八幡side
翌日、オレは日南の言う通り旧校舎の第2被服室に来ている。というかなんでここなんだろうと思い教室の扉を開ける。というかここって鍵開いてるんだな。
日南「おはよう比企谷くん」
八幡「…うっす」
日南「友崎くんは?」
八幡「知らん」
日南「一緒じゃないの?」
八幡「最寄り駅は一緒だが道が違うんだよ」
日南「そう。それでどうかしらこの雰囲気」
と言われる。その言葉はこの教室の雰囲気なのか、空気の雰囲気なのか分からないが、多分教室の事言ってるんだろうな。
八幡「そうだな…別にいいんじゃねぇの?」
そう言って椅子に座る。正直言ってどうでもいい。ふと見ると黒板には10月26日と書いてある。今の季節は初夏だよ?それに結構古びた味のある雰囲気だし、ちょっとホコリっぽいな。窓際には大きなミシンが置いてある。
日南「そう、それは良かったわ。けどあなたいつもそんな暗い雰囲気なの?」
八幡「お前もっとオブラートに包む事できねぇのかよ。ま、そうだな、オレが明るかったら気持ち悪いだけだしな」
日南「そ、そう」
やめて!そんな反応したないで!そこは笑うところだぞ!…いや別に笑るところでもないか。
日南「それにしてもまさか比企谷くんが告白した事があるだなんてね」
八幡「いや、もう良いだろ。その話は昔の事だ」
日南「そうね。でも正直驚いたわ」
八幡「でもあれはただの勘違いだ」
日南「勘違い?」
八幡「ああ。その時のオレは単純だった。ちょっと話しかけられたり、メールのやり取りしただけで、あれ?こいつオレのこと好きなんじゃね?みたいなバカな事を思ってた」
日南「そう。……もしかしてそれが原因で人間不信に?」
八幡「いや、人間不信とかそういうんじゃねぇよ」
日南「そうなの?でも友崎くんが言ってたじゃない」
八幡「あいつがオーバーに言っただけだ」
日南「じゃあなんなの?」
八幡「なんなのと言われてもな。まぁ、言ってしまえばあれだな。人の言葉や行動に何かしら裏でもあるんじゃねぇかとか、訳あってそうしているのかとか、思っちまうんだ。でもお前の言葉には全部とは言えないが、信じている」
日南「そう」
八幡「とは言っても少しでもいいからこの人生を楽しみたいなと言う気持ちもある」
日南「そう、わかったわ」
そんなやり取りをしていると文也が教室に入ってきた。
日南「おはよう友崎くん」
文也「あ、ああ」
八幡「うっす」
文也「おう」
日南「さて、今日からあなた達は人生というゲームのプレイヤーになる訳だけど、どんなゲームにも目標というものはあるわよね」
そう言って日南は立ち上がり黒板の方へ行き、黒板を引くと出てきたのはまた黒板。そして日南はそこに書かれている文字を読む。
日南「最終目標は私と同じくらいのリア充になることよ」
文也「それはちょっと厳しすぎるのでは」
日南「この最終目的にたどり着くためには中くらいの目標と小さい目標も必要よ」
文也「オレがアタファミを練習する時と同じだな」
八幡「そうだな」
日南「さすがnanasiとhachiね。話が早いわ」
そう言ってチョークを持ち黒板に書き足していく。
日南「まず小さい目標。家族または身近な友達に『彼女でもできた?』って言われること」
文也「はい?」
まったくもって同じ意見である。何それ?
日南「『最近垢抜けてない?』とか『一瞬誰かわからなかった』とかでもいいわ。とにかく、他人の目から見て容姿やオーラが改善されたと思われる事」
八幡「なるほどね」
文也「お、おう」
日南「そして次に中くらいの目標。基本的にはこれに向けて課題を作っていくことになるわ。これが1番大事よ」
八幡「なるほどな。ひとまずその目標を作っといて、それを目指すために小さな目標を潰していくって感じでいいか?」
日南「ええ、それでいいわ」
八幡「それでその中くらいの目標とは?」
日南「それは……3年に進級するまでに彼女を作ること」
文也「はぁ!?」
八幡「いや、もうそれ大きい目標と分からないだろ」
日南「そうかしら?」
そう言って日南は首を傾げる。こいつちょっとした仕草でも男心をついてきやがるな。まぁ、オレは効かないけどな!
日南「そのためには、比企谷くんが言ってたように、小さな目標を達成するのと、毎日の課題をクリアしていくのよ。今日の課題は『学校の女子3人以上に話しかける』ことよ」
お、おふっ……これはまた苦労する目標ですな。中くらいの目標でも厳しいのに、今日の課題もやらなくちゃいけない。それに今日の目標が学校の女子に話しけるとか無理だろ。中学の時はろくに話した事が無い、というより話しかけようともしなかったし、話しかけられた事も無い。あるとすれば、ノートの提出とか、授業で班になって話す事くらいか。後者の方はあまり話してないけど。というかしょっぱなからハードル高ぇなおい。人生の弱キャラとかにしたら女子に話しかけるなんてあまりない。更には彼女を作るなんて、確率から言って0に等しい。
けど日南葵いやNONAMEはきっとどこまでも本気で言っている。だったらオレ……いやオレらはやるしかないんだな。正直不安の方がでかいけどな。
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そして作戦会議も終わり今は教室にいる。オレと文也の席は少し離れているため話すにはどちらか一方の席にいかなくてはならないが、今日はそれができなさそうだ。今日の課題をクリアする為にはお互い別行動しなくてはならない。
後それと女子はネクタイとリボンのどちらかを選べるらしい。でもどうやら噂によればカーストが低い女子はネクタイをつけてはならないという暗黙の了解があるらしい。やっぱりどこの世界に言ってもカーストというのはあるもんだ。オレと史也なんて最下層だろうな。
課題について日南の注意事項は話しかける相手、及び話題の指定だった。オレと文也が話しかける相手は1人目は違ってもその相手が2人ともネクタイ着用組だという。あいつめっちゃくちゃな目標を言いやがって。2人目は家庭科の授業で同じ班になる七海みなみ。3人目は自分で考えろだという。はぁ……正直上手くいくかどうか分からないが、やるしかないのだろう。絶対に噛むなよオレ!
八幡「す、スマン。ちょっといいか?」
「ん?何?どしたの?」
八幡「ティッシュ持ってたりするか?ちょっと風邪気味なんだけどさ、持ってくるの忘れてしまって」
少し具合悪そうに話しかける。
「あ、そうなんだ。ちょっと待っててね」
そう言って自分のカバンを漁り始める。けれど、その子は「あっ」みたいな表情になる。
「ごめーん、私も持ってなかったみたい」
八幡「あ、そうなんだ。悪いな急に」
「ううん、大丈夫だよ気にしないで。こっちこそごめんね」
八幡「いやいや、風邪気味の癖に持ってこなかったオレが悪いんだし、そっちこそ気にしないでくれ」
「そう?」
八幡「そう」
「そっか、ありがとう」
ティッシュは無かったけど、話しかけることには成功した。
「あれ?どったの?」
すると近くにいた他の女子が話しかけてくる。この子もネクタイ着用している。
「あ、実はね。比企谷君にティッシュ持ってないかって聞かれなの。でも私も持ってなくて」
「そうなんだ。あ、そうだ私のをあげるよ。丁度持ってるし、はい」
そう言ってティッシュを差し出してくる。おいおい、タイミング良すぎだろ。それにこの2人オレが話しかけても何一つ嫌がらないし、キモがらない。いや、これは内心持っているのだろうな。そう思いながら差し出されたティッシュを受け取る。
八幡「ありがとう」
袋ごと受け取ったので1枚取り出し洟をかむ演技をする。
八幡「悪い、助かった」
そう言って受け取ったティッシュを差し出してきた相手に差し出す。
「あ、いいよいいよ。それあげるよ」
八幡「え?」
帰ってきた言葉にオレは驚いてしまう。なぜならあげると言われたのだ。あ、もしかしてオレが触ったティッシュはいらないとそういう事だろう。
「ティッシュないんでしょ?だからあげるよ。なかったら不便でしょ」
八幡「え、あ、おう。でもいいのか?」
「いいのいいの。私いっぱい持ってるから」
八幡「そ、そうか……な、ならありがたく受け取っとく。サンキュな」
「どういたしまして」
よし、これで2人はクリアになるのかな、もう1人は3人目として数えるのならだけど。
「それにしてもどうしたの?風邪気味だなんて」
八幡「え、あー……」
まさか風邪気味になった理由を聞いてくるとは思ってなかったし、考えてなかった。一体どうすれば……あ……これならいいかもしれない。
八幡「ちょっ、ちょっと湯冷めしちゃってな」
「あー、そうなんだ。ダメだぞ、気をつけないと」
八幡「そ、そうだな」
ふぅ、キョドりながらだけど何とか話せたな。これでいいか?という目線で日南をチラッと見る。すると日南もこちらを見ていたので、目と目とが合う。そして日南はオレにだけわかるように小さく頷く。クリアでいいのかね。でも後1人残っているんだよな。あ、文也はどうなったんだろうと思い、見てみると、どうやら洟を噛む時に笑っていたらしい。何やってんだよ。日南も日南で大きいため息をついていた。これはオレも覚えとかないとダメだな。
そして次は4時間目、家庭科の授業である。オレと文也はそれともない家庭科室に一緒に移動している。同じ班になので一緒の方がいいからだ。そして忘れてはいけないのがここで七海みなみに話しかけるという課題である。そしてこいつのあだ名が『みみみ』と言うらしい。あ、後もう1つ注意事項がある。それは日南が近くにいる時に話しかけることである。何か会った時のためだそうだ。そんな事を考えていると家庭科室についた。七海はもう既に着席しているようだ。話しかけるようにも話しかける話題がないんだよな。一体どうすればと思っていた。でも周りを見渡すと、日南の姿は無かった。どうやら今は何もするなということだ。オレは文也にとりあえず座るかと視線を送る。文也もそれに対して頷く。2人で自分の席に座ろうとした時だった。
七海「ん、どーした友崎くん、比企谷くん。早いね!」
おいおい、なんでだよ。さっきまで問題集とか見てたのに、オレと文也が近づくと、ごく自然のような行動。一体何を返す、さすがに話しかけてきたのでシカトする訳にはいかない。
文也「いや、なんとなく」
なんだそれは!なんとなくだと……それで通じるのか?
七海「あー、そう?まあ、だよね。そんなもんだよね」
なん……だと……こいつさては良い奴だな。
七海「比企谷は?」
おっと……次はオレですかそうですか。
八幡「いや、ギリギリに来るよりかは余裕を持って来た方がいいと思ってな」
七海「ああ、それある!」
ん?何やらオレの黒歴史に反応が……ああ……あいつか。何かあるたんびにそれある!とか言って奴。あー……嫌な事思い出した。
七海「あれ?どうした比企谷。目がなんだか死んだ魚の目になってるよ」
八幡「直球だなおい!それになんだよ死んだ魚の目って!そんなにDHA豊富そうに見えるのか?」
と言い終わった所でオレは我に帰った。何やってんだよオレは、何意味のわからないことを言ってんだ。気持ち悪いだけじゃねぇか。
七海「あはははは、何それ面白い。比企谷って意外と面白いんだね」
意外とってなんだよ意外とって。それにこれ面白いのか?まったくわからん。
文也「それにしてもすごいよね」
急にどうした?何がすごいんだ?
七海「何が?」
キョトンとした丸い目で文也の方を見てくる。そりゃそうなるわ。
文也「いやほらいまさ、『なんとなく』とか、まったく実りのない答えしたのにさ、『だよね!』って返せるなんてさ……最近の若い子の共感能力ってすごいなーと思って……」
ホントこいつ何言ってるの?ほら、七海を見てみろよポカーンだぜ!ポカーン!沈黙が流れてるよ。はぁ…仕方ない。できるかわからんが助けてやろう。
八幡「なんかおっさんみたいな言い方だな」
文也「おっさ…!いや、本当に思って」
八幡「中身がおっさんか」
文也「だから…」
七海「あはははははは!」
文也が何か言い出そうとした時だった。七海突然の大笑い。え、何?どうしたの?
七海「なに言ってんの友崎くん。それに対して比企谷も素早いツッコミ。2人ともなにかのお笑いコンビみたいだよ!あはははは〜」
文也「え、いや俺はただ最近の若い女の子の……」
七海「いや、友崎も若いから!あはははは!」
めちゃくちゃ笑ってますやん。え、なに?ホントどうしたの?
文也「い、いや、俺はただ、最近の女子高生って『ヤバイ』って言葉をいろんな意味で会話に使うでしょ…?それみたいに、やっぱり共感っていうのが若い子のテーマに……」
七海「あはははは!やめて!ワイドショーの人みたいなこと言うのやめて!あはははは!」
文也本人からしたらマジメに言ったつもりでも、更に笑われる。
文也「いや、「もうやめろ。これ以上やったら七海が笑い死ぬぞ」」
七海「あはははは!ホント漫才みたい!あはははは!」
あ〜……止めようと思ってやったけど、逆効果だったか。
「みんみ、どーしたの?」
と声が聞こえたので振り向くとそこには、華奢で小柄、ボブヘアの女子生徒の名は夏林花火。さっきのみんみと、言うのは七海のことだろうか。
七海「あっ、たま!今日もちっちゃいね〜」
そう言いながら夏林の頭をワシャワシャしている。
夏林「そういうのいらない!質問に答える!」
夏林は片手で七海の手を払い、人差し指をさしながら言う。
七海「あのね、友崎が、おじさんみたいで、それに対して比企谷の正確なツッコミで漫才みたいで、えーと、んーと、わからん!パス!」
八幡「丸投げですか」
七海「ほらっ!こういうツッコミ!」
いや、わからん。
夏林「わからない!えっと、そこの、友崎と、比企谷だよね?はい説明!」
文也「え?」
七海「頑張れ友崎くん、比企谷くん」
八幡「丸投げしたやつが何を言うか」
文也「八幡…」
八幡「あ…」
やばい、またやってしまった。
七海「ほらっ!たま!わかる!」
夏林「だからわかんない!」
そんな時だった。
「何盛りあがってんだ?」
と男子の声が聞こえた。そっちを見てみるとそこには中村がいた。その後ろには同じグループの水沢と……確か…竹井だったかな。
七海「おっ、なかむー聞いてよ!友崎と比企谷が面白くてさ〜」
中村「友崎と……比企谷が?」
うっわめっちゃくちゃ睨んでますやん。
竹井「なになに」
水沢「説明してよ友崎、比企谷」
いやなんでだよ。なんで説明しなくちゃいけねぇんだよ。でも、ここでシカトするともっと面倒な事が起こりそうだ。そう思ったオレと文也はいやいや、キョドりながら説明をする。
中村「で?終わり?」
八幡「…ああ」
中村「全然面白くねぇじゃん。な?」
中村は後ろにいた2人にそう聞く。
竹井「うーん、これはないわ」
水沢「あっはっはっはっ」
七海「えー?3人ともツボがおかしいねぇ」
中村「いや、おかしいのはみみみだろ」
七海「なかむーひどい!」
そんな会話が始まる。4人共楽しそうになっている。居心地が悪い空気が流れる。それにしても夏林の奴、どうしたんだ?七海といる時は喋ってたのに、中村達が来た時から一言も喋ってない。
中村「じゃあ多数決とるか?」
多数決…それは残酷な行動である。それでいじめにあったり、笑いものにされた人達がいる。ホント居心地が悪い。保健室かサボりたい。
中村「みみみがおかしかったと思う人」
そう言うと中村、水沢、竹井の3人が手を上げる。
中村「こっち3票か。じゃあ俺がおかしいと思う人」
七海「はーい!はいはい、はーい!」
それにしても夏林の奴ホントどうしたんだ?なんだか様子が変だ。それになんだこの空気は……。夏林だけ手を挙げなかったら変な空気になる絶対。もし、オレと文也があげれば夏林ひとりだけが挙げなかったことになる。そうなればどうなるか想像はつく。ここはやはりあの方法で…
「はーい!私もこっちに1票〜」
不意に背後から聞こえた、快活で愛嬌のある声。声の主は日南葵。
中村「いや葵には聞いてねーんだけど?」
日南「えー、私と聞いてたからいいじゃん。ってか修二、友崎くんにアタファミで負けたくせに〜」
空気が凍りつく。こいつ、ここで爆弾を投下しやがった。ってかそれ言っていいのかよ。
日南「それで悔しいからってこんなことで絡むなんて、ちっちゃいぞ〜!そんなんだから島野先輩にフラれんの!年下はやっぱり頼りがいがないわねぇ……って!」
身振り手振りで演技しながら、先輩のセリフのところでは綺麗に声色を変えて、日南が言う。こいつえぐつねぇな。多分、中村の痛い所をついてやがる。
水沢「あはははは!似てる似てる!」
中村「おまっ!」
そしてそれにより七海や竹井、それに家庭科室にいたクラスメイトが笑い出す。こりゃあすげぇ。日南が入ってきたことにより一気に空気の流れが変わった。
日南「はーい、いまみみみと私で2票ね。あとはー?」
そう言ってこっちを向いてくる。
文也「俺もこっちに1票」
中村「おい、きたねーぞ!」
どこか悔しそうではあるが明るく野次る中村。これはもう完全に日南の空気だ。すると夏林も手を挙げた。
七海「お?たまも1票!」
日南「で?比企谷くんは?」
ぐっ、やはりオレも参加したくてはならないのか。つーかもう4対3なんだからいいじゃねぇか。けれどそれは許してくれない。なぜなら日南がオレに聞いたことにより、どちらかに1票を入れなくてはならなくなってしまった。まったく……。そう思いながら手を挙げて。
八幡「…オレもこっちで」
日南「はーい、5票!ツボおかしいの修二ね!」
七海「なかむーおつかれ!」
中村「ちっ…多数決ならしゃーなしだな」
折れた……だと…!?まさかこんなにもあっさり折れるものなのか?
日南「じゃあリベンジ待ってるね。友崎くんにもアタファミリベンジしなよ!」
中村「わかってるわ!待ってろよ友崎」
演技掛かった言い方と表情で文也の方を見る。
文也「お、おう、望むところだ」
と文也は答える。
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夏林「さっきはありがとう葵〜!かっこ良かった!」
家庭科の授業は終了夏林が日南に駆け寄り抱きつく。
日南「ふふっ、気にしなくていいのよ花火」
そう言いながら夏林の頭を撫でる日南。
夏林「私また空気壊しちゃうとこだった」
日南「花火はすぐに表情に出るんだもん」
そして七海が「たまもおつかれ〜!よく頑張った!」と言いながら夏林みたいに2人に勢いよく抱きつく。これはこれでなにやら微笑ましい光景だが、見方を変えたら、ゆりゆりしているようにも見える。すると七海が夏林の耳を自分の唇で挟む。
夏林「ひぁ!?」
その反応を見て七海はニコ〜とご満悦。その白く細長い指が、はむはむしている耳と逆側の首筋からツツツーとなぞる。夏林が体をビクッと震わせたのを見計らってか、それと同時に耳をぺろっと舐める。
夏林「これ、みんみ……!それは……ぁっ!」
日南「こらみみみ、やりすぎ」
夏林と七海から離れた日南が呆れたように言う。だが七海は何故かニターと笑う。
七海「ふぅん…葵そーいうこと言うんだー?えいっ!」
七海は日南の後ろから抱きつきてはスゥッと腰あたりまで移動し、日南のシャツとスカートの隙間から手を入れておへそ当たりをくすぐっていた。
七海「葵はここ弱いもんねぇ?」
日南「こら、みみみ…」
あ、これは絶対にゆりゆりしてるやつだ。そう思いオレは静かに目を閉じる。なんでオレは終わるまで待っているのだろうか?そんな事を考えていると
日南「ふぅ」
と日南が息を吹きかけるのが聞こえた。何があったのかと思い目を開けて見てみると。
七海「ふあぁ!?」
七海は驚いたのか日南の拘束を解き、後ろへ数歩下がった。
日南「これで参った?」
七海「たっはー、やっぱり葵にはかなわないなぁ」
夏林「こら!もうセクハラは終わり!」
夏林がビシッと人差し指で七海へさしながら言う。
七海「相変わらず葵には懐いてるなぁ」
そして夏林は「そういうことじゃない!」と言った後後ろ向き七海達に背を向け、「でもさっきはみんみもありがとうね」と返す。
七海「なにがー?たまはたまに難しいこと言うなぁ。たまだけに」
と突然のダジャレ。なんともおちゃらけている。
夏林「そういうのいらない!素直に感謝を受け取る!」
とビシッと人差し指を指す。
文也「あー、日南…さん」
日南「ん?」
文也「さっきは俺もすごい助かった。ありがとな」
日南「全然いいよ!それよりも友崎くん、意外とおもしろいね。それに比企谷くんもそれに対して的確なツッコミで、後ろで聞いてて笑ってたもん」
七海「だよねー。なんか漫才みたいで面白かった。ぷっ、あはははは!」
まだ笑いますか。
文也「七海さん笑いすぎ」
八幡「いつまで笑ってんだよ」
七海「あ、ごめんごめん……てか、みみみでいいよ!」
文也「え?」
日南「七海さんって、もう先生くらいしか呼んでないもんね!花火はどうする?」
夏林「なんでもいいよ」
日南「じゃあたま?」
文也「えっと、なんでたま?夏林花火だよね」
八幡「確かにな」
七海「ほら、花火ってたーまやーとか言うでしょ。だから!あとかわいいからね!」
八幡「なるほど、わからん」
七海「えー!なんで〜!」
日南「え〜?いいじゃんたま。たま〜」
夏林「人の名前で遊ばない!」
そしてオレ達は教室に戻る時も会話をしながら移動するのであった。
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そして激闘で疲労が溜まった初日を終わりを迎えた。放課後は第二被服室でまたもや作戦会議である。
日南「私が中村を茶化した件ね。あれはいずれ必要なことだったのよ」
八幡「あれがか?」
日南「ええ、そうよ。中村はあなたにアタファミで負けたことかなり根に持っていたわ」
うわぁ、まじかよ。それであんな事したの?
日南「周りが気を遣うくらいにね」
相当じゃねぇか。
日南「彼はクラスの中心人物だから、彼があなたに対して不機嫌だと友崎くん、そして比企谷くんも立場が安定しない。リア充を目指すためにはそれはまずいわ。だからできるだけ早く感情を爆発させておく必要があったの」
文也「爆発…」
日南「ええ、みんなの前でそれを口にして笑いに変えるだけ」
八幡「簡単な事言ってくれるな」
日南「ま、私以外にはできないでしょうね。やる勇気がなくて」
うわぁ、自慢かよ。それにヤダこの人ちょっと怖く見えてきたぞ。
文也「ま、でも助かったよ」
八幡「そうだな」
日南「いいのよ。他に今日1日で感じた事は?」
文也「やっぱ俺会話が下手なのかな」
八幡「オレもだな」
あまり人と会話をしてないせいもあるけどな。
文也「気の利いたことが言えないって」
日南「でも家庭科室では結構盛り上がってたじゃない。今日のあなた達の実戦に初めてにしては大成功よ」
文也「まじか!」
八幡「……そうか」
日南「けど他の部分に関してはダメね。特に友崎くん、菊池さんの件なんてマスクの下が笑ってて、その上洟をかむ姿を隠さずにしてるなんて、最低最悪、地の底に落ちてもまだ足りないわ」
うっわぁひっでぇ……。めちゃくちゃ言いますやん。飴と鞭が激しすぎますよ。
日南「それに引き換え比企谷くんは友崎くんよりかは上手くやったみたいね」
八幡「そう…なのか?」
日南「ええ、ちゃんと会話もできてるし、洟をかむ姿を隠してるし、良かったわよ」
八幡「…そうか」
日南「話を戻すけど、他に気になった事はあった?」
気になる事。そう言われても思いつかないが、あるとすれば一つだけかな。
八幡「夏林のことなんだが、あの時なんか様子が変だったのを覚えている」
文也「俺も」
日南「ああ、あの子は頑固というか素直でね。場がこういう空気だから、みたいなのに従わないのよ。私やみみみはそういうのが大好きなんだけど、中村みたいにその場の空気を動かして人とコミュニケーションをとるタイプとは相性が悪いのよ。だからちょっと揉め事になってるの。中村も悪気はないんだろうけど、あの子を何とか1回従えよって思ってるし」
文也「あー、それはめんどくしそうだな」
八幡「だな」
日南「私やみみみがいつもそばにあられればいいんだけど、そうもいかないし、難しいの」
そして日南は視線をオレ達の方へ向ける。
日南「さて、今日はこれくらいかしらね。明日は姿勢も矯正していくからそのつもりで」
どうかおてわらやかにお願いしたいもんだな。
帰り道
文也「今日はなんだか疲れたな」
八幡「そうだな。いつもは2人で話しているけど、今日は初めて違う奴とも話したから、余計に疲れたんじゃねぇか?」
文也「かもしれないな。でもこれもリア充になるための試練だからな」
八幡「そうだな」
文也の言う通り、これも試練のひとつなのかもしれない。
文也「それにしても八幡、ティッシュの件上手くいったんだな」
八幡「たまたまだ。次も同じように上手くいくとは限らんだろ」
文也「確かにそうだな。ゲームと一緒だな」
八幡「そういうことだ」
そしてその後も他愛ない会話をしながら帰る。
八幡「じゃあな文也」
文也「ああ、また明日な」
そしてそれぞれの家の方向である。道を歩き始める帰路についた。
いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。