Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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 ○ノーススター級
 軽量級のタイタン。プラズマレールガンによる遠距離からの狙撃と、VTOLホバーからの爆撃による機動戦を得意とする。
 直接的な防御手段を持たないなどピーキーなタイタン。ストーリーモードでボスとして登場したものは、ラスボスよりも強いと噂。


Log.10 作戦ロケーション……不明

 惑星ハーモニー、その周辺の外惑星。まだ人の手もほとんどついていない原生生物が支配する未開の惑星は、ここフロンティアじゃ珍しくない。

 この星も犬なのかトカゲなのか、よく分からない原生生物が沢山いた。ただそいつらは、生い茂るジャングルの中に飛び交う弾丸の嵐に巻き込まれ、物言わぬ肉塊となっていった。

 

「パイロット、敵のタイタンフォールを検知。応戦準備を」

 

「またか! IMCの連中は物量押しが好きだな、全く……!」

 

 ブロードソードにこびりつく血糊を乱暴に振り落としながら、隕石のように落下してくる敵のタイタンを視界におさめる。周囲に味方機は二機、敵は六機。この差は結構厳しい。

 

「ラスティモーサ大尉! 応援を呼びますか?」

 

 俺の後方で、敵のタイタンをスクラップに変えたばかりのバンガード級タイタン。俺の相棒である『SD-6853』、それよりも旧式の『BT-7274』を駆るラスティモーサ大尉だ。

 

「友軍にそんな余裕はないだろう! 我々で食い止めるしかない……アンダーソン少佐!」

 

 ジャングルに溶け込むような迷彩色のバンガード級タイタン。『トーン』ロードアウトのソナー探知を搭載するアンダーソン少佐のタイタンなら、この視界の悪さでも問題にならない。

 

「この野郎、こっちもそんな残弾はないんだぞ! 向こうではフリーボーン中尉も救援を呼んでいたんだ、こりゃ本格的にやばいぜ」

 

 敵のタイタンが地面に着地し、その衝撃がここまで伝わってくる。俺はブロードソードを背負い、大型ショットガンである『レッドウォール』を構える。

 確かに敵の方が数は多いが、きっとなんとかなる。()()()ならそう言って一人で暴れまわるんだろうが、生憎に俺はそこまで化け物じゃない。それでもやるだけやるしかないさ。

 

「俺が突貫します。大尉、少佐、トドメは任せましたよ!」

 

「おい、勝手に動くな! というか上官に命令するんじゃない! ああ、人の話を聞いちゃいないな……そういうところは本当にエド中尉とそっくりだ畜生!」

 

「仕方ない、こうなったらとことんあの若造を援護してやれ! BT、行くぞ!」

 

 ジャングルの木々の向こう、相棒が複数のタイタンの反応を捉えるのを確認しながら、スラスターを噴射して一気に距離を詰める。

 向こうも当然こちらには気づいている。しかも敵はリージョン級が二機、プルート級が一機、イオン級が二機、ノーススター級が一機。正面から突っ込めば、こっちが一瞬でスクラップにされてしまう。

 

「パイロット、敵の攻撃が来ます。回避してください」

 

「言わずもがな……!」

 

 二機のリージョンのプレデターキャノンが唸りを上げて、高密度の弾幕を作り出す。その後ろからは、ノーススター級のプラズマレールガンが俺を狙っていた。

 

「……っ! 相棒、フェーズダッシュを起動しろ!」

 

 一時的な亜空間転移、ジャングルの木々も敵タイタンのシャーシもすり抜けて一番後方に控えていたノーススター級の背後に回り込む。

 フェーズダッシュが途切れ再び実体化すると、ノーススター級も慌てて俺の方へと振り向くがその反応は鈍かった。プラズマレールガンの銃口がこちらに向く前に、ノーススター級のガラ空きのシャーシに散弾が叩き込まれるのだった。

 

「くっ……やるじゃねえか……! だがそう簡単にやらせるかよ」

 

 無線からIMCパイロットの呻き声が聞こえてくる。そして、IMCパイロットの言う通り、俺が更なる追撃を加える前に、ノーススター級があらかじめ仕掛けていたであろうテザートラップが相棒を拘束した。

 

「単騎で突っ込んでくるとはバカなやつだぜ!」

 

 動きが止まった俺と相棒に、ノーススター級やイオン級タイタンが狙いを定める。この動けない状況で一斉射を喰らえば、文字通り蜂の巣だ。ただそれができればの話だが、な。

 

「無茶しすぎだバカ野郎……! サルヴォコア、起動!」

 

 アンダーソン少佐のタイタンが放った大量の視認誘導ロケット、凄まじい爆風と衝撃がIMCのタイタンを巻き込み吹き飛ばしていく。

 そして、俺に気を取られているうちに側面から回り込んでいたラスティモーサ大尉のBTが、サルヴォコアの爆撃を避けようとしていたプルート級に飛びつく。

 

「確かに無茶しすぎだ……がよくやったぞ、若造!」

 

 すでに弾切れだったXO-16を鈍器代わりに叩きつけ、コクピットを無理やり押し開けるBT。プルート級のIMCパイロットはBTのマニピュレータにコクピットから引きずり出されると、無残にもそのまま握りつぶされた。

 ラスティモーサ大尉とアンダーソン少佐の強襲で一気に混戦へともつれ込み、目の前のノーススター級もひどく動揺しているようだった。俺はレッドウォールの僅かな残弾でテザートラップを破壊すると、背部からブロードソードを引き抜く。

 

「敵を目の前に余所見は禁物だぞ?」

 

 力強く振るわれたブロードソードが空を切り、咄嗟に屈んだノーススター級のミサイルポッドと、片側の背部スラスターを切断する。しかし、再度ブロードソードを振るう前に、ノーススター級の素早い足払いに体勢を崩される。

 

「殺ったぞ!」

 

 体勢を崩した相棒にプラズマレールガンの銃口を突きつけられる。このゼロ距離射撃ならあっさりとシールドを破り、装甲を貫く。だが、その銃口から弾丸が放たれる前に、相棒のフェーズダッシュが再び起動した。

 瞬時に亜空間へと消える相棒のシャーシ、プラズマレールガンの弾丸は相棒の代わりに地面を吹き飛ばした。

 

「なっ……⁉︎」

 

 驚愕の声を上げるIMCパイロット、ただすぐさまVTOLホバーで回避行動に出たところはさすがと言うべきか。だが、もう間に合わない。

 

「おおおおっ!」

 

 VTOLホバーが起動する前に、ブロードソードの鋭い切っ先が背後から突き立てられ、ノーススター級の装甲を切り裂く。コクピットまで達した刃は、パイロットごと完全にシャーシを貫いたのだった。

 切断面から漏れ出すオイルがブロードソードの刃を汚す。それには薄っすらと赤い血も混じっていた。

 

「敵タイタン、撃破……警告、すぐに回避行動に移ってください!」

 

「はぁ……はぁ……っ⁉︎」

 

 機体に走る鈍い衝撃と警告のアラートを響かせる相棒。すぐさまブロードソードを引き抜き、攻撃された方向を庇うように、ブロードソードを盾に構える。

 盾にしたブロードソードに叩きつけられる無数の弾丸、二機のリージョン級のプレデターキャノンだ。瞬く間にシールドを剥がされ、装甲が傷だらけになっていく。

 

「くっ……そぉ!」

 

 ジャングルの木々では、プレデターキャノンを防ぐ遮蔽物にもならない。ラスティモーサ大尉らはまだイオン級と交戦中、サルヴォコアによるダメージが蓄積してる分、仕留めるのに時間はかからないはず。しかし、それまでこちらが耐えられるか……! 

 

『苦戦してるようだな、手を貸すぜ?』

 

「……!」

 

 突如、一機のリージョン級のカメラアイが炎に包まれ視界を奪われる。そしてもう一機のリージョンは多量のスモークに覆われ、こちらを見失っていた。

 

「バッテリー頂き!」

 

 視界を奪われたリージョン級に飛びつく人影。機体に取り付き、バッテリーを抜き取ろうとするあれはーー味方のパイロットだ!

 

「やっちまえドロズ!」

 

「任せとけ!」

 

 もう一人、クロークで姿を消していた別のパイロットが、リージョン級に歩兵用のロケット砲を撃ち込んで動きを抑制する。その隙に取り付いたパイロットはタイタンのバッテリーを引き抜き、おまけのグレネードを放り込んでいくのだった。

 

「フー! この仕事最高っ!」

 

 楽しそうに歓声を上げながら、バッテリーを抱えてリージョン級から飛び降りるパイロット、そして爆発するグレネード。これはかなり堪えたに違いない。

 そしてもう一機のリージョンはスモークに巻かれてこちらが見えてない、今の内にこの一機は仕留める。

 

「機体損傷率40%、ダメージが蓄積しています……ですが、まだ戦闘は続行可能です」

 

「踏ん張れよ……相棒!」

 

 リージョンの装甲は分厚く、ブロードソードでその装甲を貫くのは難しい……ならば! 

 

「ソードコア、起動!」

 

 高電圧のアーク放電が刀身に纏わりつき、青い火花を散らす。そして、電流を纏った刃をもってリージョン級を全力で斬りつける。

 当然、斬撃は硬い装甲に阻まれて、決定打にはならない。だから何度も何度も、リージョン級に斬撃を叩き込む。

 

「斬り裂けぇ!」

 

 斬撃とともに放たれるアークウェーブ。雷の斬撃がリージョン級の装甲をついに焼き切り、コクピットのパイロット諸共両断した。

 

「敵タイタン、撃破。さすがです、パイロット。しかし、機体負荷が増大、各駆動系の稼働率が大幅に低下しています」

 

 機体のダメージとソードコアやアークウェーブを多用したことによるフィードバックが一挙に押し寄せ、機体に大きな負荷がかかってしまったようだ。

 黒煙を上げるリージョン級の残骸の前で、片膝をつく相棒。しかし、もう一機のリージョン級が──と思ったが、どうやら心配は無用だったようだ。

 スモークに巻かれていたもう1機のリージョン級は、すでにイオン級を処理したラスティモーサ大尉とBTに組み伏せられ、鋼の拳を何度も叩きつけられていた。

 前面の装甲を無理やり引き剥がされ、剥き出しになるコクピット。同時にBTのコクピットも開き、そこからラスティモーサ大尉が飛び出しIMCパイロットに組みつく。

 

「ミリシアのクソッタレ共があぁ!」

 

「悪いな……!」

 

 ラスティモーサ大尉のナイフがIMCパイロットの心臓に突き立てられる。IMCパイロットは始めは激しく抵抗していたがやがて動かなくなり、リンクしていたリージョン級もまた動かなくなった。

 

「ふー……これで全部か。かなりギリギリだったな」

 

「全くだ。誰かさんが無茶なことしてくれたからなぁ」

 

「うっ……それについては弁解の余地もありません……」

 

 40mmトラッカーキャノンにマガジンボックスを装填しながら、破壊されたイオン級の残骸を調べるアンダーソン少佐。ラスティモーサ大尉もさすがに疲れたのか、ヘルメットを脱ぎタバコに火を付けていた。

 

「よお、大丈夫か? なかなか派手にやったな、でもさすがはSRSの特攻隊長! いい立ち回りだったぜ!」

 

「ほら、ドロズが奪ってきたバッテリーを交換してもらえ。そうすればまだ少しは動けるだろ」

 

 相棒と俺のもとにに駆け寄ってくる二人のパイロット、ミリシアの雇った傭兵部隊『6-4』のデイビスとドロズだ。彼らの援護がなければ、俺もやられていたかもしれない。

 

「助かったよ、デイビス、ドロズ。でもバッテリーは……」

 

「こっちはこのリージョン級のバッテリーを頂く、だから気にするな」

 

「俺はバッテリーより残弾が問題だ。もう余裕はないぞ」

 

「……だってよ。3番バッテリーと交換するぞ?」

 

「ああ、すまない。頼む」

 

 ドロズが相棒の一番消耗していたバッテリーと、敵タイタンから奪取したバッテリーを取り替える。これでパワーダウンしていた部分も少しは補えるはず。

 

「にしても、IMCの連中はとんでもない数のタイタンを投入してきてるみたいだぞ。あんたらは一度退いて補給してから、他の部隊の応援に行ったほうがいいんじゃないか?」

 

「俺はその方が助かる……少佐、どうする?」

 

「……確かに、このままでは戦闘を続行するのは厳しそうだ。一度本隊と合流するぞ」

 

「了解。相棒、いけるか?」

 

「はい、バッテリーを交換したことにより、駆動系の稼働率が上昇。シールドも再展開しました」

 

「よし、じゃあ移動するぞ」

 

 ラスティモーサ大尉がタバコの吸い殻を揉み消すと、再びBTに搭乗する。ドロズは相棒に、デイビスはアンダーソン少佐のタイタンにロデオし、本隊と合流するために移動を始めるのだった。

 

「この作戦が終わったら、一杯奢るよ。バッテリーの礼だ」

 

「あっ! それは俺のセリフ! あんたら特攻兵団がいなきゃ、IMCと正面からやり合うなんてできないぜ? だから奢るのは俺の方!」

 

「ふふっ……ま、どっちでもいいさ。とりあえず終わったら飲もう。姉さんやベアも誘うか?」

 

「いいね、ゲイツはあんたのことよく気にかけてるもんな」

 

 ドロズとそんな下らない話をしながら、本隊を目指して歩き続ける。アンダーソン少佐から、作戦中に無駄な私語をするなと怒られてしまったが、内心は自分も飲みたいなんて思ってるに違いない。

 ラスティモーサ大尉は、BTの後継パイロットとして指導しているライフルマンを心配していたが、大尉曰く、そのライフルマンはとんでもなく悪運が強いらしい。俺はまだ顔を合わせたことはないが、どんな奴かは気になる。

 

(にしても……IMCの残留艦隊どもは、あとどれほどの戦力を保有してるのか。戦えど戦えど、相手が消耗してる気がしない)

 

 IMCの攻撃は苛烈を極めている、デメテルを失い補給路を断たれたというのにだ。ここ外惑星への執拗な侵攻がいい礼だ。

 しかし、皆とともに戦えばなんとかなる。IMCの残留艦隊どもを追い出すことができる、お気楽かもしれないがそう思えるのだ。

 戦争は嫌いだ。自分が死ぬのは嫌だし、仲間が死ぬのも嫌だ。それでも俺は故郷であるフロンティアを守るために戦う、そしてそれ以上に仲間のために戦う。

 兵士ならば、自身が大切にするもののために命をかけろ。孤児だった俺をライフルマン、そしてパイロットへと育ててくれたあの人は……エド・フェデラル中尉はいつもそう言っていた。

 俺にとって大切なものは、共に戦場を駆け回った仲間たちだ。孤児の俺にとっては仲間たちが家族、皆と酒を飲んで騒ぐのが一番好きなことだった。そんな仲間のために、俺は命をかけられる。

 それが俺の思う兵士の理想の姿──ならば、今の俺はどうだろうか? 

 

 

 ──

 

 

「……」

 

 電気を消した暗い部屋、隣からは静かな寝息が聞こえてくる。そうだ、ここは日本のIS学園、その寮の一部屋。どうやら随分と懐かしい夢を見ていたようだ。

 ベッドから体を起こし横を見れば、着ぐるみという奇抜な寝巻きの本音が寝ている。そしてまたもや、テンプレな寝言を零していた。

 

「なあ、リーゼ……」

 

「……どうしましたか、パイロット」

 

「今の俺は兵士か? それともこの学園の生徒か?」

 

「どちらでもないでしょう、ですがそれは悪いことではないと思います。ここにはミリシアもIMCもありません。パイロット、あなたが思うように、自由に生きれば良いでしょう……と、エドならそう言うと思います」

 

「ふふ……そう、だな」

 

 俺を一人前の兵士にしてくれたエド・フェデラル中尉。孤児だった俺の養い親になってくれたエドは、野良犬のように生きていた俺に生きる意味を教えてくれた。

 自分もいつかエドのようになりたい、そう思って俺も軍隊に志願した。だが、同時にエドはいつもこう言っていた。お前の人生なんだからお前の思うように、自由に生きろ、と。

 

(好きなように、自由に、か……それもまた難儀なもんだ。ただ取り敢えず酒とタバコが欲しいなぁ……)

 

 若返ったこの体と偽装した身分では、まだここ日本で酒やタバコを嗜むことはできない。さっきの夢のせいで無性に酒を飲みたくなってしまったのだ、今度コッソリと酒を飲みに行こうか。

 それもまた自由──え? 自由の意味を履き違えてるって? エドはこうも言ってたんだよ。

 

『酒とタバコとギャンブル、そして女は俺の命の源』

 

 エドはミリシアのエースパイロットとして名を馳せる一方で、酒や女絡みで軍法会議にかけられた数知れず。エドは生粋の遊び人、もといダメ人間としても有名だったのだ。

 




ノーススターの北星百烈拳はローニンのソードコアすら封殺するという噂
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