「心を折ってしまっても罪悪感を抱かない人を同行者にすればいいんですよ」からの水柱との合同任務である。
どういうこと? 水柱ってそんなに嫌われているの?
可哀想すぎて、筋肉に覆われた私の心ですらすでに折れそうなんだが?
大丈夫? この事実知ったら水柱、自分で自分に干天の慈雨しない??
「水柱、みんなから嫌われても私だけは好きでいてあげますね」
「俺は嫌われてない」
なんでそこに関しては自信あんだよ。
自分が柱をやる自信はないくせに自分の好感度に自信持つな。
アッやべ、私だけは好きでいてあげなきゃだった。早速揺らいでしまった。
まあ好きでいる覚悟より嫌われる覚悟をした方がいいんだけどな。
今日の私は一味違うぞ。
もうどんなお題が来たとしても絶対に成し遂げてやるという強い決意を抱いている。
部屋に閉じ込められないという選択肢はないんだよ! つか無理なんだよ!
足が遅ぇって言ってんだろ! クソがよ!
恒例の部屋に閉じ込められたことを認識した瞬間に、私はお題が書いてある紙を即座に拾って読んだ。
『接吻しないと出られない部屋』であった。なるほどね。
私は隣にいた水柱の胸ぐらを掴み上げた。
「!?」
そんでもって思い切り接吻してやった。
「!?!?」
ドアからガチャという音が聞こえたので問答無用で飛び出す。
少し遅れて後ろから水柱が付いて来た。
私としての全力疾走、水柱にしてはそこそこの走りをしながら、水柱が聞いて来た。
「なぜ口吸いを」
「血鬼術破るためだよお前この鬼のこと事前に何も調べてねえのか! そんなんで竈門きょうだいに顔向けできんのか!」
「!?!?!?」
アッやべ、私だけは好きでいてあげなきゃだった。また揺らいでしまった。
とにかく、この調子ならば確実に鬼に追いつけるだろう。
間違いなく今のが最速での脱出だった。部屋脱出RTA新記録更新である。
この後めちゃめちゃ生殺与奪の権握った。
※ ※ ※
「マジですみませんでした」
「……何に関しての謝罪だ」
後日、私は水柱を誘って食事処に来ていた。
鮭大根が好きだという情報は握っていたので、それが評判のお店である。
もきゅもきゅ飯を食う水柱だがこっちは食欲がない。
「先日の部屋に閉じ込めてくる鬼の件でございます」
「……過ぎたことだ」
「いやほんと、諸々申し訳ない。申し訳なさ過ぎて切腹しそう」
「するな」
端的で草。
「でももうあの鬼の被害は出ないし、きっと鬼殺隊には喜ばれますよ。あの鬼の被害者めちゃめちゃ多くて隊員の半分以上餌食になってるんで。それを倒した水柱、英雄的存在になりますね〜」
「いやだ」
拒否で草。
「とにかくこれからなんか困ったことがあればなんでも言ってください、無条件で味方しますから。水柱のファーストキッス、いやファーストかどうかは知らんけど奪った責任を取りますから」
「ふぁ……?」
「え、あざとっ。どうしたお前、突然幼女の幽霊にでも取り憑かれたのか?」
アッやべ、動揺してよく分からない質問をしてしまったし敬語が消えた。
「この件をあまり気にするな。お互い様だ」
「うーん心広い。いいや本当に、困ったら言ってくださいね。私、人と一緒に戦うのが得意な方なんですけど、その中でも水の呼吸の人とは相性がいいんですよ。ぶっ殺したい鬼がいたら呼んでください、ぶっ殺したい鬼がいなくても呼んでくださって構いません」
そう言うと、水柱は「考えておく」とだけ返した。