魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第三十四話

王立セレステリア内に存在する、魔法学校。その中庭にて、二人の剣士が相対していた。

 

片や火炎剣烈火を携えたセイバー。片や雷鳴剣黄雷を携えたエスパーダ。お互い聖剣を構えると、それぞれの聖剣を交差させる。

 

さて、何故このようなことになったのか。話は数十分前に遡る。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

フランの突然の提案により、急遽始まったユウマへの剣士に関する質問時間。皆、それぞれが気になったことを口にしていく。剣士にはどうやってなれるのか、剣士が使っている本は何なのか、どんな聖剣があるのか、・・・・・などなど。魔法学校に通ってる以上、普段剣士に関わることは少ないため、この機会に色々聞いておこうと思っているらしい。

 

「さて、どんな聖剣があるかだったな・・・・これに関しては直接聖剣を見せたほうが早いだろう」

 

そういうと、ユウマは火炎剣と闇黒剣を取り出し、それぞれを教卓の上に置いた。それに合わせ、自分の席に座っていた生徒達は間近で見ようと席を立つ。

 

「え〜と、こっちが炎の聖剣・火炎剣烈火だ。その名の通り、メインの能力としては火だな。聖剣そのものに火を纏わせることも可能だ。それでこっちが、闇の聖剣・闇黒剣暗闇だ。聖剣の中でも特別な2本の内の1本だな。能力としては空間を切り裂いたり、災いの未来を見たり・・・・・といったところか」

 

「その能力によって未来を見たユウマは、他の剣士と戦ったんですよね?」

 

「・・・あぁ、まぁ、他の剣士とは言っても結局三人だけだがな」

 

雷の剣士・エスパーダに土の剣士・バスター・・・・そして無の剣士・ファルシオン。なんだかんだ言いつつ直接戦ったのはこの三人だけであり、聖剣を封印できたのも前者二人分だけである。あまり目的を達することは出来なかったも同然だ。

 

「そもそも、聖剣に宿っている意思が封印を跳ね除けることもある。雷鳴剣のようにな」

 

その言葉と共に雷鳴剣を取り出したのは、ユウマではなくイレイナ。生徒達はどうしてイレイナさんが?といった表情を浮かべる。

 

「封印できたとしても、雷鳴剣が自らイレイナを選んだことで封印が解けたことを考慮すれば、結局無駄な行動だったのかもな」

 

「いえ、決して無駄ではありませんよ。ユウマが雷鳴剣を一度封印していたから、今は私の元にあるんです。おかげで、ユウマ一人に戦わせなくていいんです」

 

「イレイナ・・・・・」

 

思わぬところで聞けたイレイナの想い。その想いに、どうにも嬉しくなってしまうユウマは、口元を緩ませてしまう。

 

「・・・あ〜、すいませんが生徒達の前でイチャつかないでもらっていいですか?」

 

「べ、別にイチャついてなんていません!!」

 

「はいはいそうですか、そういえばイレイナはどのくらい雷鳴剣を使えるようになったんですか?」

 

「本当に分かってます?・・・・あまりあの時から変わってませんよ。せいぜい本が二冊使えるようになったぐらいで・・・・」

 

「ワンダーコンボは最初の頃はかなり体力を持っていかれるからな。まだ使用は控えた方がいい」

 

と、完全に生徒置いてけぼりの話を展開していたところ、生徒の一人が恐る恐るといった様子で手を挙げた。

 

「ん?何が聞きたいんだ?」

 

「あ、あの・・・・イレイナさんが剣士になった、んですよね・・?魔女でも、剣士になれるんですか・・・?」

 

「あぁ、今までは前例が無かったが、今回イレイナが雷の剣士になったことからも、不可能ではないだろう」

 

「それじゃあ俺たちも剣士になれたり?」

 

「その未来も全くあり得ないとは言えないな。とはいえ、そう簡単なことではないからな・・・・あまり重要視しない方がいい。あくまでも”なれる可能性”がある程度に捉えておいてくれ」

 

ほうほうと、それぞれメモをしたり頷いたりしている生徒達。さらにもう一つ、質問が飛んでくる。

 

「剣士として、普段はどんな特訓をしているんですか?」

 

この質問が始まりだった。剣士としての特訓、それはユウマとしても言葉で説明するよりも実際に見せた方が早い。ユウマはイレイナと視線を合わせる。すぐさまユウマを意図を読み取ったイレイナ、あからさまに嫌な顔をする。しかし、その二人のやり取りの意味を瞬時に理解した人物がもう一人・・・フランだ。

 

「それじゃあ皆さん、外に出ましょうか!折角ですし、二人に実演してもらいましょう!」

 

「フラン先生!?」

 

普段ならすぐに断っていただろう。しかし、フランの言葉を聞いて生徒達のテンションは爆上がり、どうにも断れる雰囲気ではなくなってしまった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

と、言うわけで場面は冒頭に戻る。中庭へと場所を移した生徒達は剣士としての姿に変身した二人を囲むように見守っている。

 

「いいですか?これはあくまでも特訓を見せるのが目的です。あまり大きな怪我はないようにお願いしますよ」

 

「そう思うなら最初に止めてください・・・なんであんな乗り気だったんですか・・」

 

「まぁまぁイレイナ、どちらにせよ近いうちにやるつもりだったんだ。それが少し早まっただけのこと・・・・何をそんなに嫌がってるんだ?」

 

「・・・剣士としては格段に劣るからです・・・」

 

「え?」

 

「ユウマに剣士として負けるのは仕方ありません、しかし、それを誰かに見られたくはないんです」

 

「あ・・・うん・・・そっか」

 

「何か?」

 

「いや、何でも・・・・とりあえず、始めるぞ?」

 

「えぇ、えぇ!いつでもどうぞ!!」

 

何が何やら、だいぶグダグダで始まってしまった特訓だったが、それでも決して手を抜こうとしない二人。イレイナ変身するエスパーダは自身の身を雷に乗せ光速を再現しているが、ユウマ変身するセイバーはすれ違う瞬間には火炎剣で去なす。すぐに後ろに振り返り、背後にいるエスパーダ向けて駆け出そうとするセイバーだが、その足が動かないことに気づく。

 

「なっ・・・魔法!?」

 

「えぇ、私は魔女ですので」

 

いつの間にかエスパーダの手に握られているのはイレイナの魔法の杖。それをセイバーの足元に向けている。

 

『ヘッジホッグ!習得一閃!』

 

動けなくしたのをいいことに、一点集中の針状エネルギーを幾度も放つ。足を動かすことが出来ないセイバーはそれを火炎剣で叩き斬っていくしかない。

 

「一応これ剣士の特訓なんだけど・・・・しょうがない!」

 

『ジャッ君と土豆の木』

 

『烈火抜刀!二冊の本を重ねし時、聖なる剣に力が宿る!ワンダーライダー!』

 

『ドラゴン!ジャッ君と土豆の木!二つの属性を備えし刃が、研ぎ澄まされる!』

 

同系色ではなく、異なる色のブック二冊を使用したセイバー。左腕から伸びる蔦から、豆状エネルギーの弾丸を放出する。

 

「俺が遠距離攻撃が出来ないと思ったら、それは間違いだぞ!」

 

「どうやらそのようです、ね!」

 

セイバーに雷を叩き落とすエスパーダ。しかし、直撃したはずのセイバーは何事も無かったのように立っている。

 

「危なかった・・・・土に根を張るのがもう少し遅かったら、やばかったな」

 

ジャッ君と土豆の木には、その能力で地面に根を張ることが出来る。本来は自身の体を固定するために使用する能力だが、今回はそれで落とされた雷を地面に逃すことに成功する。

 

「ふっ!はっ!」

 

「あ、ちょっ・・・・!!」

 

イレイナは聖剣の能力は把握していても、全てのブックの能力までは把握していない。完全にその能力に勘付かれる前に、蔦でエスパーダを手繰り寄せる。自分から近づけないなら、向こうから近づいてもらうまで。空中で蔦を離し、火炎剣を納刀する。

 

対するエスパーダだが、こちらも負けない。何とか空中で体勢を整え、雷鳴剣を納刀する。

 

『必殺読破!』

 

『必殺読破!』

 

二本の聖剣に、それぞれのエネルギーが宿っていく。一気に引き抜かれたそれらは流れのままに交差するーーーーーーー

 

 

 

「そこまで!!」

 

 

 

直前で止められる。唐突の出来事にセイバーはともかくエスパーダはバランスが取れず、そのまま地面に落ちてしまう。

 

「大丈夫か、イレイナ?」

 

「え、えぇ・・・」

 

「二人とも、少しやり過ぎです。雷落としたり、弾丸放ったり・・・・・おかげで中庭の印象が大分変わってしまいました」

 

そう言われてようやく気づく二人。セイバーの足元は黒焦げになっていたり、校舎の壁には所々穴が空いていたりする。慌ててイレイナはそれらを修復していく。

 

「ちょっと・・・やりすぎたか・・?」

 

「かもしれませんね」

 

変身を解除しながら呟く二人だが、フランに諫められる。

 

「かもではありません。あなた達はもう少し周りを気にして下さい」

 

「「は〜い・・・・」」

 

兎にも角にも、気づけば時刻は夕方。一日の授業が終了する時間だ。フランは生徒達にレポートを言い渡し、解散させるが、生徒達は先ほどの剣士の戦闘の衝撃が抜けないのか、どこか興奮が抜けていない。中には魔法で剣を作っている人物まで出て来る。

 

「あなた達、やめなさい」

 

それはすぐさまフランによって破壊される。魔女であるイレイナならともかく、まだ魔法をそこまで扱えない生徒達ではフランの魔法には敵わない。見るからにテンションが下がっていく生徒達を見送りながら、フランは箒を取り出す。

 

「さて二人とも、まだ時間はありますよね?」

 

「どこか行くんですか?」

 

「イレイナは知っているあの場所(・・・・)ですよ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

言われるがまま、フランに着いてきたユウマとイレイナは、街の一角に降り立つ。そこは、以前イレイナがこの街を訪れた際にも連れて来られた場所。この街を一望することが可能な、美しい景色を見ることが出来るあの場所だ。

 

「以前イレイナには見せましたが、ユウマには見せられなかったですからね。今度はと思っていたのですよ」

 

「ユウマも、こういった景色は好きでしょう?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

「おや、あまり喜びませんね」

 

「あぁいや、喜んでないわけじゃないんです。実際、この場所から見るこの景色はとても綺麗だ。・・・・だからこそ、闇黒剣の滅びの未来を思い出してしまう」

 

闇黒剣が見せた滅びの未来は、世界の崩壊。今日触れ合った生徒達も、この美しい景色も、そして今隣にいる人達も、その全てが例外なく滅んでしまう未来。

 

「こんな景色を見るたび、思ってしまう・・・・・・絶対に滅ぼさせやしないって・・・」

 

「ユウマ・・・・」

 

「・・・・・・でも、きっと大丈夫だ。もう俺は一人じゃない、共に戦う仲間がーーーーーーイレイナがいるんだから」

 

「ふふ・・・えぇ、私も一緒です。だから大丈夫ですよ、きっと」

 

景色を見ながら、言葉を交わす二人。そんな二人を見ながら、フランは安心したように胸を撫で下ろす。

 

「どうやら、もう大丈夫みたいですね」

 

「え?」

 

「少し心配してたんですよ。先日和解はしていましたが、以前のような関係には戻れないのではないかと・・・・・・ですが、今日一日見て、安心しました。まるであの頃のような光景を見れましたし」

 

「フラン先生・・・・」

 

「本当に、懐かしい・・・・・まるであの二人のようで・・・・」

 

フランの脳裏に浮かぶのは、今は過ぎ去ってしまった時間。彼女が仲間と共に築いた、旅の物語。

 

「・・・さて!二人とも、この後はどうするんですか?」

 

「そうですねぇ・・・・今から街を出ても野宿が必須になってしまいますし、一晩泊まっていきます」

 

「出発は・・・・明日の朝かな?」

 

「そうですか・・・それではまた、送迎しなければいけませんね」

 

「無理にしなくてもいいんですよ?」

 

「無理なんてしていません!・・・・送迎ぐらいさせて下さい、師匠からの、ちょっとした贈り物です」

 

一晩の後、ユウマとイレイナはこの街を後にした。赤と黄、二種類の花びらと声援をその身に受けて。

 

 

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