魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
それぞれの剣士の姿へとその身を変えた俺たちは、一斉に闇の俺・・・・・カリバーに向かって駆け出す。
「最初は俺だ!!」
先に駆け出したのは風の俺が変身した剣斬。我先にと前に出たそいつは二刀に分断した風双剣でカリバーに斬りかかる。
「おらおらおら!!」
上から、横から、斜めに。うむを言わさぬ勢いを全く殺すことなく続ける剣斬だが、肝心のカリバーはまるで意に返さぬように闇黒剣で受け止めつつ剣斬を蹴り飛ばす。
「おい、大丈夫か!」
「いって〜・・・・・あ、俺の風双剣!!」
蹴り飛ばされた際に手を離してしまったのだろう。カリバーのすぐ近くに二つに分けた風双剣の片方が転がっている。
「まずは一本・・・・・」
「まずい!」
『銃奏!』
背後から放たれる一撃が、カリバーが掴もうとしていた風双剣の片割れを弾き飛ばす。予想外の事態なのか咄嗟に動きを止めるカリバーに、俺は斬りかかる。
「おい!何俺の風双剣を撃ってんだよ!!」
「いや、危ないところだった!!こいつの目的は、俺たちの聖剣の封印だ!!」
「は!?」
「っ!!」
「うぉ!?」
斬りかかったはいいが大した攻撃もできず、振り回される闇黒剣を受け止めつつ風双剣をなんとか回収、そこで放たれたカリバーの一撃をモロに受けてしまう。
「いつつ・・・・ほら、風の俺」
「おぉ、サンキュー炎の俺!!」
「おい、あいつの目的が俺たちの聖剣の封印ってどういうことだ!?」
「そもそも、そんなことが可能なのか?」
「闇黒剣であれば、可能だ」
おそらく、他の俺は俺自身とは違い、闇黒剣に触れることすらなかったのだろう。闇黒剣の聖剣を封印する能力は、基本的に闇の剣士になった人物しか気づくこともないだろうし。
「とにかく、奴の目的が分かったんなら後は単純だ。聖剣を奪われずにぶっ潰す!!それだけだ!!」
「単純すぎだろ・・・・」
「了解!」
「納得した!?」
土の俺ことバスターと水の俺ことブレイズが向かっていく。先にバスターが突っ込み、振り翳した土豪剣を受け止められたところをバスターの背中を足場に宙に舞い上がったブレイズが斬り刻んでいく。扱う剣技がお互いの知るそれと同じだからなのか、はたまた聖剣は違えど自分自身だからなのか、初めての共闘のはずだが互いを知り尽くしてるかの如く連携を図っているブレイズとバスター。しかし、こちらの動きが分かるのは何も俺たちだけではない。
「その程度・・・!」
『必殺リード!ジャアク西遊ジャー!』
「んな!?」
「あ、ちょっと!!」
伸びた闇黒剣の刀身がバスターを無視してブレイズを貫く。いや、今注目するべきはそれよりも・・・・・。
「おい、あのブックはセイバー、お前のじゃないのか?」
「あぁ・・・西遊ジャーニー、俺も同じブックを持っている」
おそらく奴が使ったブックは、
「奴が他にどれほどのブックを持っているかは分からない。これは一筋縄ではいかないぞ」
「らしいな・・・・・おい、お前はワンダーコンボは使えるか?」
「ワンダーコンボ?あぁ、使えるが」
「よし・・・・なら三人でいくぞ」
「・・・あぁ、なるほど。分かった」
雷の俺ことエスパーダはカリバーの攻撃を受けたブレイズの元へ駆けつけると、俺に伝えたのと同様のことを伝える。その作戦にブレイズも乗っかるらしい、俺たちはすぐさま横に並び、それぞれのブックを取り出す。
『ストームイーグル!西遊ジャーニー!』
『天空のペガサス!ピーターファンタジスタ!』
『トライケルベロス!ニードルヘッジホッグ!』
「いくぞ、二人とも!」
「えぇ!!」
「あぁ」
『ク〜リムゾンドラゴ〜ン!』
『ファンタスティックライオン〜!』
『ゴールデンアランジ〜ナ〜!』
雷、水、そして炎。三人のワンダーコンボが並び立つ。まさかこんな日が来るなんて、思いもしなかったな。
「はぁ!」
「はっ!」
「ふっ!」
俺が放つ炎の斬撃、ブレイズの水の斬撃、エスパーダの雷の斬撃がそれぞれカリバーに向かっていく。それ自体は意図も容易く弾かれるが、それを目眩しにそれぞれの聖剣の力を引き出し、向かっていく。
三人の剣士による同時斬撃。一人を受け止めてもその間に他の二人が攻撃し、のけぞったところに飛び蹴りを加える。
「ぐぅ!?」
そのまま続くようにブレイズ、エスパーダも水と雷を纏った飛び蹴りをしてカリバーを吹き飛ばした。
「なぁ・・・・あんたはどうして、聖剣を封印しようとするんだ?」
「っ・・・何?」
「お前は俺だ。何も理由なく、聖剣を封印しようとしてるんじゃない・・・・・・誰かを、大切な人を、守りたいんじゃないのか?」
これはただの憶測にすぎない・・・・・・・だが、かなりの高確率で当たっているはずだ。
「何が、言いたい・・!?」
『必殺リード!ジャアクペガサス!習得一閃!!』
「危ない!!」
『天空のペガサス!習得一閃!』
カリバーの放つ一撃を、同じブックを用いたブレイズが相殺する。
「ぬぅう!!」
『必殺リード!必殺リード!ジャアクヘッジホッグ!習得二閃!』
「はぁ!」
『ニードルヘッジホッグ!習得二閃!』
放たれた棘状のエネルギーが、衝突し合う。
「俺も以前まで、お前と同じことをしていた。あいつを・・・イレイナを救うために、聖剣を封印していた。そうすることでイレイナを救えると思っていたから」
「っ・・!」
「けど、それだけじゃ駄目だったんだ・・・・。俺のやり方じゃ、イレイナを悲しませるだけだった・・・。だから俺は決めた!俺一人じゃない、仲間と共に、イレイナと共に戦う!あいつが笑う未来に向かって!!」
「・・・ぬぅああああああ!!」
雄叫びを上げながら走り出すカリバー。俺は火炎剣を納刀し、それを迎え撃つ。
『必殺読破!烈火抜刀!』
「爆炎・・・紅蓮斬!!」
『ドラゴン!イーグル!西遊ジャー!三冊斬り!ファ・ファ・ファ・ファイヤー!』
刀身に纏う炎。俺も駆け出し、カリバーの振り下ろした斬撃を受け止め、押し返す。そして火炎剣をカリバーに向けーーーーー。
・・・・・・・・・・・・・
「なぁ・・・・・お前はどうして、その選択が取れたんだ?」
「え?」
カリバーこと闇の俺は地面に寝そべったまま、隣に座り込む俺に語りかけてきた。他の俺はまだ警戒しているが、その必要はもうないだろう。
「あの未来を見て・・・・俺は組織の本性を知った。誰も信じることは出来ない。ならば俺一人でも、イレイナを救う。救うためには、全ての聖剣を封印する必要があった。俺が犠牲になっても、イレイナを守ることができる唯一の未来」
「あぁ・・・そうだな」
「だがお前は、その未来の可能性を捨てた。何故だ?何故その選択を取ることが出来た?」
こいつが見た未来、それは俺も見た未来だ。どんな可能性を取ったとしても、イレイナと共に世界が滅びる未来。そんな中で見た唯一の希望を求めて、俺は聖剣封印に動いた。だけど・・・・。
「闇黒剣が見せる未来が、全てでは無い。まだ俺たちが知らない可能性の未来が存在している、そう分かったら、お前はどうする?」
「何?」
「イレイナは俺に知らない未来を見せてくれた。闇黒剣が見せなかった可能性を。俺はそれに賭けることにした。例えそれが修羅の道になろうとも、俺は俺も、イレイナも両方笑える未来を掴む。・・・・ただ、それだけだ」
闇の俺の表情が変わる。先ほどまで何処か陰のかかった顔だったが、どこか晴々しい。俺は立ち上がると、手を差し伸ばす。
「お前はどうするんだ?」
「俺は・・・・・」
闇の俺は差し出された手を掴み、勢いのまま立ち上がる。あまりにも小さい声で何を言っているのか聞き取れなかったが、その口は確かに動いていた。
「全く、途中から置いてけぼりだよ。イレイナがどーたら組織がどーたら、詳しく教えろ!!」
「あいつが関わってくるのなら、俺も他人事ではないからな」
「あぁ、あいつの笑顔を守ることは、ここにいる全員が同じことを思ってるはずだ!」
「イレイナが危険な目に遭うとか、マジでないからな!!」
「俺たち自身、その話は聞かないわけにはいかない」
「お前ら・・・」
やっぱり、こいつらは俺だ。例え別の世界の人間でも、同じ思いを秘めている。
「・・・分かった、しっかり聞いてくれ。俺たちが見た未来をーーーーーーーーーー」
・・・・・・・・・・・・・
何も無い草原で目を覚ます。目の前には青空が広がっている。
「あれは・・・・・・夢、だったのか・・・・?」
体を起こしながら、先の光景を思い返す。妙に現実染みた夢だった。いや、まぁ他の世界の俺とか、夢以外ありえねぇよな。
「ったく、変な夢だったなぁ・・・・・ん?」
ふと目を落とすと、俺の横ではイレイナが横たわっていた。一瞬焦ったが、寝息が聞こえて安心する。
「気持ちよさそうに寝てやがる・・・・・ったく」
ここまで気持ちよさそうだと、起こすのも申し訳なくなってくる。俺は再び体を倒し、寝ている彼女を見る。
「・・・・・・絶対に守ってみせるさ。なぁ、みんな」
・・・・・・・・・・・・・・
一人の少女が草原の上を飛んでいる。まるで彼の少女を思わせるような髪を持つ少女だが、彼女との違いはその髪の短さ。眠れていないのか、その目元には隈が出来てしまっている。誰も寄せ付けないような雰囲気を纏う彼女だが、そこに声を賭ける者が一人。
その者の手には闇黒剣が。声をかけてきた人物の顔を見た少女は、とても懐かしい人物を見たような表情を浮かべ、その声に応えるように、彼の名前を呼んだ。
彼らとは違う、ありえた可能性の世界。二人の物語の終結は、誰も知らない。