『ブロードソード作戦』の開始後、ミリシア第9艦隊は即座に惑星タイフォンへの降下準備を進めていた。しかし、タイフォン周辺に到着した時、我々はIMCの軌道上兵器からの攻撃を受けた。主力艦であるジェームズ・マクアラン級は撃墜され、我々はタイフォンに緊急降下せざるを得なかった。そして降下した先には、IMCの大部隊が待ち受けていた。
IMCの奇襲と待ち伏せにより、第一、第二、第三フェージリア連隊は壊滅的打撃を受ける。また、パイロット数名と数機のタイタンを喪失した。
降下部隊の指揮を一任していたタイ・ラスティモーサ大尉は、降下直後にエイペックス・プレデターズのタイタン部隊と交戦。タイタンは中破し、ラスティモーサ大尉は戦死。
ラスティモーサ大尉の任務とリンクしていたバンガード級『BT-7274』は、後任パイロットとして推薦されていた三等ライフルマン、ジャック・クーパーへと引き継がれた。
私はパイロットたちに、可能な限り多くのライフルマンを連れてその場から離脱するように指示をした。これ以上の戦力喪失は、作戦継続不可となるからだ。しかし、今度は離散した戦力を再び集結させなければならない。一人ではIMCに勝てない、結団しなければならないのだ。
鬱蒼と生い茂るジャングル、遠くから聞こえる原生生物たちの鳴き声。そんなどこまでも続くジャングルの中、俺たちはあてもなく行軍を続けていた。
惑星タイフォンの高温多湿の原生林、ここはIMCの奇襲をなんとか生き延びた俺たちの体力を確実に奪っていた。
「ここらで休憩しよう、先行した斥候たちもそろそろ帰ってくるころだろう」
相棒のハッチを開いて、後ろをついて歩くライフルマンたちにそう声をかける。
「了解です! ……全員、10分間の小休止だ! 水は大切に飲むように!」
第3フェージリア連隊所属のサンダース軍曹が、ライフルマンたちに指示を出す。その指示に力なく従うライフルマンたち、やはりかなり消耗しているようだ。
IMCに奇襲されてからもう丸一日経つ。結局、俺があの場で助け出せたのはここにいる26名だけだった。今はIMCのサルベージ部隊の追跡を逃れ、どこにいるかも分からない本隊との合流方法を探していた。
「サンダース軍曹、皆の様子は?」
「芳しくありません。特に負傷者のための医薬品が不足しています。それに食料と水も……なんとかして補給を得なければ、我々は全滅してしまいます」
「そうか……」
タイタンならバッテリーがある限り何時間でも歩き続けられる。しかし、人間はそうはいかない。飯も食うし睡眠も取る、不眠不休には限度がある。
負傷者も抱えたまま鈍行を続けても、悪戯に犠牲者を増やしてまうだけだ。なんとか手を打たなければならない。
(俺たちの作戦目標は惑星タイフォンにいくつも存在するIMCの研究施設の破壊、及び動向調査。IMCの施設がいくつもあるなら……)
俺の考えが間違ってなければ、絶対に各地に点在しているはずなのだ。運良く近くにあるかどうかは分からないが。
もし無ければ、負傷者含む26名のライフルマンは、このタイフォンの原生林で生き絶えることになる。だが、そんなことは絶対にさせない。
「……少尉! 先行していたライフルマンが帰ってきました!」
「来たかっ! すぐに報告させてくれ!」
ジャングルを進む上で、あらかじめ何人かを先行させて偵察を命じていた斥候が帰ってきた。どうか俺の望む報告を聞かせてもらえないものだろうか。
「第3フェージリア連隊、ヤンキー・8-7、マック・ロウ三等ライフルマン! ただいま帰還いたしました!」
「報告してくれ、マック三等ライフルマン」
「はっ……少尉殿の読み通りでした。ここから北西に7kmほどに、IMCの小規模の連絡基地を発見しました」
「本当か⁉︎よし、だったら望みはある……!」
斥候に探させていたもの、それはタイフォン各地に設置されているだろうIMCの小基地だった。
大規模なものならともかく兵力の乏しい連絡基地程度なら、今のこちらの戦力でも十分に叩ける。そこで物質を奪取し輸送手段を得られれば、俺たちが生き残れる確率はずっと上がる、というわけだ。
「こちらが偵察した際に作成した基地の間取り図です。そして、予測される敵戦力は……」
マック三等ライフルマンが作成した間取り図を受け取りながら、引き続き報告に耳を傾ける。
予想される敵戦力は、やはりそれほど大規模なものではない。あってもせいぜい戦車程度だそうだ。万全でない相棒だけでも、制圧できそうだ。
「なるほど……相棒、どうだ? 俺は勝算は十分だと思うが……」
「各条件を設定、シミュレーションを実行中……結果、数ではこちらが劣る上に、私の装備はブロードソードのみ。ここは隠密行動による奇襲攻撃が最も効果的でしょう」
「ふむ……奇襲か」
「制圧に時間が掛かれば、惑星外から増援が送られてくる可能性があります。通常ならば、基地のセキュリティシステムを掻い潜って部隊を侵入させるのは難しいでしょう。ですがパイロット、貴方ならそれが可能です。パイロットが先行して基地に侵入、セキュリティシステムを無力化し、後に私を含む後続部隊が強襲し制圧しょう」
「……よし、分かった。サンダース軍曹、皆を集めてくれ。作戦を練るぞ」
「はっ!」
背筋を伸ばして敬礼するサンダース軍曹……やはり、上の立場ってのは慣れない。年齢でいえば軍曹の方が年上な訳だし。
だが、俺には皆を率いる義務がある。だからなんとしてもこの作戦は成功させなければならないのだ。
──
僅かな月明かりが照らす夜闇の中、俺は独り静かに行軍していた。休息を取っていた場所から北西に7km、そこには報告通りにIMCの連絡基地があった。
基地の真ん中にそびえ立つ大きなアンテナ、星間ビーコンの一種だろう。IMCの残留艦隊とも交信しているに違いない。
「こちらフォックストロット2-1、そちらの配置は済んだか?」
『こちらヤンキー8-2、全隊配置につきました。パイロットの合図があればいつでも攻撃可能です」
「OK、こちらも行動開始する。幸運を祈る、アウト」
草むらに身を隠しながらサンダース軍曹との交信を終了し、ヘルメットの望遠機能を使って連絡基地を偵察する。
四方に設置された見張り塔、出入り口を除いて張り巡らされた鉄格子。恐らく鉄格子を切り破れば、すぐに警報が鳴り響くだろう。
当然、出入り口には見張りの兵士と監視カメラ。辺鄙な地とはいえ、見張りの兵士に油断は見られない。
(さて……まずは基地内に侵入しなくちゃならない)
サンダース軍曹や相棒らは俺とちょうど正反対の位置、連絡基地の向こう側で待機している。まずは俺だけが基地に潜入するのだ。
中々に監視の目は厳しい、普通の兵士なら気付かれずに侵入するのは難しいだろう、
(幸い、基地の周りは草木が多く茂っている。クロークを使いながら近づけば、監視カメラではまず見つからない、か……)
俺は身は屈めながら、少しずつ基地へと近づいていく。そして、大口径のリボルバー『B3ウィングマン』とナイフを取り出し、クロークを起動して草木に紛れ消える。
基地の入り口を見張る兵士はこちらに気付いていない。俺はそのまま基地を取り囲む鉄格子に近づくと、極力ジャンプキットの出力を抑えて、静かに鉄格子を飛び越える。
「……ん?」
飛び越えて基地に入り込んだ矢先に、着地音を聞きつけた巡回中の兵士がこちらに近づいてくる。もちろん、想定通りだ。
俺はクロークを起動させたまま近くのコンテナの陰に隠れると、音を立てずにその上へよじ登る。
(ここで一人仕留める……!)
俺はナイフをパルスブレードに持ち変えると、近づいてくる兵士とのタイミングを計る。まだだ、奴が完全にコンテナの陰に入り込むまで……まだだ、まだ……今っ!
「……っ⁉︎」
クロークを解除しながらコンテナの上から兵士に肩車するように乗りかかった俺は、兵士が驚きの声を上げる前に口元を抑えながら、顔面にパルスブレードを突き刺した。
力なく地面に崩れ落ちる兵士、それと同時にパルスブレードから放たれるエコー。エコーが検知した反応が、ヘルメット内のディスプレイに映し出される。
(一つ、二つ、三つ……まだまだいるな)
思ったよりも数は多い、さっさと通信施設を無力化させて、セキュリティシステムをダウンさせないと面倒なことになりそうだ。
俺は兵士の死体を目立たないように隠した後、兵士の持ち物を漁りはじめる。探していたものはすぐにみつかった、この基地の見取り図だ。
地図によれば基地内にある主要な建物は三つ。一番大きな建物が格納庫。その隣が兵舎。そして大型アンテナの麓にあるのが管理棟だ。
今、俺が近くにいる建物は兵舎だ。さっきパルスブレードの反応を見たように、建物内にはまだ兵士が何人もいる。
(合図はここに仕込んでおくか)
バックパックからサッチェル爆薬を取り出し、兵舎の周りにいくつか設置する。後で盛大に花火を上げた時、この建物はジェンガのようにぺちゃんこになるだろう。
(さて次は……管理棟だ)
コンテナやトラックの陰を移動しながら管理棟へと近づくと、灯のついた一室から何か声が聞こえてくる。
「……こちらディスコ6、汚水処理場にてタイタン含むミリシアの部隊と交戦中との連絡を受けた。座標119ー247にラムダ4航空部隊を投下せよ、アウト」
『こちらカッパー2・サルベージ部隊。ミリシアの残存兵が座標772ー981の星間ビーコン基地に集結している。増援を求む』
「了解した、カッパー2。現在、当基地の軌道上に待機中のリヒターがそちらへ向かう。到着を待て」
様子を窓から中を覗けば、大きな機器と向かい合ってどこかと交信する通信士がいた。どうやらここは通信管理室のようだ。
(軌道上に待機中、だと? それに味方の生き残りがIMCの星間ビーコン基地に集結しているだって?)
星間ビーコンを利用して離散してしまった第九艦隊に連絡を取ろうとしているのだろうか。
しかし、今の無線からIMCにはすでに捕捉されてしまっているようだ。早くこちらも合流しなければ、やられてしまうかもしれない。
(落ち着け……まずはこの作戦を完了させる。移動のための足が手に入れば、今の座標の位置なら直ぐに合流できるはず……)
俺は気を取り直して管理室を探す。この管理棟は二階建てのそう大きくない建物だ。セキュリティシステムの管理は、一階ではなく二階だろう。
俺はグローブを管理棟の壁に張り付かせると、そのまま二階の窓までよじ登り、静かに窓へ近寄る。
「なあ、聞いたか? ミリシアのバンガード級タイタンのシャーシは、かなり高額で引き取ってもらえるらしいぞ」
「ああ……それでサルベージ部隊は血眼になって探してたのか。俺たちもお宝探しに参加してみるか?」
「冗談言うなよ。ミリシアのバンガード級は、ただのタイタンじゃないらしいぞ。コストは高いが、その分普通のタイタンを凌ぐ高性能だという話だ」
「だから高額なのか。ま、俺たち歩兵には関係ない話だぜ」
二階の部屋には椅子に座って談笑する二人の兵士。そしてその兵士らの前には、沢山のディスプレイが備え付けられた大きなコンピュータ。
間違いない、あれがこの基地のセキュリティを管理してるコンソールだ。
(軌道上に待機しているのがタイタン・ドロップシップだとまずい……だが、ここで作戦を中断すれば、俺たちに生き残る道は途絶えてしまうかもしれない……やるしかない!)
俺は一旦下に降り、先ほどの通信士が交信を終了しているのを確認すると、バックパックから今度は電気スモークグレネードを取り出しそのピンを引き抜く。
そして、それを一階の窓から投げ込むと同時に、先ほど仕掛けたサッチェル爆薬の起爆スイッチを押した。
「こちらフォックストロット2-1、攻撃を開始せよ」
『ヤンキー8-2、了解! 全隊突撃、格納庫を確保するんだ!」
轟音を立てて起爆するサッチェル爆薬と、それによって崩れ去る兵舎。同時に俺はグラップリングフックを撃ち込むと、窓ガラスを突き破って管理棟の二階へ突入していた。
部屋の中に転がり込みながら、B3ウィングマンの照準をコンソールに駆け寄ろうとしていた兵士に合わせ、そのままトリガー。
放たれた弾丸はスイッチに手を伸ばす兵士の頭を撃ち抜き、監視カメラを映すディスプレイを血で汚した。
「なっ……ミリシアのパイロット⁉︎」
もう一人の兵士は驚きながらも、肩から下げていたサブマシンガン『R-97』を構えようとする。しかし、その動きはあまりに遅い。
兵士が射撃体勢に入る前に俺は一気に距離を詰めると、強烈な殴打を顔面に浴びせる。そしてさらに、追い討ちをかけるように兵士の体にグラップリングを撃ち込み、ワイヤーを巻き取りながら部屋の壁へ叩きつけた。
「ごっ……⁉︎」
兵士が呻き声を上げ、骨が砕ける音がワイヤー越しに伝わる。俺はすぐにフラググレネードのピンを抜いて部屋の真ん中に転がしながら、部屋の扉を蹴破り廊下に飛び出る。
すぐ後ろで爆発するフラググレネード、そして廊下の奥には騒ぎを聞きつけてこちらに走り寄ってくる三人の兵士。
「侵入者だ、射殺しろ!」
「おっと……」
俺に向けてアサルトライフルの銃口を向ける兵士たち。俺はホロパイロットでダミーを作り出しつつ、クロークを起動。姿をくらませながら天井を駆ける。
敵の兵士たちは次々とダミーに対して発砲するが、それが偽物だと気づいた時には三人のうち二人の額に大きな穴が開けられていた。
「邪魔だ、どけっ!」
残った一人の兵士は頭を上から踏みつけ、頭蓋を砕く。そのまま俺は管理棟の一階まで降りて、通信機器のあった部屋を確認する。
見れば、中は電気スモークで回路を焼き切られた機器と、体を痙攣させながら倒れる通信士がいた。パルスブレードで建物を調べても他に兵士はいない、管理棟は制圧完了だ。
「こちらフォックストロット2-1、管理棟は制圧した。そちらはどうだ!」
『こちらヤンキー8-2、格納庫は間もなく制圧完了します!』
よし、ここまでは順調だ。後は増援が来る前に──っと、管理棟の外に敵がいるな。出入り口にいた歩哨か、兵舎の爆破を逃れた生き残りか。一向にセキュリティが起動しないので状態を確認に来たのだろう。
敵は三人、管理棟の玄関口から突入する気だろう。俺はB3ウィングマンに弾を込めながら、玄関を一番狙いやすい位置で身構える。
「サンダース軍曹、敵の増援が惑星外から送られてくる可能性が高い。あと3分で離脱するぞ」
『……っ! 了解しました!』
無線越しには、相棒がブロードソードを振り回す音が聞こえてくる。とりあえず向こうの心配は無用のようだ。俺はこっちをさっさと片付けるとしよう。
俺はパルスブレードを自分の足元に投げつけて、ブレードの放つエコーで壁越しに敵を捕捉する。すると、ちょうど扉を開けようとしてるのがシルエットで見て取れた。
「お帰り願おうか……!」
壁越しに頭と胸を狙って二発、ウィングマンのトリガーを引く。リボルバーならではの強装弾、玄関の扉をいとも容易く貫通し、そのまま扉を開けようとしていた兵士をも貫いた。
そして、ジャンプキットの勢いを利用したスライディングで一気に玄関口まで駆け抜け、扉を蹴破る。
ちょうど外には左右に展開していたIMC兵士が二人。左側の兵士には複数体のホロパイロットを放ち、俺自身は右側の兵士に飛びかかり、地面に押し倒して顔面にナイフを突き刺す。
そして、放たれたホロパイロットに撹乱させられていた三人目の兵士へ背中越しにウィングマンの銃口を向けると、そのまま頭を撃ち抜いた。
「よし、後は──っ⁉︎」
つんざくような空を切る音、空から隕石のごとく飛来するなにか。それ俺のすぐ目の前に落下してきた。
大地が音を立てて揺れ、近くの窓ガラスは一つ残らず砕け散る。俺もその衝撃に吹き飛ばされ、背中から地面に倒れてしまう。
(なんてこったっ……もう来やがったのか……!)
土煙が巻き上がる中で視線を上げれば、そこにはこちらを見据える赤いカメラアイ。今の衝撃はこれだ、タイタンフォールだったのだ!
『貴様がミリシアの
聞き慣れない言葉を交えた敵タイタンのパイロットの声。土煙を払らいのけて姿を現したのは、トーン級のタイタンだ。
そのシャーシに施された独特なノーズアート、こいつはIMC兵ではない、雇われの傭兵だ。
『俺が役立たずどもの尻拭いをするのは気に食わんが……貴様は俺を失望させないだろうな?
そう言って手に持つ40mmトラッカーキャノンを俺に向けるトーン級タイタン。その銃口から炸裂弾が放たれる前に俺はクロークを起動して横に跳びのき、壁の裏側へと隠れる。
「相棒、聞こえるか? すぐそっちに向かう、そこで待機してろ!」
『了解です、パイロット』
管理棟から格納庫までは僅か50mほど、遮蔽物はないがすぐに駆け込むことぐらいできるとも。
俺は意を決して壁の裏側から飛び出すと、格納庫へ目掛けて走り出す。
『逃げる気か、
後ろからなお響く40mmトラッカーキャノンの発射音。何発かが俺のすぐ横に着弾し、破裂した鉄片が脇腹に突き刺さる。
「──っ! く……っそぉ!」
格納庫はすぐ目の前、俺は格納庫の窓枠にグラップリングフックを撃ち込むと、一気にワイヤーを巻き取り窓ガラスをぶち破って格納庫の中に転がり込んだ。
「くっ……日に二度も窓ガラスを突き破るハメになるとかツイてないな、畜生……!」
「少尉殿! 無事でしたか!」
格納庫の中には、俺の陽動の後に突入し格納庫を制圧したライフルマンたちと、血濡れたブロードソードを抱えて身を屈めている相棒がいた。
運がいいことに、この格納庫には整備された装甲車が二台もあったらしく、負傷者を優先的に担ぎ込んでいる最中だった。
俺は脇腹の傷に突き刺さっていた鉄片を引き抜き、相棒に駆け寄ってコクピットに乗り込む。
「相棒、外に敵タイタンがいる。迎撃するぞ!」
「了解、操縦権をパイロットに移行します」
「少尉、我々も援護します!」
「不要だ、アンタらはさっさと撤退の準備を進めろっ!」
サンダース軍曹を叱責しながら相棒のハッチを閉じ、相棒とのニューラルリンクを確立させる。外では敵のトーン級タイタンが、俺に向かってがなりたてていた。
『出て来い! そのまま倉庫ごと潰されたいかっ!』
「ちっ……言われなくても出て行くさ。サンダース軍曹、撤退準備が整ったら、先に座標772ー981に向かえ。IMC星間ビーコン基地に味方が集結している。本隊と合流するんだ、分かったな?」
「……っ……了解です、少尉殿……どうかご無事で!」
背筋を伸ばして敬礼するサンダース軍曹、それを見届けた俺は格納庫のゲートを突き破って外に躍り出る。
「そら、望み通り出てきてやったぞ」
『ミリシアのバンガード級……俺が先攻して正解だったようだ。IMCの雑魚どもでは歯が立たんだろうからな』
俺と敵タイタンとの距離はゆうに100mほど。ブロードソードしか持たないこちらからすれば、トーン級タイタンが大いに有利な間合いだ。
それが向こうも分かってるのか、トーン級タイタンは悠々とトラッカーキャノンのリロードをしている。
そして、その背後遥か遠くには、新たに二つの流星が落ちてくるのが見える。更に増援の二機のタイタン、こいつはかなりまずい状況だ。
『何故あのような役立たずどもを庇おうとする。さっさと見捨ててしまえばいいだろう』
「ライフルマンたちのことか? アンタには関係ないだろうが。というか部下を率いるのは上官の務めだろうに」
『戦場では力が全てだ、弱い奴は死ぬ。お前はどうだ、弱者を守って強者を装っているだけか?』
リロードを終えたトラッカーキャノンを構えて、赤いカメラアイでこちらを見据えるトーン級タイタン。
俺も今唯一の武装であるブロードソードを盾のように構えながら、満足に残っていないエネルギーをスラスターに集中させる。
「はっ、アンタ程度が相手ならライフルマン数人を抱えていようがいまいが、大した差じゃあないね。そっちこそ、お供のタイタンが到着するのを待たなくていいのかい?」
『……ならば、俺が貴様の力を見極めてやる。
最大駆動させたスラスターで距離を一気に詰める俺と、パーティクルウォールを展開してそれを迎え撃つトーン級タイタン。
正直言って勝率は低い、先の負傷がかなり響いているのだ。視界がぼやけ始め、ヘルメット内は吐血で血に染まりつつある。思った以上に出血してる、放っておけばすぐに死んじまうだろう。
(もちろん、こんなところでくたばる気は毛頭ない。しかし免れないというのなら、一人でも多くの敵を道連れにしてやる)
俺は相棒の自爆装置に指をかけながら、意識を手放すまいと歯を食いしばる。そしてただひたすらに、目の前の敵を倒すことだけを考えてブロードソードを振り回すのだった。
今回もオリ主の回想回でした
コールサインって響きがもうカッコいいですよね。タイタンフォールだとウォンバットとか動物の名前が多かったような?
今回は普通にフォネティックコードのコールサインにしておきました。