そして、相変わらず誤字が沢山で申し訳ないです。指摘してくれた方に感謝いたします〜
日記①……『観察開始』
⚪︎月⚪︎日。生徒会長さんからのお願いもあって、観察日記をつけることになっちゃった。もちろん、観察対象は同じ部屋に暮らすルームメイトのレイレイ。
レイレイはおりむー(織斑一夏)と同じ男性適合者だけど、あの篠ノ之束博士と関わりがあるということ以外の素性はよく分かんない。
なので、ルームメイトになったレイレイのことをよく観察して、いい人が悪い人かを見極めるのが私の役目。
今日から頑張るぞー
日記②……『まるで同棲』
レイレイと同じ部屋で暮らし始めてから三日目。なんとなくレイレイのことが分かってきた。
レイレイの特徴一つ目、基本的にいい人だけど中身がおじさんみたい。たまにセクハラ紛いの発言が出てくる、エッチなのはよくないと思う。
レイレイの特徴二つ目、結構な甘党らしく私が買ってきたチョコを美味しそうに食べてた。好きな食べ物が一緒だとちょっと嬉しい。
レイレイの特徴三つ目、意外と恥ずかしがり屋。私が着替えた後に置きっぱなしにしてた下着を見て、顔を赤くしていた。さばさばして大人っぽいしおじさん発言もするけど、割とそういうところは年相応。前にかんちゃんが呟いてた『ぎゃっぷもえ』というのは、こういうことなのかな。
でも……やっぱり男の人と同じ部屋で過ごすって落ち着かない。レイレイも同じなのかな。だから試しに、私と一緒の部屋は嫌? と聞いてみた。そしたら、
『いや、別にお前と一緒の部屋が嫌なわけじゃないけど……うん、落ち着きはしないよな』
……と言ってた。なんだかんだ嫌じゃないんだネ。
日記③……『サーたんに聞く』
レイレイには妹がいて、私はあの娘をサーたん(サラ)と呼んでる。まだ出会って間もないけど、すぐ仲良しになれた。そんなサーたんにレイレイのことを聞いてみた。
でも、サーたんもレイレイのことはよく知らないと言っていた。サーたんの知ってるレイレイは、篠ノ之束博士に出会ってからのレイレイで、それ以前のことは知らないんだって。
それに二人は本当の兄妹じゃないとも言ってた。レイレイもサーたんも、お父さんとお母さんのことをよく知らないって。
このお話をしてる時のサーたんはとても悲しそうな表情をしていた。けど、私は頭をなでなでするしかできなかった。
日記④……『学園でのレイレイ』
クラスではおりむーと並んで注目の的になってる。どっちの方がイケメンとか、付き合うならどちらとか、おりむーが攻めでレイレイが受けとか、話題には事欠かない。
おりむーは鈍感鈍感て言われてるけど、逆に女の子をまるで意識してない行動にドキッとするんだって。
対してレイレイは、女の子と会話する時もすんごい気を遣ってるのが分かる。もちろん、間におじさんジョークも挟んでくるけど。おりむーとは違う意味でデリカシーがないよね。
そして、レイレイはすんごく強いらしい。それこそ、本職の軍人さんと引けを取らない程だとか。だから学園の上級生にも一目置かれたりしてる。それに先生たちにも目をつけられちゃってる。特に織斑先生からはいつもゲンコツをもらってるよ。
目立つのって大変だね。
日記⑤……『レイレイに見られる』
今日、ちょっとした事件が起きちゃった。今日はISの実習があって、授業が終わったらすぐに部屋に戻ってお着替えした。
ついいつもの癖で扉を開けてすぐに服とISスーツを脱いでたら、部屋には先に戻ってきていたレイレイがいたの。レイレイはあんぐり口を開けて驚いてたけど、すぐに慌てて部屋から出て行っちゃった。私が着替え終わって少ししてから部屋に帰ってきたけど、なんだかレイレイはすごく落ち込んでた。
確かにお腹とか足とか、もしかしたら下着まで見られちゃったかもだし、結構恥ずかしかったけども。それでも私がぼんやりしてただけだから気にしないでいいよ、って言ってあげたんだ。そしたら……
『本音は悪くないよ、ただ俺はあまりにも自分が浅ましくて……コレは男の性なんだ、本能には抗えないんだよ……だから許してくれ……』
──って、すんごい哀しい目をしてた。おとこのさが、って言われても私にはよく分かんなかったけど。お姉ちゃんも『男はみんなけだもの!』みたいなこと言ってたけど、多分そういうことなのかな。
だからとりあえず、レイレイの頭をなでなでしておいたの! レイレイも悪くないよー、って。そしたらレイレイは、変な声をあげてベッドの上で悶えてた。
私、悪いことしちゃったかな?
日記⑥……『おりむーと仲がいい』
授業が休みの土曜日のお昼、食堂でレイレイがおりむーと一緒に厨房を借りようとしているのを見つけた。すっかりギャラリーまでできてしまってので、それに紛れてこっそりその様子を覗き見。どうにもレイレイはおりむーから日本料理について学んでるようだった。
男子二人がエプロンで! って周りの女の子たちは目を輝かせてたけど、そのせいかレイレイは少し居心地悪そうにしてた。
それでもレイレイは楽しそうに料理してて、おりむーも趣味が合うからか嬉しそうにしてた。そして二人が作ってたのは肉じゃがとおひたし、一口味見させてと群がった女子たちによって一瞬で無くなっちゃってた。
そのあと、部屋に戻ってきたレイレイにお料理が好きなの? と聞いてみた。すると、レイレイは料理が好きなわけではなく、美味しいご飯を食べたいがために料理をしていたのだ、と言っていた。
そもそもレイレイがおりむーにトレーニングつけたお返しに、料理を教えてもらってたんだとか。おりむーって家事全般が得意なんだって、すごいよね。
でもレイレイとおりむーはまだ出会って間もないはずなのに、すっかり仲良しになってる。やっぱり同じ男の子同士だからなのかな。ちょっと羨ましいかも。
日記⑦……『リゼッちはスゴい』
レイレイの専用機であるリゼッち(リーゼ・シエラ)はとっても賢くて物知り。レイレイの身長体重から好きな食べ物まで何でも知ってるんだって。
試しにレイレイの好きな女の子のタイプを聞いてみたんだけど、リゼッちが喋る前にレイレイがシャットダウンしちゃった。
でもリゼッちは基本的にレイレイのことが最優先。まるで世話焼きな奥さんのように、いつもレイレイにあれこれ注意してる。
それにリゼッちは無感情なようで、聞いてて落ち着く声色をしてる。もしリゼッちが女の子の姿をしてたら、クールで大人びたお姉さんみたいな感じに違いないと思うの。
でもそう考えると、レイレイはモテそうなのにあえて一歩引いた感じなのはリゼッちがいるからなのかな。レイレイの彼女の座は既に、リゼッちに取られちゃってたのかも⁉︎
日記⑧……『レイレイ、ますますおじさんっぽくなる』
最近気づいたこと、レイレイは割と寝言がスゴイ。この前寝てる時に聞いちゃったんだけどね、やれ『酒飲みたいー』だとか『タバコ吸いたいー』って呟いてたんだ。
レイレイって実は中におじさんが入ってるんじゃないのかな? 15歳でお酒とタバコがOKな国ってあったっけ? というかレイレイって15歳なの?
よく分かんないけど、あんまりにお酒タバコーって言うから頭にチョップしておいた。えいっ。
日記⑨……『夢にうなされる』
さっきも書いたけど、レイレイはよく寝言を言っている。でも、昨日の夜の寝言はいつも違った。
しきりに誰かの名前を呟いてたんだ。あんだーそんしょうさ、とか、らすてぃもーさたいい、とか……えどちゅうい、とか。一体誰のことだったんだろう?
私はそんなレイレイの呻き声で目が覚めちゃって、その時にリゼッちが小さな声で私に言ってくれた。
『布仏本音、貴女が今聴いたことは自身の心の内に秘めておいてください。それらはパイロットにはとても大切な記憶、しかしもう触れえないものなのですから』
……って言ってた。その時のレイレイの声は酷く弱々しくて、とても苦しそうだった。その私は知らない誰かたちは、レイレイにとって大事な人たちなんだと思う。
もう触れえないって、その人たちは何処か遠くに行ってしまったのかな? それはレイレイの家族や友達のことなのかな?
でも一つ確信したことがある、レイレイはやっぱりいい人に違いない。かんちゃんが見てるアニメでも言ってたもん、悪い人は悲しいとか寂しいとか感じないんだって。
日記⑩……『未定』
今日は学園の催し物であるクラス対抗戦があったの。でも、空から黒いISが降ってきて、色々と台無しにしちゃった。おりむーやレイレイがやっつけてくれたけど、とっても怖くてビックリした。
でも、あの時のレイレイの戦い方を見てる方が怖かった。チラリと見えたぐらいだけど、生身でISに攻撃されたら怪我するどころの話じゃないよね?
なのにレイレイは、リゼッちと協力して黒いISをボコボコにしてた。死んじゃうことなんて微塵も怖くないって感じだった。見てるこっちは怖かったのに。
レイレイはいつもあんな無茶なことをしてるのかな。まだレイレイとは出会って間もないけど、ルームメイトが死んじゃったらイヤだよ。だってレイレイは──
──
「うーん、レイレイは……そうだなー」
寮の部屋で机に向かって首を傾げる本音は、日記の内容に頭を悩ませていた。楯無からの頼みでレイを監視して気づいた事を、日記という形で綴っていたのだ。
もちろん、本音自体はレイを監視しているという自覚はあまりない。ただ、不思議なルームメイトのことをぼんやりと書き記しているだけである。
「何て書いたらいいんだろ〜。レイレイはやっぱり、こうバーッてなってるしー、グワッてなってるもんね〜」
「バーッとグワッてなる? 何だそりゃ、俺がどうかしたのか?」
「──っ!」
後ろから聞こえてきた声に、ピクリと肩を震わせる本音。そして、ゆっくりと声の主の方へ振り返ると、精一杯眉間に皺を寄せた抗議の表情を作って見せる。
「見〜た〜な〜」
「や、見てねぇよ」
いつの間にか部屋に帰ってきていたレイ。本音は日記の中身を見られたのではと、珍しく焦ったような様子で日記を抱き抱えて隠す。
「……ホントに見てないー?」
「見てないよ。ま、中身はなんとなーく予想できるけどな」
レイはそう言ってニヤリと笑ってみせる。まるでお前のやる事なんて全部お見通しだぞっ、と言いいたげである。
「むー、またそうやって人のこと見透かしちゃって〜。レイレイのエッチ、ムッツリスケベー!」
「エッチなのもスケベなのも否定しないが、ムッツリではない。どちらかというとオープンな方さ」
「何でこういう時に開き直るの? オープンだから?」
「お前にはもう隠しようがないだろ。だってほら、そんな日記が書けるくらいには俺のことを観察してたんだろ。悪口とか書いてないか?」
「えーそんな事は書いてないよー」
「ふぅん。
「あー、えーっと、うん……えへへー」
にへら、と笑う本音に苦笑するレイ。しかし、レイは実に悪そうな顔になると、あるものを本音の前にかざした。
「では、取材料ということでこのプリンは頂いていこう」
「あーっ、それ冷蔵庫にあった最後のプリンー。私が後で食べようと思ってたのに〜」
レイが手にしていたのは、冷蔵庫に残っていたカスタードプリンだった。プリン自体はセシリアからの貰い物であり、既にレイも本音も一つずつ実食済みである。
「ふははっ、俺は今モーレツに甘いものが食べたいんだ。大人しく諦めるがいいっ!」
「……いいもん、今度レイレイにはまた別のお菓子を買ってきて貰うもんねー」
ふん、と頬を膨らませてそっぽを向く本音に対して、レイは嬉しそうに最後のプリンをスプーンですくって口に含む。
しかし、ゆっくりとプリンの味を楽しむレイを尻目に、本音は何か思いついたように手を合わせる。
「ねーレイレイ、そのプリン美味しいー?」
「この舌の上でとろける感じ、最高に美味だね」
「そっかー、じゃあ私にも一口ちょうだい?」
「一口ちょうだいって……えぇ?」
何か期待するようにレイの前で口を開けてみせる本音に、さしものレイもたじたじとしてしまう。
本音が要求しているのはよく恋愛ドラマとかアニメである定番のアレ、『はい、アーン♡』というやつである。もちろん、レイもそれは分かっていた。
一夏なら戸惑いつつも、なんだかんだで食べさせたかもしれない。しかしレイは……
「あ、あ〜……──っ、ダメだ! やっぱりこのプリンはやらん!」
「えー?」
アーン、とする寸前でスプーンを自分の口に持っていってしまうレイ。本音はプリンを食べさせてくれなかったことに、目に見えてしょんぼりとしてしまう。
(お、俺が悪いんだろうか……いや、俺が悪いんだろうな。こういう時の女の子は無敵だもんな、食べさせなかった俺が甲斐性なしなんだろう……)
レイがスプーンを咥えたままチラリと本音を見ると、本音はじっと視線で『レイレイのけちんぼー』と訴えてくる。
その何とも言えない空気の中で、レイはやたらと甘ったるく感じるようになってしまったプリンを啜るのだった。
最近流行りのウマ娘にあやかって『タイタン娘 プリティーソルジャー』というのはどうです?
ラストタイタン・スタンディング・カップ、通称LTS杯の優勝を目指して可愛いタイタン娘と二人三脚。ライバルパイロットを轢き潰して最強の称号を掴み取れ!
きっとエイペックスレジェンズに次いで大ヒットするに違いない。