神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
前の父親にうちの村に来てくださいと言われた。
翌日。僕とお父さんは、僕の産まれた村に来ていた。門番らしき人に言われた通り、その場であの人を待つ。
僕が案内できるならそうしていたが、監禁されていたためにこの村の地理がわからないのだ。たとえ知っていたとしても、案内させてくれたとは思えないが。
あの人が僕を警戒しているのは村に入ったときの警備の厚さで容易にわかった。村がどのくらいの規模かは昨日のうちにお母さんが調べて教えてくれたのだが、いつもは門番など在中させていないしもっと人通りも多いらしい。危険人物が来るからと家から出ないよう言っているのだろう。
そんなことをしなくても危害を加えるつもりはないのに。……いや、少し前まではその気はなくとも力の暴走が害となりえたんだった。あの人はそれを恐れているんだ。
「ようこそ、
30分ほどして、あの人はやってきた。なぜか少女を連れて。男は随分疲れているようで、娘を置いて出ようとしたら一緒に行くとごねられたのかと察する。……親子仲がよろしいようで何よりだ。
知上村とは、この村の名前である。昔は血神村という表記だったが、漢字の印象が良くないという理由で別の漢字が当てられたらしい。
「では中に入って話しましょう」
案内されたのは、僕がずっと閉じ込められていた神社。つい最近取り戻した記憶がちらつき、身体に少し力が入る。お父さんとこの男も同じようで、僕たちを取り巻く空気が冷たく重くなった気がする。
「あたし、この人と遊びたい!」
「駄目だ。知らない人と遊んではいけないよ」
空気を破ったのは、少女だった。小さいお姫様にはじっとしたままなんて我慢できなかったらしい。もちろんあの人が許すはずがなく、すぐに却下されて何でどうしてと地団駄を踏んだ。
それでもめげずに少女は主張する。何度もそんなやりとりを繰り返すうちに父親のほうも疲れたようで、結局は折れることになった。
あの人も普通の人のように怒ったり笑ったりするんだと驚く。僕は緊張と殺意の入り混じった顔しか見たことがなかったから、どの表情も新鮮に映る。
「一緒に遊びましょうね!」
後ろで親が疲労困憊の様相を見せているのには目もくれず、こちらに満面の笑みを向けてくる。似た顔でもこんなに違うのか。
天真爛漫で純真無垢を体現したような少女は、僕の手を引いて神社の中庭へと向かった。
「私たちはこちらへ参りましょうか」
「いいんスか、あの子たちを放っておいて」
「いいんです。私の妻、野兎には効かなかったそうですから」
完全に輝夜と少女の姿が見えなくなってから歩き出す。あっさりと娘を遊びに行かせるものだから何か仕掛けてあるのかと思ったが、同族には魅了の能力は効かないと知っていたからだったとは。
彼が襖の前で足を止めた。入ると中は八畳ほどの和室だった。奥の障子の向こうは中庭らしく、輝夜たちの話し声が鮮明に聞こえる。
なんだ、信用したふうに振る舞っておいて、全然警戒しているじゃないか。これは化かしあいになるかもしれないな、と得意分野ながら気を引き締めた。
出されたお茶には万一を考えて手を出さずに座る。これからが本番だ。
「
「アタシは浦原喜助。隣町で駄菓子屋をやってます」
よろしく、と手を出すと千樹郎も同じように手を差し出した。意外と友好的だと思ったが表情は苦かった。握った手が冷たいから、緊張すると顔が強張る癖でもあるのかもしれない。なんのために相手が自分たちをこの村に呼んだのかわからないので、観察はいつもより丁寧にしておく。
千樹郎はしばらく何から話せばいいか決めあぐねた様子で視線を宙に浮かせていたが、ついに決まったのかこちらを真っ直ぐに見つめて口を開いた。
「もうご存知でしょうけど、私は死神でした。……だから
あなた千樹郎って言うのね!
名字は捨てたとありますが、血神の家系は名字がない扱いなのでまあ当然といえば当然です。でも公には名字は知上とされています。下の名前はそのまま白蛇とか野兎とか。本当に登録されているんですかね? その辺はBLEACHでは気にしたら負けな気もします。
やっと目処がついたので更新再開できます。シリアスって大変ですね。
書き溜めたのでしばらくは毎日更新できるかな? とか言って五話もないかもしれませんが……。ということで、次回もよろしくお願いします。