カズマさんならろくでなし相手でもやっていけそうだと思った
「夢咲 永久さん、ようこそ死後の世界へ。あなたは、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです。
にしても女みたいな名前してるわね…」
気が付くと私は、小さな机と椅子がポツンとあるだけで、周囲には真っ暗な空間が広がるだけの異様な場所にいた。
「私の名はアクア。あなたのように、日本において若くして死んだ人間を導く女神です」
目の前には、自らの死を伝えてきた相手…水色の長い髪、瞳を持つ人間離れした美貌の美少女がいた。
なんかいきなり失礼なこと話言われた気がするが、気のせいだろう。そうに違いない。
…あれか、これは夢だな。
“死んだ“と簡単に言われたが、自分にはそうなった記憶も、そうなり得る理由に心当たりもない。
なにより話がテンプレ的すぎる…そう考えていると、声をかけられた。
「私の言ったことを疑っていそうな顔してるわね。夢だと思っているなら一応言っておくけど、あなたが死んでしまったことは紛れもない事実よ」
「マジですか…」
「大マジよ」
「死因が思い当たらないんですが…」
「睡眠時無呼吸症候群ってやつ。あなた寝る時、いびきかいてるでしょ。あれが原因よ」
顔に出したつもりはないが、考えを見透かされ死因さえ言われてしまった。意外と人生の終わりとはあっけないものなんだな。親父、お袋先立つ親不孝な私をお許しください。
死んだというのに案外冷静なのは、この状況に現実味がないからか…それとも自分が現実を直視できていないだけか…
「意外と冷静なのね。そっちの方が手間が省けるからいいけど。
さて話を戻すわね。死んだ人間には、その後についてふたつの選択肢があります。
人間として生まれ変わり新たな人生を歩む、もしくは天国でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか」
「お爺ちゃんみたいな暮らしっていうのはどういう?」
「天国っていわゆる楽園的な場所じゃなくて、何も無いのよ本当に。できることといったら、ひなたぼっこくらいなものだし」
無間地獄かよ。いや人がいるだけマシなのか?
なんにせよ、天国は選択肢から外れる。
…となると必然的に答えはひとつだけなのだが。
なんというか、どっちも選びたくない…
「正直どっちも選びづらいわよね?そこでみっつ目の選択肢よ!
あなたファンタジーな異世界行ってみたくない?」
「異世界ィ?」
なんでも、そこは魔王の脅威にさらされ魔王軍に殺された人々が生まれ変わることを拒むせいで、人口が減少。
滅亡の危機に瀕しているらしい。
そこで別世界の人間に能力や武器なんかを与え、送り込んでしまおうとのこと。
移民政策をしつつ、あわよくば魔王を倒してもらえると。
「テンプレ的なあれですか」
「いわゆるテンプレ的なやつよ。特典はこれを見て選びなさい、もちろんそこに書かれているもの以外でも要望があれば聞くわよ」
女神に差し出されたカタログを受け取り、目を通す。
見るからに強そうな能力や装備なんかが載っている。がいまいち琴線に触れるものがない。
というか、今までこんなチート能力持ちを送り込んでもいまだに魔王を倒せていないことを考えると、生半可なものでは死にに行くようなものなのだろう。
ここで私に電流走る…
「あの、特典ってここにないものでも大丈夫なんですよね?」
「ええもちろん、なにがいいの?」
「それなら…」
女神に自分の要望を伝える。なんとなく怪訝な顔をしていた女神だったが面白そうに笑みを浮かべる。
「それくらいなら問題ないわね。それじゃ、この魔方陣の中央から出ないようにしてちょうだい」
そういわれた直後、自分の足元に青く光る魔方陣が現れる。
「そうそう言い忘れてたけど向こうの言葉や文字は神々の力で一瞬で習得できるから心配いらないわよ。運が悪いとパーのなるかもだけど」
「おい今あんたなんつった、めっちゃ重要なこと言われた気がするんだが」
「それでは、あなたをこれから勇者候補の一人として異世界に送ります」
「無視かよおい」
なんかこの女神ほんとに大丈夫なのだろうか、ずっとアレな雰囲気がしてるんだが…気にしたら負けか。
「魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けます。世界を救った偉業をたたえ、どんな願いでもたった一つだけ叶えてあげる。
数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒すことを願っているわ!」
薄くなる意識の中、厳かに女神に伝えられ、私は明るい光に包まれた…
石造りの街中を、馬車が音を立てて進んでいく。車も電柱もなく、レンガの家々が並ぶ中世ヨーロッパのような街並み。
そこにいる銀色の長髪魔術師は誰でしょう?そう私です。(ろくでなしの旅々)
私が女神に頼んだ特典、それは自分をFateのマーリンにしてくれというものだ。
マーリンというキャラ自体が好きだったし、もともと私は物語においてハッピーエンドが好きなのだ。
魔王を打ち倒す英雄を作り出し、どや顔で王の話をするという自分。
実に楽しそうじゃないか!
…ただ私の知ってるマーリンは、男だったはずだ。
見下ろすと視界には二つの肉の塊。確かに存在していたはずの息子もいつの間にか行方不明になっている。
「なんで女になっているんだろうね…」
思わず愚痴が漏れ出る。やはりあの女神に感じたアレな雰囲気…ろくでもない感じは気のせいじゃなかったようだ。
まぁ、いいだろう。なんならこっちのほうがおもしろいかもしれない…
性分だろうか…街を歩きながら、そんな楽観的な考えを浮かべていた。
「いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞ!」
店員さんが愛想よく出迎えてくれる。
私は現在テンプレよろしく『冒険者ギルド』なる施設に来ていた。ここで冒険者登録をはじめ、仕事の斡旋などの支援をしてくれるそうだ。
新参者だからかそれとも私の容姿ゆえか、注目を浴びながら奥のカウンターへ向かう。
先ほど確認してみたが、私の姿はマーリンの女体化…というよりはプロトマーリンそのものだった。
もしかしてあの女神、マーリンと言われたからろくに調べもせずに適当にしたんじゃないだろうな…
考えたところで無駄か、今度会ったらただじゃ置かない。
「はい、今日はどうされましたか?」
「冒険者登録がしたいんだけど」
「はい、それでは登録料が必要ですが大丈夫ですか?」
「これで足りるかな?」
ここに来る際、話を聞いた通行人にもらったお金を渡す。初めに最低限の金すらくれないあたり、不親切極まれりといったところだろうか。現地の人のほうがよっぽど親切だとは。
やっぱだめだわ、あの女神…
「はい確かにちょうど受け取りました。
では冒険者について簡単に説明させていただきます。冒険者に各職業というものがございます。こちらが冒険者としての身分証明書…冒険者カード。これに冒険者としてのどれだけ討伐を行ったかが記録されます。
レベルアップで得たポイントでスキルを覚えることもできるので、頑張ってレベル上げをしてくださいね」
なるほど、聞いてはいたが本当にまんまゲームなんだな。わかりやすくていいか。
突っ込むのは野暮というものだろう。
「それではこちらの水晶に手をかざしてください」
ハイテクなのかローテクなのか、急にわからなくなった。文明レベルが謎すぎる。魔法がある世界だし独自の変化を遂げているのだろう。
「ユメサキ トワさんですね。魔力、筋力、知力が非常に高く、敏捷性が平均より低い以外は他は平均的ですね。素晴らしい数値です!これならアークウィザード、ソードマスター、アークプリーストをはじめとしたほとんどの上級職になることができますよ!」
さすがはマーリンのスペックだな。人格はともかく最高レベルの魔術師は伊達じゃないということか。
ただマーリンである以上、魔法職は確定として…プリーストは個人的にイメージと違う。
となると…
「アークウィザードになるよ」
「アークウィザードですね。依頼はあちらの掲示板から受けることができます。それでは良き冒険者ライフを!」
こうして私の異世界生活がスタートしたわけだ。
続くといいですね(他人事)
1話2000文字前後で投稿中ですが、くっつけられそうな話はくっつけるべきか
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このまま現状維持
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合わせて長めにする