魔女想う、剣士の旅々 作:蛇廻
「・・・・ん・・」
「お、目が覚めたか」
酷く気怠さを感じながら目を開ける。真っ先に目に入るのは見慣れない天井。何があったか記憶を探っていると、横から見知った声が聞こえてきた。
「シーラ・・・・」
「ったく、魔力枯渇が原因とはいえ、目覚めるのが遅いんだよ。・・・それで?何があったか覚えているか?」
その言葉に、改めて記憶を探り出します。記憶の最後にあるのは、私の弟子であるイレイナを、生徒達と一緒に見送って・・・・・・それで・・・・
「あの子が、セレステリアに来ました」
「あの子・・・・そいつは剣士か?」
「流石にそこまでの情報はすでに持っていますか」
「あんだけ壮大に暴れたらな」
「生徒たちは?」
「全員まだ眠っているよ。ただ、命に別状はない。どいつも魔力枯渇が原因だからな」
「そうですか・・・・それで?あなたはどうしてここに来たんですか?基本的な情報はもう得ていると思うのですが」
「その剣士の目的が知りたくてな・・・。なんでお前達を襲ったのか、そこに何かがあると思うんだ」
「目的に何かがあるって・・・どういうことです?」
「・・・・実を言うとな、その剣士は今現在消息不明、おまけには教会は捜査から省かれちまったんだ」
「省かれた・・?どう言うことです?」
「さーな。教会の本部の連中がソードオブロゴスにトップのことの顛末を伝えに行ったら・・・・・・『その剣士については我々が片付けますので、お引き取りを』・・・・・・・って言われて追い出されたらしい」
「そんな一方的に・・!?」
「あぁ、こんなことは前代未聞の出来事・・・だからこその剣士の目的が知れりゃ何かしら分かるかと思ったんだが・・・どうやら無駄骨だったらしい。邪魔して悪かったな」
「あ、もう行くのですか?」
「あいにく仕事で行かなきゃいけないところがあってな。ここにはついでに寄っただけだ。それじゃあ」
そう言ってシーラはさっさと部屋から出て行ってしまいます。私以外誰もいなくなり、静かになった部屋で思考を凝らす。あの子の突然の襲撃・・・・・組織の謎の行動・・・・・。
『今の組織に正義はない。あるのは世界を意のままに変えようとする欲望・・・・・奴にとって聖剣も本も、剣士や魔女も全てが道具も同然』
『イレイナのために、ここでやられて下さい』
あの時彼が言っていた言葉。世界を変える・・・・・イレイナのために・・・・・!
「もしかして・・・・・彼は・・・!?」
・・・・・・・・・・・・・
人形の国、この国に住んでいるほぼ全ての人は必ず人形を所持している。こうして椅子に座って道行く人達を眺めていますけど、やはり誰もが様々な人形を抱えています。
とはいえ・・・・正直私にとってはどうでもいいこと。頭の中はこの間の正直者の国の近くで遭遇した現場で一杯です。どうしてユウマはカリバーなのか、今まで何があったのか、あそこで何をしていたのか・・・・聞きたいことや知りたいことは山のようにありますけど、その真実を確かめる術がない。ユウマもあの後すぐにどこかに行ってしまいましたし・・・・。
「はぁ・・・・・」
考えても答えは出ません。仕方なしに私は買っておいたパンを食しながら街を眺めることにします。耳に届くのはそれぞれの人形を称賛するような会話や、普通の日常会話だったりしましたが、その中で一つだけ普通とは違う会話が聞こえ、思わず聞き耳を立ててしまいます。なんでもこの付近に百人以上の女性の命を奪った切り裂き魔が出没しているとかで、魔法統括教会の魔女が聞き込みを行なっているのです。百人以上の女性の命を奪ったなんて、ずいぶんと物騒な事件が起こっているんですね。・・・・あ、このパン美味しい。
ただ聞き込みの成果はあまり芳しくないらしく、他の人達の話す内容は”男が狼男になった”、”犯人は猫女という噂”、”男でも女でもない不思議な生き物”、”犯人は人形”といった、とても掴み所のない、内容もバラバラといった感じで魔女も頭を抱えています。教会の魔女も大変ですね。さて、私はパンを食べ終わりましたし、そろそろ動くとしましょうーーーー。
「おいお前、ちょっといいか」
「はい?」
歩き出し始めた瞬間、肩にキセルを乗せられて呼び止められました。後ろにいるのは先ほどまで聞き込みを行なっていた魔女。
「なんでしょう?」
「お前はこの国のものか?」
「いいえ、旅人です」
「私は夜闇の魔女・シーラ。見ての通り、魔法統括教会から派遣された魔女だ」
「灰の魔女・イレイナです」
するとシーラさんは私の顔・・・というより、髪に視線を向けます。なんでしょう・・?
「・・・・んでお前、この国で起こった事件について知ってるか?」
「切り裂き魔の話ですか?知ってますよ」
「どうして旅人のはずのお前が知っている?」
「どうしてって・・・・先ほどシーラさんが話しているのを聞いたからです。残念ですが、それ以上のことは知りません」
「・・・・・そうか」
シーラさんが見るのは街の人達。何かを話しているけど、流石に距離があって聞こえませんね。
「この街の奴ら、何も知らないんだ。適当なことばかり言いやがる・・・・・何か手がかりになりそうなものを見つけたら、私に教えてくれ。ここの集会所にいるから」
「何もないとは思いますが・・・・・わかりました。ではーーー」
・・・・・・・・・・・・・・
シーラさんと別れて数分、暑さに帽子で仰ぎながら街中を散策していましたが、この街の特産物というだけあって本当に人形だらけです。そんな折、人形が並べられているお店を見つけたので、何の気無しにそこへと足を踏み入れることにしました。看板には”人形差し上げます”の文字が。
流石は人形店、店の棚には所狭しと人形が並べられています。
「ふふふ・・・ようこそいらっしゃい!」
「人形が・・・!?」
「うちの店の人形は全て私の手作りだよ!」
「・・・・・口、動いてますよ」
カウンターと思われる場所に一体だけ鎮座していた人形が喋り出した思いましたが、その後ろからお店の人であろう女性が姿を表しました。・・・・・なぜか人形の口も動いていますが。
「気に入ったのがあったら、持っていっていいよ」
「本当にお代はいらないんですか?」
「うん!」
「どうしてですか?こんなボロボロな・・・・・・・いえ、質素なお店なのに」
「いいんだよ!お金じゃないんだ、僕はみんなが喜ぶ顔が見たいだけなんだよ!だから、人形はたくさん作って、街の人にプレゼントしているんだ!」
「へ〜・・・・立派ですね」
「欲しいのがあったら持っていっていいからね、魔導士さん!」
「あ、私は魔導士ではーーーー」
「遠慮せず〜、好きなの選んでよ〜。ほら、あれなんてどお〜?うちじゃ一番人気!」
どうやら私が帽子を前に持っていたから、胸につけていた魔女のエンブレムが目に入らなかったようですね。女性は勘違いしたまま、私に人形を進めてきます。とはいえ・・・・・・人形は少し苦手なんですよね・・・・。
「・・・荷物になるので、お気持ちだけありがたくいただきます。では、失礼します」
頭を下げた私は、足早にお店から出て行きました。ですから、彼女の呟きが私には聞こえなかったのです。
「そう・・・残念」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ランプドアランジーナ』
この間の戦いの戦利品として手に入れたライドブックの内の一冊、ランプドアランジーナライドブックの力で空飛ぶ絨毯を召喚した俺は、その上に乗ってある街に向かっていた。
その街には組織の施設があり、聖剣を持つ人物が一人だけそこに屯している。次の狙いはそいつ・・・・・土の剣士・バスター。その聖剣、土豪剣激土だ。
手元に置いてある闇黒剣月闇に触れて未来を見ながら、目的の街ーーーーー人形の国へ着くために絨毯のスピードを早めることにした。