Infinit Fall :Re   作:刀の切れ味

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某大統領「レッツパーリィィィ‼︎」

サマーセールで買っちゃった




Log.61 全オペレーションの終了

 

『La……La……──‼︎』

 

 再び自分の前に立ち塞がったリーゼに福音は怒りを表すように咆哮し、大気を震わせる。そして、大きく後ろに飛び退き旋回しながら、翼から光弾を撃ち放つ。

 リーゼは背部にアコライトポッドを展開させると、『サルヴォコア』を起動。福音の弾幕に対抗するように射出される多量のロケット、それが光弾とぶつかり合い爆ぜていく。

 

『シャル──と……下が……』

 

「……兄様!」

 

『下が……れ……』

 

 リーゼから微かに聞こえたレイの声。それを聞いたサラは、強く拳を握り込むと、アサルトライフルをコールして、リーゼの横に並び立つ。

 

「それはできません、兄様……これ以上、兄様が傷付くのは見ていられないのです。──そうでしょう、シャルロットさん?」

 

「そうだね。僕たちだって……誰かのために戦うことはできるんだよ、レイ」

 

 サラと同じようにリーゼの横に立ち並ぶシャルロット。それを見つめるリーゼは、目を細めるようにカメラアイを閉じる。そして、返事を返す代わりにヴォーテックスシールドを展開して、福音の放った光弾を防ぐ。

 

『行──援護……』

 

 途切れ途切れで殆ど聞き取れない掠れた声、それでもレイの意図を汲んだ二人は、福音の背後を取るように旋回しながら攻撃を仕掛けていく。

 その様を、箒は上空から複雑な表情で眺めていた。レイは一夏を撃った。だが、鈴の様に、一概にレイを責めることはできなかった。自分があんな風に浮かれていなければ、そう思わずにはいられなかった。

 だが、箒はそれにケジメをつけるために再起した。雑念を振り払うように首を振り、今倒すべき相手へ目掛けて駆け出す。

 

『──白』

 

「……何?」

 

 あらぬ方向を壊れたマニュピレータで指差しながらポツリと呟くリーゼに、箒は思わず動きが止まる。しかし、その次の瞬間、リーゼが示した方向から眩い閃光が迸る。その眩しさに箒は目を瞑ってしまうが、紅椿のハイパーセンサーが捉えたその反応に、箒は表情は驚愕の色に染まった。

 

「俺の仲間は、誰一人としてやらせねぇっ!」

 

 光の先で、福音の翼と同じように真っ白な非固定ユニットのウィング・スラスターを広げ、雪片弐型と左手に装着された籠手『雪羅』を構えるのは──二次形態移行を果たした白式、それを纏う一夏だった。

 

 

 ──

 

 

 何もかもが澄んで見える、そんな不思議な感覚に一夏は戸惑うも、より鋭敏になったハイパーセンサーで福音とリーゼの姿を捉える。

 

(俺が眠りこけてる間に、一体何があったんだよ? 福音は姿が変わってるし、リーゼはボロボロだし、俺の傷は治ってるし……いや、今はそんなことどうでもいい)

 

 とにかく福音を止める、そしてレイをリーゼから引っ張り出して小一時間ほど問い詰める。あれこれ考えるのはそれからだ。

 

「一夏ぁ!」

 

 自分の名を呼ぶ震えた声に一夏が視線を上げると、そこには涙目になった箒がいた。一夏は箒を安心させようと、ウィング・スラスターを噴射して箒に近付く

 

「一夏っ、一夏なのだな⁉︎体は、傷は……!」

 

「心配かけたな、もう大丈夫だ。なんだよ、泣いてるのか?」

 

「な、泣いてなどいないっ!」

 

 ぐしぐしと目元を拭いながら強がる箒。いつもの雰囲気に戻った箒に、一夏は少し嬉しそうに笑った。

 

「ま、お互い色々と言いたいことはあるかもしれないけどさ。まだ終わってないからな……行ってくるぜ、箒」

 

 優しく箒の頭を撫でてから、一夏は執拗にリーゼへと弾雨を降らす福音へと鋭い視線を向ける。そして、雪片弐型を強く握りしめると、福音へ目掛けて飛翔した。

 四基のウィング・スラスターによる爆発的加速力で福音の正面に回り込んだ一夏は、変形させた雪羅を盾のように構える。すると、そこから発せられた光の膜が、福音の撃ち出した光弾を全てかき消す。

 それは白式が新たに発現させた武装、エネルギーを無効化する零落白夜のシールドだ。当然、エネルギーの消費は激しいが、実弾兵器を持たない福音に対して圧倒的なアドバンテージを得られるのだ。

 

「よう、酷い様だな、レイ」

 

『──……』

 

 一夏がリーゼの中のレイに声をかけるも、返ってくるのは掠れた小さな声だけ。だが、レイが正気に戻ったことを確認した一夏は、ニヤリと笑いながらリーゼの装甲を軽く叩く。

 

「とりあえず何も言いっこなしだ、レイ。後でたっぷりと事情は聞かせてもらうからさ」

 

『……』

 

 返事はない、だがレイにはきちんと伝わっている。一夏は、早々にケリをつけるために、単一仕様の零落白夜を起動させ、雪片弐型を迸る光の刃へと変える。

 

「──行くぞっ!」

 

 四機のウィング・スラスターを最大稼働させた瞬時加速(イグニッション・ブースト)で福音へと突進する一夏。その後を追って、リーゼも最後の力を振り絞って飛翔する。

 

「一夏っ……⁉︎」

 

「悪い、二人とも下がってくれ!」

 

 突然現れた一夏に驚くシャルロットとサラ。だが、福音が全方向に光弾を放とうとしたのを見て、二人は即座に距離を取る。

 

「させるかよっ!」

 

 零落白夜を纏った雪片弐型で福音の光の翼を斬り裂く。片翼はそれで無力化した──が、もう片翼を切断する前に一夏への脅威を感じ取った福音は、大きく後方に下がって二撃目を躱す。

 

「その翼、再生すんのかよ……だったら、同時に……!」

 

 切断された翼を急速に再構築する福音を見て、一夏は眉間に皺を寄せる。零落白夜を発動させたからには、すぐにでも勝負を決めなければ一夏の方がエネルギー切れになってしまう。一夏一人であれば、攻め切るのは至難の業だったかもしれない。しかし、一夏は独りではない。

 

「──サラっ!」

 

「はい!」

 

 シャルロットは両手に重機関銃を、サラはアサルトライフルをコールし、ありったけの弾丸を福音へと浴びせる。それから逃れようと、福音は大きく上昇していく。

 

「わたくしを忘れてもらっては困りますわ……!」

 

 それを逃がさないと言わんばかりに、長距離からの狙撃を加えるのはセシリア。咄嗟に身をよじって回避する福音だったが、その狙撃に混じって放たれた実体のない砲弾が福音を吹き飛ばした。

 

「こっちは腐っても代表候補生よ! 舐めんじゃないわよ!」

 

「捉えたぞ……!」

 

 衝撃砲で福音を吹き飛ばした鈴、その背後では、両手を交差させてAICを起動させるラウラ。投げかけられた不可視の網は、体勢を立て直す福音の片足を絡めとり、その動きを封じた。

 

(行ける……が、エネルギーが持つかっ⁉︎)

 

 零落白夜によって急速に減少していくエネルギー、それに一夏は少し焦りを感じる。自分の内側から力が抜けていく感覚、二次形態移行した白式は、更に燃費が悪くなったようである。

 しかし、そんな一夏の焦りはすぐになくなった。零落白夜を握るその手に重ねられる箒の手。そこから感じる温もりが、一夏に力を与えた。

 

(私は、共に戦いたい。お前の背中を守りたい!)

 

 箒の想いに呼応するように紅椿の展開装甲から、赤い光に混じって黄金の粒子が溢れ出す。紅椿の単一仕様『絢爛舞踏』、それが白式のエネルギーを急速に回復させていった。

 

「エネルギーが……⁉︎箒、これは──」

 

「今は考えるな、行くぞっ!」

 

「お、おう!」

 

 紅椿から受け取ったエネルギーを、更に雪片弐型に注ぎ込む。やがては巨大な光の刃となり、一夏はそれを構えて、『雨月』と『空裂』を携えた箒と共に、瞬間加速で福音へと飛び込んだ。

 

「一気に両翼をぶった斬る! 合わせてくれ、箒!」

 

「ああ! 今度は……必ずっ!」

 

『──っ』

 

 福音はAICから逃れようと必死に足掻くが、拘束された片足はびくともしない。なれば、とラウラに狙いを定めて『銀の鐘』による一斉掃射を始めようとする。

 しかし、それが撃ち放たれる前に、福音の目の前で青白い光が揺らめいたかと思えば、フェーズダッシュで虚空から姿を現したリーゼが、半ばから折れたブロードソードを振りかぶっていた。

 

『La……ッッ‼︎』

 

 目の前に現れた怨敵に、福音は金切り声を上げながらリーゼへと手を伸ばす。しかしリーゼは、振り下ろしたブロードソードを、福音の眼前で止めてしまう。

 

『……すまない』

 

 底から絞り出すような小さな声。そのただの一言を聞いた福音もまた、リーゼに手を伸ばした状態のまま動きを止める。その隙を逃さず、剣の間合いまで踏み込んだ一夏と箒は、同時にその刃を振い、福音の翼を断ち切った。

 両翼を失い、エネルギーを損失した福音は遂に限界を迎え、搭乗していたパイロットを残して光の粒子となり散っていく。福音が完全に機能を停止したのだ。

 

「終わった……のか」

 

 箒がポツリと呟くと、一夏はレイの名を呼ぼうとリーゼへと視線を向ける。しかし、そこには先ほどまであった翡翠の輝きを失ったリーゼが、福音のパイロットであるナターシャを抱きかかえたまま停止していた。

 それを見た一夏は、背筋に悪寒が走るような嫌な感覚を覚える。

 

「兄様っ……!」

 

 サラがレイの名を呼ぶも、返事はない。一夏はリーゼに駆け寄り、そのへしゃげて歪んだコクピットのハッチを、無理やりこじ開ける。そして、──一夏は自分の目に飛び込んできたレイの凄惨な姿に息を呑んだ。

 血で赤く染まったコクピットの中で、レイは身じろぎ一つせずに項垂れている。砕けて飛散した金属片がいくつも食い込み、福音によって貫かれた穴はレイの体にも同様の風穴を開けていた。

 

「レ、イ……」

 

 僅かに硝煙の匂いが漂う海の上で、誰もが言葉を失っていた。ただ、静かに波の音だけが響き渡るだけ。当初の作戦通り福音は撃破したのに、そこには達成感も何もない。言いようもないやるせなさだけがあった。

 そして、その沈黙を破るように、サラの絶叫が響き渡った。それを聞いた一夏は、ようやく目の前の現実を──レイが死んだということを理解したのだった。

 

 

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