九条空の怪電波   作:九条空

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20191107 執筆


【鬼滅の刃】お命頂戴いたす、宇髄天元!【忍主】

 

「お命頂戴いたす、宇髄天元!」

 

 大声とともに投擲したクナイは、日輪刀ですべて弾かれた。

 

 しかしそれも予想済み、一気に懐に飛び込んで忍刀を首筋に向ける。

 刀を突き立てる前に、ばらまかれた爆薬が視界に飛び込んできたので後ろ跳びに距離をとった。

 

 一拍置いて、派手に爆発が起きる。

 

 いやうるさっ。

 宇髄天元ってば存在自体がうるさいのに、爆薬使って正式にうるさくしてくるのが嫌だ。

 

「なんつー時に暗殺しかけてきてんだよ」

「ド派手だろ?」

「うむ、ド派手だな!」

「おい煉獄、ド派手にしたのは俺様であってこいつじゃねえからな」

 

 は? 俺の「お命頂戴いたす!」の口上もド派手だっただろうが。

 時代劇みたいだったろうが!

 

「見ての通り柱との合同任務中だぜ。今日は長々構ってられねえぞ」

「これが噂に聞く宇髄を付け狙う暗殺者か! 思いのほか尋常に勝負を挑んでくるのだな!」

 

 宇髄天元を付け狙う暗殺者とはもちろん俺のことだ。

 同じ里出身の忍で、里抜けした宇髄天元の暗殺任務を里長から請け負っている。

 

 ちなみに転生者だ。

 だから里で感情を芽生えさせない教育されてもとっくのとうに手遅れなのでバリバリ人情味に溢れているし外来語もめっちゃ使う。

 

 炎柱の煉獄杏寿郎とは初対面だ。

 まあ俺は影から姿を見たことがあるけれど、彼の前に姿を現すのは初めてって意味だ。

 

「俺はつよいからな、こそこそする必要はない。忍ばない忍と呼んでくれていいぞ!」

「うむ! 呼ばないが!」

 

 呼ばないのかよ。

 まあいいけど。

 

「よし! 動いたらお腹減ったから今日はこの辺で帰る」

「よもや! 暗殺とはそのような感じでいいのか?」

「いいのだ、暗殺後のうな重はうまいからな」

「暗殺できてねえけどな」

 

 投擲したクナイを回収する。

 なくすと面倒だからね、高いんだクナイって。そもそも入手が困難だし。

 

「細かいこと気にすんなよ宇髄天元」

「細かくねえだろ俺の命だぞ」

 

 人の命がコロコロ消えていく鬼滅の刃ではひとりの命なんて細かいことなんだよ。

 

「んじゃなー」

「おー、もう二度と来んなよ」

「明日も来るから覚悟しておけー」

 

 さて、仕事もしたことだし俺はこの近くの町で評判のうなぎ屋に行くぞ。

 去り際に声をかけておく。

 

「そういや鬼なんだけど、邪魔だったからそっちの木にくくりつけてあるぞー」

「よもや!」

 

 運動後のうな重はうまい。

 

 

※ ※ ※

 

 

 本人に攻撃をしかけるだけが暗殺じゃない。

 

 宇髄天元には3人の嫁がいる。

 なんだこの通常の3倍のリア充は、殺してやろうか。

 と、殺意を高めるためにも役立つ嫁たちだが、宇髄天元を殺すための情報を入手するにも役立つのだ。

 

「天元様の好物はふぐですよ」

「じゃあふぐ毒を盛ろう」

「ふぐ毒くらいなら効かないと思いますけどね」

「まじか。忍ってみんなそうなの?」

 

 かくいう俺もふぐ毒くらいなら効かないけど。

 

 土産に持ってきたカステラをもしゃもしゃ食べて、いれてもらったお茶をすする。

 いいなー、お茶いれるのがうまい嫁いいなー、むかつくなー、宇髄天元。

 

「あの、正味な話、天元様を暗殺する気全然ないですよね?」

「は? あるわ、バリバリ殺す気だわ。もう今にも宇髄天元の首を掻き切る算段だわ」

 

 ただちょっと方法が思いつかないだけで殺す気はめっちゃあるわ。やる気に満ち溢れてるわ。

 やる気が空回っちゃうときがあるだけだわ。

 

「俺は里でいちばんつよいけどいちばんバカだからな」

「言えてますねえ」

「言えてますねえじゃねえんだよ須磨ァ! ぶん殴るぞゴラァ!!」

「キャー!?」

 

 瞬間湯沸かし器なのでうっかり激昂してしまった。

 自分で自分のことバカにするのはいいけど人に同意されるとムカつくよな、そういうことだ。

 

「いかんいかん、嫁殴ったら宇髄天元が怒ってパワーアップしてしまう。まあパワーアップしても勝てるけど」

 

 縛りプレイしてるんでもなし、わざわざ敵を強くする必要もあるまい。

 

 これ以上カステラ食うと土産じゃなくなるのでやめよ。帰ろ。

 

「今度の土産はふぐにしてやろう! 覚悟しておけ! ふははは!」

「はーい、楽しみにしてますね」

 

 ところで、ふぐってどこでとれんの?

 

 

※ ※ ※

 

 

「宇髄天元の命をとるのは俺だぞゴラァ! 勝手に手ェ出してんじゃねェ!!」

 

 場所は遊郭。正確には鬼の潜む遊郭だ。

 俺は宇髄天元の一日一殺を目標としているのでこんなところにもついてきている。

 

 今日はどうやって殺そうかな〜、宇髄天元に対抗して俺も爆薬とか使おうかな、とか呑気に考えていたらこれだよ。

 

 宇髄天元ってば鬼にボコボコにされている。

 

 それを見た俺は鎌持った鬼に飛び蹴りをしかけた。

 軽く首を傾げるだけで避けられたのがムカついたので追加で手裏剣をぶん投げておいた。

 

 ぷぷ、当たってやんの〜! 全然きいてねえけど〜!

 まあそらそうだ、日輪刀でもあるまいし。

 

「だれだああ、お前ぇ。鬼殺隊じゃねえみてえだなあぁ」

「誰が鬼殺隊だ、どっからどう見ても忍だろうが、あァ?」

 

 鎌の鬼がボリボリと顔を搔く。

 

「そこの柱の仲間かぁ?」

「ちげえわ暗殺対象だわ。だからお前とは商売敵だ、俺が先に宇髄天元を殺すんだからお前はすっこんでろ」

 

 俺以外が宇髄天元を殺そうなぞ片腹痛いわ。

 

「かわいそうになぁあ、お前頭がおかしいんだなあぁ」

「鬼に同情されてる! えっ!? 俺こんなん人生で初めて!」

 

 ちょっとびっくりしちゃったぞ、この鬼優しいな。商売敵だから殺すけど。

 

「とにかく困るんだよ、お前のせいで宇髄天元が片目失ったり片腕失ったりしたらどうしてくれる? 暗殺が簡単になっちゃうだろうが、俺は里でいちばんつよいから簡単な任務はやる気出ないんだわ」

 

 忍刀でスパスパ鬼を斬ってやるが、全然堪えていないようだ。

 上弦だもんなあ、ちょっと斬ったらすぐ疲れて再生できなくなるってようなこともないだろ。

 

「そんなんじゃ俺を殺せねえぞぉお」

「そらそうだ、殺す気ねーもん」

 

 なぜならお前を殺すのは俺じゃねえから。

 

「譜面ができた、いくぞ野郎共!」

 

 宇髄天元はスタートダッシュが遅いのが難点だよな、俺のように初っ端から全開でつよかったらいいのに。

 

 あとその野郎共に俺も入ってないだろうな?

 やらねえぞ、鬼退治なんて俺の仕事じゃねえからな。日輪刀持ってないし。

 

 

※ ※ ※

 

 

 暗殺者にも休養が必要だ。

 

 さきの遊郭での戦闘で案外傷を負ってしまったので、ゴロゴロして体を癒している。

 いや〜、俺は里でいちばんつよいけど、暗殺系の仕事ばっかやってきたから護衛任務とか苦手なんだわ。

 

 竈門炭治郎とかその他に攻撃いかないように気をつかってたら自分の腹掻っ捌かれたよな。

 痛えのなんの。まあ忍だから平気ですけど?

 

「おい、今日は俺の事殺さなくていいのか?」

「殺さなくても死にそうなやつが何言ってんだ」

 

 忍なので当然俺の背後をとった宇髄天元になんか気づいてたもんね。

 

 宇髄天元の目と手は守ってやったが、わりかし重症になってしまったのは一目瞭然。

 まあ内臓は全部あるみたいだしこんなん実質無傷だよな。

 

「胡蝶が愚痴ってたぞ。重症で蝶屋敷の周りうろうろしてるくせして、治療しようとするとどっかに逃げるって」

「当たり前だろ、忍が他人に傷の手当させるわけないわ」

 

 宇髄天元はもう忍じゃないから他人に包帯巻かせるんだろうけど俺には無理だ。だってナンバーワン忍だもの。

 

「万が一にでも暗殺対象の隣に寝かされたらどうすんだ、とんだ間抜けじゃんか」

「知らなかったのか、お前はとんだ間抜けだぞ」

「は〜? お前は間抜けじゃなくて抜け忍ですけどね??」

「いやそれ罵倒になってねえけどな」

 

 うるせえ忍にとっては抜け忍は罵倒なんだよ、宇髄天元はもう忍じゃないから違うだろうけど。

 

「お前さ、まだ俺が里抜けするときに誘わなかったの拗ねてんのか?」

「はぁ〜!? 何言ってんだお前! 拗ねてんじゃねえわ恨んでるわ!」

 

 拗ねてると思われてたのかよ! 俺のことなんだと思ってんだ仲間に誘ってもらえなくてうじうじするかわい子ちゃんか!?

 里でいちばんつよい俺が拗ねるわけないだろ!

 

 ちゃんと恨んでるわ!

 何勝手に逃げてんだ、お前が逃げるなら俺も逃げたわ!

 でもお前が勝手に逃げたから置いてかれた俺は死んでも里抜けしねえって決めただけだし! 俺を誘わなかったことを一生悔いろ!

 

「里抜けに俺を誘わないのはバカだなって思った。だって俺が殺しの命令受けたら宇髄天元は死ぬじゃん」

「だからお前が任務で里から離れてる時に抜けたんだろうが」

「そうだよ帰ってきたらお前居なくてショックだったわ! コノヤロウ宇髄天元!」

 

 唯一里で面白いな〜って気にかけてた人間がいなくなってた俺の気持ち考えたことある!?

 あの里みんなつまんねえんだよ〜誰にも冗談通じねえし。

 

「まあ俺はお前のきょうだいの仇だからな〜恨まれて当然だけど」

「は?」

 

 うわ、宇髄天元の殺気なんて、「お命頂戴いたす!」って突っ込んでった初回〜11回目以来じゃん。

 

「あいつらの死にお前が関わってるなんて聞いてねえが」

「直接殺したわけじゃねえけど間接的には俺が殺しただろ。俺が里でいちばんつよかったから、里長のこどもなのに弱いあいつらはしごかれすぎて死んだんだ」

 

 俺ってば里でいちばんつよいけど、里長とは一切血縁関係にないのよね〜。

 突然変異でめっちゃつよいのだ。転生者だからかもしれん。

 

 里長が自分の子どもを鍛えるとき、ことあるごとに俺をダシにしていたのを知っている。

 やれ俺は3歳の頃に暗殺を成功させただの、生まれてから一度も親に逆らったことがないだの。

 

 そりゃそうだろ俺は転生者だぞつよくてニューゲームだわ。

 人生一度目に無茶言ってやんな、とは思ったが実際に言ってやることはなかった。

 頭おかしいと思われるだけなので。

 

 だから俺は宇髄天元に恨まれてて当然なのだ。

 

「……んなこと思っちゃいねえよ」

「俺は忍だから嘘はすぐわかるぞ。下手な嘘つくな宇髄天元」

 

 普段タメなしで話すくせに言い淀んでる時点で嘘なんだよ分かりやすすぎるだろどうした宇髄天元。

 

「あー。正確には、今は思っちゃいねえ。里抜ける時は思ってたかもな」

「かもじゃねえだろが、思ってたろうが。まあ今思ってねえんならいいけどォ!」

 

 なんだよ今は思ってねーのかよずっと憎まれてると思ってたわ恥ずかしいな!

 

「だってお前、里にいるときそんなんじゃなかっただろ。無表情で無感情、からくり人形だと思ってたぞ俺は」

「里でいちばんつよいんだから感情くらい消すわ。感情ないのが里長にとってのつよさだったからな。俺はそうは思わんから里長が見てないならへらへらすっけど」

 

 求められてることは全部こなせるぞ、俺は里でいちばんつよいからな。

 

「お前にとっての強さはなんだ?」

「そりゃなんでも自分の思い通りにできることだろ。里抜けたくて抜けたんだからお前もつよいぞ宇髄天元」

 

 俺は自分の意思で全部決めてるから最強だ。

 里長に従ってやってるのも全部俺が決めてるからな。

 

「俺は里でいちばんつよいから、いちばん難しい方法でお前を殺す気だ」

「へえ、どうすんだよ」

 

 よくぞ聞いてくれたな!

 

「老衰で死なす! お前は嫁3人に囲まれて大往生するのがお似合いだ! ふはは!」

 

 そのために俺は宇髄天元より長生きする必要があるので、生活習慣病に気をつけている。

 

 そこいらの鬼に負けるつもりはないが、高血圧には負けるのが元現代人クオリティだ!

 

 あっ生活習慣病で宇髄天元殺すの結構ありだな。

 

「今度お前に天丼100杯食わしてやる」

「おう、余裕で食ってやるわ」

 

 2人してケラケラ笑った。

 




パリピが集まるハロウィン仮装パーティでDJがブイブイ言わせてるの聞いた後入った漫画喫茶で鬼滅の刃を急いで読んだ後、「余裕で天丼100杯食えるわ」っていう宇髄天元のセリフがとても気に入ったのでおぼろげな原作の記憶を元に書いた。
天丼100杯食ってくれ宇髄天元。
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