重量級のタイタン。テルミットランチャーを中心とした武装で炎を操り標的を焼き尽くす。閉所での制圧戦や防衛戦にて活躍する。爆熱ゴッドフィンガーは近接戦を仕掛ける相手を黒焦げにする。
炎による熱を武器にする関係か、コクピット内は冷房が効いてて涼しいらしい。
「オルタネイトくん、出身は?」
「……ひ、秘密」
「なんでISが喋るの? そんなIS初めて見たよ!」
「あー……うん、特別製なんだよ……」
今の質問は何個目だろうか、終わらない質問責めに精神が擦り切れていくようだ。自己紹介が終わった後、俺はクラスの女子に取り囲まれてひたすらに質問責めされていた。
自己紹介の時にリーゼが皆の前で喋ってしまったが故に、やれ話がしたいだとかもっと喋らせろだとか、とにかく色々と面倒なことになってしまったのだ。
「頼む、ちょっと通してくれ!」
取り囲む人垣の向こうから聞こえるのは男の声。このクラスに男なんて二人しかいない、この俺と織斑一夏だけだ。
一夏の声に人だかりになっていた女子たちは綺麗に二つに分かれ、その間を一夏が真面目な表情でこちらに歩み寄って来る。
「なあ、お前……えとレイだっけか? 本当に俺と同じISを使える『男』なのか⁉︎」
「あ、ああ、そうだが……」
一夏の勢いに気圧され、少し狼狽えてしまう。だが当の一夏は、このクラスに俺というもう一人の男子が来たことがよほど嬉しかったらしく、いい笑顔で俺と握手をするのだった。
「俺は織斑一夏だ、一夏って呼んでくれ。よろしくな!」
「……レイでもオルタネイトでも好きなように呼んでくれ。ま、よろしく頼むよ」
「俺もまだここに入学してから長くはないけど、困ったことがあったら何でも言ってくれ。同じ男として力になるぞ」
おお、中々に好意印象を持てるじゃないか。初対面だというのにこうも親身になってくれると、ついつい頼ってしまいそうになる。
「いや正直参ってたんだ。流石に身の回りに男が一人もいないっていうのはしんどい」
「確かにな……これは気が滅入るな」
変わらず周囲から好奇の視線を注がれる俺と一夏は、ヒソヒソと耳打ちするように会話を続ける。まさに、この状況が気が滅入るというものだ。
しばらくは周りで俺と一夏の一挙動までに注目していたクラスの女子たちだったが、その内人だかりは徐々に解散していった。すると、その人だかりの中に一人、一際目立つ雰囲気の少女がいた。
長くロールした金髪、他の生徒たちとは違う高貴な雰囲気、彼女のことは知っている。事前にクラスメイトのことは調べていたが、その中で俺が注目する人物の一人だった。
「お話が盛り上がっているところ申し訳ありませんけど、よろしくて?」
「……いいとも、イギリスの代表候補生、セシリア・オルコットさん。数少ない"専用機持ち"に出会えて光栄だ」
「あら、わたくしのことをご存知で?」
「クラスメイトに代表候補生がいれば、多少は調べるよ。あんたはイギリスでも中々に有名人みたいだしな」
俺と一夏の会話に割って入ってきたのは、イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコット。金髪碧眼な美女である彼女は、高貴な雰囲気なだけでなく本当にイギリス貴族の家系らしい。
そして、競技用とはいえISという超兵器の携帯を許された"専用機持ち"でもある。候補生とはいえ国の名を背負うだけのことはある、ということだ。
「コホン、改めて自己紹介だけはしておきますわ。わたくしはセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですの。よろしくお願いしますわ」
優雅な一礼とともに挨拶をするセシリア、中々どうして10代の少女にしては様になっている。そのせいかずっと年上の女性にも見える、しかもナイスバディだしな。
「なあ、セシリア。なんか俺と初対面の時とは反応が違くない?」
「あ、あの時の私はまだ一夏さんを……って何言わせてるんですか!」
顔を赤くして慌てふためくセシリア、一夏はよく分からないといった顔をしているが。
(ほうほう……こいつらそういう関係なのか)
「そ、それよりも! レイ・オルタネイト、貴方に聞きたいことがありますの」
「聞きたいこと?」
「単刀直入に聞きますわ……貴方は一体何者ですの? 三日前のあのニュース、あまりの情報の少なさにガセだったのではと言われたほどですの。貴方がどこの国出身なのか、そのISをどこから手に入れたのか全てが謎。だから貴方に問いますわ、貴方が何者なのか、と」
おっと、これはいきなり痛いところを突かれてしまったな。公開された情報に俺と束の関係性については述べられていなかったからな。
新しいISは束にしか作れないのだから、俺と束の関係が露見するのは時間の問題だ。俺が言わなくても勘付くものはいるだろう。なら、先に教えてやっても同じことか。
「俺の立場もあるからな、答えられるのは一部だけだ。それで納得してくれよ」
俺が口を開こうとすると、またもや周りが人垣に覆われていることに気付く。皆が俺の次の一言に注目している。なんて喋り辛い。
「俺のISは束博士のお手製なんだ。まあ色々あって死にかけていたところをあいつが……篠ノ之束博士が助けてくれたんだよ。そこからは紆余曲折あってここに来たわけだが」
「束……博士……⁉︎まさかあの天災と謳われる……⁉︎」
「天才じゃなくて天災か、確かにそっちの方がしっくりくる」
「あの人が他人に興味を持つとか……マジか⁉︎」
「うそ……あの束博士と……ってこれ、そんな易々と口にしちゃっていいの⁉︎」
多種多様な反応を見せるクラスメイトたち、しかし、その中で一人だけ違う反応を見せるものがいた。人溜まりからも離れて、他の人たちとは違う表情を見せる彼女。
長い黒髪をポニーテールに束ね、鋭さを凛々しさを感じさせる眼光をした彼女は俺にとっても重要な存在だった。
「篠ノ之って……もしかして篠ノ之さんと関係が?」
クラスメイトの一人がそう話を振る。だがそれを聞くや否や、怒気を発しながら立ち上がると──
「あの人は! ……私には関係ない……!」
そう言って教室から出ていってしまった。うむ、これは束から聞いていた通りの、いやそれ以上の嫌われっぷりだな。篠ノ之束の妹、篠ノ之箒、か。
(クラスも、篠ノ之箒も、束の名前が出ただけでこの反応か……やっぱり有名人だねぇ、アイツは)
それからも、俺は織斑千冬が教室に入ってくるまで、またもやひたすらに質問責めを受けるのだった。なお、織斑千冬には安易に自身のことを話したとして、制裁の拳を食らったことをここに記しておく。
──
IS学園の生徒の殆どは、学園内の寮という場所で寝泊まりするらしい。初めはホテルのようなものだと思っていたが、なんと二人で一部屋、つまり同居人がいるそうだ。
だが、ここでこの学園の殆どは女子だということを思い出して欲しい。そして俺は男だ、年頃の女子を男と一つの部屋に同居させるか? いいや、普通はそんなことしない。
だから、俺の同居人は織斑一夏になる。接しやすそうないい奴だったし、そんなに気を張ることもない。そう思っていたのだが……
「ごめんなさい! オルタネイトくんと織斑くんを同じ部屋にするにはもう少し調整しなくちゃいけないんですぅ! ……ルームメイトの方とは仲良くしてくださいね」
……と、山田先生に言われてしまったのだ。つまり、俺はしばらくは部屋で一人暮らしだ。あれ、ルームメイト? ははっ、そんなことあるわけないじゃないか。
「ないない……ないよな? 山田先生がルームメイトとか言ってたのは気のせいだろ、うん……」
山田先生から受け取った寮の鍵を弄びながら、自分に割り当てられた寮の部屋を探す。本当はリーゼに記憶させた学内マップを頼りに、学内の探索でもしようかと思っていたのだが、どこへ行っても色んな人に絡まれるので堪ったものじゃなかった。
一夏に案内を頼もうとも思ったが、あいつはセシリアにIS訓練をすると連れていかれてしまった。まあ、寮に行くだけなら、それこそリーゼの案内だけでも済んだからいいが。
「ここらへんか……そういえば、サラはちゃんとクラスに馴染めてるのかな。リーゼ、あいつの部屋の場所も聞いてるだろ?」
「はい、サラの部屋は1037室。パイロット、あなたの部屋は1026室、織斑一夏の部屋は1025室となります」
「一夏の部屋の隣なのか、そりゃ都合がいいな。おっと、この部屋か」
俺に割り当てられた1026室、その隣には一夏の部屋である1025室。しかしよく見てみれば、1025室の扉にはささくれ立った大きな穴が空いているではないか。
(おいおい、なんで一夏の部屋の扉にこんな豪快な穴が空いてんだ。こりゃ内側から開けられてるな)
何故こんな穴が、と疑問に思っていると、その疑問に答えてくれると言わんばかりのタイミングで1025室の扉が開く。中から出てきたのは……
「む、お前は……」
「……篠ノ之箒? なんでこの部屋に……いや、まさか一夏のルームメイトなのか……」
1025室から出てきたのは、あの篠ノ之箒だった。ということは、一夏はこいつと一つ屋根の下で一緒に生活しているといことか。
「一夏の奴……セシリアだけでなく束の妹まで手を出してたのか。見かけによらずやるな」
「お、おい、何故いきなり一夏の名前が出る! 私は別に……あいつとは……」
顔を真っ赤にして俯く篠ノ之箒、束と違ってちゃんと恥じらうところは好感が持てるな。束が顔を赤くするところなんて想像もつかない。
にしても、やはり姉妹というべきか。こいつと束は結構似てるな。顔つきとか目元とか、あとはナイスバディなところとか。
「……さ、先に言っておく! 私はお前を信用してない、どうせあの人の命令で送り込まれて来たのだろう! 一体何を企んでいる!」
ビシリと指先を突きつけてくる篠ノ之箒に、思わずたじろいでしまう。しかも全くの図星なので、言い訳もできない。
「あぁ、うん……その通りだ、俺がここIS学園に来たのは束の命令だよ。一夏とお前を守ってやってほしい、ってな」
「……!」
「一夏もお前も色々と特殊な立場だからな。余計なお世話かもしれんが勝手に体張らせて貰うぞ、こっちも事情があってな」
束から聞いたが、束がISを開発したが故にその家族である箒らは、国の要人保護のために今までの生活を無理矢理に変えられてしまったそうな。
織斑一夏とは幼馴染らしい。そんな幼馴染とも強制的に離れ離れにさせらたために、束を恨んでいるんだろうな。
「何を今更……あの人の手助けなんて必要ない! あの人は……姉さんは……!」
「……あー、初対面でいきなり爆弾投下しちまって悪かったな。一夏は……あいつはいい奴そうだし、好きに相談なりなんなりしてくれ。だが、口外はあまりしないでくれよ?」
まだ何か言いあぐねている箒だったが、これは姉妹二人の問題でもある。だから俺はこれ以上口出しはしないし、するつもりもない。
最後に軽く会釈だけしてから、俺は自身に割り当てられた1026室の鍵を開けて中に入る……が、そういえば聞くのを忘れていたが、あの扉を壊したのはやはり篠ノ之箒その人なのだろうか? 束もあんな見た目で、めちゃくちゃ強いからな。妹が生身で人外じみた強さでも違和感はない。
「それはさておき、ここが俺の部屋か。中々に快適そうな部屋……んん?」
部屋は人二人が暮らすには十分なほどの広さ。各種家具も上等そうなものだ。ベッドもこの前借りたホテルのものより寝心地が良さそうに見える。
しかし、そのベッドにだな。その、なんだか可愛らしいものが布団にくるまっているんだが。あれは何だ、着ぐるみか? でなきゃあんなキツネみたいな耳が生えるわけないし。
むにゃむにゃもう食べれないよー、だのと随分とテンプレな寝言を零しながら寝ぼけるキツネ娘。まさかこいつがルームメイト? いやいや、まさかまさか。そんなことあるわけないだろ。ないだろ? ないと言ってくれ!
「くっ……こいつののほほんとした気配……! 寝ているだけだというのに、こいつ只者じゃない……!」
山田先生が言ってたことは冗談じゃなかったのかよ。じゃあ何だ? これからはコイツと一緒の部屋で寝泊まりしろと? そういうことかオイ。
「パイロット、脈拍が激しく増大しています。落ち着いてください」
「ば、馬鹿野郎、俺はべ、別に……」
「ふわぁっ……うーん……ん?」
「あっ」
欠伸をしながら体を起こすキツネ娘。あまり気味の袖で目を擦りながら、ぼんやりとした表情をこちらに向ける。俺もキツネ娘もしばらく何も言葉を発しなかったが──
「お〜レイレイだ〜」
──とキツネ娘は顔を綻ばせるのだった。何だレイレイって、俺のことか?
「随分とチャーミーなあだ名で呼んでくれるな……それで、君は人の部屋に勝手に上がり込んでいるだけの余所者だったりするのか。もしそうなら自分の部屋に即刻帰りたまえ」
「えー、ここ私の部屋だけど。私はねー布仏本音っていうんだよ〜、これからよろしく〜」
「や、やっぱりお前がルームメイトになる、ってことなのか。マジかよ……ん? 布仏?」
布仏、聞いた名前だな。一応、クラスメイトや俺が関わるであろう人物については軽く調べておいたのだが、布仏という名はどこかで聞いたような。
何だったか、こいつの肩書に生徒会書記とあったから、そこが気になっていたんだったな。生徒会、生徒会……生徒会?
「……あっ、思い出した! お前、生徒会に布仏虚っていう姉妹がいるだろ」
「お姉ちゃんを知ってるの?」
「やっぱりか……っていうことはこの部屋割りは生徒会長の仕業だな! さてはお前、俺の監視を任されてるだろ?」
「な、何のことかな〜……」
「……嘘つくの下手だね、お前」
ルームメイトが監視役とは、こりゃまた窮屈な感じになりそうだな──と思ったが、この布仏本音の緩い感じだと監視された気もしないな。監視役だったことも速攻でバレてるし。
「私はレイレイが変なことしたら知らせて、としか言われてないよ?」
「変なこと?」
「例えば〜……レイレイが私の着替えを覗いちゃったとかー、間違えてお風呂場に入ってきちゃったりとか!」
「しねぇよ! お前みたいな小娘はだなぁ……」
「レイレイのエッチ〜」
「……」
えへへー、と気の抜けた笑顔を浮かべる布仏本音。なんだか調子狂うな、こいつ。い、言っておくが、今更女性の肌に動揺するほど俺はウブじゃないぞ。ホントだぞ!
むしろそんな機会があったらじっくりと──おっと危ない、そういう話を女の子の前でするのはよろしくないな。
「パイロット、あれだけ動揺していては、まるで説得力がありません」
「……それは言うんじゃないよ」
「おお〜、やっぱり喋るISって凄いね〜」
興味の矛先をリーゼに変えた本音は、間延びした口調でリーゼに色んなことを聞きだす。リーゼは機械的に返答するだけだったが、それでも本音は楽しそうだった。
「ねえねえ、リゼっちはどんなことができるの?」
「演算からシミュレート、パイロットの体調管理、戦闘時のサポートなど、私の役目は多岐に渡ります」
「好きな食べ物は〜?」
「私は食事を必要としません」
「私はね〜おやつのポテトチップスが好きなんだ〜」
誰もそんなこと聞いてない! と横から突っ込みたくなる。会話が成り立っているのか成り立っていないのか、よく分からない。そんな会話が、来訪者を告げるノックの音が聞こえるまで続いたのだった。
「む……布仏本音、お前の客じゃないのか?」
「レイレイのお客さんじゃなくて? とりあえず入ってもらおうよー」
「俺が開けてくる、リーゼとお前のおしゃべりは一旦終わりだ」
部屋の扉を開けに扉まで向かうと、なにやら扉の向こうが騒がしい。もしや部屋まで押しかけてきたのでは、と思ったが、声の中には一夏の声も聞こえる。
それ以外にもセシリア、あとは篠ノ之箒。もう一人いるがこの声は……そうか、わざわざ様子を見に来たのか? どうやら心配をかけてしまったようだ。
「今開け……うおっ!」
俺が扉を開ける前に誰かが扉を押し開けて飛び込んでくると、そのまま俺に抱きついてきた。そんな様子を、開けた扉の先で一夏、箒、セシリアの三人が、少し驚いた表情で俺を見ているのだった。
「兄様! お変わりはなかったですか?」
「心配性だな……そういうお前こそ、新しく始まった学園生活はどうだ?」
「私は兄様にお会いできなかったのが、少し寂しかったのです……」
「……正面きってそんなこと言われると恥ずかしいんだ、やめてくれ。ああ、悪かったって。だからそんなしがみつくなって」
部屋にやってきたのは一夏たちとサラだった。俺は気恥ずかしいと思いながらも、サラの頭を軽く撫でてやる。
だがそれをしてから、目の前にいる一夏らや後ろから布仏本音がじっと俺たちを見ていることに気づく。
「おー、もしかして二人って兄妹? 熱々だね〜」
「……あわわ……! ごめんなさい、兄様!」
本音にからかわれて慌てて俺から離れるサラ。りんごのように顔を真っ赤にして恥ずかしがる姿が気に入ったのか、本音はサラに抱きついて目一杯頭を撫で回していた。
「その娘、レイの妹だったんだな。さっきアリーナの方で人を探してる、って声かけられてさ。一緒にレイを探してたんだ」
「そうか、そりゃ手間かけたな。ただ、俺とサラは血は繋がってな……いけど。まあ、妹みたいなもんだな、うん」
「それでさ、レイの妹から色々聞いたんだけど千冬姉が……その、色々と乱暴だったみたいでさ……なんというか、悪いな」
一夏は少しバツが悪そうに謝ってくるが、あれは俺にも非があるのだ。確かに、あの鉄拳が気軽に飛んでくるのは堪ったものじゃないが。
あれはいわゆる愛の鞭というやつなのだろう。俺も訓練兵時代は、ああやって教官にしごかれた。それこそ、あっちの世界で俺がこれくらいの歳だったころの話だ。
「お前の姉はすごい人だよ、剣一本で世界のてっぺんをもぎ取るんだからな。あんな真っ直ぐで美しい太刀筋、他にはない。思わず見惚れたぐらいだ」
「ああ、俺の自慢の姉だよ……って、レイは千冬姉と戦ったことがあるのか⁉︎」
「模擬戦として、いや、転入試験的な感じだな。一戦交えさせてもらったんだ。剣一本で戦う、っていうのがちと無理があったなぁ……」
「……」
俺が織斑千冬と戦ったという話を聞いた一夏は、途端に表情が変わる。少し陰を含んだ、しかし、強い意志がある、そんな顔だ。どうやら一夏もただの優男ではないらしい。
中身はいい歳したおっさんなだけに、こういう前途有望な若者が思い悩み、一丁前に難しい顔をしているのを見るのは、なんだか保護欲を掻き立てられるというかこう、後ろから見守ってやりたくなるな。
「……気付けば随分と周りが騒がしくなってしまったな」
一人感慨に耽っていると、周りが先ほどの教室みたいに、またもや人だかりができてしまっていた。その真ん中で、本音に弄られ続けるサラ、周りで微笑んでいるセシリア。
箒だけは渋い顔をしていたが、彼女らはいろんな意味で注目を集めているのだった。
なんだかんだでサラも馴染めているようでよかった。それにしてもこの騒がしい感じ、ミリシアにいた頃を思い出す。あの頃も、戦闘が終わった後は仲間たちとああやって騒いだもんだ。
(懐かしいもんだ……だが、ここは戦場じゃない。あの張り詰めた空気とは違い、農家みたいに長閑なもんだ。でもこういうのも……)
いや、強いて言うのなら酒やタバコがあれば完璧だったのだが。今は学生の身だ、そこは我慢しなきゃな。
「それでも悪くない……まったく、いいもんじゃないか」
どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!
一度お兄ちゃんと呼んでみてくれないか?
全力でお兄ちゃんを遂行する!
……最近のお気に入りです