神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
仮面の軍勢と仲良く昼ごはんを食べた。
「今日は何するんだ? 輝夜ちゃん」
「だから輝夜ちゃんは……もういいや。今日は宿題やりに来た」
腹ごしらえも終わってのんびりしていたら、ラブさんが隣に腰掛けてきた。基本いい人だけど、僕を名前でいじってくるしゲームを勝手にやるからちょっと構えてしまう。
僕がここに来るのは、大抵浦原商店から大人がいなくなるときだ。お父さんとお母さんがいないのはよくあるが、テッサイさんまでいないことはほとんどない。外出しなければならない仕事はできる限り平日に済ませているらしいのだ。二人も見習ってほしい。
しかし今日はどうしても家を空けてしまうため、真子さんたちのところへ来たというわけだった。
ここに来てやることはバラバラだ。ゲームをやったり本を読んだり、今日みたいに宿題をしたり。そしていつも全く捗らない。ひよ里さんになんやそれと言われ、リサさんにからかわれ、ラブさんに奪われ、白さんに突撃され、真子さんに笑われる。
ハッチさんとローズさん、拳西さんは僕の邪魔をしない良い人枠だ。ローズさんはうるさいけど。
「なんや輝夜、まだおったんかいな」
「おかえり。お邪魔してまーす」
例によって全然宿題が進まず半ば諦めムードになっていると、ひよ里さんが帰ってきた。大きめのエコバッグを提げているから、やはり買い出しか何かだったのだろう。
「あ、あれ買うたからやるわ。苺大福」
「いいの?」
「あのハゲのやつやから輝夜は気にせんでええねん」
「よおないわ! あとハゲてへんわ!」
うわ、これは掴み合いの喧嘩になるやつ……! と思ったそのとき、真子さんが『まあ輝夜にやるならええわ』と言った。ひよ里さんもフンと鼻を鳴らして袋に大福を入れて僕に手渡す。嬉しいけど他のみんなはこれにお菓子を詰めるのやめてくれる?
「ねえ、なんでいつも優しくしてくれるの? 毎回なんか貰ってる気がするんだけど」
「それはな、ここにいるみーんな輝夜のことを可愛がっとるからや。親心っちゅーか、兄心っちゅーか……」
みんな、僕のことを息子だか弟だかだと思っている、ということか? ピンとこないな。兄弟みたいな存在はいるが、ジン太と雨にいつも何かあげようと思っているわけではない。特にジン太。
わずかに顔を赤くして答えた真子さんは、自分の頭をガシガシかいてそっぽを向いた。それから、ひよ里さんを見て口を開く。
「まあ、ひよ里は中身見たら輝夜の方がにーちゃんっぽいけどなグホァ!」
自分の発言に照れたのか、ひよ里さんをいじって自滅した。何してるんだか……。
「真子はああやけど、さっきの発言は大体本当」
「リサさん!」
「向こうにいたときはまだ子供と触れ合う機会もあったけど、現世に来てからは交流そのものをほとんど絶っとるから。あんたが来るってだけでみんないつもの1.5倍うるさくなる」
リサさんはうざいったらありゃしないといったふうにため息をついて腕を組んだ。しかしその表情は、あまり喜怒哀楽を顔に出さない彼女にしては非常に珍しい、穏やかな笑顔だった。
初めて見る顔に惚けていると、それに気づいたリサさんがまたいつもの無表情に戻る。
「ほらほら、もう暗くなるころやし帰り」
「そうだね、今日はもう帰ろうかな」
「お! 帰るんか。また来いや」
「じゃーねー!」
何人かに見送られて建物を出る。きっとみんなもお父さんやお母さんと同じように、騙されて裏切られてここまで来たんだろう。それでも明るくて楽しくて、すごい人たちだ。
「……ん?」
貰った袋から、お菓子以外の何かが見えた気がした。うっかり別のものも持って帰っちゃったかと思って慌てて袋を漁ると。
「エロ本……」
前言撤回。
あの人たちは変な人たちである。
実は仮面の皆さんの中で一番いいおじさんしてるのはひよ里さんです。変に構わずお菓子をあげたり頑張りやって言ったり。代わりに真子さん他が酷い目にあいます。何輝夜に絡んどんじゃ! って蹴られることも少なくないです。自分より小さい人が周りにいませんからね。そりゃ可愛がりますよ。輝夜が128センチひよ里さんが133センチで5センチ差しかないですが。
これは余談ですが、仮面の皆さんは輝夜を娘だと思っている節があります。息子ではなく。単純に可愛いし、生意気だけどやんちゃなクソガキではないし、インドアで大人しいし、あとは普通に可愛いからです。仕方ないね。
見やすいように番外編は別の章にしてみたのですが、どうでしょうか。しょうだけに。は?
仮面の皆さんを書くとき、似非関西弁が違和感ないか何度も首を傾げながら書いています。特にリサさん、愛知と関西の方言とか難しすぎる。
おかしかったら誤字報告とかで教えてください。お願いします。