「おいフィン、今日はお前の好きなミートローフを作ってやったぜ」
「やったー! 僕ミートローフ大好き!」
フィンが素早くソファに座り、ナイフとフォークを持った両手の拳をテーブルにドンドンと叩きつけて「ジェイク、早く早く!」と呼んだ。
「まあ焦るなって、ミートローフは逃げやしねえ」
ジェイクがそう言った瞬間、皿の上に乗っていたミートローフは飛び上がり、床を走り出した。
「ミートローフが逃げ出した!」
「大変だ、追え!」
ふたりとも走り出し、ミートローフになんとか追いついた。
フィンは取り出した剣でミートローフを切り裂く。
「えいやっ!」
「ナイスだフィン!」
半分になったミートローフは、それぞれバラバラの方向に走り出す。
「最悪だフィン! ミートローフが分裂した!」
「どうしようジェイク!」
慌てるふたりの元に、さらに慌てたビーモが走りこんできて、「大変だよ!」と騒いだ。
「バブルガムから連絡だよ! 世界を滅ぼす悪魔が復活しちゃったんだって! それは死んだ肉の中に潜んでるらしいよ!」
「ジェイクが作ったミートローフだ!」
「そうに違いねえ!」
「やあ! とう!」
フィンがミートローフを二度斬りつけると、ミートローフは四片になってそれぞれに走り出した。
「ダメだフィン、切れば切るほど分裂しちまう!」
「どうしよう!」
フィンの家の窓から、するりと青い影が入り込んでくる。
「ようフィン、ワシが遊びにきてやったぞ〜」
「アイスキング、今構ってる暇はない! ミートローフで手一杯なんだ!」
「なんじゃと! ワシを無視するなど! ミートローフに一体どれほどの価値があると……おおうまそうじゃな、一口いただこう」
床を走り回るローストビーフを捕まえて、アイスキングは口に放り込んだ。
衝撃を受けた顔でフィンとジェイク、ビーモがそれを見つめる。
「あー……アイスキング? 体に異常は?」
「そうじゃな、まだ満腹には程遠いの」
フィンとジェイクは顔を見合わせ、頷いた。
「じゃあもっと食べなよ!」
「そうだぜ、オレの特性ミートローフだ。自信作だぜ」
「おお〜そうかそうか。お前たちもワシに会うのが楽しみで料理でもてなしてくれるというわけじゃな」
家中を駆け回るミートローフを素早く捕まえて、アイスキングの口の中に次々と放り込む。
「うーむ。満足じゃ……グーグー」
「やったねジェイク! 世界を救ったぞ!」
「おう!」
満腹で居眠りを始めたアイスキングを眺め、フィンとジェイクはこそこそ相談した。
「で、アイスキングはどうする?」
「うーん、外に捨てちまうか」
アイスキングのグーグーといういびきが、いつのまにがグオオグオオという唸り声へと変化していった。
むくむくとアイスキングの体が膨れあがり、凶悪な顔つきへと変わっていく。
「フハハハハ! ようやくこの世界でまともな体を手に入れたぞ! 世界を滅ぼしてやる!」
「うわあ! アイスキングの体が乗っ取られちゃった!」
「大変だ! さすがのオレたちでもアイスキングは殺せねえ!」
瞬間、フィンとジェイクは真顔で見つめあった。本当にそうか? という顔である。
「フィン、ジェイク、どいて!」
扉を慌ただしく開けて飛び込んできたのはバブルガムその人だった。
防護服に身を包み、背負った掃除機のような機械でアイスキング——の中にいる悪魔を吸い込んだ。
「ふう、これで大丈夫。お手柄ねフィン、ジェイク。悪魔をひとところにまとめておいてくれてありがとう」
「どういたしまして」
ジェイクが息を飲んで驚いた。
「大変だフィン!」
「どうしたのジェイク!?」
「オレたちのミートローフがなくなっちまった!」
「安心して。わたくしのお城でパーティをしましょう。悪魔を倒したお祝いよ」
「フゥ〜!」
喜び勇んで駆け出したフィンとジェイク、それを追って去っていくバブルガム。
ただ一人残されたのは倒れたアイスキング——いや、それだけではなかった。
「ハッハッハ……! 馬鹿どもめ、この老いぼれが強欲にもポケットの中に忍ばせて残しておいたミートローフを見逃したな! 俺はまだ封印されてはいない! ハーッハッハッハ!」
アイスキングのポケットの中に、ミートローフがひとかけら残っている。
制限時間30分で書きました。
お題として「飲食物の必須、起承転結の禁止」。
起承転結がないということはて転転転転でやればいいということだよな。アドベンチャータイムか……というそれ。