九条空の怪電波   作:九条空

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20201006 執筆


【hpmi】生き別れの父親と思しき男に娼婦として買われた話【1/4】

 なんでその人との子を産んだのかって母さんに聞いたらこう返ってきた。

 

「子供が欲しいなって思った頃にやって来た客の中で、一番お金持ってそうだったんだよね。子供にはお金持ちになって欲しかったから、お金持ちの遺伝子を受け継がせようと思って」

 

 アホじゃん。

 母さん、DNAに通帳の番号は書いていないんだぜ。

 でも私は母さんのそんなアホなところが愛おしかった。

 

 母は好き。父は知らん。

 そもそも母は父に完全に内緒で腹に種を仕込み、勝手に私を産んだらしい。

 父と寝たのも一回こっきりで、おそらく子供ができたなんて知らないだろうと。

 てか一発で孕めたの超ラッキーじゃね? などと抜かしていた。

 とんでもない女である。

 

 父が私を認知してないことになんの責任もない。

 というか認知できないだろこの手法、詐欺か?

 勝手に子供作られてかわいそうに……このまま何も知らずに生きていって欲しい……と願っている。

 

 さて、母は娼婦であったが、その子である私ももちろんというべきか、娼婦になろうとしている。

 

 母は先日性病で亡くなり、私の行くあてはどこにもなかったからだ。

 これがきちんと法体制の整った社会であれば、どこぞの孤児院にでも引き取られたのだろうが、そうではない。

 

 前の私が生きてた時代よりだいぶ後のこの世界は、とんでもない戦争があって人口が半分に減り、世界ごとめちゃめちゃになったらしい。

 前世より暴力が身近で、悲劇とご近所付き合いをしていた。

 

 今更処女なんぞ大切にしてもな、そもそも生きてなきゃなんも始まらんし。

 娼婦としてヘラヘラ生きていた母が好きだったので、自分がそうなることもやぶさかではなかった。

 

 もちろん性病で死ぬのは勘弁願いたいし、望まぬ子を孕むのも嫌だが、後者に関してはまだ生理も始まってないこの体ならセーフだろうと思っていた。

 

 あんまり先の未来を考えていても仕方がないので、この先数日を生きるために客を取ろうと街に立ったのだ。

 バージンといえばそれなりに色をつけてくれる客もいるだろう。

 

 それでとったのがこの客な訳だが。

 

「どうした嬢ちゃん、俺の顔に何かついてるか?」

 

 ついているといえばついている、目のところに傷が。

 

 緑と灰のオッドアイ、カタギじゃないことが明らかな服装と威圧感、とにかく近づいちゃやべえと思わせられる胡散臭さマックスの雰囲気があった。

 どれをとっても「売春婦として客にしたくない男ナンバーワン」という感じだったが、札束でビンタされてついうっかりホテルにもつれ込んでしまったのである。私ってほんとバカ。

 

「おじ……お兄さん、私を抱かないの?」

 

 ホテルに入ってどれだけ時間が経っただろう。

 時計なんぞ持っていないので正確な時間はわからないが、緊張からか1時間くらいは経ったように感じる。

 

 というか明らかにやばいんだよなこのおじさんと寝るの。

 歳の頃はアラサーといったところで、身体的に元気真っ盛りだろうし、そもそも身長がめちゃめちゃ高くてガタイもいいからアッチの方も大きそうだ。

 アブノーマルなプレイを要求されなかったとしても死にそうである。

 

「そう焦るなよ。短気は損気だぜ」

 

 焦っているのではなく死の恐怖を感じているだけだが、万が一今日が人生最期の日になるのだとしたら、ずっと怯えたままでいるのも癪なのは確かだった。

 

「お兄さん子供好きなの?」

「いや? どっちかっつーと苦手だな」

「草」

「あん?」

 

 しまった、草というネットスラングは多分死語中の死語なんだろう。

 母は私に言われすぎて慣れきっていたが、常識的に通じない単語だということを失念していた。

 

 さて、自己申告ではロリコンではないとのことだったが、そうなるとますます私を買った理由がわからない。

 後ろ盾のなさそうな女なら子供でも老婆でもよかったパターンだろうか?

 

 そうなるとこれから行われるのがR18ではなくR18Gになる可能性も出てきた。

 いやすぎ。帰りてえ。帰る場所ねえ。詰んだ。

 

 なんだかどうでもよくなってきて、ラブホの湿っぽいベッドに横になった。

 

「やるなら一思いにやってね」

 

 やるの意味が殺るじゃなければ一番いいんだけどなそれな。

 

 おじさんの見た目完全にヤクザなんだよな〜〜〜やっぱ臓器売買かなこれ、子供の新鮮な臓器を取り出して売るやつかな。

 頼むから麻酔使って欲しい、それか殺してから取り出して欲しい、痛いの嫌すぎる。

 

 天井を見上げながらお祈りしていると、ベッドを大きく軋ませながら男が乗り上げてきた。

 

「食われる準備は十分ってか?」

 

 食われるって性の方かな? 食の方かな? ハンニバルなのかな?

 は? 死しかねえ。

 

 目を閉じて現実逃避をしたかったが、目を閉じている間にノコギリで切り刻まれたらそっちの方が怖かったので、上から覆いかぶさってこちらを見下ろしてくるおじさんをしっかりと見つめ返した。

 

 しばらく見つめ合っていると、ドアがノックされる音がした。

 

 私は思わず肩を跳ね上げた。

 は? 追加で人来るんですか?

 初体験で輪姦!? ハードすぎるだろ、追加料金もらいたいが????

 いやもらっても嫌だが???????

 

 内心ブチ切れていると、手に大きな箱を持ったおじさんだけが帰ってきた。

 

 輪姦じゃなくて玩具の方ですか? いやにしても箱でかッ!

 アマゾンの過剰包装でもアダルトグッズにそのサイズの箱使わんでしょなに?

 

 も〜〜ほんとやだ〜〜〜!

 何するのか教えてくれこっちは人生二週目で無駄に想像力だけあるんだからさァ〜〜〜!!!!

 

 もぐもぐ。もぐもぐ。

 

「うまいか?」

「……ん」

 

 おじさんが持ってきたのは中華料理の宅配だった。

 想像力に溢れる耳年増(精神だけで言えばマジの年増)の私でも想像できなかった展開である。

 

 宅配の料理を食べるのは生まれて初めてだったが、正直いってめっちゃうまい。

 間違いなく今生で一番の美味しさである。

 

 これが最期の晩餐……? 全然アリですね。

 売春のお金を受け取っているのは私なので、私が金でキリストを売ったユダだが。

 いや、私が私自身を売っているからキリストも私……? 一人二役、お得だね。

 

 しかし、これでおじさんの目的がさらによくわからなくなった。

 臓器が目的なんだったら食事は必要ないし、多分だが性行為にも必要ないだろう。

 激しいプレイでもされたら吐く自信がある。いや、逆にそういう性癖……?

 

 というか今思いついたけど食事に睡眠薬仕込まれてる可能性があった。

 なんで半分以上食ってから思いつくんだろうな、人生二週目なのに頭悪すぎる。

 やはり私もあの母の血を引いているということか。光栄だな。

 食べてしまったものはしょうがないし、寝てる間に運命が決まるというならそれはそれで良しとするか。

 

 そう思っていたのだが、眠気も全然やってこないし、おじさんが嘔吐プレイに乗り出す傾向もなかった。

 意味不明すぎて草。

 

 もう一度おじさんに抱かないのかと聞きたいところだが、その質問をするのは2回目になるし、なんだ乗り気なのかと思われるのは勘弁願いたいので口に出せない。

 

「お前、母親は?」

「死んだけど」

 

 エビチリのソースを舐めながら答えた。

 えなに? 親子丼狙いだったの? だったらごめんだわ、たまご丼しか食わしてやれねえ。

 

「それでこんなことしてるってわけか」

 

 何を当たり前のこと聞いてんだこいつ。

 いくらここが世紀末ヒャッハー世界線といえ、コネも何も無い、年齢が二桁になったばかりのガキにできる仕事はないのだ。

 炭鉱でもあれば別だったかもしれないが、炭鉱と売春だったら売春を選ぶね私は。

 炭鉱夫になってからの寿命3ヶ月くらいだってどっかで聞いたもん。

 

 それより、おじさんが私を見る目が妙に生温いのが気になって仕方がない。

 売春婦風情が、と見下してさっきの質問をするのならばまだわかるが、そうじゃない気がするのだ。

 

 このおじさんのことが何にもわかんねえ〜〜〜。

 

 ここで、私は妙なひらめきをしてしまった。

 

 そういえばだが私はグリーンアイである。

 私の常識的にいえば日本人にはあり得ない色彩だったが、この世界ではかなり普通だった。

 この世界、戦争の時に化学兵器使って人間のDNAがめちゃくちゃになったのだかなんなんだか知らないが、人間の頭髪と目の色がかなり派手なのである。

 

 だから全然気にしていなかったのだが、改めて見ると、このおじさんの左目も緑色をしていた。

 右目は灰色だが、縦に切り裂かれたような古傷があり、そのせいで色を失っていると考えられる。

 

 ちなみにだが母は黒髪黒目、私の常識においても普通の日本人だった。美人ではあったが。

 

 ……いや、いやいやいや、まさかね?

 

 しかしそう考えると辻褄があうところがある。

 さっきおじさんは私に「母親は?」と聞いた。

 普通、そういう時は「親は?」と聞くものじゃないんだろうか。母方だけに限定した理由はなんだ。

 

 私の父親については、すでに知っているのだとすれば?

 

 おじさんは私の母親が死んだと聞かされた時、なんのリアクションもしなかった。

 もう知っている風ですらあった。

 

 もし私の想像が正しく、おじさんが私と——本来なら本人すら認知していないはずの血縁関係にあるのだとすれば、そのリアクションで正しい。

 

 私の母の死を知ったことをきっかけに、私に会いに来たのだ。

 

 ブワッと汗が吹き出すのがわかった。当然冷や汗である。

 だってこの状況、完全に既視感があるのだ。

 

 ジョジョの奇妙な冒険第5部のトリッシュじゃんかァ〜〜〜!!!

 

 ざっくりあらすじを思い返すと、身内にすら正体を明かさないマフィアのボスに娘がいることが、その母親が死の間際に娘の父親について調べたことから明らかになるっていうやつである。

 娘がいるとはボス自身も知らず、娘の存在から自分の正体が明らかになってしまうことを恐れ、娘の命を狙う——っていう、やつ、である。

 

 え? もうそれにしか思えん。

 だってこのおじさん見た目ヤクザだもん。ジャパニーズマフィアやんけ。

 

 いやもうちょっと待ってくれマジで。

 聞いてねえ〜〜!! 母よ、これは私マジで聞いてないよ。

 父親についての情報、金持ってそうだったってことしかねえんだって! 金って裏金のことォ!?

 

 私がトリッシュでおじさんがボスなんだったら私もう詰みじゃねーか!

 仲間誰もいないし特殊能力も持ってないんだぞ!

 ラスボスが初手で乗り込んでくるな! ひのきの棒も持ってない勇者にカチコミするな!

 

 このおじさん系ラスボスの容赦の無さから言えば、なんなら私の母さえこのおじさんに殺された可能性がある。

 誰かに殺されたという状況すら残さずに殺すってわけか、なるほどな。天才か?

 娼婦なら性病ということにしておけば処理は簡単だ。

 

 私はこれから娼婦ということになるわけだし、最初の客で下手を打ったということにすれば、この世の中それほど大きな事件としては扱われないだろう。この程度の悲劇ならばそこらじゅうに転がっている。

 

「……私も死ぬ?」

 

 ご飯を食べさせた意味は未だにわからないが、まあ最後の情けだと思っておこう。

 ありがとパパ……でも中華よりピザの方が好き……。

 

「いずれな。でも今じゃねえ」

 

 じゃあいつなんだよいっそ一思いにやってくれ〜!!!!

 

 再びヤケクソになった私はベッドに倒れ込み、お腹がいっぱいだったのでそのまま寝た。

 




ハーメルンにヒプメェくんの需要があるか知らねえですが、一応原作知らなくてもそこそこ読めるように書いてあるので転載しておきます。
こんな話を書きましたが俺はゴリゴリのハマ推しですね。よくアロハ着るし(無関係)
ただ龍が如くが好きなんでこの話を書いただけです(無関係)
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