いわゆる普通の歩兵。一般的な装備で武装し、一定人数の部隊編成で行動する。パイロットとは天と地ほどの戦力差があるが、頭数が揃えばパイロットを仕留めることもある。
IS世界でも、ISへの随伴や周辺警戒とかで重要性は依然高いのかも。
追記*
今回は主人公の回想のような感じです!
『こちらからパリ級重フリーゲート三番艦! IMCの軌道上兵器の攻撃を受けてる! くそっ……ブリッジの減圧レベルが低下、これ以上は保たない⁉︎』
『総員、ライフボートに乗れ! 脱出しろ!』
無線通信から聞こえてくる悲鳴のような声、そして轟沈し大気圏に突入するミリシアの主力戦艦。宇宙から降り注ぐ無数の破片は、まるで流れ星のように瞬いている。
今落ちてくるのは戦艦の一つは、SRSの旗艦でもある戦艦ジェームズ・マクアランだ。無線では他の戦艦も攻撃を受けているようだ。俺たちは……IMCの罠の中へと飛び込んでしまったのだ。
「パイロット、周囲よりIMCのスペクターが多数接近」
「……っ!」
草むらから飛び出してくるIMCの自動機械化歩兵スペクター。恐れなど微塵も感じないスペクターたちは、躊躇なく俺たちに突っ込んでくる。
俺は背部ラックに備え付けていたブロードソードを引き抜き、スペクターたちを薙ぎ払い、バラバラに破壊していく。
「くそっ……鬱陶しいぞ!」
シャーシの上部に取り付いてきたスペクターを引き剥がし、そのまま握りつぶす。でもこれじゃあ処理が追いつかない。
「相棒、別れて戦うぞ!」
「了解、システムをガードモードに移行。パイロットを援護します」
相棒のハッチを開き、ジャンプキットとクロークを起動させながら飛び出し、近くの木の上へと飛び移る。
パイロット操縦からAI操作に移行した相棒は、引き続きブロードソードを使ってスペクターを始末し、俺はアサルトライフルの『フラットライン』を構えて樹上からスペクターの頭を撃ち抜いた。
ひたすらトリガーを引き、マガジンを取り替える。相棒がブロードソードで薙ぎ払い、時には無造作に履き潰す。だが、IMCのスペクターどもは際限なく襲って来る。
「ちっ。キリがないな、おい……!」
「警告、大気圏外から複数の突入体を検知。パイロット、敵のタイタンフォールです。迎撃準備を」
「……了解した、すぐに移動するぞ!」
俺は再び相棒のコクピットに飛び移ると、スペクターたちを蹴散らしながら友軍の信号が検知できる場所へと移動する。
(くそっ、皆は無事なのか……?)
俺たちミリシア特殊偵察中隊SRSは、惑星タイフォンで暗躍するIMCを叩くために、戦艦ジェームズ・マクアラン含む第9艦隊を動員していた。
IMCの連中はここタイファンでとある兵器の研究を行なっているという。俺たちの任務はその研究施設を探し出し、破壊することにあった。
しかし、タイフォンに降下する直前で、IMCの奇襲を受けマクアランは撃沈した。多くの乗組員は脱出したが、降りた先ではIMCが待ち受けていたのだ。
このままでは俺たちは全滅してしまう、その前にここから離脱しなければならない。
「一番近い敵タイタンの数は?」
「ニ機です。数的不利により戦闘回避を提唱……しかし、敵タイタンの降下地点付近には、複数の友軍信号が確認されています」
「じゃあ行くしかない。見殺しになんかできるか!」
ミリシアのライフルマンたちは皆優秀で勇敢だが、それでもタイタンには到底か敵わない。タイタンとパイロットの援護がなければやられてしまう。
「パイロット、100m前方でIMCタイタンと友軍のライフルマンが交戦中。敵タイタンはイオン級、ヴォーテックスシールドに警戒を」
「分かっている……!」
木々をなぎ倒して小さな渓流に飛び出ると、流れる小川は薄っすらと赤く染まっていた。視線を先に向ければ──そこにはライフルマンを蹂躙するタイタンがいた。
チャージショットでカケラを残して蒸発したもの、無残に踏み潰されて内臓物をまき散らしたもの、そこには人だったものが所狭しと散らばっていた。
「……っ‼︎」
フェーズダッシュを起動し、なおも蹂躙を続けるイオン級へと一気に距離を詰める。そのまま亜空間から一気に強襲すると、IMCのイオン級は驚きのあまりにか機体を硬直させていた。
俺はヴォーテックスシールドを起動させる間も与えず、三連装ショットガン『レッドウォール』を連射。イオン級に無数の徹甲弾が突き刺さり、装甲を破壊していく。
『てめぇ⁉︎どこから湧いてきやがった!』
「黙れよ……! さっさと死んじまえっ!」
弾切れになったレッドウォールをブロードソードに切り替え、そのままゼロ距離でアークウェーブを放つ。
斬撃とともに放たれた青白い斬撃がイオン級の片腕を切り落とし、アーク放電がその動きを縛り付ける。
『クソがぁっ!』
アーク放電で機体の自由が効かないイオン級は、がむしゃらにスプリッターライフルを振り回しながら連射する。
俺は次々に飛び交うエネルギー弾をかわしながら再度懐に潜り込むと、右足の膝関節をブロードソードで破壊。イオン級は仰向けに転倒し、追い詰められたパイロットが命乞いの言葉を吐き出した。
『ま、待ってく──』
「くたばれっ……!」
ブロードソードの鋭い切っ先がコクピットの装甲ごと刺し貫き、金属が裂ける甲高い音が響く。そしてそのまま、イオン級のパイロットはへしゃげていくコクピットの中で絶命した。
「くそっ……」
「敵タイタン、撃破。しかしパイロット、感情に流されてはいけません。冷静になってください」
相棒に諌められ、俺は気を鎮めるために大きく深呼吸をする。冷静にならなきゃ、戦場では生き残れない。だが、今のタイタンの襲撃で生き残れたライフルマンたちは……
「おい、味方のタイタンとパイロットだ! 運が向いてきたぞ!」
「助かったぜ、パイロット!」
近くの岩陰から姿を現わすミリシアのライフルマン部隊、数はわずか8名だけだった。近くにあるドロップシップの数から、どうやらかなりの人数がやられてしまったらしい。
「こちらはSRS『特攻兵団』所属のパイロット、レイ・フェデラル少尉だ。あんたたちの隊長はまだ生きてるか!」
「はっ、こちらに! ミリシア第3フェージリア連隊、ヤンキー・82、分隊長のロドリゴ・サンダース軍曹であります!」
「サンダース軍曹、部下を集めて迎撃準備を! あと一体タイタンが来る、そちらはスペクターや敵歩兵の処理を頼む。こいつを切り抜けたら、他の友軍を援護しつつ戦線を離脱するぞ!」
「了解しました、ご武運を! ……おい、まだ希望を捨てるなよお前ら! パイロットが援護してくれるんだ、絶対に生き残るぞ!」
サンダース軍曹が残ったライフルマンたちを鼓舞し、迎撃準備を整える。本当ならすぐにここを離れたいところだが、そうもいかない。
「敵タイタン、接近。既にこちらは捕捉されているでしょう。種別はローニン級、高速でこちらに接近してきます」
「ちっ……こりゃ腹くくんないとな。お前も気合入れろよ、相棒!」
ライフルマンたちを庇うように前に出ながら、こちらへ向かってくるタイタンを確認する。渓流の向こうの森からやって来る。
レッドウォールに次弾を装填しながら、向こうの出方を伺う。背を向けて逃げ出せば必ず後ろから奇襲される、今ここで叩くしかないのだ。
(まだか、来るなら来いよ……はっ⁉︎)
目の前に流れる小さな小川、それが一瞬、大きく水面を荒立てる。それを見た時には、俺は相棒のスラスターを全開で噴射し大きく横にステップしていた。
それと同時に霧のように姿を現わすローニン級。その手に握られていたブロードソードが振り下ろされ、相棒が持っていたレッドウォールが切り裂かれていた。
『あら……今のをかわすなんて、中々やるのね』
奇襲を仕掛けてきたローニン級から響く機械的な、そしてどこか喜色を滲ませた女性の声。
今のを躱せたのは、俺自身がよくやる手だからというのもあるが、目の前に川があったのが助かった。フェーズダッシュで川を横切るのを感じ取れたのだ。
『少しは楽しませてくれるのかしら……』
「……お前一人で勝手に楽しんでろよ!」
背部ラックに背負っていたブロードソードを引き抜き、それを構えながら奇襲してきたローニン級へと駆ける。
ローニン級もどこか剣士を思わせる構えを取ると、かかってこいと言わんばかりに手招きして見せるのだった。
「上等……!」
バンガード級タイタンである俺の相棒と、敵のローニン級タイタンが同じくブロードソードを振り上げ、そしてその刃を叩きつける。
ギリギリとブロードソードが音を立てて火花を散らすが、機体のパワーはこちらの方が上、鍔迫り合いはこちらの方に分があった。
しかし、ローニン級は軽やかにステップを踏みながら、反った刃で俺のブロードソードを受け流していく。
「ちいっ、厄介な動きしやがって!」
『いい戦いぶりよ……その調子……』
スラスターを細かく噴射しながら、回転するようにブロードソードで薙ぎ払う。相手も力比べでは勝てないことくらい分かってるのか、この一撃も上手く受け流される。
機体の重量を生かした力強い一撃の俺を剛とするのなら、こいつは技と軽やかさを生かす柔。だが、その実力は拮抗していた。
すぐにここから離脱しなければ、IMCはどんどんここに集結して来る。コイツ相手に時間をかけている場合では……ない!
「相棒、少し無理するぞ……踏ん張れよ!」
『……仕掛けてくるつもり? ならこちらも……』
一度距離を離す二機のタイタン。再び互いに手に持つブロードソードを構えると、その刃に青白い雷光が走る。
「ソードコア、オンライン!」
『ソードコア、起動……!』
そして同時にフェーズダッシュが起動し、二機とも霞のようにその姿が消える。ただ、ブロードソードの刀身が纏う雷光だけが弧を描き、ぶつかり合った。
二つの雷光がせめぎ合い、激しく紫電を散らす。そして、相棒と敵のローニン級の姿が露わになると、再び刃をひるがえす。それが延々と繰り返された。
互いの力量が分かってるゆえの全力の攻防、決着がつくのにはそう時間がかかるはずがなかった。だが、決着がつく前に──俺の意識は暗い闇の中へと滑り落ちていった。
その暗闇の中では、アークの青い雷光が瞬く星のようにきらやかに輝いて見えた。
パイロット「よし、ビルドゲージ溜まった!タイタン呼び出すぞ!」
敵タイタンA「タイタンフォールを検知、降下地点をマーク」
敵タイタンB「ドームシールドの解除を確認、攻撃開始」
敵タイタンC「敵タイタンは一機のみです、袋叩きにしましょう」
パイロット「ちょ、まっ……じょ、冗談じゃ──」
ピーピーピーボボボボボ…
呼び出したタイタンがすぐに破壊されてしまう?そんな時は我が社、IMCハモンド・ロボティクスにお任せを──これぞ最新技術
……みたいなCMがありそう。