Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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 ○ジャック・クーパー
 SRSのライフルマンでありタイタンフォール2の主人公。ラスティモーサ大尉からパイロットになるための訓練を受けていたが、惑星タイフォンにて大尉が戦死。その場でバンガード級タイタンの『BT-7274』受け継ぎ、なし崩し的にパイロットになる。
 その類稀な才能から数々の戦果を挙げ、フォールド・ウェポンによる惑星ハーモニーの破壊の阻止し、多くの人々の命を救った。


Log.27 データ更新:ラウラ・ボーデヴィッヒ①

 IS学園の第2アリーナ。ISが思いっきり暴れられるくらいに広いそこは、模擬戦をやるにはちょうどいい場所だ。

 いつも通りに激しい戦闘音で騒がしいアリーナだったが、今日は少し様子が違った。

 

「ぜぇ……ぜぇ……お前らなぁ……なんだあの戦い方はっ……!」

 

「ふ、ふふん、文句でもあるの?」

 

「こ、これが代表候補生の力ですわ!」

 

 俺は跪くリーゼの横で大の字になって息を荒げていた。そして、それを見下ろすのは勝ち誇った表情を見せる二人、セシリアと鈴だ。

 

「どんな戦い方だろうと勝ちは勝ちよ!」

 

「相手の弱点を攻めるのは基本中の基本ですわ!」

 

 今回も二対一の模擬戦だった。俺は脳みそをフル回転させながらなんとか二人の猛攻を凌ぎきっていたのだが、遂にシールドを全て削り切られた。

 ただ、二人の戦い方はなんとも酷いものだった。いや、決して間違いではない、俺にはかなり有効な手段ではあるのだが、アレは酷いと言わざるをえない。

 今回の二人が取った戦法は、延々と引き撃ちだ。リーゼの機動力はブルー・ティアーズや甲龍に劣るわけだし、二対一で遮蔽物も何もないだだっ広いアリーナで徹底的に引き撃ちされたら……うん、勝てねぇよ? 

 

「それでもこっちのシールドはしっかり削ってくるんだから、中々危なかったわ。ま、あたしの衝撃砲がうまいこと当たったから勝てたんだけどね」

 

「対複数戦のその立ち回りは、私としても見習うべき点ですわ。まあ、私の狙撃の前には無意味だったようですけれど」

 

「なによ、あんた散々外してたくせによくそんなこと言えるわね?」

 

「あら、無駄撃ちのしすぎでエネルギー切れになりかけていたのはどちら様でしょうか?」

 

「……」

 

「……」

 

 先ほどまでは息ぴったりのコンビネーションを見せていたのに、今度は火花を散らして睨み合ってる。お前らは仲いいのか悪いのかどっちなんだ。

 

「二人とも、そこまでなのです」

 

 そんな二人の間に割って入ってきたのは、ラファール・リヴァイヴを纏ったサラだった。今日はシャルルにラファール・リヴァイヴの戦術について教えてもらうため、一緒に訓練に参加していたのだ。

 そのシャルルは、アリーナの端の方で一夏と一緒にまた別のことをしていたが。

 

「二人して兄様をいじめるのはやめるのですっ……!」

 

「い、いじめてなんかないわよ……」

 

「こ、これはお互い同意の上での模擬戦ですのよ」

 

「……だったら、もう一度模擬戦をしましょう。今度はサラが兄様と組みます」

 

「えっ……ちょ、ちょっと待てよ。俺はやるなんて一言も……」

 

「それとも、たかだか訓練機の私が加わっただけで、兄様に勝てなくなってしまうのがそんなに嫌ですか?」

 

「「カチンッ!」」

 

 サラの一言に、セシリアと鈴の顔がひきつる。ああ、こりゃまずい。完全にキレてるだろ、こいつら。

 

「ふーん……中々言ってくれるじゃない、サラ? 確かにアンタはいい腕してるけどさぁ……お望み通り、たかだか訓練機じゃ何にもできないことを教えてあげるわよ……」

 

「そのような物言いは淑女としてふさわしくありませんわね。わたくしが教育して差し上げますわ……」

 

「上等なのです、兄様と私のコンビネーションを見せつけてやるのですっ!」

 

「お、おいおい、落ち着けよお前ら……! だいたいなんでお前がそんなに怒ってるんだよ……」

 

「さあ、始めますよ兄様。早くリーゼに搭乗してください」

 

 頬を膨らませて憤慨するサラは、まるで俺の話を聞いてくれない。こいつはこいつで大概頑固だ。

 そして、やはり俺に拒否権はないらしい。全く、女尊男卑の世の中は世知辛いもんだぜ。

 

「……リーゼ、システムを戦闘モードに移行だぁ……」

 

「了解です、システムを戦闘ーー大丈夫ですか、パイロット?」

 

「あぁ……大丈夫、大丈夫だとも……まあ、サラが相方なら、少しは楽ができるかな」

 

 一人ぼやきながらリーゼに乗り込み、リーゼとのニューラルリンクを確立する。二対一から二対二になるのだから、当然さっきよりは楽だ。

 

「さて……じゃあ二回戦目、始めるわよっ!」

 

 鈴の合図を皮切りに、模擬戦がスタートする。開始と同時に大きく距離を突き放すセシリアと、巨大な青龍刀『双天牙月』を構える鈴。

 対してこちらは、ロードアウト『ローニン』のブロードソードを構えるリーゼと、大型のマシンガンをコールして俺の後ろに下がるサラ。陣形的にはお互いよく似ている。

 

『サラ、セシリアをうまいこと押さえつけていてくれよ。俺は鈴と戦る』

 

『了解です、兄様』

 

 スラスターの推進力で、一気に鈴との距離を詰める。鈴は肩部アーマーを展開させて、衝撃砲による無数の不可視の砲弾を放つ。それはさっき散々食らったのだ、もう当たらないぞ。

 

「接近戦がお望み? 上等よっ!」

 

「借りはきっちり返させてもらおうか!」

 

 ローニンのブロードソードも甲龍の双天牙月も分厚く重たい。俺は更にそれに機体の重量を上乗せし、鈴は甲龍のパワーアシストを全開にして斬りかかってくる。

 さっきはセシリアの狙撃を警戒して満足に斬り結ぶこともできなかったが、今は違う。サラがいるだけで、俺は目の前の相手に集中できる。

 

「セシリアさん、貴女の相手は私なのです!」

 

「いいでしょう……ならばお相手願いますわ、わたくしのワルツ(円舞曲)の!」

 

 機動力を生かした撹乱戦法で狙いを定めさせないサラに対して、ビットの射撃で動きを制限しようとするセシリア。

 互いに大きな一撃が入らずシールドバリアーが少しづつ削れていく膠着状態ではあるが、それだけでも十分である。

 

「悪いが、一対一なら勝てる自信はある」

 

「はっ、だったら負ける自信しかないようにしてあげるわよ!」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、鈴は二基の双天牙月を連結させる。そしてそれを回転させながら、凄まじい連撃を繰り出してきた。

 俺はそれをブロードソードで捌きつつ、しかし意識はセシリアの方へも向けておく。

 

(よしよし、ビットは全部サラに向いてるな。サラも深追いせず、距離を保ったまま……)

 

()()()()()()()()()()()、何度も繰り返し訓練してきた俺とサラなら、事前の打ち合わせなんてしなくとも──

 

「サラ、スイッチだ!」

 

「……! はいっ!」

 

 セシリアから突如銃口の向きを鈴へと変えるサラ。そして、俺はそのサラの動きに合わせて、フェーズダッシュを起動させる。

 

「「……っ⁉︎」」

 

 がら空きの鈴の背中にアサルトライフルの弾丸が叩き込まれ、忽然とセシリアの前に姿を現した俺は、驚愕の表情を浮かべるセシリアにアークウェーブを放つ。

 

「くうっ……⁉︎」

 

 強烈な電撃に動きの自由を奪われるセシリア。そこへサラが続いてアサルトライフルによる追撃を加え、俺は体勢を立て直した鈴の衝撃砲をブロードソードで防ぐ。

 

「上出来だ、このまま追い立てるぞ」

 

「はい、兄様!」

 

 サラと背中を合わせながら、再び鈴と向かい合う。先の奇襲は中々に効いたようで、鈴もセシリアも少し焦りを含んだ様相を見せるのだった。

 なにせ、俺とサラは束のもとにいた頃に何度も何度も、仮想空間で繰り返し訓練を行ってきた。それはもう、ありとあらゆる状況を想定した訓練を、だ。

 その過程で、二人一組(ツーマンセル)での訓練も当然行っていた。俺とサラのコンビネーションはもはや阿吽の呼吸、そう簡単に突き崩せると思うなよ? 

 

「やってくれるじゃない……でもこっちだってっ……! 伊達に代表候補生を名乗ってるわけじゃないのよ!」

 

 再び、双天牙月を振り上げる鈴。その肉厚の刃が俺のブロードソードとぶつかりあい、火花を散らす。どうやらこの模擬戦、またもや長引きそうだった。

 

 

 ──

 

 

「そうそう、もう少し脇を締めて……それで一回、トリガーを引いてみて」

 

「こ、こうか?」

 

 隣でレイたちが激しい模擬戦を繰り広げている中、俺は横でシャルルに指導してもらいながら銃の扱い方を学んでいた。

 ちなみに箒はここにはいない。なんでも剣道部の用事だとかなんとか。幽霊部員でもさすがに断りきれなかったのだろうか。

 いつも俺もレイと模擬戦がしてみたいと言うのだが、毎度俺にはまだ早い言われてしまう。もちろん、セシリアや鈴に言われてる。

 まあそんなわけで、俺は手が空いてるシャルルに色々教わってたのだ。俺の白式はブレード一本しかないから、銃の扱い方なんて学んでどうするのか? そう思ったろ? 

 俺は剣一本しか使えない、だからこそ、銃の特性ってのは人一倍把握しとかなくちゃいけない。なにせ、俺はその銃の間合いから、剣の間合いまで詰めなくちゃいけないんだからな。

 

「これでトリガーっと……おわっ⁉︎」

 

 バンッ! ……と大きな炸裂音を響かせるアサルトライフル『ヴェント』。瞬く間に弾丸は数十メートルを飛翔し、ダミーターゲットに命中した。

 

「どうかな、銃を撃ってみた感想は?」

 

「ああ……速い、な。こりゃ回避するのも一苦労だ」

 

「でも、それができるのがIS、なんだから。とりあえずワンマガジン撃ち切ってみようか」

 

「おう」

 

 シャルル先生の指導に従って、引き続きトリガーを引く。まったく、シャルル先生の教え方は分かりやすすぎてびっくりするぜ。

 いや、シャルルが凄いのは確かだけども、それ以上にいつも訓練をつけてくれる三人娘がひどく分かりにくいから……

 

「にしても、シャルルのそのIS、本当にいろんな装備があるよな」

 

「そうだね、僕専用のカスタム機だから、通常のラファールリヴァイヴの倍くらいの拡張領域があるね」

 

「倍⁉︎そりゃすごいな。ちょっとした武器庫じゃないか」

 

「まあ、それが取り柄だったんだけど……そこに僕のラファールリヴァイヴを凌ぐ多彩な武装を持つISがいるんだよね……」

 

 ちらりと横の模擬戦へ視線を向けるシャルル。ああ、レイのリーゼ・シエラのことか。あれは規格外だからな、うん。

 

「……ねえ、一夏は僕よりレイのことを知ってるよね? 僕は、その……彼がどういう人物なのかまだよく分からないんだ」

 

「いや……俺だってそんなに知ってることは多くないんだよ」

 

 そう、だからこの前は驚いた。レイがシャルルに銃を向けた時は、さすがに俺も焦ってしまった。

 確かにレイは俺や他の皆とは根本的に異なる部分がある。ISの模擬戦の時とはわけが違う、生身の人間にあんな銃を向けたらどうなるかなんて……想像したくもない。

 

(俺や箒、そしてこの学園を守るのが仕事って言ってたよな。あれは一体どういう意味なんだ? レイはただこの学園に所属してるわけじゃないのか?)

 

 ぐるぐると頭の中で考えが渦巻いて、手元が狂う。いかん、こんなデッカい銃を抱えてる時に悩むのは事故のもとだ。

 

「……よし、これが最後の一発だな」

 

 アサルトライフルの最後の一発を発砲、その弾丸はダミーターゲットに命中──することはなかった。

 

「あれ? 外れたのか?」

 

「いや、あれは……」

 

 よく見れば、ヴェントから放たれた弾丸は、ダミーターゲットの目の前の空間で、()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「……! あの機体は……」

 

 俺の目の前に立ちはだかるように降り立つ漆黒のIS。その搭乗者は、あのラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 

「……何の用だよ?」

 

「……」

 

 鋭い眼光で射抜くようにこちらを見据えるラウラは、ふわりと飛翔してこちらに近づくと、背部の大型レールカノンを起動させる。

 

「貴様も専用機持ちなのだろう。ならば話が早い、私と戦え」

 

 いきなり何を言っているのか、コイツは。戦うの大好きっ子か? 出会っていきなり戦いを挑まれる筋合い──ああ、そういえば出会い頭に叩かれそうになってた。

 

「ヤダよ、戦う理由がねぇよ」

 

「ふん……なら戦わざるを得ないようにしてやろう!」

 

 ハイパーセンサーが告げる警告音、ラウラの大型レールカノンにロックオンされたのだ。まさかいきなり発砲するとは思ってもみなかった俺は、飛んでくる砲弾に反応することができなかった。

 しかし、その砲弾が俺に命中する前に、俺とラウラの間にシャルルが割り込み、物理シールドで砲弾を防ぐ。そして素早くアサルトライフルをコールして、ラウラに突きつけるのだった。

 

「こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね。ビールだけじゃなくて頭もホットなのかな?」

 

「……フランスの時代遅れ(ロートル)が、私の前に立ちはだかるか」

 

「未だに量産の目処が立っていない第三世代機(ルーキー)よりは動けるだろうからね」

 

「目障りだ……消えろ!」

 

 再度レールカノンを構えるラウラ、俺も黙って見ているつもりもなく雪片弐型をコールする。

 しかし、ラウラのレールカノンが火を吹こうとしたその瞬間、ラウラと俺たちの間に分厚いブロードソードが飛来し、突き刺さる。

 そして、まるで幽霊のような青白い霞と共に、レイのリーゼ・シエラが忽然と姿を現わしたのだった。

 

「貴様……」

 

「手を引け、ラウラ・ボーデヴィッヒ。これは警告だ……次に織斑一夏に危害を加えようとすれば、俺はお前を障害とみなし全力で排除する」

 

 ブロードソードを引き抜き、その切っ先をラウラに向けるレイ。他の模擬戦をしていたとメンバーも、その手を止めて訝しげな視線をラウラに送っていた。

 

「貴様は腑抜けた連中しかいないこの学園でも、マシな部類だと思っていたのだが……所詮は学生ごっこに興じているだけか」

 

「……もう一度言うぞ? 手を引け、黒ウサギ隊隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐」

 

「ほう、私を知っているのか?」

 

 興味ありげに眉をひそめるラウラ──って黒ウサギ隊ってなんだよ? めちゃくちゃ特殊部隊っぽいけど。こいつ、やっぱりそういう関係の奴だったのか。

 ドイツで軍事関係、それでようやくラウラが俺に敵意を向けてくる意味が分かった。きっと、千冬姉がドイツで軍事教官をやってた時のことだ。それ絡みに違いない。

 

「ふん、私も貴様のことは知っているぞ。貴様が我がドイツ領で何をしたかを、な」

 

「……!」

 

「お前たちはその男が何をしたか……知らないだろうな。そうでなければ、そのように馴れ馴れしく接することなどできまい」

 

「お前……レイの何を知ってるっていうんだよ?」

 

 ラウラは侮蔑とまた何か別の感情を込められた表情を浮かべ、吐き捨てるように言い放った。

 俺はなんだか嫌な予感がして、つい耳を塞ぎたくなった。その言葉は、聞いちゃいけない気がしたのだ。

 

「その男は……我がドイツ領のとある民間軍事基地の一つを、そのISをもって壊滅させたのだ。基地にいた者全てを虐殺してな……!」

 

 ラウラの言葉に、場の空気が凍りつく。レイがISを使って虐殺しただって? そんなことがあるはずない、レイはそんな奴じゃない。そう言いたかったのに──

 

「……ドイツの連中もさすがに気づいていたのか」

 

 レイはラウラの言葉をあっさりと肯定した。俺もシャルルも、セシリアや鈴も、思わず驚愕に目を見開いてしまった。ただ、サラだけは悲痛な顔持ちをしていた。

 

「あれは違法な民間組織だったが、それを対処するのは我々の役目だ。だというのに、貴様は他国の領土でISという過剰戦力を行使した、到底許されるものではない」

 

「そりゃすまんな、次からは断りを入れてからにしておくよ」

 

「ちっ……貴様はISを実戦で用いた稀有な事例。だからこそ、軍人として私も一目置いていたのだが……どうやら期待外れのようだ」

 

「勝手な期待をされても困るんだが」

 

Klein menn(小物)め……興が削がれた」

 

 そう言ってラウラはあっさりと立ち去っていった。二度も横槍を入れられて、やる気がなくなったのか。いや、そんなことよりも、まずは確かめなくちゃいけないことがあるんだ。

 

「なあ、レイ……さっきのラウラの言ってたことは……何かの冗談だよな?」

 

「……」

 

 レイは何も言わずにリーゼ・シエラを収納すると、スーツ姿のまま静かに振り向く。ヘルメットに覆われてるせいで、その表情はなにも読み取れない。

 

「本当だ、って言ったら……お前は信じるのか?」

 

「……っ!」

 

 レイの声はひどく落ち着いていて、自然と嘘を言っていないということが感じられた。

 

「なんで……そんなことを……⁉︎」

 

「なんで、か。まあ当然の疑問だが……俺の立場、俺の身の安全、そして相棒を守るため、束と取引した。そして束の命令に従って、引き金を引いた。それが答えだ」

 

「じゃ、じゃあ。この前の……シャルルに銃を向けた時も、本気だったっていうのかよ⁉︎」

 

「まあな。俺だって流石に嫌だったぜ? でも、今の俺にとってお前の身の安全は最優先事項、多少手を汚すことぐらい大したことじゃない」

 

 それを聞いたシャルルが、少し肩を震わせる。俺だって背筋が凍るような感じだ、殺す気で銃を向けるなんて正気の沙汰じゃない。

 

「……すまんな、これはもっと早くに話しておけばよかったのかもしれん。俺を理解してくれとは言わない、否定してくれても構わない。だが──サラは関係ない。アイツまで邪険にするなよ?」

 

「……っ!」

 

「今日はもう……模擬戦を続ける雰囲気じゃなさそうだな。悪いが、俺は先に部屋へ戻らせてもらおうか」

 

 そう言って、呆然としたままの俺たちを置いて立ち去っていくレイ。だが、誰もレイを引き止めようとはしなかった。

 そして、アリーナのゲートから出て行くレイの後ろ姿を見てから、俺たちは金縛りが解けたように息を吐き出すのだった。

 

「レイのあの強さ……実戦の経験から来るものだったのね。それならあの実力も納得できるわ」

 

「ISを実際の軍事作戦に用いることはアラスカ条約でも禁じられていますわ……! もし、今の話が事実であり、それが世間に知れ渡ったのなら──」

 

「違うのですっ!」

 

 セシリアを遮ってアリーナに響き渡たる声、それはサラのものだった。

 

「兄様はっ……兄様はただの人殺しなんかじゃないのです!」

 

「サラ……?」

 

 そう言って肩を震わせるサラは、今にも泣き出しそうな表情をしていた。

 

「……そうだね、レイが本当に冷酷な人なら……必ずなんとかする、なんて言うはずがないかもね」

 

 誰にも聞こえないようなシャルルの小さな呟き。確かに、あの時のレイは、心の底からシャルルの力になりたいと、そう思っていたのははっきりと見て取れた。

 沢山の人を虐殺したと言うレイと、シャルルの力になりたいと言っていたレイ。一体どちらが本当のレイなのだろうか? それには、サラが答えてくれた。

 

「皆さんに……お話ししますから。私が知っている兄様のことを、全部……」

 

 それからサラは、レイと出会った時のことを話してくれた。束博士のもとでなにをやっていたかも、全て──




一夏「仲間は誰一人やらせねぇ!」
?「撃てませぇぇん!」
?「しゃけ!高菜!おかか!」

声優ってスゴイ

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