Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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少し間が空いてしまいました。
決してギルティギアの新作にうつつを抜かしていたわけじゃないんですよ


Log.41 オペレーション・ネゴシエイト ③

(おいおい、何処もかしこも死体だらけだな。どうなってんだこりゃ?)

 

 足跡を追って地下施設の奥へと進む俺を待ち受けていたのは、事切れた死体の山だった。武装した兵士、白衣を着た研究員、老若男女問わず銃弾を撃ち込まれて喉元を切り裂かれている。

 クロークで透明化を維持しつつも、俺は血の足跡を追って進み続ける。リーゼの指示によれば、サーバールームなる部屋が近くにあるそうだ。VTシステムにまつわる情報が保管されているかもしれない。

 

「リーゼ、周辺の様子はどうだ?」

 

「申し訳ありません、パイロット。先ほどから電磁気の影響が強まってきています、その影響で索敵有効範囲が大幅に制限されていますが──電磁気の発生源と思わしき反応を検知しました」

 

「なに? 本当か?」

 

「はい。このまま直進し、通路を右に曲がってください。そこに第三試験場と呼ばれるエリアがあります。電磁気はそこから発生しているようです」

 

「ふむ……確認してみるか」

 

 案内に沿って通路を進み、大きなゲートを通る。すると、ゲートの先は大きく開けたアリーナのような空間が広がっていた。

 真っ暗でよく見えないが、そこには至る所にバラバラに損壊した機械や車両が散らばっていた。試験場というぐらいだ、何か兵器の実験でも行っていたのだろう。

 

(電子防護を最大レベルにしても影響が出るほどの電磁気だが……まさかここに散らばってるガラクタが原因というわけではないだろう)

 

 ノイズの混じる暗視機能を頼りに目を凝らしながら、警戒を緩めず周囲を見渡す。しかし、見えるのは鉄屑ばかりで怪しいものは見当たらない──そう思った時だった。

 

「──っ!」

 

 ほぼ反射的にその場から飛び退くと、一瞬遅れて足元に火花が散り、重たい銃声が木霊する。何処からか撃たれた、それを認識するには十分すぎた。

 

「六時の方向から狙撃されています! ですが電磁気の影響で敵の位置は特定できません、すぐに移動してください!」

 

「くそっ……!」

 

 リーゼの警告を片耳に、俺は近くにあった機械の残骸の影に飛び込み、身を隠す。それを追うように、銃弾が立て続けに撃ち込まれる。クロークで透明化していなければ、あのままやられていたかもしれない。

 しかし、どんな銃を撃ってるのかは知らないが、連射速度に対して威力が尋常じゃない。機関銃の類だろうか? ぼんやりとしていれば、この鉄屑ごと撃ち抜かれてしまう。

 

(リーゼを展開するか……いや、コア反応を探知されればドイツのIS部隊がすぐにでもやってくるだろうな)

 

 リーゼはISコアの反応を探知されぬように、機能を最小限に絞ることでステルス状態を維持している。それを解除するわけにはいかない。

 それに、いま俺を攻撃してきている奴は明らかに俺を待ち伏せていた。道中の兵士たちを殺した奴かは分からないが、放っておくわけにもいかないだろう。

 

「まずは敵を知らねば……!」

 

 俺はテルミットが仕込まれた手裏剣『ファイアースター』を二、三個取り出すと、遮蔽物越しに銃撃が飛んでくる方向へと投げつける。

 着弾地点で轟々と燃え盛る手裏剣は、直接敵に命中することはなかったが、その炎の灯りは僅かながらも暗闇の中の敵の姿を映し出した。

 全身を覆うプロテクターと、独特な形状をしたヘルメット。そしてソイツは、やはり大きな軽機関銃を立てかけてこちらを狙っていた。

 しかし、ソイツはすぐに軽機関銃を抱えて暗がりへと消えていく。しかもお返しに何かを投げつけたのか、近くに硬い金属物が転がってくる音が聞こえた。

 

(戦場で投げつけるものなんて、大体決まってる……往々にして危ないもんだがな⁉︎)

 

 すぐさま遮蔽物にしていた鉄屑から飛び退いて距離を取る。すると、一白置いてから、爆音と共に衝撃が体を突き抜けた。

 俺は背中から地面に叩きつけられるが、受け身を取って最短で体勢を整える。そして、再び降り注ぐ弾幕を増幅壁で防ぎながら、スナイパーライフルの『ロングボウDMR』を呼び出す。

 

「野郎……いい加減にしやが、れ!」

 

 暗闇の中とはいえ、あれだけ派手にマズルフラッシュを閃かせていれば嫌でも位置は分かる。俺は増幅壁が破られる前にロングボウを構えると、マズルフラッシュの中心に向けて数度トリガーを引いた。

 試験場に鋭い銃声が響き、次いで金属がへしゃげる甲高い音が鳴る。よく見えないが、あの軽機関銃がオシャカになったのは間違いなさそうだ。

 

「あっ?」

 

 視線の先で一際大きく弾ける火花、そして炎を吹いてこちらに向けて飛来する何か。あれは多分、携行式ランチャーの弾頭だ。この世界でいうところのRPG-7と呼ばれるような……

 

「ちいっ……!」

 

 反射的にホルスターからリボルバーの『B3ウィングマン』を引き抜き、飛来する弾頭を撃ち抜く。

 土壇場でも外さなかった俺を褒めてやりたいが、連続して爆音と衝撃に晒されるのはキツい。爆発というのは、直接命中しなくとも音と光だけでダメージが出るものだ。

 

「だが逃がすかよ……正体を見せろっ!」

 

 巻き上がった煙の中を正面から突っ切りながら、強力なショットガン『マスティフ』を呼び出す。そして、同時に複数のホログラムのダミーを精製し、全速力で突撃する。

 煙を抜ければ、すぐにまた弾丸が飛んできた。しかし、それらは全てダミーの方に命中した。すぐ正面の半壊した装甲車の陰、敵はそこから撃ってきている。

 まずは敵が頭を出さないように牽制で一発、そしてジャンプキットのブースターの勢いで装甲車を乗り越えて──その先にいた敵へ目掛けてもう一発、引金を引いた。

 

「なるほど……話に聞いていた通りだな」

 

 感情の起伏が感じ取れない平坦な女の声。それが聞こえた時には、俺が手に持つマスティフに鈍い衝撃が走り、銃口が真上に跳ね上がった。

 

「お前……一体何者だ……⁉︎」

 

「……私は金で雇われただけの傭兵だ」

 

 自らを傭兵だとのたまうソイツは、マスティフを蹴り上げたその勢いで俺に飛びかかると、ナイフを突き出してくる。

 それをギリギリで首を逸らしてかわすも、その一瞬の隙にマスティフを握る右手が捻りあげられる。捻られる方向に逆らわないように回転して抜け出すが、俺が視線を上げた時には、ソイツの手には俺のマスティフがあった。

 

「私の名はスローン、お前をここで始末するのが私の仕事だ。このまま大人しく死んでくれると、こちらも手間が省ける」

 

「……はっ、素直に『はい、分かりました』なんて言うと思うのか?」

 

「なら、自分の銃で蜂の巣になるといい」

 

 スローンと名乗った女傭兵は、俺のマスティフを構えて引き金に指をかける。しかし、マスティフが散弾を吐き出す瞬間──

 

「一つ教えてやる。他人の愛用する武器を勝手に使うのは、失礼ってもんだ。それは返してもらうぞ」

 

 スローンの握るマスティフのトリガーが引かれる直前に、マスティフが量子化して格納される。俺が呼び出した武器なんだから、しまうのも俺の自由だ。

 スローンは手元にあったはずの銃が消えたことで一瞬硬直を見せたものの、すぐに近くの装甲車の陰へと身を隠そうとする。しかし、俺はそれよりも早くスローンの脇腹に蹴りを叩き込む。

 

「──っ‼︎」

 

 ミシリとプロテクターにひびがはいるほどの蹴りに、スローンがくぐもったうめき声をあげる。さらにスローンの頭を掴んで地面に叩きつけると、データナイフの切先を突きつける。

 

「形勢逆転だな?道中に転がっていた連中のような死に様が嫌なら、全て話してもらおうか。お前が何者か、何故俺を狙ったのかを、な」

 

「……」

 

「おいおい、だんまりは勘弁してくれ。いきなり機関銃なんかぶっ放してきたんだ。それなりに理由があってのことだろう?」

 

「……私が話してもいいが、それは仕事に含まれていない。アッシュの役目だ」

 

「なにっ──⁉︎」

 

 地に伏すスローンの言葉に眉をひそめていると、唐突にヘルメットの内部ディスプレイの画面が乱れて何も見えなくなる。

 いや、それどころかスーツの機能そのものが阻害されている。これは電磁気の影響だ、そしてその電磁気はこのスローンから発せられている。

 

「今回はここまでだ。やはり、次に報酬付きでお前を仕留めるとしよう」

 

「くっ……!」

 

 スローンに突き飛ばされ、そばにあった鉄屑に背中からぶつかる。そして、俺は乱れた視界の中でも微かに見た。

 スローンの周りに光が集まって形取り、無骨な装甲に覆われていった。スローンはISを展開しているのだ、電磁気はコイツのISから発せられるものだったのか。

 

「──リーゼっ‼︎すぐにシャーシを展開しろ!」

 

「いえ、パイロット! これは……」

 

「どうした⁉︎すぐに迎撃しっ……ん?」

 

 乱れていたヘルメットの内部ディスプレイが正常に戻り、視界がはっきりと見えるようになる。しかし、その時には目の前にいたはずのスローンの姿はなかった。

 

「……逃げたのか? 今の一瞬なら俺を殺すこともできたかもしれないのに……」

 

「敵はすでにこの第3試験場から脱したようです。僅かに検知できるISコアの反応は……例のサーバールームの方向から検知できます」

 

「追って来い、そう言っているように見えるな……しかし、あのスローンとやらは何なんだ? ISまで所持していた上に、蹴りを叩き込んだ時のあの妙な手応えは一体……」

 

 パイロットの鍛え上げられた手足は凶器そのものだ。普通の兵士が相手なら、拳一つで容易く殺傷できる。

 俺みたいな凡庸なパイロットでもそれくらいはできる。しかし、スローンはそんな俺の全力の蹴りを食らっても、あまり堪えた様子はなかった。

 しかも、人間のような弾性のある生物の感触ではなく、機械のように硬くて空洞のような感触がした。人間を蹴り飛ばした感覚ではない。

 

「パイロット、あの敵はスローンと名乗りました。それは確かですか?」

 

「ああ、お前も聞いてたろ」

 

「今、私のデータベースに参照したところ……スローンという名称と一致する人物がいました。この世界ではなく、()()()()()()にいた人物です」

 

「なっ……そりゃどういうことだ? 偶然名前が一致しただけじゃ……」

 

 ……いや、待てよ。スローンという名には、確かに聞き覚えがある。それに奴が口走ったアッシュという名前も聞いたことがある。そう、俺がフロンティアのパイロットだった時にだ。

 惑星タイフォンへの降下前のブリーフィング、その時に聞いた名前だ。IMCが雇ったという傭兵集団、その一員に──

 

「フロンティア最凶の傭兵部隊『エイペックス・プレデターズ』、スローンとアッシュはそのメンバーでした。これは何かの偶然でしょうか?」

 

「エイペックス・プレデターズ……そうか、そうだったか。俺を殺したにも等しいアイツらと、同じ名前をした奴が傭兵をやってるとは……偶然にしてはできすぎだよなぁ」

 

 俺がこの世界に飛ばされたのはまさに偶然の出来事だが、俺以外にフロンティアからこの世界へやってきた奴がいるのだろうか? それとも、同じ名前をした他人の空似か? 

 もしも奴らが、俺がフロンティアで戦ったエイペックス・プレデターズならば、()()()の借りを返してやりたいところだ。

 まずは真実を確かめなければならない、それに束からの任務もある。俺は猛る気持ちを抑えるように拳を握り込むと、サーバールームを目指して走り出すのだった。




今年から来年にかけて、近未来の戦場を戦って、ゾンビの群れを掻き分けて、褪せ人になって死にまくるでしょう……
今年は豊作じゃあ〜
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