魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
ーーーーー懐かしい匂いだ。
いつ、どこで知ったのかは分からない。だがこの風を中心に様々な魔力が入り混じった親しみを感じる懐かしい匂いを、俺は知っている。
・・・・面白い、そいつと居たらいつか分かるかもな。
ーーーーーーーーー俺という存在の意味を。
・・・・・・・・・・・・
「ふ〜ふっふふ〜ふっふふ〜ふ〜♪」
任務のために街を出て、森の上空を箒で飛ぶ可愛い少女は誰でしょう?そう、僕です!!
・・・な〜んて、ちょっとイレイナさんの真似をしてみましたけど、僕が誰なのか分かってますよね?炭の魔女のサヤですよ〜!
さっきも言いましたが、今僕は師匠から頼まれた依頼を解決するために、一人で森を飛んでいる最中です。
それにしても・・・・ここ最近イレイナさんに会えないな〜。僕も教会の仕事で忙しいし、イレイナさんもユウマさんと一緒に何処かで旅をしているとは思いますが・・・・・・今は何処にいるんだろうな〜。
そんなことを考えながら飛び続けましたが、この森随分と大きいですね。入って大分経ったと思うんですが、一向に出れる気配はありません。
「あっれ〜・・・・・道間違えたりしてないよね〜・・・・・」
「えぇ、間違えてないわよ」
「あ、そうですか!それはご親切にどうも!・・・・誰?」
なんか自然と話しかけられたから何も気にせず返事をしちゃいましたけど、この人誰ですか?なんでこんな所にいるのでしょう?
「あなたは炭の魔女サヤ・・・・で、間違いないわよね?」
「えぇそうですけど・・・あなたは誰ですか?なんでこんな所にいるんですか?」
「どうせすぐに分かるわよ、すぐに・・・ね」
『猿飛忍者伝』
「変身」
『風双剣翠風!』
その人は目の前で緑色の聖剣とブックを使い、剣士としての姿になりました。この人・・・・組織側の剣士・・!!
「っ!!」
「逃がさないわよ」
とてもじゃないけど叶うような相手じゃない。ここは逃げるが勝ちとばかりに旋回しましたが、急な強風によってバランスを崩してしまい、私は箒から落ちてしまいました。
「わっ!?」
「あなたを餌に、炎の剣士と灰の魔女を呼び寄せる・・・・それがマスターからの指示でね。大して面白くもない任務だし、さっさと捕まってもらうわよ」
「いや僕を使ってもあの二人が来るとは限らないですよ!」
「来るわよ、必ず」
何の確信があるのか、はっきりとこの剣士はそう言った。いや、確かに来てくれたら嬉しいですけど、どこにいるのかも分からないのに来てくれるとは限らないんじゃ・・・・・って、そんなこと考えてる場合じゃなかった!!
「すいませんけど、大人しく捕まるつもりはありませんよ!」
僕が放つのは、僕が最も得意とする風の魔法。イレイナさんが初めて教えてくれた魔法で、今となっては僕自身もとても使いやすい。
「っ!・・・・まさか、この私に対して風魔法を使ってくるなんてね・・・」
あっれ〜、もしかして悪手だった?・・・・あ、もしかしてこの人って風の剣士ですかね?僕剣士ってイレイナさんとユウマさん、あとはユーリさんだっけ?の3人が変身していた火と雷と光とあと闇しか知らないんですよ。あ、あとは無も知ってます!
だからよく分かってませんけど、確か風の剣士もいたようないなかったような・・・・・。うん、風魔法で勝てるはずがないですね!!
「えーと・・・・し、失礼しま〜・・・」
「逃がすわけないでしょうが!!」
「ひぃ!?」
こっそり逃げようと思いましたが回り込まれて聖剣突きつけられました。やばいやばいやばい・・・!!
「だーもう、殺しちゃ駄目とか面倒くさい・・・餌なんて他にもいるだろうし、あんたは殺してもいいわよね・・!」
ここは森の中、周囲に人がいるわけでもなければ偶然誰かが通りかかるような場所でもない。助けが来る筈がないーーーーーーーそう思ってました。
「カラミティ・ストライク」
「ぐぅ!?」
「え?」
突如、横からの攻撃で風の剣士は吹き飛ばされました。その代わりとなって僕の目の前に立っているのは、剣士とは明らかに違う一本の剣を持った怪物でした。
「懐かしくて、甘美で刺激的な匂いがする・・・なぁ、風の剣士」
「・・・ちょっと、なんであんたがここにいるのよ・・・・・デザスト!!」
デザスト・・・・それがこの怪物の名前でしょうか?どうやらお互い知っている身のようですが、この怪物は何が目的なんでしょう?
「なんでって言われてもなぁ・・・・懐かしい匂いがしたから来てみた。そしたらお前がいた。ただそれだけのことさ」
「ちっ・・・・・ここでデザストとやりあっている暇はない・・・・・しょうがい、そいつはまたの機会にするとするわ」
そいつって・・・・・あ、僕のことですか?風の剣士はさっさといなくなってしまいました。
「あ?んだよ、もう終わりかよ・・・シラけちまうじゃねぇか、なぁ?」
「うぇ!?僕!?」
「それ以外に誰がいるんだよ?まぁいい・・・テメェが相手してくれるんでもいいぜ?」
「いやいやいや無理無理無理!!!!僕、ただの魔女ですから!!剣士でもなんでもないですから!!」
「んなのは匂いで分かる、来ないならこっちから行くぞ!!」
「うわわわわ!?」
咄嗟に防御魔法を展開して守りましたが、何でさっきからこうも交戦的な人達ばっかなんですかね!?そういうのはユウマさん辺りに行ってくださいよ〜!
「ははは!良い反応じゃねぇか!!それじゃあこれはどうだ!?」
今度はデザストがつけている赤いマフラーが動き出し、僕の防御魔法を無視して首元まで伸びてきます。咄嗟の判断でそれを弾くことには成功しましたが、代わりに防御魔法は消えてしまい、デザストの剣が僕の一歩手前のところで地面をえぐりました。
「ちょっと危ないじゃないですか!何するんですか!?」
「生と死が混じり合い、剣と魔がぶつかり合う!それが戦い、最高に甘美で刺激的な匂いじゃねぇか!ーーーーーーーって、おいどこ行くんだよ!!」
「すいませんけど、僕はあなたのような戦闘狂ではないんです!戦いが好きならどっか別の場所でやってください!!」
とにかくさっさと逃げるが勝ちです!!さっきは無理でしたが、今度こそ・・・!!
「おい、ちょっと待てよ!」
「って、なんでついてくるんですか!?」
あ〜もう、一体なんなんですかね!?これはもう完全に任務の範囲外ですよね!!これは師匠に言って追加報酬を貰わないと割に合いませんよ!!
・・・・・・・・・・・
け、結局、まるまる一夜使っての追いかけっこになってしまった・・・・!おかげで僕は疲労が溜まり、今すぐに休みたいぐらいですよ。できればフカフカのベットにダイブしたい・・・!
でも一応任務の最中ですし・・・それに・・。
「見〜つけた」
「わぎゃ〜!?」
デザストはしつこいですし!!逃げても隠れても全く意味がないんですけど、一体どうすればいいんですか!?
「心配しなくても、もうお前とは戦わねぇよ」
「え?」
「お前との追いかけっこは思った以上に楽しめたからな!いい退屈凌ぎになったのさ!!」
「え、退屈凌ぎ?えなんですか僕はあなたの退屈凌ぎのためだけに追いかけ回されていたんですか!?」
「ははは!ーーーーーー楽しかったぜ、ありがとよ」
「あ」
ちょっとした風が吹き、少しだけ目を閉じたその一瞬の内にデザストはどこかに消えてしまいました。・・・・本当に一体、何だったのですか?
「・・・・って、やばいやばい!!早く依頼をこなさないと!!」
なんか妙な1日だったなと思い返しながら、僕は任務のために急ぎ森から出たのでした。
「・・・・またいつか、遊ぼうぜ」