Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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もう水着なんて着れない……


Log.50 作戦ロケーション:Sモール

 夏の日差しが差し込む休日、道行く人々も半袖やら短パンやらと涼しげな格好をしている。しかし、それでも夏の暑さを和らげることはできない。

 俺も今日は制服ではなく、黒い半袖のシャツにジーパンとラフな格好をしていた。さすがにこの暑さの中、制服で外に出る気にはならなかったのだ。

 

「ふぅ、日本の夏は暑いな……」

 

 手で日陰を作りながら汗を拭う俺は、チラリと自分の後ろの方を見る。そこには会話に花を咲かせる少女たちがいた。しかも四人も。

 

「皆さんと買い物……楽しみなのです!」

 

「後で一緒にパフェ食べに行こうよ〜」

 

「ラウラは制服で暑くないの?」

 

「問題ない、訓練を受けている」

 

(うーむ。楽しそうで何よりだが、随分と大所帯になったな)

 

 フリルのついたノースリーブシャツのサラ。相変わらず袖の余った服装の本音。そして、制服のままなラウラに、お洒落なワンピースを着たシャルロット。一名を除いて……いや、本音も入れて二名ほど暑苦しそう格好だ。

 今日の買い物は、もともとはサラと本音だけ連れて行くはずだった。まあ見ての通り。ここにはプラス二人が追加されている訳だが、そうなった原因はラウラにある。

 

「ふむ……レイもサラも随分と動きやすそうな格好をしているな」

 

「え、えっと……ボーデヴィッヒさんは私服とかは持ってないんですか?」

 

「この制服で事足りる、私服など無用だ……いや、環境に合わせて適した装備を用意するのは基本中の基本。サラやシャルロットのような服装は、この日本の夏を攻略するのに適しているのか……?」

 

 一人勝手に謎の考察を進めるラウラだが、コイツが俺に付いて買い物に同行すると言って聞かなかったのだ。それで結局、ラウラのお目付役であるシャルロットも連れて行くことになったのだ。

 

「ねえ、レイ。ここまで来ておいて言うのもなんだけど……その、ぼ、僕も来てよかったの?」

 

「いいよ、どうせシャルロットも水着を買いに行こうとしてたんだろ? ならついでに済ませてしまえ」

 

 今日は皆、臨海学校で使う水着を買うというのだ。ただでさえ肩身が狭いのに、更に男が混ざるには辛い空気になること間違いなしだ。

 だが、これだけ人数がいるなら、水着を買うのは女子四人に任せて、自分は他の物でも物色していようか。うん、そうしよう。

 

「えー、折角だからレイレイに選んでもらおうと思ったのに〜」

 

「普通の服ならともかく、水着を選ぶのか……因みにお前のスリーサイズは?」

 

「えっとねー……」

 

「ほ、本音さん! ダメですよ、そんなはしたない……! 兄様も人の往来があるところで、そんなこと聞かないで下さい!」

 

「そうかー、スリーサイズが分からないとぴったりの水着を選んでやるのは難しいなー。仕方ないから他の店に行ってようかなー」

 

「ならば教えよう。上から──」

 

「ラウラさんもダメですー!」

 

(こいつら……恥じらいってもんはないのかよ)

 

 躊躇なくスリーサイズを教えようとする本音とラウラに、俺は適当に言い訳して逃げようとするのは逆効果だと悟る。

 とはいえ、買い物に連れて行く約束したのは事実。俺は腹をくくり、今日一日をなんとか乗り切ることを覚悟する。

 

「……で、目的のショッピングモールはここか?」

 

「はい、学園の皆さんはいつもここで買い物をしてるそうなのです」

 

「ほー、中々賑やかだな」

 

 駅前にある大きなショッピングモール、ここはあらゆる量販店が揃い、レジャー施設も完備。そして数ある飲食店は欧、中、和、全てコンプリートと、最強の布陣である──と一夏が言っていた。

 とりあえずは、目的の物が売られている二階の水着売り場へと向かう。そこには、色とりどりな水着が、オーソドックスなものから際どいものまで、所狭しと並んでいた。

 早速自分の水着を選びに散らばる女子四人に対して、俺はぼんやりと水着を眺める。というかそもそも、水着は知識で知っていても、実際に目にするのは初めてだ。

 

(学園指定の……すくーるみずぎ、だったか? あれはISスーツにも似ていたが、これは全く形状が異なるな)

 

 目の前にあったビキニを一つ手にとって見るも、下着とほとんど大差無いように見える。だが、これを可愛い女の子が着ているのを想像してみると……うむ、良いものだな。

 

「兄様、これなんかどうでしょうか……どうしました?」

 

「いや……水着ってのは女の子の魅力を存分に引き出す不思議な力があるんだなあ、と……」

 

「そ、そういうものなんです、水着は」

 

「そういうものか……ふむ、ならこの灰と黒のカラーはどうだ。黒カラーは強者の証だ」

 

「強者の証……? ──って兄様、さすがにこれは……!」

 

 俺がサラに渡した水着、それはチューブトップの大胆なデザインをした水着だった。サラはそれを身につけた自分の姿を想像するも、あまりに恥ずかしかったのか顔が真っ赤になってしまう。

 

「む、無理です! サラはこんなセクシーな水着、着れないです!」

 

「そうか? なら仕方ない、こっちはどうだ」

 

 俺がまたも過激なデザインの水着をチョイスすると、サラが慌てふためいて止めようとしてくる。わざとそういう水着を選んでるんじゃないのかって? もちろん、わざとだ。

 

「どうしてそんなエッチな水着ばっかり選ぶんですか!」

 

「そりゃあお前、どうせならそういう格好の方がエッ……おっと、つい本音が漏れてしまった。お前に似合うかと思って選んだからに決まってるだろ」

 

「欲望がダダ漏れです、兄様……」

 

「いいだろ、目の保養くらいはさせてくれ」

 

 サラが頰を膨らませて抗議するも、俺は開き直るばかり。むしろ、より際どい水着へと手が移って行く。

 

「あ、あのね、レイ……さすがにそのチョイスはちょっと……」

 

「……やっぱりダメか?」

 

「レイは私がこういう水着着てるところ……み、見たいの?」

 

「当たり前だろうが」

 

 今度はシャルロットに水着を勧めるも、やはり微妙な反応。しかし、シャルロットの水着姿を見たいと言ってみると、シャルロットは頬を染めながら。一回だけなら着てもいいかも、など呟くのだった。

 しかし、最初はあまり乗り気じゃなかったが、水着を選ぶのもなかなか面白いものだな。これは俄然、臨海学校が楽しみになってきたぜ。

 

 

 ──

 

 

 買い物を始めてから幾らか時間も過ぎ、少し歩き疲れた俺ショッピングモール内のベンチに腰掛けて、口の中でキャンディを転がしていた。

 女子四人は水着を買い終え、今度はまた別のフロアで買い物をしていた。さすがに俺が付いて行くのは憚れるような場所だったため、今は別行動というわけだ。

 

(ふー、買い物中の女子の体力は無尽蔵だなぁ……ん?)

 

 口の端でキャンディの棒を揺らす俺は、ぼんやりと往来する人々を眺めていたが、その中で珍妙な二人組を見つける。

 それはツインテールの小柄な少女と、ベリーカールの金髪碧眼の少女。二人ともサングラスやら帽子やらでよく顔は見えないが、どうにも見覚えがある。

 

(あの二人、もしかして……ああ、やっぱりそうか)

 

 二人の視線の先、そこには先ほどまで俺たちがいた水着売り場。そして……そこには水着を選ぶ一夏と、顔を赤らめた箒がいた。

 つまり、その見覚えのある二人組みとは、一夏とデートの真っ最中である箒をつけてきたセシリアと鈴である。

 

(箒やそこの二人は、完全にデートしてると思ってるのだろうが、果たして一夏にその気があるのか……いや、ないだろうな)

 

 唐変木・オブ・唐変木の一夏は、きっと箒の買い物に付き合ってるだけ、という認識なのだろう。しかし、例えそうだとしても、想い人と一緒に過ごすだけで箒は十分に幸せな気分だろう。

 一夏に選んでもらった水着を手にして、嬉しそうに微笑む箒。まず、普段なら目にすることのない、それほど優美な笑みだった。

 遠目にそれを見た俺は、すかさず携帯を取り出してフォトモードに切り替えてズーム、そしてシャッター。箒のその笑みを、一枚の写真に収める。

 もしまた束と揉めることがあったら、この写真をダシに使わせてもらおう。アイツは絶対に食いついてくるだろう。

 

「兄様、お待たせしました。サラたちの用事は終わったのです」

 

「ん、早かったな。じゃあ……パフェでも食って帰るか。じゅる……」

 

「に、兄様、ヨダレが……」

 

 口の端から垂れそうになったヨダレを飲み込み、ついでに中途半端に残っていたキャンディをそのまま噛み砕いてしまう。

 その残った棒をゴミ箱に投げ入れて、エスカレーターの近くで待つ本音たちの方へ向かうが……その俺の背後では、一夏がちょっとした修羅場に見舞われていた。

 何やら甘々な展開になっていた二人に、セシリアと鈴はついに見てられなくなったのだろう。二人は一夏とくっついて顔を赤らめていた箒にーーではなく、一夏に向かって食ってかかっていた。

 さて、巻き込まれるのはゴメンなので、さっさと退散するとしよう。

 

「よーし……本音よ、お前の言うそのスイーツ店のパフェは美味いんだろうな?」

 

「もっちろん〜!」

 

「ならば善は、いや膳は急げ、だ。早速その店に行くとしよう」

 

 本音の紹介であるこのショッピングモールにあるスイーツ店、なんでもそこのパフェは絶品と噂である。

 パフェを食べるということで浮き足立つ俺と本音。俺が甘党だと知らなかったのか、シャルロットは意外そうな顔をしていた。

 

「レイは甘いものが好きなの?」

 

「ああ、甘いものが好きだったらしい……というのも、ここ日本に来てから、甘いものを食べる機会に恵まれたものでな」

 

「ふふっ、僕も甘いものは好きなんだ。フランスにも沢山お菓子があってね、僕と同じ名前のお菓子もあるんだよ」

 

「ほう……」

 

 なんでもフランスは世界でも有数のお菓子大国らしい。マカロンやタルト、シュークリームにエクレアと有名なお菓子の発祥地なんだとか。

 そして、そんなフランスに行く機会がこれからは何度かあるだろう。俺は今からフランスに行ってやる事を、主にお菓子巡りの計画を立てておくのだった。

 

 

 ──

 

 

「皆さん楽しそうですねー、ボーデヴィッヒさんやデュノアさんもクラスに馴染めてるみたいで良かったです!」

 

「……そうだな」

 

 箒たちと騒がしく修羅場を繰り広げる一夏たちの様子を遠くから眺めるのは、同じく水着を買いに来ていた二人、織斑千冬と山田真弥。自分たちの受け持つクラスの生徒たちが買い物を楽しんでいるのを見て、水を差さないようにしているようだ。

 しかし、レイやラウラがクラスの女子と買い物に行くとは思っていなかったのか、さすがの織斑千冬も少し意外そうだった。

 

(ここに来たばかりのお前たちなら、まずあり得なかっただろうな……良い変化、と言うべきか)

 

 レイや一夏も含め、皆互いに影響しあって成長している。それは一人の教師として、また姉としては喜ばしいことではある。

 喜ばしいことではあるのだが……弟が姉離れしていくのは寂しいのだろうか。どこか手放しに喜べない織斑千冬は、小さくため息を吐く。

 そして、いつもの凛とした雰囲気とは少し違う織斑千冬の心情を察した山田は、そっと見られないよう小さく苦笑するのだった。

 




タイタンと同じくらいの大きさのロボットといえばボトムズのスコープドッグ。
機動力はともかく、耐久性においてはタイタンには遠く及ばないですが…キリコが搭乗してたら途端に勝ち目がなくなる。処刑モーションに入っても生きてそう
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