Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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 ○ゲイツ
 6-4の指揮官。先走って防弾ガラスに銃弾を撃ち込んだりと乱暴な部分もあるが、熱血な性格で仲間を非常に大切にしている。レイにはパイロットとなるための訓練をつけたりしていた。
 今日も『ぶちのめしてやるっ!』と叫んで戦っている。


Log.34 ルーチン変更:対集団戦闘 ①

 IS学園の食堂、その一角で各々の朝食のプレートを前に、食事を続ける少女たち。その目はいつもと違い、幾らかの緊張をはらんでいる。

 特にセシリアと鈴の気迫は凄まじく、それを前にしたサラは少し困った表情を浮かべていた。

 なぜ彼女たちがそれほどまでに気合いに満ちているのか、それは今日が学年別トーナメントの開催日だからだ。彼女たちにはどうしても勝たなければならない理由があったのだ。

 ただ一人、サラだけはその理由に当てはまらないため、居心地が悪そうにしているのだ。

 

「み、皆さん凄い気合いが入っているのです……」

 

「当たり前じゃない、今日がどれだけ大切な日か分かってるの? 今日の如何によって、私の今後が左右されるのよ……色んな意味で」

 

「そうですわ……わたくし、の将来がかかっていますの。気合いも十分に入るというものですわ」

 

「む……」

 

「……ふん」

 

 サラの向かいの席で食事を取っていた鈴とセシリアは、互いの言葉に何か思うところがあったのか、鋭く眼光を閃かせて睨み合う。そして、むすっとした顔でまた箸、フォークを動かす。

 ちなみに、今回のトーナメントでこの二人はタッグを組んでいる。この調子で本当に大丈夫なのかとサラは思うものの、それは口には出さない。

 これでも二人は中々に仲がいいことを知っていたのだ。それよりも、サラは自分の相方の方が心配でならなかった。そう、サラがタッグを組む相手は……サラの隣で自分の朝食をボンヤリと眺める篠ノ之箒だった。

 

「箒さん……大丈夫ですか?」

 

「……あ、ああ。大丈夫だ、何ともない」

 

 サラにタッグを組もうと提案してきたのは、驚くことに箒の方だった。彼女の姉と関連があるサラは、レイ同様にどこか避けられている感が否めなかった故に、タッグを組むよう申し出てきた時は大いに驚いていた。

 しかし、サラは驚くと同時に、ある事に悩ませる事になる。一夏たちには話したレイのことを、箒にも話すか否かである。

 あの時はたまたま箒がいなかったのだが、今一度あの話をすることをサラは躊躇っていた。レイは別に話したところで気にしないというかもしれない。しかし、気にすべきは箒の方である。

 彼女は自分の姉が、レイに人を殺すことも厭わないような命令を下したと知ったら、どう思うだろうか? まず、快く思わないことは確かだ。もしそれで束博士と箒との姉妹関係が更に悪化してしまったらどうなるだろうか? 

 ただでさえ束博士から良く思われていないサラは、下手をしたら後からとんでもない仕打ちを受けるかもしれない。しかし、既に事情を知っている一夏たちから話を耳にするかもしれない。では、今話すべきだろうか──といったふうに、サラは一人頭の中で悶々としていたのだ。

 勿論、レイに相談することも考えたが、ラウラの事やら何やらで手一杯なレイには相談しにくいところもあった。

 

(あぁ、兄様。こういう時は、一体どうしたら良いのでしょうか……)

 

 余計なことを言いたくない、しかも今は放棄の邪魔をしたくない。目の前のセシリアと鈴と同じように、箒もこの大会の結果によって今後が大きく左右されるのだ。

 もちろん、これからの進路とかもそうではあるが──それ以上に、彼女たちの恋路の行方がかかっているのだ。そして、それはここにいる彼女たちだけではなく1ー1のクラスメイト全員、いやもしかしたらそれよりももっと多くの人が狙っているかもしれない。

 優勝したら織斑一夏と付き合える、という優勝者にのみ与えられる権利。彼女たちはそれを巡って、これから熾烈な戦いを繰り広げるのだ。そして、そのことの発端は箒にあった……

 

 

 ──

 

 

「私と……タッグを組んでほしい?」

 

「ああ、お前の実力を見込んでの頼みだ。どうか引き受けてくれないだろうか?」

 

 アリーナの更衣室で唐突に箒から頼み込まれたサラは、どう返答すべきか迷いに迷っていた。なぜ、自分と? という疑問が真っ先に浮かんできたが、箒の真剣な眼差しを見ているとそれも喉元でつっかえてしまった。

 

「模擬戦では代表候補生にも引けを取らない成績を修めていると聞いている。私は今回の大会でどうしても優勝したいのだ! 頼む……私にその力を貸してくれっ!」

 

「ま、待ってほしいのです、箒さん。どうして一夏さんや他の方ではなく私を?」

 

「それは……だな……」

 

 少し顔を赤らめて恥ずかしそうに言い淀む箒。そんな珍しい姿に、サラは少し意外そうな表情を浮かべるのだった。なぜなら、大抵彼女を見かける時は、織斑一夏に対して怒っている場面が多いからである。

 そうして、恥ずかしがらながらも理由を話す箒だったが、その理由にサラも思わず頰が紅く染まる。過酷な過去を持つサラではあったが、やはり十代乙女。()()()()()には目がなかったのだ。

 

「優勝したら……織斑一夏と付き合う……⁉︎」

 

「ば、馬鹿者! そんな大きな声で……べ、べべ別にアイツの事が、その……す、好きだとか、そういう訳じゃ…………」

 

「す、好きな人と……付き合う……!」

 

 どんどん尻すぼみになっていく箒に対して、サラも男女が付き合うという青春に勝手な妄想を膨らます。その相手が誰かは想像に難くない。

 

「その、サラは別に一夏の事を……ね、狙っている、というわけではないのだろう?」

 

「まあ……確かにそうですが……」

 

「恥ずかしい話だが、何故かこの優勝したら一夏と……つ、付き合うという話が、クラス内、いやもっと大勢の生徒の間で噂されしまったんだ……」

 

「ああ、なるほど。つまり周りにいる人は殆どがライバル、という事なのですね」

 

 それ以外にも、意外と箒は友達が少ないという事もあったのだが……それは置いておくとして、織斑一夏のことを好いているわけではない上にISパイロットとしても申し分ないサラは、箒にとってこれ以上ないほどパートナーに相応しかった。

 ただ、サラが箒の姉である束博士と関連しているということを除けば、だが。しかし、箒はもうそれを気にする余裕はなかったのだ。

 

「箒さん、私は兄様と同じで……つまり、束博士と繋がりのある人物なのです。それでも……よろしいのですか?」

 

「……分かっている。だが、いつまでもこのままではいけないんだ……一夏との関係も……姉さんとの関係も……」

 

 一変して、どこか揺らいでいても決意を固めた強い意志を感じさせる箒の様子に、サラは思わず溜息を零してしまう。レイがそうであるように、思いの外自分もお人好しだと気づいたのだ。

 

「分かりました、箒さん。貴女の恋を成就させるためにも、サラは全力で箒さんに手を貸すのです!」

 

「う、うむ……その……よろしく頼む」

 

 そう言って、箒は少しぎこちないながらも、頬を緩ませる。そして、サラもまたそれに応えるように笑顔を見せるのだった。

 

 

 ──

 

 

 ……という事があったのだが、その時のサラは、自身の兄と束博士のことを詳しく話すか否かなんて事は深く考えていなかった。

 故にサラは、大会当日のギリギリになってどうするか頭を悩ませていたのだ。

 

(うーん……どうしたらいいのでしょうか。このまま黙っていても、いつかは知られてしまうことですし……うーん……)

 

「あ、皆さんモニターをご覧なさい。大会のトーナメント表が発表されていますわ」

 

「どれどれ、私たちは何回戦目か──って、ちょっと! 一回戦目のあの組み合わせって……」

 

 一人頭を悩ませていたサラも、驚いたような鈴の声にふと視線を食堂のモニターに向ける。そして、そのモニターに映し出されたトーナメント表に、サラもまた驚きの声をあげるのだった。

 

「兄様と……この相手は……!」

 

「一夏&シャルルVSレイ&ラウラ⁉︎いきなり一夏とアイツがぶつかるの⁉︎」

 

 鈴の言うアイツ、というのがラウラかレイのどちらを指しているかは分からないが、サラは言いようもない不安が胸の中に満ちていくのを感じていた。

 前回のクラス代表戦の時のように、また何かが起きるのではないかと。そんな嫌な予感が、サラの中によぎるのだった。




最近庭に現れる野うさぎが、凄い勢いで植物を食い荒らしていきます。可愛いのにやることが容赦ないんだZE☆
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