Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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エイペックスには新たにマークスマンライフルという分類ができました。
しかし、何故そこにロングボウが入ってないのだ!
ロングボウの正式名称はロングボウDMRだぞう!
DMRってデザイン・マークスマン・ライフルの略称でしょお!


Log.36 ルーチン変更:対集団戦闘 ③

 背中のスラスターを最大出力にした高速の突進、一夏が俺の懐に潜り込み雪片弐型の鋭い切先が空を裂く。

 それをブロードソードで受け流しながら、俺は握り込んだ鋼鉄の拳を叩き込む。受け止めた白式の腕部装甲がミシリと歪み、一夏がその衝撃に呻き声をあげる。

 

「くっ……!」

 

 お返しと言わんばかりの回し蹴り、ISのパワーアシストが乗った重たい蹴りが骨の芯にまで響く。それを食いしばって耐え、続いて繰り出される斬撃をバックステップで回避する。

 

「逃さねえ!」

 

(本人の才能、いや、それ以上に努力の賜物か。持ってる手札は少ないのに、中々どうして……!)

 

 距離を取ろうとする俺に食らいつく一夏が、熾烈に攻め立ててくる。この前のクラス対抗戦の動きとは段違いのキレに、俺は内心舌を巻いていた。

 

『なあ、少しいいか』

 

『……お前も戦闘中にお喋りかい?』

 

 一夏と何度も斬り結ぶ中で、今度は一夏がプライベート・チャンネルで語りかけてくる。シャルルと揃って随分とお喋りじゃないか、それに付き合う俺も俺だが。

 

『サラから……レイのことを聞いたよ。お前が何をしてたのかをさ……正直、今でも信じられない。沢山の人を殺しただけでなく、一度はサラまで殺そうと……したんだよな」

 

『まあね。今ではこんな関係だが、初めはお互い敵同士の戦場で出会ったからな』

 

『……その、人を殺めるのに……レイは躊躇いとかなかったのか?』

 

『あったさ、あったに決まってるだろ。最近は……自分でも悩んでたところさ。俺がやってることは、正しいのか? 殺人鬼と何も変わりゃしないんじゃないか? ──ってな』

 

 右からの袈裟斬り、そのまま斬り返し、そして上段からの振り下ろし……次々と繰り出される斬撃を受けつつも、俺は一夏と会話を続ける。

 

『だから俺は引き金を引く時、それが誰かのためになると信じて引くようにしてる。自分のためだけじゃなくて、家族や仲間、友人のためってな。それで赦されるってわけじゃないけどさ……』

 

『そこには……サラや俺たちも入ってるのか?』

 

『もちろん、入ってるとも。それが今の俺の任務ってのもあるが……放っておけない性格みたいなんだ、お前やシャルル、そしてラウラのような奴がな』

 

『……!』

 

 そこにラウラの名前も含まれていたことが意外だったのか、一夏は少し驚いたような表情を浮かべる。何か思うところがあったのか、迷いで剣筋がブレる。

 

『俺は……強くなりたかった。千冬姉みたいに、みんなを守れるように強くなりたかったんだ。そしてレイは、それができる奴なんだ。誰かのために、誰かを守るために、戦うことできる奴だったんだ。だから……少し、お前に憧れちまったんだ』

 

『……』

 

『ラウラからお前のやったことを聞いた時は驚いたさ。でもサラの話を聞いたらさ……俺たちとお前は生きてきた世界が全く違うってことに気付いた。俺はお前のことをとやかく言う権利なんてない、って……』

 

『けど、お前は俺のやらかした事を許容する気もない、そうじゃあないのか』

 

 一夏の斬撃をブロードソードの湾曲した刃で受け流し、一夏に強烈な一撃を食らわす。たった一撃でもリーゼの重量を乗せた重い一撃だ、それは一夏の白式のシールドバリアーを大きく削り取る。

 

『そりゃそうだぜ、俺は人殺しなんかしたくない。でも、完全無欠なヒーローなんてものは存在しない。必要に迫られたら……そうせざるを得ないことも、あるかもしれない! 綺麗事ばっかりじゃどうにもならない事ぐらい、俺だって知ってんだ!』

 

 ブレていた剣筋が真っ直ぐになり、鋭く研ぎ澄まされていく。そして徐々に白光を帯びていく雪片弐型。それに対して俺のブロードソードも少しずつ青白い雷光を帯びていく。

 

「俺は千冬姉じゃあない、千冬姉にはなれない。お前みたいにもなれない。でもいつか、大切な人を守れるように! 俺は強くなるっ! 『俺なりの強さ』ってやつを手に入れてみせるぜ! だからまずは……レイ、お前を超える!」

 

 白光を帯びた雪片弐型がその秘められた力を解放して、真の姿を現わす。単一仕様(ワンオフアビリティ)、零落白夜。かつて世界最強が振るった究極の刃だ。

 そして俺は、零落白夜を起動した雪片弐型を構える一夏と対をなすようにソードコアを起動し、ブロードソードの刀身に雷光を纏わせた。

 

(自分なりの強さ、か……俺もずっとエドの真似ばかりだったのかもしれないな)

 

 いくら憧れた人を真似ても、その人になることはできない。織斑千冬の生き方は織斑千冬にしかできない、エドの生き方はエドにしかできない、だがその逆も然り。俺の生き方は俺にしかできないってわけだ。

 エドの口癖である『自由に生きろ』という言葉、それをどこか履き違えていたのか。エドは俺に、自分らしく生きろと言いたかったのかもしれないな。

 

(……全く耳が痛いぜ。なあ、ラウラ?)

 

 自分と同じように恩師の後ろ姿を追うラウラにそう呟くが、当然聞こえるはずもない。俺はリーゼのコクピットの中で一人笑みを浮かべると、ブロードソードの柄を握りしめる。

 

「行くぜ、レイっ‼︎」

 

 零落白夜を起動した雪片弐型を構える一夏に合わせるように、ソードコアを起動したブロードソードを俺は構える。そして、双方が同時に突進し、その刃を振るう。

 片や世界最強が振るった唯一無二の剣、片や戦場で鍛え上げられた修羅の剣。互いの刃がぶつかり合うその瞬間、たしかに互いの力は拮抗していた。

 しかし、その拮抗は文字通りほんの一瞬。俺がブロードソードを振り抜いたその時には──ブロードソードは半ばから折れていた。

 

(サンキューな一夏、おかげで少し吹っ切れた。クヨクヨ悩むのは、それこそ()()()()ない)

 

 コクピット内に響くシールドバリアーが危険域に達してことを伝える警告音。それは、一夏の零落白夜によってリーゼのシールドバリアーが消失した事を示していた。

 試合のルール上、シールドバリアーを全損した俺はここでリタイア、ってわけだ。

 

「レイ、お前……」

 

 自分の剣が届くと思っていなかったのか、俺のシールドバリアーを消失させたことに自分で驚く一夏。なんだ、当たると思ってなかったのか? 

 

「どうした、そんな腑抜けた顔してさ。ほら、シャルルが苦戦してるぞ。早く加勢してやれ」

 

「……ズルイな、この野郎」

 

「ズルじゃないさ。不本意ながらもお前に背中を押されちまったからな、今回は俺の負けだ」

 

「……分かった、次は手を抜くなよ?」

 

「ふふっ……とりあえずはラウラを倒す事を考えな、二対一でもアイツは一筋縄じゃいかないぞ」

 

「おう、アイツとも色々と因縁があるからな。決着をつけてくるぜ」

 

 膝をつく俺に背を向けシャルルの加勢に向かう一夏。俺はそれを見送りながら、肩の力を抜いてため息をつく。

 さて、一夏にあんな事を言われてしまった後だと、尚更のことやり方を変えなきゃいけない。特に、ラウラのことだ。

 

(束にはラウラを始末しろなんて言われてるが、もうそれを実行する気なんてない。別の形でアイツを満足させなきゃならないな)

 

 束に逆らうのは、正直怖い。機嫌を損なったらリーゼを取り上げられるだろうか? それとも、もっと直接的な方法でお仕置きでもされるだろうか? 

 アイツだって言う事を聞かない駒なんていらないだろう。あっさり切り捨てられちまうかも。

 

(ま、何とかなるさ……おっと、ラウラのやつ、結構追い詰められてるな)

 

 一夏とシャルルのコンビネーションに、次第に焦りの表情を見せるラウラ。あの連携は、俺だって相手にするのはキツい。

 初めは互角の勝負だった。しかし、ブレードしか持っていないはずの一夏が、シャルルが投げ捨てたアサルトライフルを拾って射撃したところで流れが変わった。

 

「貴様っ……!」

 

「今だ、シャルル!」

 

 動きが止まったラウラに肉薄したシャルルの右腕には、破壊力だけなら第二世代機最強と謳われる兵器が装備されていた。

 六九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケイル)』。リボルバー機構を備えた杭打ち機が、ラウラへと狙いを定める。

 

「これで決める──っ!」

 

「ちいっ……!」

 

 焦燥を見せながらも、ラウラはグレー・スケイルに向けてピンポイントのAICを放つ。しかし──投げかけた不可視の網は外れる。そして勝利を確信したシャルルは、天使のようで残酷な笑みを浮かべてトリガーを引いた。

 ゴギンッ! という重たい金属音と共に放たれる杭が、シュバルツェア・レーゲンの装甲を貫いて絶対防御を発動させる。さらにリボルバーが回転して次弾の炸薬が装填されると、続けて杭が撃ち込まれる。

 

「うぐぅ……!」

 

 連続して絶対防御が誘発するほどのダメージに、さすがのラウラも苦痛に顔を歪める。それでも闘志は折れないのか、ラウラはレールカノンの砲口をシャルルに向けようとする。

 しかしそれも叶わず、エネルギー切れとなったシュバルツェア・レーゲンから力が失われていく。勝負が決まった、俺も一夏たちも、会場にいる観客全員もそう思った。だが──

 

「あああっ!」

 

 ラウラのつんざくような悲鳴と同時に、粘土のように崩れて変形していくシュバルツツェア・レーゲン。何が起きているのかは分からない、だが異常なことが起こっているのは理解できる。

 

『なっ……⁉︎あれは一体何が……リーゼ、ラウラをスキャンしろ!』

 

『……シュバルツェア・レーゲンから異常なコア反応を検出。解析不能、しかし……あれは危険です。プロトコル2、任務の執行。我々の任務はIS学園とその学生を守ること、我々はあれを止めなければなりません』

 

『止めるって言っても……お前はシールドバリアーを全損した。もう動けないだろう……!」

 

『……問題ありません。単一仕様(ワンオフアビリティ)を起動し、リミッターを解除すれば、私はまだ戦えます』

 

『……っ!』

 

 シールドバリアーは一度消失すれば、ある程度時間を置いて回復しなければならない。防御システムが一時的にパワーダウンしているのだ。

 ISに備わる絶対防御すら作動しない危険な状態だ。今、致命打に繋がるような攻撃を貰えば、俺もリーゼもタダじゃ済まない。しかし、ここで何もしない訳にもいかないだろう! 

 

「……くそっ、やるしかないか! リーゼ、単一仕様(ワンオフアビリティ)を起動しろ!」

 

単一仕様(ワンオフアビリティ)の要請確認。各コア間のリンクを確立。単一仕様(ワンオフアビリティ)……『イージスアップグレード』、起動シークエンスに移行します」

 

 リーゼの各所から蒸気が噴き出し、再びシャーシに力が宿る。俺は再び立ち上がって折れたブロードソードを手に、歪に変形するシュバルツェア・レーゲンを見据える。

 

「第1アップグレード、上級シャーシへの換装。第2アップグレード、リアクター出力の上昇。第3アップグレード、ロードアウトによる武装制限の解除……指定アップグレードの搭載を完了。全システム、オールグリーン。『イージスタイタン』、オンライン!』

 




刀が折れるは剣士の恥
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