九条空の怪電波   作:九条空

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20210130 執筆


【呪術廻戦】寝て起きたら呪術界最強になっていたらしい息子と同い年だったんだが【1/5】

 

 転生したらめちゃくちゃキモい化物がその辺をうようよしている最悪の世界だった場合、どこに苦情を入れればいいんですか?

 

 リコールセンターどこ?

 前世の記憶を覚えたまま出荷された不具合人間がここにいるんですけど回収しなくていいんですか?

 

 そんなことを思いながら二度目の人生を惰性で送っていると、あれは確か5歳くらいのことだっただろうか。

 盛大に転び、擦りむいた膝の傷が、1分もしないうちにみるみると治っていったのだ。

 

 私はなるほどと頷いた。

 自分のことを前世を覚えたままの不具合人間と思っていたが違ったようだ。

 そもそも私、人間じゃなかったらしいな、と。

 

 どちらかというと、その辺をうようよしている化物の方がお仲間なのかもしれない。

 私を産み育てた両親は全く普通の人間のように思えるが、托卵でもなんでもされた哀れな人たちなのやもしれない。

 

 それってあんまりにも最悪なんじゃないのか?

 慈しみ育てた我が子が実は自分の子ではなく、傷が一瞬で治るような化物の体を持ち、他の人間には見えないらしい化け物が見え思考回路に至っては前世というバグが残ったまま。

 

 最悪すぎる。

 まだ小学校に入る前だからなんとかごまかせてはいるが、これ以降は厳しいだろう。

 思考回路については個人差でごまかせても、人前で怪我をすることは避けられない。

 その時に、みるみる治る傷を見られてしまえばおしまいだ。

 

 自分の娘が化物だという事実を知るくらいなら、きっと娘が自死する方がマシだろう。

 まだ両親が何も知らないうちにやってしまえ。

 

 そう思って自分で自分の首を包丁で掻き切ったのだが、傷が一瞬で治ったので笑ってしまった。

 え? 死ねないじゃん……やば……。

 

 首の傷が治った後、自分の体がニョキニョキ伸びて成人女性の体格になったのでもっと笑ってしまった。

 いや、首の傷治るのはまだわかるよ。前々から負った傷はすぐ治ってたからね。

 なんで成長しとんねん。

 脈略なさすぎてびっくりするわ。四コマ漫画でもこんなに展開飛ばねえぞ。

 

 ちなみに、これらは全て両親が留守の間にやっていた。

 両親が帰ってくると、見知らぬ血まみれの女が包丁を持ったまま爆笑している状況だったので、当然叫ばれたし警察も呼ばれた。

 

 警察には正直に話したが、やばいやつを見る目で見られて終わった。

 なるほどこれで精神病棟入りか〜! その人生のエンドは考えてなかったな〜!

 

 でもまあ、あの善良な両親が、自分の娘は行方不明になったのだってことで納得してくれるならそれはそれでいいんだけれど。

 間違っても自宅に不法侵入した頭やばそうな女がイコールで自分たちの娘だと気づいてSANチェックを入れることになりませんように。

 

 警察の次にやってきたのは、精神科医ではなく呪術師だった。

 

 その呪術師は私に色々と説明してくれた。

 この世界には呪力とかいう不思議パワーが存在し、呪力を扱える人間を呪術師と呼ぶ。

 私もその才能があり、街をうようよする化物——呪霊というらしいそれが見えるのが証拠だと。

 

 呪術師は生まれつき術式というものを持っていて、その内容は様々。

 私の場合は、「自己の最適化」というのがおそらく最適な呼び名だろうという。

 

 自分が死ぬほどの体験をしたために術式が強く発動し、傷を癒す以上に自分の体を最適の状態に——つまり、肉体の最盛期まで己の形を変えた。

 それが事の真相らしい。

 

 私はめちゃくちゃ笑った。

 

 私人間だったのかよ。逆に怖いわ。

 この世界の人間なんでもありかよ。

 

 だが、私は安堵してもいた。

 私だけがおかしいのかと思っていたがそうでもなかったのだと。

 こういうのいっぱいいるんだな? 私って世界の異物じゃなかったんだな。

 

「なるほどつまり、呪術師にとっては化物が見えるのも普通で、体が瞬時に治るのも普通ってわけですか」

「誰にでもできるわけではないが、そうだ」

「じゃあ前世の記憶があるのも普通ですか」

「は?」

 

 やっぱ私リコール対象じゃねえか。

 

 

※ ※ ※

 

 

 それから流されるままに呪術師としての道を歩むことになった私は現在華の女子高生。

 この世界めちゃくちゃ女に厳しくてウケる。

 まあ男女構わず厳しくてゴロゴロ人が死んでいくんだけれど、それにしたってあたりが強いなと思う。

 

 私よりも階級の高い男より、私の方が強いと思うんだけどな?

 不思議と全然昇級できないんだよな。

 やっぱり私のお祓い方法が拳で殴る、足で蹴る、という非常に原始的な方法一辺倒なのがいけないのだろうか。

 でもそれ以外にできないから致し方あるまいよ。

 

 というか昇級には推薦が必要っていうのが無理すぎない?

 私はそれほどコミュ障ではないと思うけれど、他の呪術師がみんなコミュ障——いや、頭のネジ飛んじゃってるやつばかりだからまるで仲良くなれない。

 仲良くなれたのは、見た目はプロレスラーだけどかわいいものが好きなパイセン1人だけである。

 

 この世界が女に厳しいなと思った理由はもう一つ。

 

「五条の宗家と結婚しろ」

「はあ……」

 

 それって高校生に言うことなのか?

 しかも任務として? 人権無視すぎるだろ。

 私16になったばっかなんだが? 法律上いけるようになった瞬間に言うことこれ?

 

「なんでそんなことしなきゃいけないんです?」

「先方が、報酬としてお前を一級術師に推薦すると言っている」

「なるほど……」

 

 そういうことしないと昇級できない世界ってわけですか。

 いや最悪だな……でもお金は欲しいな……。

 

「なんで私です? 他にも女の術師はいっぱいいるじゃないですか」

「ああ。だから他にもいっぱい嫁がいる」

「最悪すぎて笑う」

 

 え!? 今何時代だっけ!? 昭和だよな!?

 一夫多妻OKなんですか!?

 

「正確には嫁候補だ。お前の任務は最も優れた子供を産み、正妻の座を射止めることだ」

 

 そこまでしないと一級呪術師にはなれないのか。

 なんて高い壁なんだ……給料もいいらしいけど……。

 

「失敗しても怒んないでくださいよガクチョー。私に器量を求められても困るんで」

「お前には子を産む腹しか期待しとらんだろ」

「最悪すぎて笑う」

 

 確かに術式で肉体は常に最適化されてるから内蔵のどこも健康だけどォ!

 

 子供産むってなったらしばらく休学になるかもしれんし、学校で唯一仲良くしているパイセンにだけは挨拶して行くことにした。

 

「ということになったので一応報告に来ましたパイセン」

「……どう反応すればいいんだそれは」

「そうか頑張ってこいって言いながら激励すればいいんですよ、そんで呪骸くださいかわいいやつ」

 

 両手のひらを出して乞うて見たが、ぺしんと払われて終わった。ケチ。

 

「本当に行くのか」

「まあ、仕事ですし」

「その先にあるのは地獄だとしてもか」

 

 私はめちゃくちゃ笑った。

 

「この世界で地獄じゃないところがあるんです? 見たことねえなあ」

 

 目が見えるようになった瞬間から常に視界に化物うようよしてる地獄絵図だぞ、端から天国なんか期待してねえわ。

 

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