「左馬刻くんさあ、一郎くんにご飯ちゃんと奢ってる?」
「あァ? ンでてめーにそんなこと言われなきゃなんねえんだよ」
「最近一緒にご飯に行けてないからさぁ、飢えてないか心配で」
「あいつは野良猫じゃねえんだぞ」
あれから、たまにおとーさんがオススメするご飯スポットに赴いていたら、度々一郎くんと遭遇した。
一郎くんは喧嘩漫画の主人公を未だにやっているようで、出会った私もラップバトルになんだかんだ参戦することになるのである。
おれぁおせっかい焼きのおねーさん、ラップバトルは見過ごせねえなあ。
その流れで知り合った一人、碧棺左馬刻くんは本職のヤクザである。
まあね、こっちもガキの頃からヤクザなのかヤクザよりも恐ろしい何かなのかわからんおとーさんと付き合いがあるので今更ビビることはない。
「そんなに心配ならてめーで奢れ」
「そうしたいところなんだけど最近会わないんだよなあ。会っても予定あるとか言われちゃってさ。なんか忙しいのかな?」
「忙しいだろーよ、18のガキなんざ」
ここに年齢が関わってくる意味が全くわからなかったが、左馬刻くんが言うならそうなんだろう。
ヤクザ嘘つかない。私は知ってるんだ。
「そうかあ。最近空却くんも見かけないしなあ。ていうか簓くんも見ないね?」
「るっせーな俺様に聞くんじゃねえ!」
左馬刻くんは瞬間湯沸かし器なので突如怒りが爆発するのだが、今の沸点はよくわからなかった。
もしかして簓くんと喧嘩したんだろうか。
わかんねーなーこれなー。おとーさんに聞いたら全部解決するんだろうか?
でもおとーさんは情報に関しては結構はぐらかしてくるんだよな、なんだかんだ未だに私と血の繋がった親子なのかも言ってくれないし、一郎くんたちと親子なのかも言ってくれないし、察せよ文化の人間なんだよな。
「アイさんって彼氏いるんですか?」
そんで久々に一郎くんと会ってファミレスで会話したらこれである。
喧嘩漫画から恋愛漫画に転向か〜!? どうした山田一郎〜!?
「左馬刻くんと付き合ってるよ」
「ブッッッッッッッッ」
「嘘だよごめん、そんな水吹き芸みたいになるとは思わんくて」
テーブルを拭きながら、なんでそんなこと聞いたのか聞いた。
「い、いや、純粋に気になって……もし彼氏さんがいるなら俺と2人で飯食うのはまずいんじゃないかと……」
「まあね、そうかもね、まあそんな細かいこと気にする男とは付き合わんけどね」
「彼氏いるんすか!!!!!!!」
「声でか。ラッパーかよ」
私は焦る気持ちをなんとか抑え込んでいた。
いやまだ大丈夫の可能性あるから。
この山田一郎のバレバレの探りの入れ方が、私に惚れた誰かのためって可能性がほら、あるから。ね。
まだ近親相姦漫画始まんねーから。まだっていうか一生始まらせねえけど。
「一郎くんこそどうなの? 彼女いるんじゃないの?」
「いやいません」
なんでそんなキリッとした顔で言うの? いろよ、もうそこはいてくれよ頼むよ。
「へー。じゃあ好きなタイプは?」
「喧嘩に負けない強い人です!」
私一郎くんの前で負けたことないな確かにな。
でもそれは相手がみんな雑魚だからだよ……一郎くんと戦ったら負けるよマジで。
弱いものいじめのアイって呼んでもいいよ。だから許して。
「アイさんの! 好きなタイプは?」
一縷の望みをかけて、私は言った。
「年上かな」
一郎くんは机に頭を打ち付けた。
頭打ち付けてえのはこっちの方である。
助けておとーさん。