る!

 

手始めに近くにいた奴の頭と思われる部分を斬り飛ばす。これが普通の魔物ならば大半が死に至るのだが・・・・・・。

 

「・・・・やっぱ普通じゃねぇか」

 

半ば予想通りではあったが、たった今首を斬り飛ばした個体は何もなかったかのように動き出した。だとしたら次の手は・・・・・・そうだ、相手が植物だとしたら、火なんてどうだ。

 

『必殺リード!ジャアクブレイブドラゴン!』

 

刀身に宿る赤と紫の炎。とにかく炎が燃え広がらないように気をつけて・・・・。

 

『月闇必殺撃!習得一閃!』

 

目の前の個体に刀身を突き立てることで、体全体に炎が燃え広がる。やがて植物人間は全身が黒ずみになり、倒れ込んだ。しばらくそのまま様子を見たが、それ以降起き上がる気配はない。

 

「やっぱ炎が有効か・・・・・とはいえ、残りの奴も一気に焼き払うとなると最大火力を出さなきゃだが、それじゃあこの森ごと焼き払われるな。そんなことしたら花の国の奴らはもちろん、組織にもすぐに気づかれる。だったら・・・・・・」

 

多少大袈裟でも一瞬で終わらせる手段を選ぶのみ。俺は腰のホルダーからさっきとは違う赤い本を取り出し、闇黒剣月闇に読み込ませる。

 

『必殺リード!ジャアク西遊ジャー!』

 

最初に青黒い筋斗雲を召喚し、それを使って空中へと飛び上がる。森の全体を見渡せる所まで行ってから、俺はもう一冊、ライドブックを読み込ませた。

 

『必殺リード!必殺リード!必殺リード!ジャアクイーグル!』

 

俺が持つライドブックの一つ、『ストームイーグル』の力を最大限まで発揮し、俺を中心に巨大な竜巻を作り出す。これにより森の中を徘徊していた植物人間どもを残せず全て空中に放り出す。やがて竜巻は止み、全ての植物人間が重力を従って落下し始める。ま、地面に叩きつけるつもりはないけどな。

 

『必殺リード!必殺リード!必殺リード!ジャアクブレイブドラゴン!』

 

さっきは森の中だったから威力を最小限に抑えたが・・・・周りに燃え移るものがない空中なら遠慮は無用だ。

 

『月闇必殺撃!習得三閃!』

 

先ほどとは明らかに違う、炎の大剣が完成する。あとはこれを振るうだけ。

 

「はぁ!」

 

振われた大剣により全ての植物人間が燃やし尽くされる。本当であれば『火炎剣烈火(かえんけんれっか)』を使ったらもっと楽に済んだんだろうけど・・・・・それじゃああの本(・・・)が起動する可能性があるからな。

 

俺は地上に降り立ち、変身を解かずに歩き出す。あの植物人間達が発生した原因、もしくはその根源となるもの、それを見つけるためだ。最悪、さっき以上の戦闘を覚悟する必要がある。

 

奴らが徘徊していたのはこの森の中。その中心地にはーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

誰にも縛られず、街中を自由に散策し、人々の視線を釘付けにしてしまうほどの、花のように美しい美少女は誰でしょう?

 

そう、私です。

 

私は今、街中が多くの花で溢れている花の国に訪れていました。とは言っても、観光客の姿など全く見えず、少し寂しさを覚えるほどです。まぁ、この程度の寂しさはどうってことないですけど。

 

街の人の話によると、どうやらこの街の来る途中にあった花畑にある花の毒が原因のようです。魔女である私には効かない毒でしたが、あの花畑にいた少女はもしやその毒に・・・・・・。

 

「それに、最近はあんなこともあったしね」

 

「あんなこと?」

 

「・・・・・」

 

意味ありげに呟いていたのを思わず聞き返すと、無言で差し出される手の平。こ、この人は・・・・・。

 

「はっはっは!冗談だよ、冗談」

 

「全く・・・・それで何があったんですか?」

 

「ほんの二、三週間前のことさ。その花畑から、人の形をした変な怪物が現れたんだよ」

 

「変な怪物、ですか・・・・。私は通った時には、そんなものは見ませんでしたけど」

 

「そりゃそうだろうさ、なんせ剣士様が全部倒してくれたからねぇ」

 

・・・・・剣士。それはつまり、ソードオブロゴスの人間が動いたということ。それほどの事態が、ほんの少し前にあっただなんて。

 

「私が直接見たわけじゃないけど、見た兵士の話だと紫色の剣士様だったらしいよ。ソードオブロゴスにはいろんな剣士がいるってのは聞いてたけど、紫色の剣士様もいたんだねぇ」

 

「・・・紫の剣士?」

 

「ん?どうかしたのかい、お嬢ちゃん?」

 

紫ーーーーー闇の剣士・カリバー。まさかあの人が、この街に・・?

 

「その話、もう少し詳しく教えていただけませんか?」

 

「もう少し詳しくかい?なら・・・・・」

 

「あ〜もう分かりましたよ、払います!」

 

結局私は、余計な出費をすることになってしまった。・・・・・そろそろお金を稼がないと・・・・。

 

 

 




キャラクター紹介

イレイナ

『魔女の旅々』の主人公にして、本作のヒロイン。

『平和国ロベッタ』出身であり、今は旅人である。

魔女名は『灰の魔女』。師である星屑の魔女より名付けられた。

今は旅をしながら幼馴染を探しているようで・・?

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