九条空の怪電波   作:九条空

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20201031 執筆


【鬼滅の刃】セックスしないと出られない部屋/炎柱【怪力主】

 

 全ての壁面が白く、正方形の部屋。壁にあるのは鍵穴のないドアだけ。

 部屋の中央には、私ことモブ隊士と、炎柱・煉獄杏寿郎が立っている。

 

 部屋に落ちていた紙を拾い上げて中身を改めると、そこにはこう書かれていた。

 

『セックスしないと出られない部屋』

 

「最初からクライマックスなんだが?」

「暗い升?」

 

 どうしてこうなったか説明しよう。

 血鬼術である!!!!! 終わり!!!!!!!!!!

 

 ざけんなご都合血鬼術がよ、これ使ってる鬼100%私と同じ転生者だろ。

 人食えよ!!! セックスさせてる場合か!?!?!?!?

 

 いけない、こういう時こそ冷静にならねばならない。

 私は深呼吸をしながら自分の人生を振り返ることにした。

 

 私は鬼滅の刃が存在する現代から転生して来たしがない人間である。

 

 家族が鬼に殺されたことでようやく「あ、タイムスリップじゃなくて鬼滅の刃だったの〜!?」と気づいたほどに鈍感で、現在はモブ鬼殺隊士をやらせていただいている。

 

 女の身でありながらそれなりにやっていけているのは、私が甘露寺蜜璃と似た体質だからである。

 要するに怪力ゴリラだ。筋肉オバケだ。髪は桜餅色ではない。

 

 純粋な力比べでは私の方が蜜璃ちゃんよりも優っているが、私は柔軟性と器用さと機動力とその他諸々のステータスが低すぎて育手に「才能がない! もうさっさと子供を産んで次世代にその能力を継げ!」と言われたことがあるので戦闘力は低い。

 

 力でのゴリ押しがどれほど通用するのかに興味があるので引退する気はない。

 まだ若いしどこも欠損してないしな。

 

 私は蜜璃ちゃんよりも3つほど年下だが、入隊時期が近く、似たような体質だということで隊の中では一番仲良くさせてもらっている。

 最初の頃は任務を一緒に行うことも多く、その際に炎柱と出会い「俺の継子になるといい! まとめて面倒を見てやろう!」と誘われて蜜璃ちゃんは炎柱の継子になった。

 

 その当時私は岩の呼吸を習得しようと別の師範に学んでいたため、丁重にお断りさせていただいた。

 しかし蜜璃ちゃんを訪ねに煉獄家に行ったこともあるし、蜜璃ちゃんのついでに稽古をつけてもらったこともあるため、炎柱とは非常に良好な関係を築いていると言えるだろう。

 

 その関係を一瞬でぶち壊すかのように現れたのがこのセックスしないと出られない部屋なんだが?

 

「なんなんだこの状況、エロ同人の1コマ目か?」

「すまないが俺にも分かる言葉で話してもらえないだろうか!」

 

 分かる言葉で話したらセクハラになっちゃうでしょうが。

 エロ同人ってこの時代で言ったら何だろう。素人が書いた艶本かな。

 

 とはいえ、今は状況が状況だ。

 私と炎柱は共同任務にあたっている最中で、鬼を見つけたはいいものの、鬼が炎柱を実力者と見抜くや否や血鬼術——セックスしないと出られない部屋にぶち込んで来たのだ。

 鬼はおそらくこの時間を使って逃走していることだろう。

 

 羞恥心とか倫理観とかでどうのこうのしている場合ではない。

 しかしその前にやっておくことがある。

 

 私は拳を握りしめ、全力でドアに叩きつけた。

 ゴッ、という鈍い音が聞こえたが、それは私の手の骨の音である。ドアはビクともしなかった。なるほど。

 

「炎柱、この壁切れます?」

「やってみよう!」

 

 ——炎の呼吸、伍ノ型 炎虎!

 

 見事な炎のエフェクトとともに日輪刀が振るわれたが、ドアにも壁にもかすり傷すらつかなかった。

 だよな! だってセックスしないと出られないんだもんなあ!

 

 柱の攻撃に耐えるって何? 十二鬼月なの? セックスをしないと出られない血鬼術の鬼が?

 さすがの鬼武辻無惨も頭が痛くなりそうだなオイ。

 

「ふむ、これ以上は刀の方が折れそうだ!」

「そうですね、私も骨の方が折れそうです」

 

 物理的にも慣用句的にも骨が折れそうだ。くたびれを儲ける前になんとかしなければならない。

 

「炎柱、この紙におそらく鬼からの指示が書いてあります。これを行えばこの部屋から出してやると。しかし罠かもしれません」

「現状この部屋から脱出する糸口が見つからない以上、罠であろうとその指示を手掛かりにするほかなさそうだな! 書かれているのは無理難題なのだろうか!」

 

 え、言わすの? 私の口から?

 いや馬鹿馬鹿馬鹿、さっき私は己の倫理観を捨てるという決断をしたばかりだろう。

 覚悟を決めろ! 心を燃や……さなくていいな! それは!

 

「ここはセックスしないと出られない部屋だそうです!」

「嗚呼! なるほど!」

 

 炎柱は腕を組んで仁王立ちしたまま、腹式呼吸で言った。

 

「セックスとはなんだろうか!」

「無知シチュ〜〜〜〜〜〜!!」

 

 難易度がたけえ〜! 助けて〜!!

 ええCVでセックスって言うな〜!!

 

「君は難しい語彙を使うな! 外来語だろうか?」

 

 いや知ってるこれは無知シチュじゃなくて炎柱がセックスという単語の意味を知らないというだけなんだよな。さすがに性行為がなんたるかを知らねえわけじゃねえ。

 だからと言ってなんなんだよ! 説明したくねえよ! 私をエロ単語生き字引にする気か!?

 

「あーそーいうことね完璧に理解した」

 

 私は竹書房を爆破しそうな顔で頷いた。

 やれるだけやる。私は今から哲学者、大正時代のニーチェになる。神は死んだ。

 

「炎柱、セックスというのは人間が男女二人で行います」

「ほう、今の所条件は満たせているな!」

「それで、人間にはいろんな穴があるじゃないですか」

「あるな!」

 

 人間にも穴はあるんだよな……。

 

「体にある穴を、もう1人が塞ぐというのがセックスです。なので炎柱の穴に突っ込んでもいいですか?」

「よくわからないが! いいだろう!」

 

 よくわからないならいいって言わないでほしいがこと今回に限ってはそれで助かる。

 私は深呼吸して、なぜだかめちゃくちゃに罪悪感に締め付けられている自分の心を無視し、鬼を呪いながら——炎柱の両耳に人差し指を突っ込んだ。

 

「これが我々のセックスだ!!!!!」

 

 穴に棒状のものを突っ込んだらそれはもうセックスだから!

 

 もうそう思い込むしかねえ!!!!!!! これがセックスなんです!!!!!!!!!

 この世の新常識!!!!!!!!!!!!!!!

 

 この後めちゃくちゃ鍵の開く音がした。

 

「よっしゃあ!!!!!!」

 

 最終選抜で生き残った時よりも大きいリアクションで喜んでしまったのも無理はないと思う。

 

 こんなのただの言葉遊びだけど炎柱、いやセックスしないと出られない部屋にこれがセックスだと認めさせられたならそれで勝ちなんだよ!

 

「すまないが何も聞こえない!!!!!!」

「こっちは聞こえすぎてうるせえ!!!!」

 

 塞ぎっぱなしになっていた炎柱の耳を解放し、2人で開いたドアから飛び出すと、そこは血鬼術がかけられた薄暗い森だった。

 これがセックスしたから出られた部屋ですね〜!!!!!!!!! 過去形にしてやったわ!!!!!!!!

 

 私のメンタルはゴリゴリに削られた。

 その上、セックスしないと出られない部屋を血鬼術に持つ鬼には逃げられた。

 

 やっぱり骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。

 ほんと血鬼術って全部クソゲーだな。初見殺しばっかかよ。

 

 この後めちゃくちゃ別の雑魚鬼を滅殺した。

 

 

※ ※ ※

 

 

「こないだ君とセックスしたときの話だが!!!」

「はいお口セックス!!!!!!」

 

 動揺のあまり言って欲しくない単語を自ら言ってしまうというアホをやってしまった。

 お口セックスはもうただの淫語じゃねえか落ち着け私。

 ちなみに私はただ炎柱の口に手のひらを押し付けて塞いだだけで指は突っ込んでいない。

 

 炎柱が話しかけて来たのは私の任務終わりだった。

 したがって、後始末のために隠が数人周囲にいるのである。

 

「この時代にセックスという単語を知っている人間それほどいないよな……? 大正……どうなんだ、結構外来語流通してるか……? 私は死ぬのか……? ヘイSiri、セックスという単語が日本で一般化した年代はいつ?」

 

 私は炎柱にイケナイ単語を教えた罪で社会的に死んでしまうのか……?

 

「なに、死ぬのか!? どこか調子でも悪いのか、急いで胡蝶のところに行こう!」

「医学に精通している人は外来語に詳しそうだから今一等あなたと一緒に行きたくないですね」

 

 でも来ちゃうんだよなこれが。

 炎柱が私に会いに来たのは、奇怪な血鬼術にかけられたということで検査しなければならない、と蝶屋敷に招集されたことを知らせるためだったのだ。

 蝶屋敷に招集されるのに間が空いたのは、私にも炎柱にも立て続けに任務が入ったからである。

 

「セックスしなければ出られない部屋というものに彼女と共に閉じ込められた!」

 

 報告すると、しのぶさんは笑顔のまま固まった。

 

 ああもうこれ確実に言葉の意味知ってるやつじゃ〜ん!!

 戦いは部屋を出てからが本番だったのか。

 この声がでかい男の声帯握りつぶしてやりたいな。

 

「しのぶさん、誤解のないように言っておくのですが、我々はセックスしましたがセックスしていません」

「頭の検査も必要なようですね」

 

 頼むから問診票に書き込まないで。

 

「少なくとも片方が、紙に書いてある通りにしたと認識していれば出れる部屋だったと思われます。炎柱はセックスという外来語を知らなかったので」

「なるほど……なるほど?」

 

 そうじゃなかったら、あの鬼は耳を指で塞ぐことをプレイの一環だと思っている変態かのどっちかだ。

 もちろん耳を指で塞ぐことをプレイの一環だと思っていなくとも間違いなく変態だが。

 

「炎柱、セックスの意味を説明してもらってもいいですか?」

「耳の穴に指を突っ込んでもらうことだな!」

「なるほど、なるほど」

「私は何も間違ったことは言っていませんよ。男女で行う、穴に棒を突っ込む行為がセックスなんですから。ただ少し認識違いが起きたかもしれません」

「その機転でよく切り抜けました。ですが、煉獄さんに間違った知識を植え付けるのは程々にしてくださいね?」

「なんと! これは間違っているのか!」

 

 おいやめろ、私が悪者になるだろうが。

 

「すまないが正しいセックスを教えてもらっても良いだろうか!」

「しのぶさんのせいですよ、炎柱にこんなこと言わせる羽目になったの」

「あらあら」

 

 笑ってんじゃねえよ。

 それに限ってはつくり笑顔じゃなくて本当の笑顔じゃねえか。面白がるな。

 

「医者の仕事なので説明はしのぶさんに任せます」

「何言ってるんですか?」

「人体の神秘にまつわる話じゃないですか」

 

 しのぶさんの額に青筋が浮かんでいるが、元はと言えば尾っぽを踏んできた彼女が悪い。

 というかもし万が一にでも二度目があったらえぐい事になるので説明は勘弁して欲しい。

 

 次にマジでセックスしなきゃいけなくなったらどうすんだよ!

「避妊薬を処方しますか」って? しのぶさん思ってたより下ネタ好きだなオイ!!

 




テンプレ展開をいかに自分風にアレンジできるかの挑戦を鬼滅の刃でやってみたときに書きました。
このアイディアを出すとき、バカスカエナジードリンク飲んで目をギンギンにしながら家の周辺を30周くらいぐるぐる散歩し続けてたので不審者として通報されていたかもしれない。
シリーズとして続きます。
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