魔女想う、剣士の旅々   作:蛇廻

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第四話

「う〜わ・・・・・・こりゃ酷い光景だな」

 

相変わらず旅を続けている俺は、ある国を訪れていた。国とは言っても、どうやらすでに滅び去っているらしい。辺りは瓦礫やら廃墟やらで人っ子一人いない。

 

「一体何があったんだこりゃ・・・・・この辺りで戦争があったなんて話は聞いてないし」

 

これほどの損壊ならば考えられるのパターンはいくつかある。戦争、魔物の襲来、その他諸々・・・・・。だが、そのどれであっても組織が何かしらの関与はするだろうし、それはデータとしてノーザンベースとサウザンベースに残る。組織にあった過去の資料とかは粗方読み耽ったけど、この辺りの話は何も残っていなかった。

 

「とは言っても、調べることなんてもうできないけど・・・・・・ん?」

 

物珍しげに辺りを見渡していると、視界の端で何かが動いた気がした。最初は野生動物でも迷い込んだのかと思ったが、その割には鳴き声とかは一切聞こえない。何より、さっきから感じる誰かの視線・・・・明らかに誰かがいる。

 

「旅人・・・・ってわけじゃなさそうだよな、この視線の感じは」

 

まさか組織の誰かか?・・・・・念のため、準備はしておいた方がいいな。

 

俺は闇黒剣月闇を携え、ゆっくりと歩を進める。場所はいくつも連なっている廃墟、その一つ。そこに足を踏み入れた瞬間、おかしな感覚に囚われる。

 

「なんだ、この感覚は・・・・?」

 

廃墟だからとか、人がいないからだとか、そういうわけではない。ただ、何かに引き込まれるような、そんな感覚。

 

「・・・ま、誘いこまれてるんだとしても、行くしかないけど」

 

とにかく歩みを進める。今にも崩れそうな階段を登り、ヒビが入っている廊下の歩き、上へ上へと向かっていく。そうしてたどり着いた屋上、そこに足を踏み入れた瞬間、俺はどこかに(・・・・)飛ばされた。辺りはさっきまで歩いていた廃墟の街ではなく、自然に溢れた広大な土地。組織にいた頃は、任務で度々足を踏み入れたことがある、ワンダーワールドだ。

 

にしても、どうして急にワンダーワールドに?”ブックゲート”を使ったわけでもないし、そもそも俺のブックゲートはすでに使用不能になっている。今の俺にはワンダーワールドに入る手段なんて無いはずなのに。

 

「世界にはこのようにワンダーワールドと繋がっている場所がいくつも存在している。そもそも、お前達組織の人間が使っているブックゲートはこういう場所を研究して造られたものだぞ」

 

「っ!?」

 

突然の自分以外の声に、俺は驚き振り返る。そこにはフードを目深に被った一人の男が佇んでいた。

 

「あんた・・・・どっかで・・」

 

「ユウマ、君をここに呼んだのはこの俺だ」

 

「まぁそうでしょうね」

 

むしろあんたじゃないなら誰の仕業だよ、そんな言葉は飲み込み、改めて目の前の男を見る。目深に被ったフードのせいで顔はよく見えないが、確かに俺はこいつと会ったことがある。どこだったかなぁ〜・・・・・あれは確か火炎剣烈火が封印されて、それを解くためにアヴァロンに向かった時に・・・・。

 

「あぁ!あんた確か、”キングオブアーサー”のライドブックがあった場所にいた・・」

 

「俺はことは今はどうでもいい」

 

「えぇ〜・・いや、どうでもよくはないだろ・・・」

 

「お前は一体何をしているんだ」

 

「え?何をしているって・・?」

 

「お前はいずれ、大いなる力を手にする運命にある」

 

「はぁ・・・・唐突だな、ほんと。・・・・・その大いなる力ってのはなんなんだ?」

 

「お前が組織を離れたのは問題無い。だが、それ以降お前は積極的に戦いに赴いていない。せいぜいが魔物を相手するぐらいだ」

 

「あぁ人の話は聞かない系ね」

 

「今のお前は何を目的に動いているのかまるで分からん。一体なんのために旅をしている」

 

「いや、なんのためって言われても・・・・」

 

「ーーーーそうか、お前はまだ闇黒剣月闇の真価を引き出せていないのか。それならばまだ納得がいく」

 

「は?真価?」

 

「ならば話は早い」

 

『光剛剣最光!』

 

「へ?」

 

『金の武器 銀の武器』

 

『Gold or Silver』

 

「いやちょっとまーーーー」

 

『最光発光!』

 

「変身!」

 

『Who is the shining sword?』

 

男が腰に取り付けたバックルから縦長のライドブックを装填した聖剣を引き抜くと、男の体はその聖剣へと収束される。なんだ、あの聖剣は?

 

『最光一章!金銀の力を得た輝く剣!最光!』

 

「聖剣になるとか・・・一体なんなんだよ、あんた」

 

「俺こそが剣で、剣こそが俺だ!」

 

「そういうことを聞きたいんじゃねぇよ!」

 

まぁ多分期待するだけ無駄だろうしな、しょうがねぇ・・・・相手するしかないか。

 

「変身!」

 

『ジャアクドラゴン〜!』

 

「ふっ!」

 

「うお!?いきなりかよ!!」

 

変身していきなりの攻撃、自立している聖剣の剣戟を闇黒剣月闇で受け止める。結構ギリギリだったけど。

 

「よっと!」

 

「無駄だ」

 

なんとか押し返そうとしたが、流石に空中を好き勝手動かれると上手く行かない。最も簡単に避けられてしまった。いや、避けられるだけなら問題無いんだが・・・・・。

 

「背中がガラ空きだ」

 

「くぉ!?」

 

一瞬の内に背後に回り込まれてしまう。めんどくせぇ聖剣だなこいつは・・!

 

「だったら、こいつはどうだ!」

 

俺はあいつから距離を取り、ドライバーに装填しているジャアクドラゴンを取る。

 

『必殺リード!ジャアクドラゴン!』

 

「ふっ、はっ!」

 

闇黒剣月闇から放たれる二つの黒い斬撃、それらは途中で重なり合い、X字となって相手へと向かっていく。今までの相手だったら問題無く喰らわせられるんだけど・・・・。

 

「遅いな、その程度だったら避けやすいぞ」

 

「ですよね〜・・・・」

 

だめだ!攻撃対象が小さすぎるし俊敏すぎる!今までの方法じゃ簡単に避けられるし、なんとか動きを止められれば・・・・・・。

 

「おっと!」

 

あまり考え事に集中するわけにも行かないんだよな〜・・・・よし、物は試しだ。

 

『必殺リード!ジャアクイーグル!』

 

「これでも喰らっとけ!」

 

ストームイーグルの力で竜巻を作り、その中にあいつを閉じ込める。まぁ、今回の竜巻は前の花の国で使ったものよりは小規模のものだけど。

 

「この程度で俺を拘束できると思っているのか?無駄なことだ・・・・」

 

「そいつはどうかな?」

 

『必殺リード!ジャアク西遊ジャー!』

 

「おらっ!」

 

「む?」

 

西遊ジャーニーの力で伸びた闇黒剣月闇が奴を捕縛する。普通だったら逃げられただろうけど、竜巻で動きを制限しておいたからまだ楽に捕縛できた。

 

「これでお前は自由に動くことはできないぞ。さぁ、どうする?大人しく降参するか?」

 

「この程度しか策を労せないとは、浅はかだな」

 

「何?」

 

「光あれーーーー!!」

 

うぉ、眩し!!急に発光しやがって、どんだけ強い光出せんだよあの聖剣は!

 

『Who is this?』

 

光で前が見えない中、そんな音が聞こえた。その瞬間、後ろに(・・・)何かの気配を感じる。

 

「!!」

 

急いで闇黒剣月闇を巻き取り、背後へと剣を振るう。目に入ったのは黒、闇黒剣月闇はなんの抵抗もなく、真横まで振われた。

 

「は?」

 

『最光二章!光より生まれし影!シャドー!』

 

「ふん!」

 

「ぐあ!?」

 

予想外の結果に一瞬の間呆けていると、その間に拘束から逃れたあいつの攻撃を受けてしまう。それによって俺は転がり、その間にあいつはあの黒い人型の何かの手の中に収まった。

 

「シャドー・・・・・なるほど、影ってわけね。どうりで剣が通り抜けたわけだよ・・・」

 

「ただの当てずっぽうの攻撃は俺には通用しない」

 

「どうやらそのようで・・・・だからと言って、ここで諦めるつもりなんて毛頭無いけどな」

 

一つ、あることを思い出した。俺がまだ組織に滞在していた頃、音の剣士から『はるか昔に失われた光の聖剣』があると教えてもらったことがある。それは最初に生まれた聖剣の一本・・・・・おそらくあいつは、その失われたはずの光の聖剣なのだろう。まさか変身者が聖剣そのものになるとは思ってもみなかったが・・・・・。

 

とにかく、相手が光の聖剣ならば一つの可能性がある。光と対をなす力・・・闇の力、それを秘めている闇の聖剣を、俺は今使っている。こいつの力を最大限に引き出して、奴の光を塗りつぶす!

 

「はぁああああ・・・・・」

 

「む?・・・闇の力を引き出し始めたか。ならばこちらも・・・・」

 

俺が力を込めると、少しだけだが闇が剣から漏れ出す。だが、あくまでも漏れ出す程度・・・・対抗するように力を込め出した光の聖剣からは、こちらが出した闇を消し去るほどの威力を感じる。

 

まだだ・・・・この程度じゃ話にならない。もっと・・・・もっと・・!!

 

「はぁああああああ・・・・・・!?」

 

 

 

 

 

 

瞬間、何かが俺の頭の中に流れ込んでくる。

 

強大な光を発する光の聖剣・・・・それと相対する闇の聖剣とその剣士・・・・闇の聖剣からは光の聖剣と同等、下手したらそれ以上の闇が溢れている。

 

光の聖剣が闇の剣士の周囲を飛び交い始める。上、右、後ろ・・・・・・しかし、闇の剣士はそれらの攻撃を完全に受け止めきる。

 

再び二人の間に距離ができる。が、次の瞬間にはお互いが動いていた。

 

同時に振われる二つの聖剣、それらはある一点でぶつかり合い、そしてーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

なんだ、今のは?記憶?・・・・いや、闇の剣士の方はともかく、光の聖剣は長い間失われたはず。二人が衝突することなんて過去にはなかった・・・・・・・・いや、一回だけ、現在進行形で行われている。けど、さっきの光景なんて今までの戦いではなかった。じゃあ一体なんだ?あの光景はーーーーーー

 

「っ!」

 

瞬間、後ろに気配を感じる。瞬時に闇黒剣月闇を上に構えると、光の聖剣を受け止めた感覚が伝わってきた。すぐに離れる光の聖剣、次はーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・全て受け止めたか」

 

「今の・・・さっき見た・・」

 

「なるほど、どうやら闇黒剣月闇の真価を引き出し始めたようだな」

 

「真価・・・?」

 

「ならば、そろそろ頃合いだろう」

 

『最光発光!』

 

「・・・・・・・・」

 

『必殺リード!必殺リード!必殺リード!ジャアクドラゴン!』

 

お互いの刀身に光・闇の力が宿る。聖剣から溢れ出る対象的な二つのエネルギー、それらはお互いに相殺しあう。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

果たして、動き出したのはどちらが先だったか。二本の聖剣はある一点で交わり、そしてーーーーー

 

 

 

 

『習得三閃!』

 

『Good Luck!』

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「っ!・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

一体何時間ワンダーワールドにいたのだろう。元の廃墟の街に戻ってはきたが、すでに空は真っ暗になっていた。だが、俺にとってはそんなことは些細なことだった。

 

「うっ、くぅ・・・くぁああああ!!」

 

あらゆる光景が流れ込んでくる。剣士がメギドを倒す光景、逆に剣士がメギドに敗北する光景、互いに滅びる光景・・・・・・・・・・・そのどれも、最終的には全ての聖剣とライドブックによって全知全能の書が復活し、世界が滅びる。

 

組織が全ての聖剣を手にする、世界が滅びる。メギドが聖剣を手に入れる、世界が滅びる。聖剣の力が解放される、世界が滅びる。全ての剣士が倒れる、世界が滅びる。魔女に聖剣を預ける、世界が滅びる。魔女と協力してメギドと戦う、世界が滅びる。世界が滅びる。世界が滅びる。世界が滅びる。滅びる。滅びる。滅びる。滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びる滅びるーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

何千、何万、何億もの滅びの光景。一つの例外も無く、世界は滅びていく。

 

「・・・イレ・・・イナ・・・・」

 

世界が滅ぶ瞬間、全ての光景で十一本の聖剣と全てのライドブック、そして大切な幼馴染(イレイナ)が一つの本に収束されていた。

 

「そうか・・・・・・・組織が、イレイナを狙っているのは・・・・・」

 

ふと、自身に巨大な影がかかる。闇夜に溶け込むような漆黒の体、巨大な龍。昼間の時には一切その姿を見なかったが、どこに居たのか。そんなことはどうでもいい。

 

「あいつは・・・・・あいつ等は・・・・そのためにイレイナを・・・」

 

組織は、マスターロゴスはある目的のために今の世界を、そしてイレイナを犠牲にしようとしている。その目的を完遂するためには、十一本の聖剣と全てのライドブック、そして二つの世界を繋げる存在であるイレイナは必要不可欠の存在。

 

「だったら・・・・そのどれか一つがなくなれば、その目的は達成できない・・・・・」

 

やることは決まった。この旅の目的・・・・組織から逃げる必要なんて、なかったんだ。

 

「・・・お前、邪魔だ」

 

 

 

世界を、何よりもイレイナを救うために。

 

 

 

『ジャオウドラゴン!』

 

 

 

俺の手で、全ての聖剣を封印する。

 

 

 

 

 

 

 

 

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