「くっ、うぅ……、ぐすっ…。生臭いよう……生臭いよう……」
粘液まみれで泣きながら歩くアクア。
「…カエルの中って、臭いけどいい感じに温いんですね」
「知りたくもない、そんな知識」
「ここまでいらないと思った情報は初めてだよ…」
同じく粘液まみれでいらない知識を披露してくるめぐみんは、私の背におぶさっていた。
無事…というべきではないだろうがクエストを完了した私たちは、夕日に照らされる街を歩いていた。
まさかカエル相手にあそこまで苦労させられる羽目になるとは…
「爆裂魔法は緊急の時以外禁止な、これからは他の魔法で頑張ってくれよ」
「私も賛成だね、今回は助けられたからよかったものの、相手によってはどうなるかわからないよ?」
あの魔法は駆け出し冒険者としてはいくら何でも過剰火力すぎる。
いざというときの緊急措置にしてもらうのがいいだろう。
「使えません」
「…は?今なんて…」
カズマに聞き返されためぐみんが、肩をつかむ手に力を込める。
「私は爆裂魔法しか使えないんです。他には一切魔法は使えません」
「冗談…ではなさそうだね、この感じは…」
「大マジですとも」
泣きながらついてくるだけだったアクアがようやく口を開く。
「えっ、爆裂魔法が使えるレベルなら他の魔法だって使えるでしょう?
私なんか宴会芸スキルを習得してから、アークプリーストの全魔法を習得したし」
「宴会芸スキルって何に使うんだ…」
爆裂魔法のバカげた威力を考えると、必要なスキルポイントも相当だろう。
そこまでのレベルがあるならほかの魔法を使えてもおかしくはないと思うんだが…
あとカズマ、宴会芸スキルなんてもう突っ込んだら負けだと思うよ。
「私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。
爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです、爆裂魔法だけが好きなのです」
「何が違うんだいそれらは?というか人の背中で暴れないでくれ」
めぐみんは私の言葉を無視して話を続ける。
おとなしくしてくれた辺り話は聞いているようだが、あくまで質問に答えるつもりはないようだ。
「もちろん他の魔法も覚えれば楽に冒険はできるでしょう、でもダメなのです。
私は爆裂魔法しか愛せない。たとえ一日一発が限度でも…魔法を使った後に倒れるとしても…
それでも私は、爆裂魔法しか愛せない!
だって私は爆裂魔法を使うためだけに、アークウィザードの道を選んだのですから!」
「素晴らしい!素晴らしいわ!非効率ながらもロマンを追い求める姿に私は感動したわ!」
薄々感付いてはいたが、この子もダメな系統の魔法使いだったようだ。
なにやら
誰だ優秀とか謝っておこうとか言ったやつ、ぶん殴ってやる…
紛れもなくボクだね、うん。自分には人を見る目がないのかもしれない。
「そっかー!たぶん茨の道だろうが頑張れよー!ギルドに着いたら報酬は山分けにして、機会があればまた会おう!」
何かを誤魔化す様な笑顔のカズマがそんな言葉を投げかける。
これ以上問題児は手に負えないと悟ったのか、体よく厄介払いをしたいんだろう。
私としてはめぐみんは見た目は可愛らしいし、なんかこれから面白くなりそうな気がするのでいても構わないんだが。
「わが望みは爆裂魔法を撃つことのみ。何なら、無報酬でもいいと考えています。
そう、アークウィザードの強力な力が今なら食費と雑費だけで…
これはもう長期契約を交わすしかないのではないだろうか」
「いやいやいや、その強力な力は駆け出しの弱小パーティには宝の持ち腐れだ。
俺たちにはトワさんもいるし、ほかのパーティーで爆裂魔法の力を発揮するといい」
そそくさと歩いていこうとするカズマの手を、めぐみんが掴んで止める。
「いえいえいえ、私も上級職ですけどまだレベル6ですから。駆け出しでも弱小でも大丈夫です。
ですから私の手を引きはがそうとしないでほしいです」
「いやいやいやいや、一日一発しか使えない魔法使いとかないわー」
「もうどこのパーティーも拾ってくれないのです!
お願いですから、私を見捨てないでください!荷物持ちでも何でもしますから!」
「ん?今なんでもするって…」
「なんであんたはそこに食いつくんだよ!」
めぐみんの手を緩めようとするカズマと意外な握力でカズマを掴んで放さないめぐみんが、街中にも関わらず大声で言い争う。
というか粘液まみれの状態でそんな暴れると
「ちょっ、やめてよ顔にかかってる」
そう周りに粘液が飛び散るのだ。当然そんなめぐみんを背負っている私にも隣を歩くアクアにもその被害は及ぶ。
「いい加減にしないかい。
パーティー継続か解散かどちらにせよ、こんな街中でそんなことを言っていたら…」
大声で捨てないでだの叫んでいたためか、気が付けば結構な注目が集まっている。
私やアクアが目立つせいもあるだろう。
「…やだ、あの男小さい子を捨てようとしてる!」
「隣には粘液まみれの女の子を二人も連れているわよ!」
「あんな小さい娘を弄んで捨てるなんてとんだクズね!」
「見て!女の子はみんなヌルヌルよ!いったいどんなプレイをしたのよ、あの変態!」
「ち、違ああああああう!」
あらぬ誤解を受けてしまったようだ。必死に否定をしているが、この状況下ではどうしてもカズマが悪役になってしまうだろう。
それを聞いていためぐみんは何かを思いついたようににやりと口元を歪める。
ここらで助け舟を出してあげた方がいいのは分かっているのだが、面白そうなので放置することにした。
「どんなプレイでも大丈夫ですから!先程のカエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ…」
「よーし分かった!めぐみんもトワも、これからもよろしくな!」
口を押えられためぐみんとそれを背負う私に、カズマはパーティー合格の意を伝える。
こうして私とめぐみんは、カズマのパーティーに仲間入りした。
嘘じゃなかったです
私えらい
あとエイプリルフールの午前中のやつって英国の文化らしいっすね