九条空の怪電波   作:九条空

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20191106 執筆


【鬼滅の刃】転生したら九尾になったアホの子が鱗滝左近次を妖怪仲間だと勘違いする話【5/5】

 

 久しぶりに友人を訪ねて行くため、ハチャメチャに浮かれている私です。

 

 友人っていうか親友ですね! もうね、名前で呼び合ってるのでね。

 鱗滝さんから左近次にまで進化しました。えへへ。

 

 左近次と出会ったばかりの頃は、浮かれた私は彼の周囲をちょろちょろしていたものだったが、最近はあんまりやりすぎるとウザがられるかなと思って、手紙をやり取りするだけに留めていた。

 

 しかし、ちょうどよく、というわけではないが、彼からもらった厄除けのお面が壊れてしまったので、新しいのを作ってもらいに行こうかと思い行動に移している。

 

 言い訳させて欲しいんだけど、私は左近次からもらったお面をめちゃめちゃ大切にしていた。

 それはもう、一回、自分の心臓よりもお面の方守ったこともあるくらいだからね。

 

 でもこないだ出会った人食い鬼が少々驚くほど強く、うっかり面を割られてしまったのだ。

 なんだったんだあの気持ち悪い鬼、頭から血でもぶっかけられたみたいな見た目してたけど。

 

 キューサイキューサイ鳴いてて意思疎通できなかったし、あまりにも臭かったので尻尾巻いて逃げてきた。

 

 狐面ぶっ壊されたのには激おこなので、次あったら頭蓋骨砕いてやろう。

 そのくらいじゃ死なないだろう鬼は。

 

 私は殺さないだけであって殴らないわけではないんだぞ! プンプン!

 

 

 というわけで、やってきました狭霧山。

 ここに左近次が住んでいるとは聞いていたが、来るのは初めてだ。

 

 左近次に会う前にちょっと散歩でもしようかな〜と思って山をうろうろしていたら少年2人に見つかったので超絶焦った。

 

 そういや左近次、最近は弟子をとって育ててるとか言ってたな。

 弟子というからにはてっきり天狗の子なのだと思っていたが、見た限り彼らは鼻が長くないし、多分人の子だ。

 

 ってなると、やべえ。

 何がやべえって私の顔を見られるのがやべえ。

 

 私これでも傾国の美女やってたんですよ。

 男の子2人の気を狂わすとかお茶の子さいさいすぎますわ。困りますわ。

 

 ちょっと考えて、小さい子供に変化することにした。

 

 初潮も来ていない幼子なら国を傾けるほどにはなるまい。

 

「……子ども?」

「チビがこんなところに何の用だ」

 

 左近次の弟子2人は私を見て怪訝な顔をした。

 

「ちびじゃない」

 

 幼子とはいえ顔は整っている私に対してチビとか失礼だろ。

 こいつ将来モテねえだろうなって思ったけど2人とも顔は男前でムカつくなおい。

 生まれてくる時代が時代だったらジャニーズかジュノンボーイだろこれ。

 

 顔に傷のある方が錆兎、ない方が義勇と名乗った。

 ほ〜ん、なんかハイカラな名前だね。

 左近次もなかなかイカす名前だから、彼につけてもらったのかな?

 

「お前は?」

「たまえ!」

 

 ドヤ顔で名乗ってやった。

 最近思い出したのだけれど、私がかつて呼ばれていたのはたまえではなく「玉藻前(たまものまえ)」だった。

 まァいいんですけどね! もはや玉藻前は汚名と化しているしね!

 

「さこんじに会いにきた!」

「さこ……鱗滝さんのことか?」

「うん!」

 

 なに呼び捨てにしているんだ、と錆兎の方にぐちぐち言われたが、へへんお前らより付き合い長いんだから呼び捨てにして当然だろうが〜!

 君達も左近次と100年くらいよろしくやってたら名前呼びを許可してもらえるかもな!

 

 2人に案内されてやって来たのは粗末な小屋だった。

 マジかよ左近次ってばこんなところに住んでいるのか。

 

 隙間風とか大丈夫か? 大工でも手配してやった方がいいだろうか。

 私は宵越しの銭は持たない主義だが、稼ごうと思えばすぐに稼げるので友のために動くことはやぶさかではないぞ。

 

 澄まし顔で遊郭でベンベン三味線でも弾いてりゃゴロゴロ金が転がり込んでくるのでな。

 転がり込んでくるのは金だけでなく厄介ごともなので、滅多にやらないが。

 

「……たまえ?」

 

 左近次は弟子たちに連れてこられた私を見てびっくりしたようだ。

 ふへへ、まあ会いに行くよ〜って言わずのサプライズ訪問だからな。

 

 ニコニコ笑って抱きついてやると、おずおずと左近次の手が私の背に伸ばされる。

 いつもハグすると破廉恥! とか言って怒ってたのに今日は優しいなどうしたんだ。幼女効果か?

 

 アッ優しいついでにお面ぶっ壊したこと許してくれないかな!?

 このまま勢いで白状してしまおう。

 

「さこんじ、あのね、これ」

 

 狐面の破片を取り出して見せると、左近次は硬直した。

 やっぱ怒ります〜!? ごめんよ壊したくて壊したわけじゃないんだよ!

 あの扇持った気持ちの悪い鬼が全部悪いんだ!

 

「これは……どうして」

 

 はい、言い訳させてください。

 

「鬼がね、強くてね、ばーんって割れた」

 

 言い訳下手すぎるだろ私。

 言い訳にもなってないわ、状況説明にしてもなってない。

 

 ああーっほら左近次も面の破片握ってプルプルしちゃってんじゃん!

 激おこじゃん! はわわどうしよう何もお詫びの品持って来てないわ何やってんだ私。

 饅頭とか持ってくるべきだったわ。

 

「たまえはどこにいる」

 

 は? 何それどういう質問ですか?

 急に哲学? え? 人間は考える葦である?

 

「ここにいるよ?」

 

 哲学はわからなかったので、私は自分を指差してそういうことしかできなかった。

 左近次、知らない間に哲学者になっていたのか……?

 

 まあ妖怪の生は長いからな、思考に沈む時期があってもよかろう。

 

「そうか……そうか」

 

 左近次はまた私を抱きしめた。

 エッ怒ってない!? やったー左近次から抱きしめてくれるなんて初めてじゃん。

 

 私はニコニコして左近次の抱擁を受け入れた。

 

 それから私は左近次の家に世話になった。

 お面作って欲しくて来たんだけど、まあお面なんてそんなすぐぽいっとできるわけでもないしな!

 

 好きなだけここにいるといいって言ってくれたしそれに甘んじることにした。

 

 左近次の飯はうまい。

 私は無殺生を貫く身ゆえ、肉が食べられないのだが、それでも上等なご飯を用意してくれる。

 山菜うま〜! 米うま〜! 最高かよお嫁になってほしい。

 

 

※ ※ ※

 

 

「お前、鱗滝さんへの礼儀がなっていないぞ」

 

 錆兎が目を釣り上げていたので、腹でも減ったのかとその辺で摘んだ木の実を差し出したら要らんと言われた。

 そしてそのついでにそう言って怒られた。

 

「れいぎ? なに?」

 

 私と左近次はズッ友だから礼儀もなんもないけど?

 親しき仲にも礼儀あり的な話ですか?

 

「鱗滝さんと呼べ」

「なんで? さこんじのがいい」

「鱗滝さんの方が年上なんだ。さんをつけるべきだろう」

 

 えっ。

 待って私左近次の年齢知らんのだけど?

 

「さこんじいくつ?」

「いや知らないが……だがお前よりは年上だろう」

 

 錆兎お前、見た目で年齢を決めつけると痛い目にあうから気をつけろよ。

 特に女性に対してはな?

 

「わたし……歳知らない」

 

 って言うか私は私の年齢を知らんなあ!?

 

「わたしの歳知らないから、さこんじと比べられない……」

 

 多分私は1000歳超えてるだろうけど……左近次がそれ以上いってる可能性って全然あるよな。

 は? 待て待て待て、落ち着け私。

 

 左近次から鱗滝さん呼びに戻した方がいいのか?

 ええっせっかくここまで距離詰めたのに……でも錆兎の言う通りお互いの年齢わかんないからな!?

 親しき仲にも礼儀ありと言うのであれば呼び名を改めた方がいいのか!?

 

「そのままでいい」

 

 ウンウン唸ってたら左近次からのお許しが出たので左近次のままですやったね。

 

 錆兎は「歳がわからないからって片付けていい問題じゃない」とかぶつくさ言ってたけどへへ〜んお前の師匠がそう言ってんだから従っとけば〜かば〜か。

 

 背中に向かって舌出したらなぜかバレてて頭に拳骨グリグリされて死ぬかと思った。

 お前背中に目ついてるのか? お前も実は妖怪なのか?

 

 

※ ※ ※

 

 

 ある日、錆兎と義勇が旅立つと言うので見送っていたら、2人が左近次から狐面をプレゼントされていた。

 

 私はまだ左近次に面作ってもらってないのになんで君らが先にもらってるんですか。

 はあ〜? 嫉妬なんですけど。

 

 まあしょうがないか……私のはアポなし訪問だったしな?

 知らぬ間に先約が入っていたのか……今度からはちゃんと予約してお面作ってもらおう……。

 

 それはそうと、お面は被って行くんじゃなくて胸元に入れてった方がいいよ。

 

 なんでかって?

 そりゃ男前は隠さなくていいからだよ、イケメンは顔を晒していけ。

 君らのそれは、美形は美形だけど傾国っていうほどのもんじゃないんだし、隠すのはもったいないでしょうよ。

 

 それからお面を胸元に入れておけば、いざ胸元を撃ち抜かれた時に「このお面がなければ即死だったぜ……」っていうのができるじゃん。

 

 何に撃ち抜かれるのかって? そりゃ銃……え? この時代なかったっけ? あるよね?

 私随分昔だけどみたよ、三段銃とか。

 

 は? 鬼は銃なんか撃ってこない?

 撃ってくるかもしんないじゃん、お前に鬼の何がわかるんだ。

 

 いや私はわかるよ、かれこれどれだけの鬼と出会って来たと思ってるんだ。

 銃ではないけど石を音速で飛ばしてくる鬼とかいたわ。

 

 近距離戦だけが鬼の取り柄だと思うなよ。

 いや音速だったら胸元の面なんかぶち抜いて心臓持ってかれるけどね?

 

 でも顔隠すよりは胸元守った方がいいでしょうよ。

 左近次も君らが長生きして欲しいと思ってそれ渡してるんだろうしさ。

 

 なんか知らんけど厄除けの面って言ってたもんな?

 私が左近次から面をもらった時には、そんな厄除けがどうのこうの言ってなかった気がするけど、狐面ってそう言う意味があったのか〜へ〜ほ〜ん。

 

 とりあえず面は胸元にイン。わかった?

 よしわかったなら行ってらっしゃい。

 

 っていうかそもそも何に行くんだっけ?

 え? 最終選別?

 

 ふーん、よくわかんないけどゆっくり帰っておいでな。

 それまで私は左近次と仲睦まじくしてるから。

 

 ようやく邪魔が入らず左近次と話せるよー! わーい!!

 




勘違いの話は好きなのだが、自分で書くとなるとしんどいので短いシリーズで。
この話は彼の作る厄除けの面がなぜ狐なのかというのが根本コンセプトだ。
厄除けの面として狐というモチーフはそんなにメジャーではない。
狐は豊穣の神としての顔の方が広いし、厄除けの面は厳つい方が好まれる傾向があるように思う。
まァ吉原では狐の面つけた厄払いの祭りやってたから彼がそこから知識をつけたというんであれば十分に納得できるンだがせっかくだし、狐の夢主でも用意しちゃろうかと。

これを読んだ鱗滝左近次の強火担から「私たちの出会いの話を書いてくださってありがとうございます! 彼との結婚式で流しますね!」というメッセージが来てゲロ吐きそうなほど笑いました。ぜってえその結婚式に行きてえ。
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