Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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⚪︎サラ・ブリッグス司令の報告レポート ④
 特攻兵団の全兵力をIMCの補給基地に投入した。フォールド・ウェポンの原動力である『アーク』が積まれたIMSドラコニスは、今すぐにも出発してしまいそうだ。
 戦力差は歴然だが、それ以上に向こうにはまだエイペックス・プレデターズのメンバーもいる。クーパーが三人も始末してくれたけど、奴らが脅威であることには変わりはない。
 最悪の事態を想定して、マクアラン級航空母艦『MCSキャンベル』の動員を要請してあるが、連戦になれば先に疲弊するのは私たちだ。勝負はここで決めなければならない。


Log.44 ミッションNo.8 『戦火』

 すぐ目の前に着弾するミサイル、火薬が爆ぜて一瞬立ち上る火柱。俺は爆発で巻き起こった粉煙を掻き分けて、その先でプラズマレールガンを構えていたノーススター級に突撃する。

 チャージされていたレールガンの一撃を回避し、手に持つオートライフルをノーススター級に押し当てて、そのままトリガー。ゼロ距離で放たれた弾丸が装甲を貫き、中身のパイロットもそのままミンチになった。

 俺は動かなくなったノーススター級を蹴り飛ばして、更に前へと前進する。崩れた外壁を越えれば、遠くで離陸しようとする大きな輸送艦が見えた。IMSドラコニス、あれに『アーク』が積まれている。

 他の味方機も次々と外壁を超えて補給基地内へと突撃して行っている。だが、それを阻むようにIMCのタイタンもこちらを必死に迎撃してくる。

 

『前方、敵タイタン。リージョン級です、対弾幕防御!』

 

 遮蔽物の陰からプレデターキャノンを連射するリージョン級。俺はヴォーテックスシールドで飛来する弾丸を防ぎながら、一気に距離を詰める。

 リージョン級が後ろに下がって距離を取ろうとするが、俺はヴォーテックスシールドで絡め取った弾丸を、リージョン級の左膝を狙って射出。ガンシールドを潜り抜けて炸裂すると、関節を吹き飛ばして破壊した。

 体勢を崩したリージョン級はなおもプレデターキャノンを構えるが、照準が定まらない射撃など恐るるに足らない。俺は弾幕を潜り抜けてプレデターキャノンを跳ね除けると、鋼の拳をコクピットに叩きつける。そして、何度も拳を叩きつけられへしゃげた装甲を無理やり引き剥がした。

 剥き出しになったコクピットで、敵パイロットが脱出しようともがく。俺は無慈悲にコクピットごと敵パイロットを踏み潰すと、へしゃげた金属の隙間から鮮血が飛び散った。

 

『警告、敵タイタンにロックオンされています、回避を!』

 

『……っ!』

 

 スラスターを噴射して素早く横にステップ、敵タイタンの放った追尾ロケットをギリギリで回避する。IMCのトーン級だ、パーティクルウォールを展開しながらこちらを狙っている。

 俺は大破した敵の残骸を踏み越え、背部ラックに背負っていたブロードソードを盾代わりにしながら突進し、更にマルチターゲットミサイルを連射する。

 当然、ミサイルはパーティクルウォールの正面で爆ぜるのみで、トーン級にはダメージを与えられない。しかし、巻き上がった爆炎で視界を封じることはできる。俺はフェーズダッシュを起動し、爆炎もパーティクルウォールも通り抜け、トーン級の目の前へと瞬間移動した。

 

『なにっ……⁉︎』

 

 突如として目の前に俺が現れたことで、トーン級のパイロットは驚愕の声をあげる。咄嗟に40mmキャノンを構えようとしていたが、俺のブロードソードの方が早い。

 確実に仕留めた──そう思ったが、トーン級の背後から一機のタイタンが浮かび上がった。軽量級の砲戦特化型のタイタン、プルート級だ。そいつは背部の二基のミサイルポッドを展開して俺を狙っていた。

 

『そこまでだぜ、アウトロー。フライトコア、オンライン!』

 

 空中から放たれる無数のロケット弾。振り下ろす瞬間だったブロードソードを無理やり止め、地面を蹴った後ろに下がる。いや、ダメだ、これでも回避しきれない……! 

 

『馬鹿野郎っ、ボサッとしてんじゃねぇぞ!』

 

 突如横から突き飛ばされて、相棒のシャーシが地響きを立てて地面に倒れこむ。突き飛ばしたのは味方のバンガード級だった。ヴォーテックスシールドを展開して、俺の身代わりにフライトコアの空爆を防ごうとしていた。

 しかし、そこへ更に、トーン級も無数のロケット弾を撃ち込んでくる。俺を庇ったそのバンガード級もヴォーテックスシールドのエネルギーが切れ、爆炎に飲み込まれていった。

 

『くそ……っ!』

 

 更にロケット弾を放とうとするプルート級、俺はそれを止めるために背部スラスターを狙ってXO-16の引き金を引く。プルート級は咄嗟に回避しようとしていたが、背部スラスターを撃ち抜かれ、そのままバランスを崩して地面に墜落していった。

 

『ぐっ、うぅ……うおおぉっ!』

 

 フライトコアをまともに食らった味方のバンガード級は、装甲は爆風に歪み、破損した各所から火花を散らしていた。

 しかし、そんなボロボロの機体を無理やり動かして立ち上がると、IMCのトーン級と墜落したプルート級へと突撃する。

 

『先に向こう側で待ってるぜ……!』

 

 トーン級に体当たりし地面に張り倒すと、バンガード級の胴体部分、タイタンコアが一瞬眩い光を放つ。

 そして、次の瞬間には閃光がトーン級とプラート級を呑み込み、大爆発を引き起こして吹き飛ばした。あのバンガード級は最後の力を振り絞り、敵を巻き添えに自爆したのだ。

 

『ジャッカル5-1、ダウン……パイロット、今は先へ、前へ進みましょう』

 

『……分かってる、分かってるよ……!』

 

 俺は機体を起こすと、再びドラコニスを目指して駆け出す。目標まではまだまだ距離がある。今は何があっても、足を止めるわけにはいかない。

 味方の死を、共に戦った戦友との別れを惜しむ時間はまだない。ないのは分かっているのだが……

 

(畜生、これ以上仲間が死ぬとこは見たくねぇ……!)

 

 とにかく今は前へ進むしかない。俺は貯蔵タンクの間を抜けて、給油所へと繋がる格納庫に突入する。

 しかし、どうやら中には既に先客がいたようで、格納庫内には巻き添えをくった兵士や、バラバラに吹き飛ばされたタイタンの残骸が散らばっていた。

 そんな中で、三機のタイタンと格闘を繰り広げる二機のバンガード級。一機は赤い塗装が施されたバンガード級、ブリッグス司令の乗機だ。

 そして、もう一機のカスタムカラーのタイタン、あれは……BTだ。ラスティモーサ大尉が駆っていたバンガード級だ。

 

『援護射撃だ、相棒。当たらなくてもいい、とにかく弾丸をばら撒け!』

 

 BTにテルミットランチャーを放とうとしていたスコーチ級の横っ腹から、XO-16の弾幕を浴びせる相棒。その間に俺はハッチを開けて飛び降りると、クロークを起動してスコーチ級へと近づく。

 新たな敵の出現に、一瞬意識が相棒へ向く他の二機のIMCタイタン。その隙をブリッグス司令とBTは見逃さなかった。

 二人とも素早く敵の懐に入り込むと、ブリッグス司令は回転するような軽やかなステップで敵の攻撃を回避して、XO-16とミサイルの連撃を叩きつける。

 そして、BTは敵のIMCタイタンを背負い投げの要領で投げ飛ばすと、倒れて仰向けになったところに、コクピットへアコライトポッドのミサイルを浴びせるのだった。

 

『てめぇ、やりやがったな⁉︎』

 

 怒りに叫び声を上げるスコーチ級のパイロットは、両手にテルミットの炎を滾らせる。その隙に、俺は音も立てずにスコーチ級の真上に取り付くと、上部に取り付けられていたバッテリーを無理やり引き抜くのだった。

 

「はっ、貰っていくぜ」

 

『……っ⁉︎いつの間に!』

 

 バッテリーを引き抜かれて俺の存在に気づいたスコーチ級のパイロットは、俺を握りつぶそうとマニュピレータを伸ばす。

 しかし、その前に弾切れになったXO-16を捨て、ブロードソードを構えた相棒が、鋭い刺突を放ってスコーチ級のコクピットを貫いた。

 

「……っと、危ねぇ危ねぇ……よお、久しぶりだな、BT」

 

 相棒の攻撃に巻き込まれないように、BTのシャーシに飛び移った俺は、バッテリーを抱えたままBTに話しかける。

 

『貴方は……久しぶりですね、フェデラル少尉』

 

「中のパイロットは初めてだな。ジャック・クーパー、だったな? ラスティモーサ大尉から話は聞いていたよ」

 

「……!」

 

 返事はなかったが、なんとなく驚いてるのは伝わってきた。まあ、いいさ。ゆっくり語り合うのはまた今度でいい。

 ブリッグス司令も同じことを思っていたのか、XO-16に予備のマガジンを装填しながら急かしてくる。

 

『手を貸してくれて助かったわ、レイ。ドラコニスまであと少し、急がなくては……!』

 

「ええ、分かってます、ブリッグス司令。そらルーキー、このバッテリーは持っていけ!」

 

 バッテリーをBTに投げ渡すと、俺は相棒に乗り込む。そして、スコーチ級に突き刺さっていたブロードソードを引き抜くと、リフトに乗り込んで給油場へと向かう。

 

『軽度の損傷を検知。SD-6853、戦闘は続行可能ですか?』

 

『勿論です、BT-7274。弾薬は消耗しましたが、近接戦闘であれば問題なく敵を撃破できます』

 

 ブロードソードの柄を握り締めながらBTとやりとする相棒に、少し頬が緩む。軽度の損傷とはいったが、度重なる連戦によるダメージは積み重なっている。

 だが、弱音など吐いてはいられない。ドラコニスはすぐ目の前、とにかく前に進むのみだ。

 

『IMSドラコニスを確認! 追いついたわ!』

 

 リフトが到着すると、すぐ先に給油を受けている巨大な戦艦が見える。IMSドラコニスだ、アレに『アーク』が積まれている。

 しかし、既に補給も完了しようとしているのか、エンジンが始動し、スラスターから炎がちらつき始めている。もう数分もしない内に出発してしまうかもしれない。

 それに加えて、俺たちがリフトを降りて駆け出すと、周囲に無数のタイタンが降下してくる。やはりそう簡単には行かせてくれないらしい。

 

『ブリッグス司令、ここは俺が。二人は早く、ドラコニスへ!』

 

『無茶よ! この数、一人でどうにかなるわけないでしょう⁉︎』

 

『それでも、です……! 今ならまだ間に合うかもしれない……一刻も早く、ドラコニスを止めてください!』

 

 土煙の向こうから姿を現す無数のタイタン、コイツらをまともに相手している時間なんてない。かと言って、無視して突破できる数ではない。すぐに後ろから追撃されてしまうだろう。誰かが足止めしなければならないのだ。

 

『……分かったわ。でもいい? 私は報告書に死んだ仲間の名前を書くのが嫌いなのよ!』

 

『ふっ……承知していますよ!』

 

『……さあ、行くわよクーパー!』

 

 BTを連れて前進するブリッグス司令だが、BTは少しだけ躊躇うようにこちらへ振り向く。そして、俺にサムズアップを見せながらこう言った。

 

『どうかご無事で、少尉殿……!』

 

 まだ若い男の声、BTではなくクーパー声だ。俺は振り向かずにサムズアップだけを返して、ルーキーからの激励を受け取る。

 

『ご無事で、ね……当たり前だ、こんなところでくたばるつもりは毛頭ない』

 

『はい、我々に与えられた命令は、必ず生きて帰ること、です。我々はそれを達成しなければなりません』

 

『おう。生きて帰って、あのルーキーに一杯奢らないとな……!』

 

 ブロードソードに青い雷光を纏わせながら、ソードコアを起動。こちら見据える無数の敵タイタンと対峙しながら、俺は自分に忍び寄る確かな死の足音を聞いた。

 俺はここでくたばる運命なのかもしれない。だが、たとえそうなったとしても、フォールド・ウェポンが起動することが防げればそれでいい。

 

『さて、どいつからかかって来る……ん?』

 

『視界良好──ふむ、ミリシアのバンガード級か』

 

 背部のブースターから青白い炎を吐き出しながら飛び上がるのは、独特なノーズアートが施されたノーススター級。

 既存の機体とは様相が異なる、恐らくは傭兵の類が駆る独自のカスタマイズ機だ。そして、IMCが雇っている傭兵といえば……

 

『エイペックス・プレデターズか……‼︎』

 

『ドラコニスはまもなく出発する……が、お前らは飛空艇でも何でも使って追ってくるだろう? そうはさせん、空は俺のものだ』

 

 自在に空を飛翔するエイペックス・プレデターズのノーススター級。それに加えて、堰を切ったよう迫り来る他のタイタンたち。

 多勢に無勢、どうしようも無いほどの戦力差。だが、俺は決して退くことはなく、雄叫びをあげて突撃するのだった。




今回は主人公の過去回でした。
バイパーさんの魔改造ノーススター、出るゲームを間違えてないかい?
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