魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
決して長くはない、しかし本人達からしたらまるで永遠かのように感じられた戦いが、ようやく終わった。その立役者であるユウマは、決着後すぐに変身が解け、火炎剣を支えになんとか立っている状態だ。
その火炎剣は、ひとまずの役割を終えたのか、先程の輝きが消え失せている。
「ユウマ!」
「イレイナ・・・・助かった、ありがとう」
駆けつけるイレイナ。既に変身は解いていて、所々に擦り傷やら切り傷やらが垣間見える。彼女もまた、剣士になって早々の大役を見事に果たしたのだ。
「大丈夫ですか?すぐに治癒魔法を・・・・・」
「いや、今は大丈夫だ。それよりも・・・・・」
ユウマが視線を向けるのは彼の後方。先程二人の剣士が激突した、その丁度真下の位置だ。そこには、変身が解けながらも無銘剣を手にしているバハトの姿があった。
「そんな・・・・あれでもまだ・・!?」
「いや・・・」
まだ戦いは終わっていないのか、そう思われたが、しかし先程までとは明らかに違う箇所があった。胴体・・・・先程セイバーによって貫かれたその場所は、修復されずにその穴を開け続けている。
「ユウマの想いが、エターナルフェニックスライドブックと覇剣ブレードライバーによって齎されていた不死身の力を阻害しているんだ」
「ユーリさん・・」
「バハトはもう、不死身ではない」
ユーリの言葉は正しく的を得ていた。ユウマのバハトを倒すという想い、そしてその想いを持って使われたエモーショナルドラゴンによって、バハトは不死身の力を失った。理屈ではない、奇跡とも必然ともいえる人の想いの力で。そして、それが意味することはただ一つ。
「まさかこの俺が・・・・・死ぬとはな・・・・」
「バハト・・・・」
「俺の不死身の凌駕する、想いの力か・・・・いいだろう、貴様のその想いに免じて、俺はこの運命を受け入れるとしよう」
そう言うと、バハトは膝をつき、持っていた無銘剣の自身の目の前に突き刺す。
「お前達のこれからの物語を!ーーーーー見届けてやる」
その言葉を最後に、バハトはその肉体を消滅させていく。まるで光になったかのように、バハトは跡形もなく消え去った。その場に残ったのは、主人を失った無銘剣とエターナルフェニックスのライドブックだけ。
ユーリはそこに歩み寄ると、その二つを手に取る。
「500年・・・・・長い時間、お前を苦しませてすまなかった・・・・・・さらばだ、友よ」
・・・・・・・・・・・・・・・・
無の剣士との戦いから、1週間の月日が経った。避難していた街の住民も戻って来て、街の修復作業をしているが、ようやく本来の日常が戻ってきた感じだ。
そんな街の様子をユウマは高台から見守っていた。そこに、箒に乗ったイレイナが飛んでくる。
「探しましたよ、ユウマ」
「イレイナ」
「まだ体の傷も完全に治ってないのに・・・・本当にジッとしませんね」
「ははは・・・・」
ユウマの体の所々には包帯が巻かれている。先の戦いによってついた傷だ。実を言うと、今この街に残っているのはユウマとイレイナの二人だけだ。シーラやサヤ達魔法統括協会の面々は今回の件を報告に本部へと帰った。サヤは最後の最後まで残ると駄々を捏ねていたが・・・。フランは王立セレステリアへ。過去に一年間丸々空けていた以上、あまり長い間不在に出来ないらしい。ユーリは無銘剣とエターナルフェニックスのライドブックを持って何処かへ消えた。行き先は分からないが、しかし大丈夫だろう。不思議とそう思える二人は、特に気にはしてなかった。
「この街はもう大丈夫そうだな」
「はい、手伝えることはしました。後はこの街の人々に任せましょう。・・・・ところでユウマ、この後のことですが・・・・」
「分かってる、旅のことだろ」
イレイナが気にしているは、無論今後の行動・・・・特に旅に関してだろう。色々あって後回しになっていたが、ユウマが今後どうするのかは、聞いておかなければならない。
「覚悟を超えた先に、希望はある」
「はい?」
「一度バハトに敗れた後、夢を見たんだ。まぁ、あれを夢と表していいのかはちょっと分からないけど・・・・・そこでさ、父さんと戦ったんだ」
「お父さん・・・・ハヤマさんと?」
「色々あったけどさ、そう言われたんだ。今回の一件で、イレイナは剣士として戦う覚悟を決めた。だったら、その先に希望があっていいはずなんだ」
「・・・・それって・・!」
「それに、ちゃんと約束は果たさなくちゃだしな!・・・・・出発はいつだ?」
「・・・それでしたら、明日の早朝には出発することにしましょう。思った以上に長居してしまいましたし」
「了解!」
もはやとやかく言う必要は無い。二人は横に並ぶと、徐々に修復されていく街並みを静かに見守るのだった。