しばらく投稿が途絶えておりましたが、またぼちぼちと投稿していきます!
今年もよろしくお願いします〜
人間は慣れる生き物だ。銃声、爆発、それが聞こえるということは、明らかに異常事態のはずなのだ。俺は頭の芯にまで響いて来るその音が何にかはすぐに分からなかった。
しかし、それが戦場の音であるとすぐに思い出す。目の前を一発の弾丸が掠めたからだ。急速に意識が覚醒した俺は、慌てふためきながら起き上がって走り出す。
(な、なんだ⁉︎何がどうなってる⁉︎ここはどこだ、俺は何をしてるんだ⁉︎)
とりあえずは目の前に転がっていたコンテナの残骸の影に飛び込む。そして状況を確かめるために周りの景色を見回すと、俺は驚愕のあまりに腰が抜けそうになる。
(俺の……俺の思い違いか? なぜ、俺はここに……⁉︎)
周りには何体もの旧式のタイタンの残骸と、生き絶えた兵士たちの死体。堅固な防壁に囲まれ、大きなパイプが根を張るように張り巡らされたIMCの基地……
見慣れた戦場の景色ではあるが、
(な、何故俺はここに……また夢を見ているのか……⁉︎)
気づけば俺の装備もパイロットスーツではなく、ミリシアのライフルマンの標準装備を身に付けている。確かに、あの時の俺はまだパイロットではなく、ライフルマンだったが。
ただし、手元にはライフルも拳銃もない。完全な丸腰、この熾烈な戦場でそれはマズい。いや、夢なら大した問題じゃないが。
『クソ、IMCの増援だ……! すぐに指定座標にタイタンを投下してくれ!』
『座標168-576a- 45、目標地点をマーク……タイタンを投下』
『こちらブリッグス、ポイントBに向かう複数の敵戦力を確認、注意されたし! マクアラン、そちらの状況は⁉︎』
『ポイントAを確保した! いいぞ、そのままコアリアクターをオーバーライドさせろ!』
無線から聞こえて来るのはブリッグス司令と、ミリシアに協力する元IMCの軍人、ジェームズ・マクアランだ。他にも聞き覚えのあるかつての仲間たちの声が聞こえて来る。
だが、これは夢だ。現実なんかじゃない。マクアランも、他の多くのパイロットたちも、この戦いで戦死してしまった。ここはもう過ぎ去った戦場、俺がさっきまでいたのは惑星タイフォンだ。俺はそこでエイペックス・プレデターズの二人に敗れて──
(いや、違う……そうじゃない。俺は……そうだ、俺は撃ったんだ。一夏を……撃ってしまった……!)
全て思い出した。俺はとんでもない過ちを犯してしまったのだ。束によって殆ど自意識も無い状態だったとしても、俺が……俺が一夏を傷つけたのだ。
「くそっ、あんなことをしでかしておいて……俺は呑気に夢を見てんのか? ふざけて──はっ⁉︎」
空から飛来する何かが空を切る音、それを聞いた俺は反射的にコンテナの残骸から飛び退く。すると、間髪入れずに飛来した砲弾が炸裂し、爆風が俺を吹き飛ばした。
俺は背中から地面に叩きつけられて息を詰まらせるが、その衝撃と痛みは本物のようだ。これは夢ではないというのか?
「おい、そこのお前! そこは危険だ! 早くこっちに来い!」
「……!」
「11時の方向、IMCのスペクターどもだ! 俺たちが援護する、全力で走れ!」
近くの大きな格納庫から声を張り上げているのは、ミリシアのライフルマンたちだ。どうやら、俺を同じ仲間だと思っているようだ。
俺は周りで飛び交う弾丸の嵐を掻い潜りながら、なんとか格納庫の中へと転がり込む。すると、恐らくはこのライフルマンたちの分隊長であろう男が俺に問いかける。
「怪我はないか? 動けるなら手を貸せ、すぐに敵が……誰か、コイツに武器を渡してやれ!」
「はっ! そら、これを使いな!」
そう言ってライフルマンの一人が手渡してくるのは、サブマシンガンの『R-97』だ。俺はそれを、つい反射的に受け取ってしまう。
(この銃の重さも……本物だ。もしかして、ここが
もう、俺には何も分からない。何が本当のことで、どこまでが真実なのか。しかし、頭は混乱していても、体は自然と動いてしまう。
「き、来た、来たぞ! IMCの大部隊だ!」
「応戦しろ、ここは絶対死守だっ‼︎」
コッキングを引いて弾丸を薬室に込め、遮蔽物から乗り出しながら照準を合わせる。銃口の先にあるのは、向こうから押し寄せてくる機械化歩兵『スペクター』の群れ。俺は他のライフルマンたちと共に、スペクターどもへ弾幕を叩きつける。
「吹っ飛べ、人形野郎ぉ!」
ライフルマンの一人がフラググレネードを投げつけると、一拍置いて爆音が轟く。頭の奥まで響く振動を堪えながら、俺はマガジンを取り替えて再び照準を合わせる──その時だった。
鋭い飛翔音が目の前を横切り、俺の隣にいたライフルマンの顔面に無数の弾痕が刻まれる。そして、そのライフルマンが血を吹き出して倒れると、今度は俺たちの頭上から更に無数の弾丸が降り注いだ。
「う、上っ⁉︎しまった、敵のパイロ──がはっ⁉︎」
分隊長が自分の真上へと銃を向ける前に、その額に大きなナイフが突き刺さる。次いで頭上から降ってきた一人の兵士が分隊長の頭を踏み潰すと、ナイフを引き抜きながら紅く光るヘルメットのカメラアイで俺たちを睨む。
サブマシンガンとナイフを手に俺たちの前に立つコイツを、俺はよく知っている。このフロンティアの戦場で最も恐ろしい兵士……パイロットだ。
「お、おおぉぉ──っ‼︎」
ライフルマンの一人が雄叫びを上げながらそのパイロットに飛びかかる。味方への誤射を考慮して格闘戦を挑んだのだろう。
しかし、IMCのパイロットが振り向きざまに放った拳は、一撃でそのライフルマンの顎を砕いた。そして、IMCのパイロットは独特な電子音を響かせると、俺たちの目の前で忽然と姿を消してしまう。
「チクショウ、あの野郎は何処行きやがった⁉︎」
「クロークだ、肉眼じゃほとんど見えねぇ! 煙幕だ、煙幕をた、かっ……っ」
「くそっ、くそぉ! 冗談じゃねぇ、味方のパイロットを呼べ! 俺たちじゃ倒せなっ──あ、がぁぁ⁉︎」
スペクターに負けず劣らない膂力に、一撃で意識どころか命すら刈り取られる。気配すら感じることなくナイフを突きつけられ、気づいた時には喉元から血が噴き出す。俺たちはIMCのパイロットの蹂躙を止めることもできず、一方的に屠られるだけだった。
今更ながらに思い知る。パイロットとは、こうも恐ろしいものだったのか。こうも冷酷に人を殺し、蹂躙できる化け物だったのか、と。文字通り、人間離れした存在だったのだ。
(人間離れ、した……人間じゃない? そうか……何もかもが作り物の代用品、空っぽで何もない俺は……人ですら、ない)
俺は咄嗟に銃を盾がわりすると、そこに重たい衝撃が走る。そして、クロークを解除したIMCのパイロットは、怯んだ俺を地面に押し倒すと、手に持つナイフの切先を俺の眉間に定める。
そのままナイフが振り下ろされればどうなるか、想像に難くない。俺は無造作に死ぬだろう。だが、俺もそうやって大勢の命を奪ってきた。今更命乞いなんてするつもりもないし、出来るはずもない。
(あぁ、俺は何もかも中途半端だ。心ある人間にも、心ない機械にもなりきれない。初めから、心なんて無ければ……ただ命令に従うだけの人形だったら、あんな事には──)
『──ならなかった、とでも言うつもりか? バカ野郎、寝言は寝て言いやがれ』
ナイフを振り下ろそうとしていたIMCのパイロット、その動きがピタリと止まる。そして、ゆっくりと嫌な音を立てながら首が180度回転すると、小さくうめき声を上げながら地に伏す。
「ったく、なんてザマだ。こんなところまで来て、泣き言ほざいてんじゃねーよ。女々しいったらありゃしねぇな?」
徐々に虚空から姿を現すのは、同じくクロークを使用して透明化していたパイロットだ。ただし、IMCのパイロットではない、ミリシアのパイロットだ。
しかも。そのパイロットの装備は俺もよく知るものだった。グレーと濃い藍色で塗装されたパイロットスーツ、傷だらけの古びたヘルメット。そして片手には、俺も愛用していたリボルバー『B3ウィングマン』。
それらは俺が身に付けていた装備にそっくりだ。そうだ、俺はこのパイロットを知っている。
「嘘、だろ……なんでアンタが……」
「よう、久しぶりだな──レイ」
そう言って俺に手を差し伸べるパイロットは、なんとなくヘルメットの下で笑っているような気がした。そして、その表情もよく思い出せる。
何故なら、俺の目の前にいるこのパイロットは、俺を兵士として育ててくれた恩人であり、師匠であり、親代わりでもある人なのだから。
ミリシア所属の精鋭部隊であるマローダー隊の一員であり、最古参のパイロットの一人。エド・フェデラル、それが彼の名だった。
実は11月ごろに、パソコンのHDDがお亡くなりになりました。
バックアップしておいてよかったー