魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第三十話

薄い霧に包まれる中、しっかりと前に進みながらも決して見失うことのない、俺の横を飛んでいる灰色の髪を靡かせた少女は誰でしょう?

 

そう、イレイナだ。

 

な〜んて、俺は一体何を言ってるんだか。自由の街クノーツを出て再び旅に出た俺たちは、今現在霧の中を進んでいた。イレイナは箒に乗り、俺はランプドアランジーナを使って召喚した絨毯に乗ってだ。目指している場所は”願いが叶う街”。組織にいた頃にも聞いたことがない街名だが、ここ最近新しく出来た街なのだろうか?とにかく最近噂で街のことを耳にした俺たちは、早速その街を目指そうということになったのだ。

 

しかし、まさかここまで霧が出てくるとはな。今はまだ大したことはないが、このまま行けば霧も濃くなっていくだろう。このまま進むのは少々危険かもしれないな。

 

「イレイナ、どうする?」

 

「どうするとは?」

 

「この霧だよ。このまま時間が経てばこの霧も濃くなっていくだろう。このまま進むのか、一旦霧が晴れるまで待つか」

 

「決まってますよ、このまま進みます」

 

そう言いながらイレイナは、先のある一点を示す。あれは・・・・・・看板か?

 

「なになに・・・・・”この先願いが叶う街”・・・・ってことは、もうそろそろ着くのか?」

 

「少しスピードを上げましょう。明確には分かりませんが、おそらくそう遠くはないでしょうから」

 

「ここで待つよりも、さっさと行ったほうがいい・・・か。そうだな、そうしよう」

 

イレイナに合わせて、俺もスピードを上げる。まぁ、霧が出ていると言っても道を見失うほどではない。最悪方向感覚だけ失わなければ・・・・・・。

 

「・・・・ん?」

 

何かおかしい。そう感じて横を見てみると、すでにイレイナの姿は無かった。

 

「イレイナ?」

 

声をかけてみるが、返事がない。いくら見えなくなったとはいえ、声が届かないほどの距離はないはず。俺が急いで引き返そうと動きを止めたところで、不自然なほど急に霧が晴れた。

 

「・・・何だ、ここは?」

 

眼下に広がるのは一つの街だ。しかし、その街はどこかおかしく、全てに見覚えがある。それが一つの街の景色なら問題ないのだが、明らかに複数の街がまるで融合しているかのような景色なのだ。今までの旅で立ち寄った王立セレステリア、花の国、人形の国、自由の街などなど・・・・。その中央には、この場所にはあるはずのないものが建っていた。

 

「あれは・・・ノーザンベース」

 

組織の拠点の一つ、俺がまだ組織にいた時は幾度となく足を運んだその建物は、周りとは不釣り合いなその景色の中にそれはポツンと建っている。

 

明らかにおかしな風景、その中で俺は、まるで引きつけられるかのようにノーザンベースへと降り立った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

絨毯をブックに戻し、中に足を踏み入れる。見た感じは俺が知るノーザンベースと何も変わらないようで、かなり懐かしい。

 

「なんなんだここは・・・」

 

ノーザンベースは本来このような街の中心にあるようなものではない。そもそも俺たちが向かっていたのは願いが叶う街のはず・・・・。この街は一体・・?

 

そう思っていると、廊下の先から敵意を感じ、それと同時に勢いのある水流が俺に向かって放たれた。俺は火炎剣を取り出し、火炎剣の放つ高温でその水流を一気に蒸発させる。

 

「誰だ?」

 

火炎剣を水流が放たれたその場所へと向ける。するとその場所からどこか聞き覚えのある声が放たれる。

 

「・・・・なるほど、どうやらお前は”闇の俺”ではなく、”炎の俺”のようだな」

 

「は?」

 

間のなく姿を見せたそいつの見て、俺は思わず固まってしまう。そいつが持っているのは水の聖剣である”水勢剣流水”だが、その顔はどこからどう見ても俺自身(・・・)だったからだ。

 

「・・・・・」

 

「おい、なに固まってるんだ炎の俺」

 

「・・・あぁ分かった。これは夢だな、うん」

 

「いや、残念ながら現実だ」

 

「一回寝て起きたら夢から覚めてるだろ、んじゃおやすみ〜」

 

「待て待て待て現実だって言ってんだろ起きろ炎の俺、現実逃避してんじゃない」

 

「うるせぇ目の前の自分がいるんだぞ、これを夢と言わずになんと言うんだ!!」

 

「現実だよ!!」

 

「大体何でお前はそんな冷静なんだよ!」

 

「お前が7人目だからだよ!!」

 

「・・・・・・ちょっと待って今なんて言った?」

 

「お前が7人目」

 

「聞き間違いじゃ無かった・・・」

 

何?どゆこと?俺とこいつ以外にもあと5人は俺がいるの?ダメだ意味分からん。こんなの現実逃避せずにどうしろと?

 

「まぁお前の気持ちも分かるさ。何せ俺も同じ気持ちだったからな」

 

「・・・んで、残りの5人はどこにいるんだ?え〜と・・・・・水の俺、でいいのかな?」

 

「なんだ、飲み込みはいいな。ついてこい」

 

なんとなくだったが、どうやら目の前の俺が水の俺なのは合っていたらしい。まぁ、こいつ曰く俺が炎の俺らしいし・・・・だとしたら、残りの5人の俺も、大体予想がつく。

 

「一つ言っておこう。これから案内する場所にいるのは4人の俺だ」

 

「4人?・・・残り一人は?」

 

「それについては、着いてから話す」

 

後で・・・・か。なんか嫌な予感がするんだよなぁ・・・・。

 

とにかく着いていくこと数分、水の俺は大体予想通りの場所に俺を案内した。ノーザンベースの中枢、そこに残りの俺はいた。

 

「おい、もう一人俺を連れてきたぞ」

 

「やっぱりまだいたのか」

 

「それで、こいつは何の俺だ?」

 

「これは・・・火炎剣の声が聞こえる」

 

「火炎剣?んじゃ炎の俺ってことか」

 

「・・・どれがどの俺だよ」

 

ヤベェ頭痛くなってきた。何だこの状況は・・・・。

 

「とりあえず、現状を確認しよう。知っての通り、俺は水の俺、水勢剣流水の使い手だ」

 

「俺は雷の俺、雷鳴剣黄雷の使い手だよ」

 

「俺は見ての通り、土の俺だ!こいつが俺の聖剣、土豪剣激土!!」

 

「次は俺だな!俺は風の俺!風双剣翠風を振るう者だ!」

 

「音の俺・・・・こいつが俺の音銃剣鈴音・・・」

 

「・・・・じゃあ一応俺も。俺は炎の俺で、こいつが火炎剣烈火だ」

 

それぞれの俺が自分の聖剣を出しながら自己紹介をする。・・・・これ聖剣がないとどれがどの俺かさっぱり分からねぇな。

 

「とりあえず全員、自分の聖剣は見えるようにしようぜ。じゃないとどの俺なのか分からなくなる」

 

「同感だ」

 

「確かにそれもそうだな」

 

その言葉と同時に、俺と水の俺、雷の俺の3人は聖剣ソードライバーを腰につけ、そこに聖剣を納刀する。これならずっと持っている必要がないからな。残りの土の俺と風の俺、あと音の俺か、その3人は各々好きなように聖剣を持っている。

 

「区別できるようにしたのはいいが、問題はそこじゃないだろ。”闇の俺”をどうするかだ」

 

「闇の俺?」

 

「残り一人の俺だ。奴はどう言うわけだか、俺たちの聖剣を狙っている」

 

「最初に会った時には容赦無く襲ってきたもんなぁ。ま、余裕で追い返したけど」

 

「嘘つけ、俺が駆けつけたからだろ!!」

 

「どっちでもいい・・・そんなことよりも奴の目的は何なのかだ」

 

「確かに、何で俺たちの聖剣を狙うんだろうな」

 

「闇の俺ってことは・・・・・そいつの持っている聖剣は闇の聖剣、闇黒剣月闇ってことでいいんだよな?」

 

「あぁ、あいつの持っていた聖剣は、間違いなく闇黒剣だった」

 

なるほど・・・・・そいつが闇黒剣を持っていて、そして俺たちの聖剣を狙っているってことは・・・・多分そう言うことだろうな。

 

「多分だけど、そいつの目的も何となく想像できるぞ」

 

「何?」

 

「本当か!」

 

「それで、奴の目的は・・・」

 

「あぁ、それは・・・・」

 

俺の推測ではあるが、闇の俺の目的を話そうとした時、壁の一部が吹き飛ぶ。その衝撃から何とか身を守り、中には自分の聖剣で飛んできた瓦礫を叩き潰したりしているのが見える。

 

「おい、いきなりなんだ!!」

 

「これは・・・・闇黒剣の声だ!」

 

「つーことは・・・」

 

「やはりここに隠れてたか・・・・」

 

やがて土煙の中から姿を見せたのは、闇黒剣を携えた俺、話に聞く闇の俺なのだろう。外見等は俺や他の俺と一切変わらないが、唯一違うのはその目だ。まるで生気を感じられない。

 

「貴様らが何なのか知らないが・・・・さっさと目的は果たさせてもらう」

 

『ジャアクドラゴン』

 

「変身」

 

『ジャアクドラゴン〜!』

 

『月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!』

 

早速と言わんばかりにその身を装甲に包み込む闇の俺。まさかまた闇の剣士を相手にすることになるとは・・・・。

 

「闇の剣士、カリバー・・・」

 

「俺たちも行くぞ!!」

 

「何でお前が命令すんだよ!」

 

「そんなことはどうでもいい!」

 

『ライオン戦記』

 

『ランプドアランジーナ』

 

『玄武神話』

 

『猿飛忍者伝』

 

『ヘンゼルナッツとグレーテル』

 

『ブレイブドラゴン』

 

それぞれのドライバーや聖剣にブックを装填し、俺と水の俺、あと雷の俺は納刀した聖剣を引き抜く。

 

『烈火抜刀!』

 

『流水抜刀!』

 

『黄雷抜刀!』

 

『一刀両断!』

 

『双刀分断!』

 

『銃剣撃弾!』

 

「「「「「「変身!!」」」」」」

 

それぞれの剣士の姿へと変身した俺たちは、聖剣を構え一斉に動き出した。今ここに、計7人の剣士がぶつかり合う。

 

 

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