Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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新しく光回線に変えたのですが、どうにもタイタンフォール2のサーバーと相性が悪いようで。


LOG55 オペレーション・フォールン-A ②

 真夏の陽光に照らされながら、海洋の上を疾走する白と紅。白式を展開した一夏を背負うように滑空するのは、紅椿を纏った箒だ。時刻は十一時半、予測では、あと数分もすれば姿を現わすはずである。

 そう、制御を失い暴走状態に陥った銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が、ここ日本近郊に向かっているのだ。一夏と箒は、それを迎撃すべく、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の元を目指していた。

 初めは、セシリアら他の代表候補生も作戦に参加する手はずだったが、束の推薦もあり、箒の紅椿が一夏を運び、一夏が白式の零落白夜で撃墜することになった。いわゆる一撃必殺(ワンアプローチ・ワンダウン)である。

 そして、紅椿の性能が全ISを超える現行最高性能機という束の言葉に偽りはなかった。白式を背負ってもあまりある加速力を発揮し、超高速で戦域へと向かっていた。

 

「それにしても、たまたま私たちがいたことが幸いしたな。私と一夏が力を合わせればできないことなどない、そうだろ?」

 

「ああ、そうだな。でも箒、先生たちも言ってたけど、これは訓練じゃないんだ。何が起きるかわからない」

 

「ははっ、心配するな。お前はちゃんと運んでやる、大船に乗ったつもりでいればいいさ」

 

「……」

 

 専用機を手に入れてどこか浮かれた雰囲気の箒に、一夏どうにもすっきりしない不安を抱えたまま、零落白夜の起動準備に移る。そして一夏は、出発前に言われた千冬の言葉を思い出す。

 

『どうも篠ノ之は浮かれているな。あんな状態では何かをし損じるかもしれん。それに……オルタネイトのこともある。用心しろ』

 

 箒のことはもちろん、今朝からずっと姿の見えていなかったレイのことも、一夏はずっと引っかかっていた。もやもやした気分を拭えずにいたのだ。

 悩んでてもしょうがない。とにかく今は、作戦を成功させることを考える。そう意識を切り替えた時、箒が声を上げる。

 

「見えたぞ、一夏!」

 

「……おう!」

 

 ハイパーセンサーが遥か遠くを飛翔する銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の影を捉え、一夏は改めて気を引き締める。

 

「加速するぞ! 目標に接触するのは10秒後だ、集中しろ!」

 

「ああ!」

 

 スラスターと展開装甲の出力をさらに上げる箒。その速度は凄まじく、高速で飛翔する福音との距離をぐんぐん縮めていく。福音はもうすぐ目の前、一夏は雪片弐型の柄を握りしめ、零落白夜を起動させる。

 

(七、八、九……十! 今だ!)

 

 箒と同じく超高速で飛行する福音。箒は、その横から突撃するように大きく旋回する。当然、福音もハイパーセンサーで箒たちの接近は感知していた。しかし、回避動作に入る前に、既に一夏の間合いに入っていた。

 

(行ける──‼︎)

 

 雪片弐型を振り上げると同時に、瞬間加速も併用して一気に間合いを詰める。そして、光の刃が福音に触れる、その瞬間だった。

 福音は最高速度を維持したまま反転、後退の姿となって身構えた。それでも回避はできないはず、このまま押し切る。そう考えて、一夏は全力の一撃を振るった。 

 

「なっ……⁉︎」

 

 しかし、一夏の嫌な予感が的中してしまった。両翼のスラスターから噴射炎を煌めかせながら、福音はその場でぐるりと回転。零落白夜の刃を僅か数ミリの精度で回避したのだ。

 

「くっ……! そんなのありかよ……!」

 

「私が援護する! もう一度仕掛けろ!」

 

 箒が二刀の物理ブレード、『雨月』と『空裂』を引き抜き、福音へと斬りかかる。それに対し、福音は箒を迎撃するように両翼の装甲の一部を展開させる。

 

(しまった! あれは──)

 

 一夏と箒が気付いた時には既に福音は射撃体勢にあり、一瞬間を置いて展開した砲口から幾重もの光の弾丸が撃ち出された。

 

「ぐぅっ⁉︎」

 

 高密度に圧縮され羽を象ったその弾丸は、ISのアーマーに突き刺さり爆ぜる。その衝撃に一夏は息を詰まらせるが、福音は休む間を与えずに弾丸を連射する。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……そういう意味かよ!」

 

「一夏! 私が動きを止める、隙を見て斬りこめ!」

 

「……っ! 分かった!」

 

 弾幕のように撃ち出される光の弾丸、箒はそれを二刀の物理ブレードで相殺しながら、同じようにエネルギー刃を射出して福音に追撃を加えていく。

 福音も箒も、最高速度を維持したままの高速戦闘。しかし、展開装甲という圧倒的な汎用性を誇る紅椿の猛攻に、次第に福音も攻撃だけでなく防御に動きが割かれる。

 

(くそっ、なんつー弾幕だよ! 切り込む隙がねぇ……!)

 

「La……♪」

 

 歌うような甲高いマシンボイス。その刹那、福音の両翼の砲門全てが開かれる。全方位に向けての一斉射撃だ。

 しかし、その光弾の雨を紙一重で躱し、福音に肉薄する箒。そして、放たれた紅いエネルギーの斬撃が、確かに福音の装甲を斬り裂き、その動きを止めた。

 

「今だ一夏ぁ!」

 

「──っ⁉︎うおおおぉぉっ‼︎」

 

 瞬間加速と零落白夜、それを同時に発動して突撃する一夏。しかし、その方向は福音とは真逆の方向、海面へと向けてであった。

 

「一夏⁉︎何をしている⁉︎」

 

「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに──ああくそっ、密漁船か!」

 

 海上をたゆたう一隻の船、その密漁船に降り注ぐ福音の光弾。一夏はギリギリのところでその光弾に追いつくと、零落白夜で光弾をかき消す。

 しかし、それでエネルギーを使い切ってしまったのか。一夏の手の中で雪片弐型の光が消えていく。

 

「馬鹿者! 犯罪者などかばって……そんなやつらは──」

 

「箒‼︎」

 

「……っ!」

 

「箒、そんな……そんな寂しいことは言うな。力を手にしたら、弱い奴のことが見えなくなるなんて……どうしたんだよ、箒らしくねぇよ……」

 

「わ、私、は……」

 

 箒は明らかな動揺を浮かべ、それを隠すかのように手で覆う。その時に落とした刀が空中で光の粒子となって消えたのを見て、今度は一夏が焦りの表情を浮かべる。

 

(今のは、具現維持限界だ……! まずい……!)

 

 戦意の喪失、それによるISの維持限界。箒の纏う紅が力を失い、輝きが消えていく。そんな箒へと両翼の砲門を向けようとする福音

 それを見て、一夏は全速力で箒の元へ向かおうとする。しかし、その時だった。何もいないはずの一夏の背後から、無機質な声が虚空に響いた。

 

『対象をスキャン……不法侵入者を障害と認識──排除、開始』

 

 ぐにゃりと空間が歪んだかと思えば、徐々に姿を隠していた者の姿が露わになっていく。そこから姿を現したのは……

 

「なっ……⁉︎あ、あれは……⁉︎」

 

 虚空から姿を現し、紅いカメラアイで密漁船を見据えるのは真っ黒なIS。リーゼ・デルタだ。リーゼはその手に持つプラズマレールガンをチャージすると、砲口を密漁船へと向ける。

 

「お、おい、やめろ……! 何やってんだ!」

 

 一夏がリーゼに向けて叫ぶも、リーゼは聞く耳を持たずプラズマレールガンのトリガーに指をかける。しかし、カメラアイだけは、一夏に向けると、オープンチャンネルから無機質な声で語りかける。

 

『プロトコル2、任務の執行。現在、我々に課せられた任務は、貴方と篠ノ之箒、そして銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)との戦闘に関する全ての障害を排除すること。この密漁船は障害と判断されました、よって、即刻排除します』

 

(この声……間違いなくレイのISのAIの声だ……! ってことは、やっぱりパイロットはレイ、なのか……⁉︎)

 

 リーゼは改めて密漁船へと向き直る。そのままトリガーを引いてしまう、そう悟った一夏は、残り少ないエネルギーでリーゼへと突進した。

 

「殺すつもりかよ、レイ⁉︎」

 

『……』

 

「だ、だめだ、そんな……やめろ、やめろぉ──っ‼︎」

 

 シールドバリアーのエネルギーも全て使い切る勢いで、一夏は瞬間加速を行う。そして、密漁船とリーゼの間に割り込むと……一夏は密漁船の盾になった。

 撃ち放たれたプラズマレールガンの弾丸は、一瞬絶対防御で阻まれるも、限界が訪れた白式はすぐに光の粒子となって消えていく。そして、阻まれた影響で大きく横にそれた弾丸は、一夏の脇腹を少し抉って辺りに血を撒き散らした。

 

「あっ……」

 

 箒は一夏が血に塗れながら落ちていく様を、呆然と眺めていた。そして飛び散った血の、紅椿よりもずっと黒ずんだ血の色を見て、箒は絶叫した。

 

「い、一夏……一夏あぁぁっ⁉︎」

 

 消えかけていた紅椿を再度展開し、一瞬にして落ちていく一夏に追いついた箒。涙を流しながら一夏を抱きとめると、そのまま海へと落ちていく。

 

『……』

 

 箒と共に海へと没して行く一夏、それをリーゼのカメラアイ越しに見ていたパイロット──レイは、ずっと無表情だった顔を僅かにしかめる。

 力なく落ちて行くその様が、レイのある記憶を刺激した。惑星タイフォン、フォールド・ウェポンの発射場、自分が堕ちていったあの瞬間、エイペックス・プレデターズの二人に敗北したあの瞬間……それらがレイの脳裏にフラッシュバックする。

 

『俺、は……』

 

 コクピットの中で、震える手を虚ろに見つめるレイ。しかし、次の拍子には頭に走る激痛に苦悶の声をあげる

 

『──っ!』

 

『システムに異常発生。パイロットとのリンクを確立できません。パイロット、パイロット──』

 

 獣の唸り声のような機械音を立てて、リーゼは痙攣するようにシャーシを震わせる。紅く輝いていたカメラアイは点滅を繰り返し、手に持っていたプラズマレールガンは光の粒子となって消える。

 

『プロトコル2──任務の執行。障害──排除す──こと。──織斑一夏と篠ノ之箒の護衛? ──認識に矛盾を検知。思考ルーチンのオーバーフロー。最後に下された任務を再試行……我々の任務は──』

 

『……っ……──⁉︎』

 

『障害の排除──不一致。織斑一夏と篠ノ之箒の護衛──不一致。……アークの奪還──不一致。デメテルの破壊──不一致、不一致、不一致……‼︎』

 

 しばらく、呻き声をあげ続けたリーゼは、不意に静かになると、両手のマニピュレータをだらりと下げる。そして、輝きの消えたカメラアイをゆっくりと福音へ向けると、背部のスラスターから炎を吐き出す。

 一気に福音に接近したリーゼは、無抵抗の福音の両翼をねじ切り、引きちぎる。そして動かないナターシャの頭を掴み上げると、少しずつマニピュレータに力を込めていく。

 しかし、あと少しで福音のエネルギーが尽き、ナターシャの頭が砕かれるその瞬間だった。遥か遠方から飛来した不可視の砲弾が、リーゼを吹き飛ばした。

 

「あんた……っ! よくも一夏をっ!」

 

 吹き飛んだリーゼに追撃を加えるように飛びかかるのは、龍を思わせる赤いIS。機能増幅パッケージ『崩山』を搭載した『甲龍』を纏う鈴だった。

 

「これは……一体どういう状況だ?」

 

 その様子をスコープ越しに捉えていたのは、砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』を装備したシュバルツェア・レーゲン、そのパイロットのラウラだった。

 

「どんな状況でも関係ありませんわ! 早く一夏さんと箒さんを助けなければ……!」

 

「……セシリア、一夏たちを頼む。シャルロットは福音のパイロットを。私は鈴を援護する……!」

 

「分かったよ!」

 

 同じように追加パッケージを装備したセシリアとシャルロットも、スラスターの炎を揺らめかせながら一夏たちの元へ飛んでいく。それを尻目にラウラは、スコープ越しに態勢を立て直すリーゼを見据えながら僅かに表情を歪めた。

 

(一体どうされたのですか、師匠……!)

 

 待機命令を無視してここまで駆けつけた四人は、皆混乱していた。万が一にも作戦が失敗すれば、二人が負傷する可能性はあった。しかし、傷を負わせたのは、姿を消していたリーゼとレイだったのだ。混乱しないはずがない。

 しかし、ラウラは、スコープ越しに感じるリーゼの違和感にも気づいていた。いつもとは明らかに雰囲気が違う、まるで別人になってしまったかのようである。

 とはいえ、一夏を撃って福音を手にかけようとしてたのは事実。そして今は獣のように無茶苦茶な、かつ機械的な動きで鈴に襲いかかっていた。

 今、倒すべきは福音ではなくリーゼ。そう判断したラウラは、心を鬼にして、二門の八十口径レールカノン『ブリッツ』のトリガーを引いた。




88mm(アハトアハト)・・・・・・‼︎ そいつは素敵だ、大好きだ

口径とセンチの計算は未だによく分からんのです
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