神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか   作:さとう

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前回までのあらすじ
黒崎一護に会った。



第十五話:おいしいご飯には勝てなかったよ……

突然だが、今日は黒崎家にお邪魔している。

そこの娘さんたち──黒崎遊子と黒崎夏梨から誘っていただいたのだ。

僕が普段ゲームばかりしているのを知って、『ゲームならうちにもあるから来なよ』『一緒に遊ぼう』と。友達のいない僕にはストレートな言葉は刺激が強すぎて、とっさにオーケーしてしまった。

しかし、彼女たちとは友達ではない。よく言っても『そこそこ仲良しのクラスメイト』だろう。そんな僕が黒崎家に足を踏み入れていいのか。

『面倒臭いわね、とっとと行きなさいよ』

そうして断るかどうか悩んでいたら狂犬に喝を入れられて、結局思い切って行くことにした、というわけだ。ちなみに狂犬はお休み。定期的にお父さんやお母さん、テッサイさんに血をもらっている今、一般ピープルそうな双子の前でうっかり扇子が喋ると大事件になるからだ。

単身乗り込んだゆえの緊張で胃が痛い。目の前には美味しそうなハンバーグやコーンスープが並んでいるというのに。

「どうしたの? ご飯食べたくない?」

「あ、いや……他人の家でご飯食べるの初めてで」

「具合悪いなら言いなよ」

頷いて箸を進める。小学五年生にしてこのクオリティとは……。将来はテッサイさんと並んで凄腕の料理人になるだろう。テッサイさんはそもそも料理人ではないが。

「どうだ! 美味いだろう遊子の飯は」

全身で暑苦しいを表現したような二人のお父さんがこちらを見るが、僕の口にはご飯が詰まっていて頷くしかできなかった。それでも意図は伝わったのか、満足気に首を何回も縦に振った。

 

「そういえば、この前『いちにい』さんに会ったよ」

「『いちにい』さんって、お兄ちゃん?」

「うん」

所々はぼかして、駄菓子屋にクラスメイトっぽい人と来てたのを見たんだと言ったら、たいそう意外だったのか二人とものけぞって驚いた。二人のお父さんに至っては椅子から転げ落ちてしまって、強打した脇腹を庇って倒れている。

「大丈夫ですか!? ええと……遊子と夏梨のお父さん」

「一護のお父さんでもあるけどな……っと」

一心でいいよ、と起き上がりながら言われる。ありがたい。呼び方を決めあぐねていたのだ。おじさんと呼ぶにはあまりにもおじさんすぎて傷つくかもしれないし。

「そんなことよりも! お、お兄ちゃんが駄菓子屋に……!?」

「そ、そんなこと……?」

「そうだよ! 一兄が駄菓子屋なんて行ったらまた喧嘩売られるのにわざわざ行くわけない!」

一応、クラスメイトといたみたいだからとフォローしておく。

しかし、駄菓子屋に行っただけで家族にここまで言わせる黒崎一護、いったい何者なんだ。喧嘩を売られるって……。いや、喧嘩を売られるなんてヤンキー漫画だけだと思っていたけど、高校では普通なのかもしれない。それはそれで嫌だから、『いちにい』さんが特殊だと信じよう。

「ただいまー」

「おかえり!」

「一兄だ!」

先日聞いた声に、双子が同時に席を立つ。兄弟仲が良くてなによりだ。実は二人の一心さんに対する扱いを見て少し心配していたから、大丈夫そうで密かに胸を撫で下ろした。

「あ、こないだの」

「お、お邪魔してます……」

冷静に分析していたが、僕は人見知り。ほとんど初対面の人と満足に会話もできない。前回は勢いで喋れてしまったが、今は他人の家にいるという緊張も相まって全然舌が回らなくなった。

向こうも年下の対応に困っているのか頭を掻いている。妹と同じ年齢なんだから気軽に話してよ、お兄ちゃんなんだろ。

「輝夜っつったっけ。まあゆっくりしてけよ」

彼はそれだけ言って二階へ上がった。信じられない、この気まずい空気をそのままにして逃げるなんて。……もちろんこれは被害妄想で、相手の対応は特に問題ないのだが。

「もう、お兄ちゃんは愛想ないんだから!」

遊子が可愛らしく怒る。しかし後ろでは一心さんが悪い笑みを浮かべていて、なんだか背筋がぞくっとした。

「なあ、輝夜ちゃん」

「はい? あ、いや、ちゃん付けはちょっと……」

「一護にこれ届けてきてくんねえか?」

これ、と振った手にあったのは、手紙。真ん中にハートのシールが貼ってある。見た目は古き良きラブレターだ。

「なんですか、それ」

「俺が書いたラブレターだ! これをあいつに渡してやってくれ」

「は、なんで……?」

「ドギマギしてる息子をからかうため!」

暑苦しい顔で爽やかに歯を見せる一心さんに、変な帽子を被った父親の姿が重なって見えた。




輝夜くんは人見知りです。昔から仲の良い大人たちに囲まれて生活してしまったゆえの弊害ですね。だから遊子や夏梨といった同級生と仲良くなったという話を聞いた浦原さんは飛んで喜びました。夜一さんは放任主義なので『良かったな』で終わりましたが。


春休みも終わりに近づき、新入生用に部活のビラを配ったり、健康診断したり、履修登録したりで忙しくなりそうです。なので地味に続いていた毎日投稿は今日で最後になるかもしれません。お待ちいただいている方々すみません。でもゆるくやっていきますので、これからもよろしくお願いします。

前回の後日談的落書き描きました↓
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